『さて・・・行きましょうか。ピョル・・・』
『はぁ~い!』
日曜のかき入れ時・・・店をスタッフに任せチェギョンとピョルは車に乗り込んだ
『ママ~今日はお店の車じゃないんだね。』
『ええ。店の車はスタッフが使うからよ。』
『でもなんか~お仕事に行くみたいな格好だよ。』
『まあね・・・商談に行くようなものだから・・・』
シンはイ家で合流することになっている
チェギョンはイ家に向かって車を走らせた
途中ピョルは、自分の誕生日などの特別な時に購入する有名ケーキ店の前でチェギョンに声を掛けた
『ママ~お土産のケーキは?』
『お土産ならお菓子が買ってあるわ。』
『え~~っ・・・でもさぁ、≪デザートは別腹のおばちゃん≫はママの選んだお菓子よりあの店のケーキの方が
好きだと思うんだけどなぁ・・・』
『そうかしら・・・』
『絶対にそうだよ。ねっ♪買っていこうよ~♪』
『解ったわ。』
店舗の前で車を停め、チェギョンとピョルは店に入って行った
『ん~~っとぉ・・・これとあれと・・・それと・・・あ~そっちも!ほら・・・おじちゃんはあまり甘い物が
好きじゃないみたいだから~♪』
『そうなの?』
『うん。前にシンさんが買ってくれたケーキを持って遊びに行った時、一番甘くなさそうなのを
選んでいたもん。』
(えっ?一体いつシン君と二人でイ家に行ったの?)
自分が知らないうちにピョルがイ家に出入りしていることを聞き、チェギョンは問い詰めるべきか悩んだが
今はイ・シンの父にどう自分を認めさせるかで頭が一杯だった為、そのことには触れずにいた
ピョルの言いなりになってケーキを買い込んだチェギョンは、そのケーキの箱をピョルに持たせ再び車を走らせた
『ようこそ~いらっしゃ~い♪』
満面の笑みで迎えてくれたミン・・・シンもその背後に立ち二人を出迎えた
『お邪魔いたします。』
『おばちゃんこんにちは~~♪これ・・・お土産ですぅ♪』
『あ・・・シン君のお母様、これもどうぞ・・・』
チェギョンとピョルは二人同時にケーキと伝統菓子の箱を手渡した
『まぁ~たくさんいただいちゃって・・・ご馳走様♪さぁ~ピョルちゃんはおばちゃんと遊んでいましょうね。
チェギョンさんはシンと書斎にどうぞ。』
『はい。失礼いたします。』
シンに誘われチェギョンが書斎に入ったのを見届けて、ミンとピョルは目を輝かせ手を握り合った
『ピョルちゃん・・・あなたのお母さん、とうとう告白するかしらね~♪』
『ん~~わかりません。』
『どんな話になるのか気になるわね・・・』
『はいぃ~~とても気になりますぅ・・・』
『じゃあ・・・こっそり・・・』
『はいぃ~こっそり・・・あはははは~♪』
二人は示し合わせて書斎の扉に耳を押し当てた
こういう場面では・・・まさに一卵性祖母孫の性格が発揮されるようだ
『こんにちは。今日はお時間を作って頂きありがとうございます。』
『二人共掛けなさい。それで・・・私に話とは?』
『イ・シンさんから伺いましたが、なにか私を誤解なさっているそうで、その誤解を解きに参りました。』
『誤解?』
『はい。私は決してイ家の財産欲しさにシンさんに近づいたのではありません。
10年前は確かに親しくお付き合いさせていただいていましたが、10年間お逢いすることもありませんでした。
シンさんが離婚されてから私の店を訪ねていらしたのが、お付き合いを復活させるきっかけでした。
こう見えても私は小さいながらもインテリア雑貨の店を営んでいます。
生活に困窮することもなければ、小銭に困ることもありません。ましてイ家の財産になど興味はありません。』
『それは・・・君が生んだあの娘の父親からの援助があるからじゃないのかい?』
それを聞いた扉の外では、ミンとピョルが驚愕の表情で小さく叫んだ
『ひえぇ~~っ・・・』
『あの人ったら・・・なんてことを・・・』
『グランマ・・・ママはそろそろ告白するかもしれません。ここまでグランパに言われたら・・・』
『そうよね。きっと告白するに違いないわ。』
ところが扉の中のチェギョンは、二人が予想だにしない言葉を発した
『いいえ。ピョルの父親からは一切援助を受けておりません。それどころか子供が生まれたことさえ知りません。
シンさんは・・・言葉にはしませんが、10年間辛い結婚生活を送っていたと察しています。
家族の愛情に飢えているとお見受けしました。
私とピョルは他のどんな人よりも、シンさんを幸せにできると自負しています。
いえ・・・私とピョルでなければ、シンさんを幸せにできないと確信しています。』
『君のその自信は一体どこから来るんだね?だが・・・疑問があるのだ。そこまでシンを想っているなら
なぜ他の男の子など生んだ?それは到底理解できないが?』
扉の外ではまたミンとピョルが目を吊り上げた
『ひぃ~・・・』
『もう我慢の限界だわ。アレ・・・出してもいいかしら?』
『だっ・・・ダメですグランマ・・・だってママは私の事を言わずに、一生懸命認めて貰えるよう頑張っています。
今は・・・ママの気持ちを尊重してあげてくださいぃ~~!』
『ん~~~でもぉ・・・グランマはもう我慢できないのよぉ~~!』
『そこをぐっと我慢してくださぁい!グランマ!!』
ミンの手を握り締めるピョル・・・可愛いまぐ娘に哀願されてはミンも引き下がるしかなかった
『解ったわ。ピョルちゃん・・・仕方がないわね・・・』
書斎の中では堪り兼ねたシンが、ヒョンに抗議の声を上げた
『父さん!いくらなんでも失礼ですっ!』
だがチェギョンは淡々とした表情でシンを諭した
『いいのよシン君。
ピョルを産んだ理由は私が生きていくためです。結婚してしまったシンさんを想い待ち続けることなど、
私にはできませんでした。そんな私にピョルは生きることの意味を・・・幸せをくれたんです。
今のシンさんもあの頃の私と一緒です。私達が家族になれば、彼は今まで以上に仕事に打ち込めますし
安らげる場所もできます。
シンさんが幸せになれる選択肢は、ひとつしかありません。
もう・・・政略結婚など考えずに、大人の彼を自由にしてください。
私達親子を・・・どうか認めてください。』
『子持ちの女性じゃなくても・・・いくらでもいいところのお嬢さんとシンは結婚できるのだ!』
『ですが・・・私から言わせればシンさんはバツイチです。いいところのお嬢さんも躊躇するのでは?
それに同じことを繰り返して・・・今以上にシンさんを不幸になさるおつもりですか?
それだったらいっそのこと私にください。彼を食べさせていけるだけの経済力はあります。
そうしたら・・・財産狙いだなんて思われずに済みますでしょう?』
『ください?くださいと言ったかね?シンは我が家の一人息子だと知りながら・・・』
『はい。言いました。今私が引き下がったら、彼は不幸になるだけですから・・・』
『は・・・ははは・・・シンは我が家の跡取りだ。婿にやるなんてことは絶対にない・・・』
『だったら認めてください。必ず幸せにしますから・・・』
『はっ・・・はははは・・・ははははは・・・幸せにします?
負けた。負けたよ。
この私が女性に負けを認めるなど、妻以外には初めてのことだ。
いいだろう。君は絶対にシンを幸せにできるのだな?』
『はい。もちろんです。』
『認めよう。だが・・・前妻の事もある。結婚は年が明けてから・・・それでよいだろうか?』
『ええ構いません。』
『君の店は結婚しても続けるつもりなのか?』
『ええもちろんです。店はピョルに残したいので・・・だからご安心ください。』
『だったら次は・・・イ家の跡取りを頼めるか?』
『はい。次は必ず・・・』
扉の外のミンとピョルは、互いの両手を打ち合って喜び合った
『ヤッターー♪グランパが認めてくれました~♪』
『良かったわねピョルちゃん♪本当に良かったわ。』
それから急いでキッチンに向かった二人・・・二人の密談は続いている
『でもぉ・・・ママはなぜ、あの場で私の事を言いださなかったんでしょう・・・』
『ん~~多分ね、グランパに恥をかかせたくなかったんじゃないかしら。
あそこまで頑固に反対していたんですもの。もしあの場で真実を告げられたら・・・
グランパは自分の言葉にかなり落胆してしまうわ。きっとあなたのお母さんはそれを心配したのよ。
でも困ったわね・・・これで益々、告白の機会を失ってしまった。』
『『う~~ん』』
自分達親子が認められたのは嬉しい・・・だが真実を告げる機会はまた遠のいてしまった
できればチェギョンの口から告白してほしかった真実だが、どうやらこの分では一生黙っていそうな雰囲気である
ミンとピョルはその真実の暴露の日をひそかに決め、その日に向かってカウントダウンを始めた
『母さん・・・お茶を頼む。』
まだぎこちない三人が書斎から出てきた時、ミンとピョルはいそいそと紅茶とケーキを運んでいった
『おじちゃん、どうぞ。』
満面の笑みでティーカップをヒョンの前に置いたピョル
そのピョルにヒョンは問い掛けた
『あ・・・ああ、ありがとう。あの時は・・・すまなかったね。』
『えっ?もうなんともありません~♪おじちゃん・・・おじちゃんはあまり甘いものが好きじゃないって言っていたから
コーヒーゼリーをどうぞ♪シンさんもコーヒーゼリーがいいですか?』
『いや…ピョル、私は何でも構わない。ピョルが好きなのを食べなさい。』
『もう自分の分は確保しました~♪えへへ~♪』
なんとなくぎこちないが、チェギョンとピョルを認めると宣言したヒョンは必死に歩み寄ろうとしていた
皆が紅茶を飲みケーキを食べていた時、ピョルはまた何かを思いついたようだ
『あ~そうだ!おばちゃん・・・来月運動会があるんですぅ。ママがた~くさんご馳走作ります。
ピョルも活躍するところ・・・見てほしいしぃ・・・よかったら来てくれませんかぁ?』
『まぁ~ピョルちゃんの運動会?それは是非行かなくちゃね。とても楽しみだわ~おほほほほ~♪』
テンション高く盛り上がっているミンとピョル・・・その時、ミンの隣に座ったヒョンがボソッと呟いた
『私は・・・行かない方がよいのか?』
『えっ?』
その呟きに一番驚いたのはピョルだった
『お・・・おじちゃんも来てくれるんですか?ホント?じゃ・・・じゃあ~ピョルは50メートル走で一等賞を獲ります。
だから・・・おじちゃんも見に来てほしいなぁ~~~♪』
恐る恐るではあったがヒョンからの催促のような言葉を聞き、ピョルは思い切って運動会に誘ってみる
『そ・・・そうか。だったら予定を空けておこう。』
『わ・・・わぁ~~い!!』
思わずピョルがその場で万歳する姿を見て、ヒョンはなんだか今まで自分が距離を置いていたことを
申し訳なく思えてくる
ピョルにしてみたら本当の祖父母が初めて運動会に来てくれるのだ
なにより今年は本当の父親も参加だ・・・こんなに幸せなことはない
(よ~~し!絶対に頑張って一等賞獲らなくちゃ・・・みんなにカッコいいところを見せるんだ!)
今年の運動会は今までになく賑やかになる
ピョルの心は喜びで天にも昇りそうな気分だった
その夜・・・シンはピョルが寝付いた頃店の前にやってきた
そして車の中からチェギョンに電話を掛けた
『チェギョンか?』
『ええ。外にいるの?』
『あぁ。ピョルはもう寝たのか?』
『うん。なんだか興奮しすぎたみたいで、ぐっすり寝ているわ。』
『あぁ。出てこないか?』
『ええ。今行くわ。』
家から出て行ったチェギョンはシンの車を見つけ走り寄った
そして助手席側の扉を開け、助手席に乗り込んだ
『今日はお疲れ様。』
『なんだか感情的になっちゃって・・・くすくす・・・でも認めていただけて良かったわ。』
『父が・・・感心していたよ。今まで逢ったどんな女性社長より説得力のある交渉だったって・・・』
『ちょっと言い過ぎかなってところもあったけどね。くすくす・・・』
『改めて言わなきゃな。俺と・・・結婚して貰えますか?』
『ええ。喜んで・・・』
10年前言えなかった言葉・・・一世一代のプロポーズを、シンは漸くチェギョンにすることができた
手を握り合い抱き合った二人の唇は自然と重なった
10年前とは違う情熱で、二人はこの先の未来を誓い合った
お天気がすっきりしなくて…本当に嫌ですね。
お洗濯物は結局浴室乾燥に掛けたよ・・・
昨晩・・・シャンプーのボトルに
間違えてボディーシャンプーを詰め替えちゃって
髪の毛がキシキシ・・・
こんな失敗するのって私だけですか?
ひぃ~~ん・・・
さて・・・草取りしてくるか。(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!