穏やかな毎日が過ぎていった・・・
その日チェギョンは寝ている時から、なにか予感のようなものを感じていた
朝・・・ハヌルを着替えさせキッチンに入って行くと、いきなりミンはそのことを察したようだ
『お義母様、おはようございます。』
『チェギョンさんおはよう~♪ハヌル~~おはよ~♪』
『グーマーおはよ♪』
『んっ・・・あらっ?チェギョンさん・・・その額の脂汗は・・・もしかしてきちゃった?』
『あぁ…お義母様、どうやらそのようです。っつ・・・』
『大変だわ~~!!』
ミンは家族全員をダイニングテーブルに座らせ、食事を勧めた
『さぁ~~みんな、朝食はしっかり食べるのよ。』
『どうしたんだい?なんだかいつにも増して張り切っているようだが・・・』
『あなたは・・・会社に行ってくださいな。今日は大事な会議があると言っていたでしょう?』
『あ?ああもちろんそうするが・・・』
『シン!あなたは今日お休みして頂戴ね。』
『えっ?ですが会議が・・・』
『あなたは妻のお産と会議…どっちが大事なの?』
『えっ?』
慌ててチェギョンを見つめるシン
チェギョンは額に汗を浮かべ荒い呼吸をしていた
いや・・・いきむのを逃しているといった方が正解だ
『チェギョン・・・どうして言わないんだ。』
『あ・・・朝になって病院に行けば大丈夫だと思って・・・』
そんなシンをミンは責めるような口調で言う
『いいから早く食事して!全く・・・隣に寝ているのに、妻の陣痛にも気付かないなんて
なんて鈍感なのかしら・・・』
返す言葉もなくシンはひたすら項垂れた
『チェギョンさんもしっかり食べなさい。』
『あ・・・でもお義母様、あまり食欲が・・・』
『な~く~て~も~食べなさい!お産は体力勝負なのよ。』
『は・・・はいぃ・・・』
ピョルは興奮状態でミンに話しかけた
『ぐ・・・グランマ、私も一緒に病院に着いてっていいですかぁ?』
『ダ~~メ~~!一応学校に行きなさい。あとでグランマが迎えに行ってあげるから・・・』
『え~~っ?・・・・はぁ~~い・・・』
ミンに急かされるように朝食を食べる家族
ハヌルの世話を焼きながら、ミンも猛然と食事を食べ始めた
追い立てられるように出掛けて行ったヒョン・ピョル・・・そしてシンとチェギョン
ミンはハヌルのお出かけの準備を整えながらハヌルに話しかけた
『さて~準備ができたからピョルを迎えに行こうね~♪』
『ピョ~のおむかえ~~♪』
『ピョルを迎えに行ったら、病院に行くわよ。』
『あ~ぼく・・・びょーいんきあい~~~!』
『ハヌルが診て貰うんじゃないのよ。ママに赤ちゃんが生まれるの。
赤ちゃん・・・早く見たいでしょ~?』
『あか・・・ちゃん?ん♪はあくみたい~♪じゃ・・・こえもってく。』
ハヌルはお気に入りのテディベアを胸に抱えると、ミンと共に車に乗り込んだ
『別に一日くらいお休みしても平気なのにぃ~~!』
母チェギョンに着いていきたかったのに、一度学校に行くよう命じられたピョルは唇を尖らせ
二時間目の授業を受けていた
その時・・・窓の外から自分を呼ぶ声が聞こえたような気がして、ピョルは
窓の外に視線を向けた
『あ・・・グランマ♪』
ミンはハヌルと手を繋ぎピョルの教室目がけて大きく手を振っている
それを真似てハヌルも手を振っていた
『ピョル~~♪』『ピョ~♪』
ピョルも窓の外に向かって手を振った
それを見ていた隣の席に座る男子生徒は、笑いを堪えきれない顔で問い掛けた
『イ・ピョル・・・あのおばさん、お前の知り合い?』
『うん。私のグランマだよ。』
『グランマ?』
『おばあちゃんって意味だよ。あ~私・・・先生に言って早退しないと・・・』
そういいながら立ち上がろうとした時、いきなり校内放送が流れた
『あれ?校長先生の声だ。珍しいね・・・』
『本当に・・・』
≪一年A組のイ・ピョルさん・・・ご家族の方が迎えに来ていますので、
おうちにお戻りください。≫
『えっ!グランマったらまさか校長先生に電話かけたの?ひえ~~・・・』
『お前んちのばあちゃんって・・・最強だな。』
『うん。うちのグランマは最強なんだ。あはは~じゃあね~!』
ピョルはカバンを持って立ち上がると担任教師に頭を下げた
『先生!!すみません、祖母が迎えに来ているので帰ります。』
『気を付けてお帰りなさい。』
授業中の為静かに教室を出て、静かに廊下を歩いていく
そして校舎から出ていくなり、猛ダッシュでミンとハヌルの元に駆け寄った
『グランマ~もう・・・生まれちゃった?』
『まだよ~♪さぁ急ぎましょう~♪』
ミンの運転する車の後部座席にピョルとハヌルは乗り込み、そのまま病院に向かっていった
病院に到着したミン一行・・・ところが分娩室の前には誰もいない
『あれ?パパは?』
『立ち会っているのかもしれないわ。』
『そうか~。ママ・・・大丈夫かな。』
『ママ~~~!!』
その時・・・分娩室の中からシンが姿を現した
『パパ~!!ママは?赤ちゃんは?』
『もう生まれたよ。』
『えっ?本当に?もう生まれちゃったの?』
『あぁ。ママは我慢強い性格だから…随分陣痛を我慢していたらしい。』
『もぉ~~チェギョンさんったら~~!』
『それで・・・どっち?』
そんなピョルからの問いかけに、シンは非常に困った表情で目を泳がせた
『そ・・・それが・・・男の子だった。』
『えぇ~~~~!』
唇を尖らせてシンを見上げたピョル・・・シンは非常にバツが悪そうだ
ミンはそんな二人の間に割って入った
『ピョル・・・こればっかりは希望通りにいかないのよ。もう一人弟だっていいじゃない。』
『ん~~はぁ~いグランマ・・・』
再び分娩室の扉が開き、看護師が生まれたばかりの第三子を抱いてやってきた
『ピョル・・・ほら、赤ちゃんよ。』
『あ・・・わぁ~~~♪ママにそっくり~可愛い~❤本当に男の子?』
看護師から赤ん坊を受け取ったシンはまずピョルに赤ん坊を抱かせた
『あ~~温かくてハヌルの時より重いかも~グランマもどうぞ。』
『ありがとうピョル~♪うんまぁ~なんて可愛い男の子なんでしょう。将来が心配ね。』
足元でハヌルは一生懸命覗き込もうとしていた
そんなハヌルをシンは抱いて、赤ん坊を見せてあげた
『あかちゃんだ・・・』
『そうだよ~ハヌルもお兄ちゃんだね~♪』
『に~ちゃん♪えへへ~♪』
そして朝一番の会議を終えて駆け付けたヒョンは、誕生の瞬間に間に合わなかったことを
悔やみながらも目尻を下げた
こうしてイ家には結婚三年目にして、三人目のかけがえのない宝物が増えた
出産後退院してきたチェギョンは、今度は第三子ウォルの部屋で子育てすることとなった
日曜日にはリビングに移動式ベビーベッドを持ち込み、ピョルは飽きることなく
ウォルの顔を眺めている
その傍らで微笑んでいるチェギョンにピョルは問い掛けた
『ママ~幸せ?』
『ええとっても幸せよ。でも・・・この幸せは全部ピョルのおかげなの。』
『えっ?ピョルの?・・・どうして?』
『ピョルがいてくれたから、パパはピョル逢いたさに店に入ってきたのよ。
もし・・・そこにいたのがママだったら、きっとパパは顔を見て満足して
店に立ち寄ることもなく去っていったでしょう。
ピョルがパパとママの切れた縁を結びなおしてくれたのよ。』
『え~~っ?そうなの?でも・・・元はといえばママがシングルマザーになる覚悟で
私を産んでくれたからだよ。だから今の幸せはママのおかげ❤』
『くすっ・・・そうなのかしら・・・』
笑い合う母娘のいるリビングに、シンやハヌル・・・そしてヒョンやミンも集う
陽の当たる場所を求めて人は彷徨う
だがやはり努力なくして温かい家族は作れない
人生にもしもは存在しない
今ある場所こそが一番の場所なのだ
その場所を・・陽の当たる場所にできるか否かは、やはりその心掛け次第なのだろう
陽の当たる場所 完
なんとも切ない短編から始まったお話でしたが
最後はとってもほっこり系になりました~❤
えっと・・・子供たちの未来の布石・・・
ひとつネタを仕込んでおきましたが
お気づきでしょうか(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
今回も最後までお付き合いいただき
誠にありがとうございました。
まだ新しいお話の設定に迷いがある為
ひょっとしたら来週は
このお話の番外編を
書かせていただくことになるかもしれません。
いつもありがとうございます
感謝申し上げます❤
今後共お付き合いいただければ嬉しいです。
~星の欠片~管理人 ★ emi ★