『オーナーお疲れ様でした。』
『元気な子を産んでくださいね~♪』
『たまには顔・・・見せてください。クスン・・・』
お腹に宿った第三子が臨月に入ったチェギョンは、お休み前の挨拶を済ませ店から出ていこうとしていた
『やだわ。辞めるわけじゃないの。ちゃんと給料日には顔を出しますからね。くすっ♪
みんなチェさんの言うことをよく聞いて、私がいなくてもお仕事頑張って!』
『『『はいっ!』』』
『チェさん・・・ではどうぞよろしくお願いします。』
『はい。オーナーも出産頑張ってくださいね。』
『ええ。』
皆に見送られ店から出て駐車場に向かっている時、イ・ユルが姿を現した
『チェギョ~~ン!!』
『あ・・・ユル君♪』
『今日が最後の出勤だと聞いて、顔を見に来たんだ。送って行こうか?』
『車で来たから大丈夫よ。それにこれから産婦人科に立ち寄るの。』
『ははは・・・そうか。それじゃあ送っていけないな。』
『ユル君・・・結婚式に出席できなくてごめんね。』
『そんなこと気にしなくていいよ。妊婦さんは体調第一だからね。』
『でも…よくユル君のお母様はお許しになったわね。』
『あ~僕の奥さんの事?ははは・・・母も孫には弱いってことだよ。』
イ・ユルはつい最近、離婚歴のある女性と子連れ&出来ちゃった婚をした
ソ・ファヨンにしてみれば理想の嫁には程遠い女性だったが、ユルが相当惚れこんでいた為
ソ・ファヨンが折れる事となった
芽生えた命は何よりも尊い・・・その事にソ・ファヨンは気が付いたのだ
『でもチェギョン・・・そんなに大きなお腹で運転なんかして大丈夫?』
『大丈夫よ。これはピョルの時からしていたことだもの。』
『ご主人は来てくれないの?』
『これから仕事を抜けなきゃならない機会が増えるのよ。今はしっかりお仕事して貰わないとね。くすっ♪』
『そうか~。ピョルやハヌルは元気にしてる?』
『ええ。とっても元気よ。ピョルは中学に入ってからとても忙しそうよ。』
『ピョルは美人だからご主人がさぞ心配するだろうな。』
『そうね。ちょっと出掛けて帰りが遅いと口煩いわ。』
『男親なんて・・・そんなものさ。』
目を細めて笑うユルを見て、チェギョンは不思議に思った
(あら?もしかしてユル君・・・ピョルの父親はシン君だって気付いていた?)
いつどこでそれに気が付いたのか聞いてみたい気もしたが、そんなことはもうどうでもいいことだ
『ユル君も素敵なパパになってね♪』
『うん。チェギョンも三人目頑張って産んでよ。』
『ありがとう。じゃあユル君・・・またいつかお逢いしましょう。』
『うん。偶然にでも店で逢えるのを楽しみにしているよ。』
手を振るユルに見送られ車を発進させたチェギョンは、行きつけの総合病院に向かう
今日は妊娠10カ月の検診日だ
大きなお腹を抱えながら産婦人科の受付を済ませると、待合室に座っていた女性が
いきなりチェギョンを見て立ち上がった
『あっ!』
『ヒョリン・・・いきなり立ち上がったらダメだろう?』
『あなた・・・ちょっと待っていて。』
いそいそとチェギョンに近づいてきたのはミン・ヒョリンだった
ヒョリンはふっくらとしたお腹で頬を桜色に染めてチェギョンに会釈をする
『こんにちは。』
『お久しぶりです。妊娠なさったんですね?』
『そうなの。無事安定期に入ったわ。』
『今日・・・娘さんは?』
『お姑さんが面倒を見てくれているわ。』
その言葉でヒョリンが自ら心を開き、夫の両親に歩み寄ったことが分かるようだった
『あなたのおかげで・・・ずっと抱えていたプレッシャーからも解放された。』
『それは私のおかげなんかじゃないですよ。あなたの努力です。』
『ううんあなたのおかげよ。一言お礼が言いたいの。本当にありがとう。』
いきなり両手を握られたチェギョンは、非常に戸惑ったがその手を握り返した
『ご主人が心配されていますよ。』
『あ・・・そうね。お互いに出産頑張りましょう。』
『ええ。頑張りましょう。』
ヒョリンと向かいの席にチェギョンが腰掛けた時、ヒョリンの夫はヒョリンに問い掛けた
『ヒョリン・・・お知り合い?』
『えっ?うん。お友達よ。』
『そうか。お友達か。』
夫に対する紹介の仕方に非常に戸惑ったチェギョンだったが、心の中で笑みを浮かべた
(そうね。まさか前夫の今の妻だなんて言えないわね。でもお友達って・・・くすっ♪)
今夜シンが帰宅したらこのことを話して聞かせよう・・・二人の仲睦まじい姿を目の当たりにして
チェギョンはそんなことを考えていた
妊娠10カ月の検診も無事終わり、チェギョンは買い物を済ませると家路へと急いだ
『お義母様~ただいま戻りました~♪』
玄関から聞こえるチェギョンの声に、いそいそと出迎えるミンとハヌル
『チェギョンさんお帰りなさ~い。お仕事お疲れ様でした。』
『ママ~かえり~♪』
勢い余ってチェギョンに体当たりしそうなハヌルを、ミンは抱き上げた
『コラコラ~ハヌル。ママは赤ちゃんがいるんだからダメでしょ~?』
『あ~~ん、ダメでし~~♪』
言うことが理解できたハヌルを下ろし、ミンとチェギョンはハヌルを真ん中にしてキッチンに向かう
『疲れたでしょう?お茶でも飲みましょう。』
『でもお義母様・・・もう夕食の準備をするのでは?』
『うふふ~~もう下準備は済んじゃったわ。』
『はぁ~さすがお義母様、やることがお早いわ。』
『そうよ~行動が早いのは私の取りよ~。おほほほほ~♪』
夕方のひと時を楽しむ三人・・・ハヌルもミンお手製のおやつを貰いご機嫌だ
のんびりお茶を飲む時間もあまりなかったチェギョンには、至福の時間に思えた
『さぁ~そろそろ夕食の準備をしましょう。チェギョンさんはハヌルと遊んであげて。』
『えっ?お義母様・・・私も支度を手伝います。』
『いいのよ。ご覧なさい。ハヌルはあなたに遊んでほしいって言っているでしょう?』
ハヌルは立ち上がったチェギョンのスカートを掴み、じっと見上げている
『くすっ・・・わかりました。すみません。』
ミンがキッチンに向かった後、チェギョンはカーペットの上に座り、ハヌルと積み木遊びをする
『ママ~かたい?』
高く積み上げた積み木を誇らしげに自慢するハヌル
『くすっ♪ええ。ハヌル…とっても高いわね。』
『かたいでし~♪』
『ええ。高いわ。』
木の温もりを掌に感じながら、積み木を積み上げるハヌル
こんな情緒的な遊びはピョルに何一つしてあげられなかった事を少し悔やむ
だがだからこそピョルは、忙しい母を理解しその場の状況を察するとても優しい娘に育ってくれた
『幸せだわ・・・』
『しゃーせ?』
『ええ。とっても幸せ♪』
『ぼくもしゃーせ♪』
辺りがすっかり暗くなり、ミンやメイドが食事を並べ始めた気配を知り・・・チェギョンもそれを手伝う
ハヌルも一緒になって箸やスプーンなどを運ぶお手伝いをする
(こんなに小さいのに偉いわ。これもすべてお義母様の教育の賜物ね。)
それから程なくしてピョルが学校から帰宅した
『グランマ~ハヌル~~あっ!ママ~~ただいま~~♪』
その元気な声が玄関からするなり、ハヌルはキッチンから飛び出していく
『ピョ~~~♪』
その後ミンとチェギョンも駆けつける
『ピョルお帰りなさい。』
『お帰りピョル♪』
『ただいま~~♪』
満面の笑みで靴を脱いだピョルは、ハヌルの頭を撫でそれから抱っこする
『あ~~ハヌル…もう重くなったから抱っこが大変だぁ~♪』
『ピョ~かえり~♪』
『ハヌル~ただいま~~♪』
『さぁピョル、制服を着替えていらっしゃい~♪』
『は~~いグランマ♪』
ピョルはハヌルを連れ自分の部屋に入って行くと、制服から私服に着替えた
『ハヌル~ママがいるといつもの百倍嬉しいね~♪』
『しいね~~♪』
チェギョンがいるというだけで、ピョルもハヌルもいつも以上に幸せな気分になれる
そして・・・家族が揃った時、家族全員での夕食が始まった
チェギョンはベビーチェアに座ったハヌルの食事の介添えをしながら、義母の愛情籠った料理を堪能した
これからは毎日こんな時間が続くのだと思うと、シンもなんだかとても嬉しい気分だった
食事が終わった後、シンはハヌルを抱き上げた
『さぁ~ハヌル。パパとお風呂で遊ぼうか~♪』
『あそぶ~♪』
今日からイ家の穏やかで幸せな日々はしばらく続く
あとひと月もすると、さらに賑やかなイ家になることだろう
今日は長男が保育園時代のママ友と
ランチしてきました~❤
実に一年ぶり。
とても楽しかったです。
年末に忘年会をしようという話で
盛り上がりました~~♪
では次回・・・最終話です。
最後までお付き合いくださいね~❤