『ちょっとチェギョン・・・アンタ一体何をしているのよ。それに皇太子も・・・』
『そうだそうだ!』
ガンヒョンとギョンに声を掛けられ我に返った二人
『あ・・・だってガンヒョン・・・こいつが~~!』
『皇太子・・・公衆の面前よ。離しなさい。』
『あ?あぁ・・・』
少しでもチェギョンに近づきたかったシンは、渋々チェギョンを解放した
『が・・・ガンヒョン早く着替えないと・・・』
『そうね、アンタもついてきな。一人にしておくと何をしでかすかわかんないから・・・』
『はぁ~~い。』
一国の皇太子をこいつ呼ばわりしたチェギョン・・・
チェギョンにこれ以上の暴言を吐かせたくなかったガンヒョンは、チェギョンを伴って部屋に着替えに戻った
着替えながらガンヒョンは、何か考え事をしているチェギョンに問い掛けた
『いい雰囲気だったけど・・・何を話していたのよ。』
『いい雰囲気~?とんでもない!!あいつ・・・私の歌には破壊力があるなんて言うんだよ。』
『確かに…寝る子を起こしそうな勢いだったわ。』
『もぉ!ガンヒョンまでそんなこと言うの?それよりさ・・・妙なことを聞いちゃったんだけど・・・』
『なによ。』
『私と皇太子って・・・昔逢ったことがあるんだって。』
『アンタは覚えていないの?』
『うん。でも・・・・あぁ~~~もう何が何だかわかんない。』
『まぁゆっくり考えなさいよ。』
『うん。』
ガンヒョンはギョンが用意してくれたドレスに着替え、ハイヒールを履いた
『さぁ行きましょう。』
『あ…ちょっと待ってガンヒョン・・・ひとつ聞いてみたいことがあるんだけど。』
『なによ。』
『女のガンヒョンから見て、私って・・・可愛い・・・の?』
『えっ?』
驚いて絶句するガンヒョンに、チェギョンは慌てて顔の前で両手を振った
『あ・・・いいのいいの。冗談だってば。私が不細工なのはよくわかってる。』
『あのさ・・・チェギョン。アンタが可愛いって言葉を嫌いだから、一度も言ったことなかったけど
アンタはものすごく可愛いわよ。女のアタシが嫉妬するくらいにね・・・』
『えっ?・・・そうなの?それ・・・マジで言ってる?』
『アタシがアンタにお世辞なんて言うと思う?大体このイ・ガンヒョンがお世辞なんて言う性格?』
『ううん・・・』
いつになく素直なチェギョンの様子に、ガンヒョンは先ほど皇太子と何かあったに違いないと察した
一方・・・ガンヒョンとチェギョンが部屋に引き上げた後で、すぐに着替えを済ませホールに向かったギョンは
船頭で繰り広げられている二番煎じの大騒ぎに一切興味も示さず、辟易した顔のシンの元に向かった
『シン~~何やら船頭が賑わっているな。みんな皇子様からのバッグハグを待っているんじゃないのか?
おっ?今歌ってる子・・・なかなか綺麗な声だな。』
『っつ・・・チェギョンがあの場所を降りてから、交代であの歌を聴かされる俺の身にもなれ。
それに・・・チェギョンだから要望に応えたんだ。他の女にするわけがない。』
『しかしみんな危なっかしいぞ。大丈夫か?』
『イギサに監視しておくように言っておいたから大丈夫だろう。もし万が一のことがあったら、それは自己責任だ。』
『ったく・・・チェギョン以外には冷たいね。』
『あぁ。優しくする必要はないからな。優しい言葉を掛けようとは思わない。』
『少しはチェギョンと話ができたんだろう?』
『あぁ。昔逢ったことがある・・・とだけ言っておいた。なかなかチェギョンは手厳しそうだ。』
『だろうね。たかだか財閥の跡取りの俺でさえ、ガンヒョンを落すのには苦労したんだ。
お前の場合一国の皇子だろ?そりゃあチェギョンだって戸惑うさ。』
『そう・・・だな。』
何度も聴こえてくるサビのフレーズに耳を塞ぎたくなった頃、チェギョンとガンヒョンはホールに姿を現した
『おっ!ガンヒョンはなんていい女なんだ~♪もちろんチェギョンも似合っているけど・・・』
『当り前だ。チェギョンは元々可愛いんだ。』
『だからシン・・・可愛いって言葉は言うなって。』
『さっき散々言ってやった。』
『なかなかシンも攻撃的だね。あはははは~♪』
やがて皇太后がホールに入場し、其々は名札のついた席に着いた
そしてチェギョンはテーブルの向かいに皇太后とシンが座っていることに愕然とする
(な・・・なんでこんな場所に私が?あ・・・そうだ。わざと音を立ててスープを飲むとか、ナイフを落すとか・・・
そういう失態を想いきりすればいいんだ。あ・・・ダメだ~~~このドレスは皇太后様が選んでくださったもの。
汚したりなんかしたら・・・大変~~!)
チェギョンの隣にはガンヒョンが座り、シンの隣にはギョンが座っている
大失態を演じお妃選考委員会に不合格アピールをしようと目論んでいたチェギョンだったが、
皇太后の策略にまんまと嵌り、まるで棘を抜かれたハリネズミのようにおとなしく食事をしている
『チェギョン・・・とても美味しいわね。』
隣りからガンヒョンが問い掛けるが、チェギョンはそれどころではない
スープの一滴・・・ソースも決して零さぬようにと細心の注意を払っているのである
(ひぃ~~食べた気がしないよぉ~~!)
やはり皇太后はチェギョンの一枚も二枚も上手な人物だった
『チェギョンや・・・』
気が付くと≪シン・チェギョンさん≫ではなくチェギョンと親し気に名を呼ぶ皇太后
『はい。』
『食事の後、こっそり私の部屋に来ては貰えぬか?』
『えっ?あ・・・はい。』
その隣ではシンが優雅な仕草で食事をしている
その顔をじっと見つめている自分に気が付き、チェギョンは慌てて目を伏せた
(こいつが・・・可愛いなんて私に言ったから、私は自分の事を可愛いと思い込んでいたんだ。
でも・・・ガンヒョンも私を可愛いと言ってくれた。もしかして私は本当に可愛いのかな?
そういえば幼稚園の頃・・・入園当初私はいつもニコニコ笑っていた。
ひょっとして・・・こいつに笑ってろって言われて、私はずっと笑っていたのかな?
だとしたら・・・その時の私は、こいつの言うことを忠実に守るほど、こいつに・・・
あ~~~違う違う!たった三歳でそんな感情がある筈ない。でも・・・)
一瞬シンと視線がぶつかった
その瞬間からシンはチェギョンから目を逸らさない
(ひっ・・・なぜそんな目で私を見る~~~!)
動揺のあまりチェギョンは問い掛けた
『あ・・・あの、なにか?』
『いや・・・別に・・・』
気まずいついでに問い掛けてみる
『あの・・・三歳の時って、私一人で行ったんじゃないですよね?一体どうやって?』
『お前のおじい様がお前を連れてやってきたんだ。』
『へ~~っ・・・でもどうしてうちのおじいちゃんが?』
『亡き先帝とご学友だったそうだ。』
『ほぉ~~なるほど・・・』
皇太后はその話に加わろうと口を開いた
『宮殿に戻ってからも先帝はそれは嬉しそうでのぉ・・・チェギョンはとても可愛い子だった。
どうやら二人は・・・』
『皇太后様!』
シンがその続きの言葉を遮る
『おぉそうだったな。すまなかった太子・・・ほほほ・・・』
そんな様子をギョンとガンヒョンは、黙って見守っている
会話内容が他の候補者に聞こえないか冷や冷やしながら、辺りに気を配っている
候補者たちも何とかお近づきになろうと考えているのだが、生憎テーブルが離れているため
会話はほんの少ししか聞き取れなかった
食事が終わった時皇太后は皆に告げた
『皆さん・・・あとはゆっくり休んでくだされ。今日は本当い楽しい時間をありがとう。では私は失礼する。』
皇太后はチェギョンに目配せをし、シンを伴ってホールから出て行った
『チェギョン・・・行っておいでよ。皇太后様から呼ばれたんでしょう?』
『うん。でもまだ誰も席を立たないし・・・』
『じゃあアタシが一緒に行ってあげる。』
『じゃあ俺も♪』
三人が席を立った後、王族の娘の中には耳ざとい者がいたようだ
『ねえ・・・あの庶民、皇太后様に呼ばれていたわよ。』
『えっ?一体どんな用件なの?』
『皇太后様や皇太子殿下と食事の席を共にするなんて・・・なんだかおかしい。』
王族の娘の疑念は広がるばかりだった
雨降って地固まる~♪
午前中の雨が不思議なくらい
いいお天気になりました。
お日様が出ると嬉しくなる管理人です❤