皇太子妃候補者が全員退出した後、皇太后を前にシンは溜息を吐いた
『はぁ・・・皇太后様、申し訳ありません。チェギョンは私との約束を覚えていないようで、あのような暴言を・・・』
『ほほほ・・・太子や、よいのだ。覚えておらぬのなら戸惑うのも当然の事・・・』
『しかもチェギョンは≪可愛い≫という言葉に何かトラウマがありそうです。
ですから皇太后様にあのような物言いをしてしまいました。私が至りませんでした。お詫び申し上げます。』
『おや・・・私は可愛いなどといってはおらぬが・・・』
『可愛らしいと仰ったではありませんか。』
『おぉ~そうであったな。しかし・・・太子の妃になる気持ちは全くなさそうだなぁ・・・』
『それが問題なのです。そこでひとつお願いしたいことがあります。
先程辞退を許したイ・ガンヒョンですが、次回の三次選考の時、チェギョンの付き添いとして
参加させてもよろしいでしょうか?』
『それは構わぬが・・・』
『彼女の恋人が私の親友なのです。彼にも参加してもらいます。この際二人に協力を願おうかと考えています。』
『わかった。太子の思うようにしたらよい。今度こそチェギョンを捕まえるのだぞ。そして昔の約束を果たすのだ。』
『はい。必ず・・・』
幼い頃に交わした約束・・・それは口約束ではあったが、必ず守るとシンは心に決めていた
(いっそのこと文書にでもしておけばよかった・・・)
先帝とシン家の先代が立ち会っていたとはいえ、今はもうそのことを証言できるのは自分ただ一人
本日のチェギョンの様子を見る限り、道のりは遠いと思われた
その日帰宅したチェギョンは、両親に今日の事をあれこれ問い詰められていた
『チェギョン・・・それで今日はどうだったんだい?お前のようにカジュアルな格好で行った娘は
他にはいなかったんだろう?』
『そんなのいるはずないよ。いないとわかっててこの格好で行ったんだも~~ん♪』
『それでチェギョン・・・選考会はどうだったの?』
『う~~ん、選考会って言っても皇太后様と皇太子殿下がいただけだった。』
((やはり・・・))
『でも大丈夫。きっとここで不合格になるから~♪』
上機嫌なチェギョンの様子に、両親は頭を抱えた
『なぜそんなに自信満々なんだい?』
『だって~皇太后様に意見したのなんて私だけだったもん』
『なにっ?皇太后様に・・・意見・・・』
『うん。こんなくだらない事に国民の血税を使うなって・・・』
『あなたなんて事を・・・』
『でもさ~あのおばあちゃん、お金持ちなんだね。自分の財で賄ってるって言ってた。
だってさ・・・往復の切手代だって馬鹿にならないでしょ。すごいね~♪』
『チェギョン・・・お前って子は・・・』
『大丈夫。ちゃんとお詫びしておいたよ。あははは~~♪』
チェギョンがこれだけ失礼なことをしてきたのだ・・・両親はきっとこれで皇室はチェギョンのことを諦めるだろうと
高を括っていた
その翌週・・・シンは校内にある≪皇太子ルーム≫にチャン・ギョンとイ・ガンヒョンを呼び出した
ギョンはともかくとしてガンヒョンは初めて入るその部屋に興味津々で、物珍しそうに一通り部屋の中を見渡した
『今日二人に来て貰ったのは・・・』
シンが口火を切ろうとした時、ガンヒョンがそれを阻んだ
『その前にちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・』
『なんだ?』
『正直に話して貰える?今回のお妃選出・・・なんだかチェギョンだけ特別扱いな気がするんだけど?』
『あぁ?なぜだ?』
『だってチェギョンの家にはドレスが届いていたのよ。あの子・・・着なかったけど・・・。
それに皇室から届いた封筒もあの子のは特別って感じがしたわ。
まだあるわ。いくら民間人だからといって、わざわざ皇室が二次選考会に来る候補者に車を出す?
色々考えたらおかしなことばかりだわ。』
『くっ・・・なかなかいい勘をしているな。』
『アタシを誰だと思ってるの?美術科ナンバー1のイ・ガンヒョンよ。』
『実はそのことを話そうと思って二人に来て貰った。
イ・ガンヒョン・・・お妃候補から外れたのにすまないが、三次選考会に付き添いとして参加して貰えないか?』
『えっ?それは・・・どういう事?』
『君が来ないとシン・チェギョンも来たくないと駄々をこねるに決まってる。
三次選考会は一泊になる。だからギョンと一緒に付き添いで参加して欲しい。』
『つまり・・・チェギョンを三次選考に残すって事?』
『あぁ。一番最後に残るのは・・・あいつだ。』
『えっと・・・もしかしてそれは最初から決まってたとか?』
『あぁ。その通りだ。』
ガンヒョンは非常に困惑した表情で、さらにシンを問い詰めた
『ちょっと待って。つまり今回の禁婚令はチェギョンをおびき出す為?』
『あぁそうだ。』
『じゃあ・・・アタシ達はチェギョンをおびき寄せるエサって事?』
『あぁ。すまない。』
『あぁ・・・もう!!益々話がわからなくなったわ。一体なぜチェギョンが皇太子妃になるのよ!説明して。』
シンは真剣な眼差しでガンヒョンに告げた
『俺とシン・チェギョンは婚姻の約束をしている。』
『えぇ~~っ?そんな話チェギョンから聞いたこともないわよ。おかしいじゃないの。』
『あいつはどうやら覚えていないらしい。』
『一体いつの話よ!』
『三歳の時だ。』
『三歳・・・?』
ガンヒョンが呆気にとられた時、隣に座っていたギョンが噴き出した
『プーーーっ!なんだよそれ。シン・・・いくらなんでも三歳の記憶なんて、残ってないやつの方が多いぞ。』
『そうだろうか。俺ははっきり覚えている。』
ガンヒョンも呆れ顔で問い掛けた
『それで・・・チェギョンとは何度も逢ってるの?』
『いや・・・約束をした時に一度逢ったきりだ。』
『皇太子・・・それは覚えていなくても当然よ。三歳の頃の記憶なんて・・・アタシだって朧気だわ。』
『そうなのか。だが俺には釈然としないことがある。・・・俺と逢った時のチェギョンは、
あんなに毒を吐く子ではなかった。
ニコニコ笑っていて、人の話をちゃんと聞ける子だった。一体いつ・・・あんな風に変わってしまったんだ?』
『え~~っ?・・・』
ガンヒョンは必死に出逢った頃のチェギョンを思い出そうとしていた
そして遠い記憶に思いを馳せながら、チェギョンがハリネズミになってしまう理由を話し始めた
『私がチェギョンと初めて逢ったのは、幼稚園の入園式だったわ。
その頃のチェギョンは・・・・あ・・・そうね、人が良すぎるっていうか、いつもニコニコ笑ってて
自分が今遊んでいるおもちゃを誰かに奪われても、全然平気な子だったわ。
あ・・・そうそう!あれからかな。』
『あれから・・・とは?』
『幼稚園のボス的存在の男の子が、何でも言うことを聞くチェギョンを苛め始めたのよ。
≪お前なんかニコニコ笑ってたって、ちっとも可愛くない。
ブース!!ブスはおとなしく隅っこで遊んでろ!≫って・・・
それからかもしれないわ。チェギョンが心を開いている人の前でしか笑わなくなったのは・・・。
でも今思えばチェギョンはとても可愛かったから、そのボス・・・チェギョンの気を引きたかっただけなのかも
しれないけど・・・チェギョンは深く傷ついたんじゃないかと思う。
それから可愛い・・・って言われるとハリネズミスイッチが入っちゃうようになったの。』
『あぁ・・・そんなことが・・・』
昔自分がチェギョンに言った言葉が、頭の中で繰り返される
(そうか。だからチェギョンは可愛いという言葉に拒絶反応を示すようになってしまったのか。)
『ギョン…そしてガンヒョン頼みがある。もうすぐ三次選考会が中型客船で行われる。
その時、二人にも参加して欲しい。』
『えっ?皇室が用意する船舶でクルージングなんて、滅多に経験できないわね。アタシは構わないわ。
ギョンはどう?』
『俺だってもちろん行くに決まってる。ちゃんと食事も出るんだろう?』
『当然だ。じゃあ決まりだ。明日辺り・・・チェギョンの家に三次選考会の案内状が届く。
当日はすまないがギョンが二人を連れてきてくれ。』
『ああお安い御用さ。任せておいて~~♪』
シンとギョンとガンヒョンが結託していることなど知らないチェギョンは、その翌日帰宅しポストの中に
見慣れた封筒が入っていることに気が付く
『あぁ・・・来た。でももうガンヒョンと一緒に開けることもできないし・・・
仕方がない!一人で開けるか~~。どれどれ・・・不合格♪・・・えっ?』
皇室にカジュアルな格好で行き、また皇太后に口答えをしたチェギョンである
そんなチェギョンに、あろうことか三次選考会の案内が届きチェギョンはとんでもなく動揺する
『え~~~っ!いくら物珍しいからってあんまりだよ。なんで・・・私が合格なのよ~~~!』
チェギョンの絶叫は家を揺らすほどの大声だった
はぁ~結構降りましたね。
気圧の関係なのか、昨日と今日頭痛で~~
ニャファリンのお世話になったよ。
しかし御子が二人大学生になって思うのですが
なんだか・・・私の時間が削られている・・・
二人が中高生の頃が
一番楽だったかも~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!