『ちょっと・・・言い過ぎちゃったかなぁ・・・』
東宮に向かって歩きながら背中に刺さる視線が痛いチェギョンは、肩を竦めて呟いた
『くっ・・・熱烈な愛情表現だったな。感動的だったよ。』
『えっ?あ・・・だって…あんまり酷い言い様だから。私の姉妹達もシン皇子の兄弟達も・・・。
なんだか悔しかったんだ。』
興奮が冷めやらず顔を赤らめたチェギョンは、今度は違った意味で顔を紅潮させる
『まぁ…あのくらい言ってちょうどだろう。俺達に選択権が無いなんて。どう考えても可笑しい。』
『そうだよね?シン皇子もそう思うでしょう?』
『あぁ。あ・・・そうだ!明日からお前の分も食事用意するから、昼休み俺の部屋に来い。』
『えっ?』
『ただでさえ姉妹達とは一緒に居難いだろう?教室には・・・・ユルも来るかもしれないし。』
『あ・・・・そうだね。うん!そうする。』
やがて東宮玄関に到着した二人・・・チェギョンはその入り口で待機していた内官や女官に頭を下げた
『チェ尚宮・・・私の部屋にお茶を。』
『はい。かしこまりましたシン皇子様。』
シンとチェギョンが迎賓館を去って行った後、呆気に取られた兄弟姉妹達は大騒ぎになっていた
『何よチェギョン・・・抜け駆けなんて・・・』
ヒョリンがそう毒づくと、第二皇子のインは自分に向かい合わせヒョリンを窘めた
『ヒョリン・・・シンは元々女に興味の薄い男だ。そのシンがチェギョンを誘ったんだ。
それがどういう意味か解るか?』
『そんなこと・・・知らないわ!』
『お前がどう足掻こうが・・・チェギョン以外はお呼びじゃないってことだ。』
『えっ?そんなこと解らないでしょう!私が・・・』
『解るんだ。お前じゃあシンを操縦しきれない。』
『そんな・・・・』
『いいかよく聞け!俺はお前を選んだ。よそ見は許さない。お前も王族会に生まれた娘なら
もう足掻く事はやめて覚悟を決めろ!それが先帝とお前の両親達の願いだ。』
『・・・・』
あまりにも強い口調のインに反論する事も出来ず、ヒョリンは北宮殿に連れられて行った
そう・・・心を寄せたシンの想いがチェギョンに浚われてしまった以上、王族会の娘として取る道は一つ
他の皇子との縁を繋ぐ事だけ・・・
そしてそれは、ヒスンやスニョンも一緒だった
第四皇子のユルはヒスンに声を掛けた
『ヒスン・・・西宮殿を案内するよ。行こう。』
『はい・・・』
納得したわけではない。だがそのまま立ち止っている事は出来ない
決められた期限は迫って来ているのだ
『じゃあ・・・スニョン、中宮殿でお茶でもどうだい?』
『はい。お邪魔します。』
其々納得のいかない気持ちのまま、なんとかその状況を受け入れようとしている3カップルだった
『やってくれたね~チェギョン。』
『そうね。シン皇子にも驚いたわ。』
ギョンとガンヒョンは他のカップルがすっかり居なくなってから、南宮殿に向かいながら楽しそうに語り合う
『シン兄貴はともかくとして、チェギョンは大丈夫なの?皆姉妹達・・・あとから意地悪しない?』
『少しくらいはあるかもね。相手がチェギョンだから、あの子達も文句が言いやすいのよ。
アタシには絶対言えない言葉でも・・・チェギョンには言いやすい。
そう言う役周りの子なのよ。損よね・・・チェギョンって。』
『まぁひとまず、あの二人もなんとかなりそうだし、あとのカップルも自分なりに考えるだろう。
俺達も・・・♪早く行こう~~❤』
ガンヒョンに腕を絡ませ、ギョンはご機嫌な様子で南宮殿に入って行った
皆が其々の宮殿に入った頃、チェギョンはシンの自室に招かれていた
『どうぞ。』
『お邪魔します。』
勇んでやって来た東宮殿ではあったが、いつもお邪魔している皇子ルームとはわけが違う
チェギョンは少し緊張しおどおどとした態度で、その部屋の中を見渡した
『そんなにじろじろ見るな。』
『あ・・・ごめん。物珍しくって・・・。しかしなんて飾り気のない部屋・・・』
思ったことがつい口に出てしまうチェギョンに、シンは忌々しそうに答えた
『シンプルなのが一番だ。一体どんな部屋を想像していたんだ?』
『えっ>そりゃあもぉ~~真っ白いレースの天蓋ヘッドがどーーーんとあって、シルクのバスローブで~~。』
『っつ・・・お前漫画の読み過ぎだ!!そんな皇子がいたら気持ちが悪いだろう?
まぁシルクのパジャマって言うのは間違っていないが・・・バスローブは綿が一番だろう?』
『そうなの?』
『漫画の中の人物と俺を一緒にするな。』
『うん。あ…あれ~~なんだ?可愛い♪』
チェギョンはサイドボードの上にちょこんと置かれたデディベア目指して駆け寄ると、両手でそれを抱え込んだ
『わぁ~可愛い♪シン皇子の・・・趣味?』
『っつ・・・そんな筈ないだろう?先帝からのプレゼントだ。』
『先帝の趣味?』
『さぁ・・・趣味かどうかは知らないが、幼い頃俺にこれをくれた。ほら・・・青い洋服を着ているだろう?
俺のお印は青だからな。他の兄弟は皆色が違うらしい。』
『違うらしいって・・・見たことないの?』
『くっ・・・ある筈がない。皆其々に皇帝学の勉強で忙しいからな。各宮殿を廻って洋服の色を確かめる様な
暇人はいない。』
『そっか~~。先帝は公平にこのテディベアを託したんだ。』
『そうだな。確かに公平なのだろうと思う。でなければ・・・生まれついた順番で
皇位継承順位は決まった筈だからな。迷惑な話だ。』
シンが嫌がらないのをいい事に、チェギョンはテディベアを腕に抱えるとそのままソファーに腰掛け
シンのテディベアを膝に乗せた
『そう言われてみれば・・・うちにもこれと同じ子がいたよ。
洋服はピンクでお耳のところにリボンがついていたから、女の子なのかな。
?ひょっとして先帝からの贈り物?』
『あぁ・・・そうかもしれないな。』
『そっか。じゃあシン家の本当の娘がそれを持ってお嫁入りするのかも。』
『先帝も随分と乙女な事をなさる。くくっ・・・』
『くすくす・・・本当だね。でもさ・・・・よく考えてみたら、皇子達のテディは5体あるんでしょう?
もしかするとシン家以外の4人の実家にもテディがいるのかも・・・』
『まぁそう考えるのが順当だろうな。公平が好きな人だから。』
『くすくす・・・』
『俺のところにはどんなテディがお前と一緒に来るんだろうな。』
『うん、それを考えるとちょっと怖いけどね。』
生まれて物心つかないうちにシン家に集められた王族会子女たち。シンは姉妹たちの複雑な心境を想うと
なんともやりきれない思いが胸にこみ上げる
理由は解らないがそれは先帝の考えの下、行われた5家族を巻き込む嫁取り合戦なのである
今目の前に居るチェギョンを見つめ、シンはその出逢いを無駄にしない様に
そしてチェギョンに後悔の念を抱かせない様に、振舞って行こうと強く誓う
その日家に帰った時、母スンレは妙に娘達の表情が険しい事に気がついた
『どうしたの?ガンヒョン・・・宮殿で何かあったの?
まぁいいわ。もうお夕食だから先に食べてしまいなさい。』
スンレがそう言うとヒョリンは声を荒げた
『お母さん、チェギョンなんかと一緒に食事したくない!』
『私も…お母さん後にするわ。』
『ご飯なんか食べたくない・・・』
『えっ?一体どうしたって言うの?チェギョン!!一体何があったの?』
スンレの周りに集うヒョリン・ヒスン・スニョン・・・その横を通りながら、チェギョンは答えた
『お母さん・・・私あとで一人で食べるからいい。部屋に行ってるね。』
そのまま階段を上がっていたチェギョン・・・姉妹たちは当然の様にリビングに集まり、本日のチェギョンの行動を
母スンレに告げ口の様に話して聞かせた
ガンヒョンだけはそんな話は聞いていたくないと、『お母さんアタシもあとで、チェギョンと一緒に食べるわ。』
そう言うと自室に戻って行った
自分の意志を通そうとするなら、姉妹たちの中傷にも耐えなければ・・・チェギョンは机の上に漫画原稿用紙を
取り出すとシャーペンで下描きを始めた
今度の新作は皇室物である
資料は肉眼でたっぷり観察して来たのである
部屋の中に原稿用紙の上を走るペンの音だけが響いていた
そして一つのカットを描き終え、ふと気がついた
『あれっ・・・これってシン皇子じゃん!!』
『本当だわ。シン皇子だわ~~。ふふふ・・・』
自分の背後から聞こえてきた声はガンヒョンだった。。。あまりの驚きに、チェギョンはその描いた絵の部分を
両手で隠した
『チェギョン・・・隠したって無駄よ。もう見ちゃったわ。』
『見られちゃった?』
『ええ。はっきりとね・・・。そんなにチェギョンがシン皇子を気になっているとは、思ってもみなかったけど。』
『言わないで~~!!みんなには言わないでよガンヒョン。自分でも戸惑っているんだから~~~!!』
いつも通りに自分の中にある一番素敵な彼を、描いているつもりだった
だが気が付くとその彼は・・・シンに変わっていた
一番素敵な彼の顔・・・明らかにそれはシンの顔だったのである
自分でも気がつかないうちに思いの外シンに嵌っている自分に、チェギョンは動揺を募らせていた
昨晩ね・・・ゴォ~~~~って風がものすごくって
よく眠れなかったよ。
今日も風が強いけど、安眠妨害にならないと良いなぁ。
雪の降っている地域の皆様・・・
激しい吹雪。。どうぞ気を付けてくださいね★
よく眠れなかったよ。
今日も風が強いけど、安眠妨害にならないと良いなぁ。
雪の降っている地域の皆様・・・
激しい吹雪。。どうぞ気を付けてくださいね★