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Channel: ~星の欠片~
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恋形見 ≪中編≫

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ヒョリンとの離婚が成立した夜・・・俺は実家を訪ねた

恐らく俺達の関係に薄々気付いていただろうが、それでもこの結果を報告しなければならない

何よりも頭の痛い問題を相談する必要があった

俺は両親を前にし悪びれることなく告げた

『父さん母さん・・・報告したいことがあります。』
『まぁ~なにかしら?』

母などは何を期待しているのか目を丸くし俺の言葉を待った

『本日・・・ヒョリンと離婚しました。』
『なにっ?』
『えっ?なんですって?それは一体どういうことなの?』

まさかと思うがこの結婚生活が上手くいっていると思っていたのか?そんなはずはないよな

『その言葉の通りです。』
『離婚・・・』
『10年も一緒にいて・・・』

何年一緒にいようと合わない相手と共に暮らすのは地獄だ

むしろこの先の人生が俺にはバラ色に思えてくるほどだ

『それで・・・ひとつご相談したいことがあるのですが・・・』
『まさか慰謝料でも請求されたとか?』

父は眉を潜めた

『いいえそうではありません。ただ・・・ヒョリンは妊娠しているそうで、その子が生まれた時・・・
私の子に戸籍上されてしまうのでどうしたらよいのかと・・・』
『ヒョリンさんが妊娠?』
『妊娠しているのに別れるって言うの?おかしいじゃないの・・・』

おかしい・・・そういいたいのは俺の方だ

『ヒョリンのお腹の子は私の子では・・・ありません。』
『えぇっ?』
『なんてことだ・・・』

両親は相当憤慨しているように見えた

そんな馬鹿な話・・・ある筈が無い

『納得がいかない。』
『相手のご両親も呼んで話し合いの場をもうけたらどうかしら?』

もう35歳だ。この歳になって親の出る幕もないだろう

まぁ俺の両親には出て貰うが・・・

その時・・・母は不思議そうに問いかけた

 『でも・・・よく考えてみなさい。あなたの子じゃないって証拠がある?』

あ・・・母さん証拠っていうか・・・それを俺に言わせるのか?

仕方がない。渋々俺は口を開く

『私の子供ができる筈がないんです。彼女とは一度も寝室を共にしていませんから・・・』
『まっ・・・まさかあなた!』

あ・・・母さんその目は、俺を能力のない男だと疑ってますね?違います!

『そうではありません。』
『じゃあまさか…外に女がいるとか?』

どれだけ自分の息子を疑うんだ!俺は10年間清く正しく仕事だけに生きてきたんだ

会社が持ち直したのだってそのおかげだろう?

『そんなことは一切ありません。』

きっぱり母の疑いを晴らした俺に、安堵しながら母は呟いた

『解ったわ。明日ヒョリンさんをここに呼び出しましょう。あなたも来て頂戴。』
『解りました。』

正直・・・自分の血を分けた子でもないのに、自分の戸籍に入れるようなお人よしではない

両親を介して俺はヒョリンと子供の件で話し合いをすることになった

相手の両親を呼ばなかったのは、せめてもの思いやりだ




翌日の夜・・・仕事帰りに実家に立ち寄ると、既に元妻は母と言い争っていた

『お義母様・・・一体何のお話でしょう?』
『お義母様なんて呼ばないで頂戴!』
『失礼いたしました。』
『今日来ていただいたのはあなたのお腹の子の事よ。』

一瞬顔を歪めたヒョリン・・・だがすぐに開き直った笑顔を向けた

『そのことですか。』
『あなたの産む子をイ家の戸籍に入れるなんてとんでもない話よ!言っておきますけど・・・
生まれてすぐシンと親子鑑定をして、裁判を起こしてでもイ家の戸籍に入れないわ!』

強気の母・・・だが元妻も相当強気だった

『あ・・・彼から聞いたんですか?ご心配かけてすみません。
あれからお腹の子の父親と話し合ったんですが、半年したらその人と再婚しますわ。
彼もこの子の為に私と家庭を持つ覚悟を決めてくれましたし。』

元妻は口角を上げお腹に手を当てた

その口ぶりでは相手の家庭を壊した・・・そう俺は確信した

『そう。だったら良かったわ。大事な身体なのだからもうお帰りなさい。』
『はい。では失礼いたします。どうぞお元気で・・・』

母はもちろん俺も見送りなどしなかった

『なんて女なの?シン・・・あなたよく10年も一緒に暮らせたわね。』

いや・・・ほとんど家にいなかったから耐えられたようなものだ

『政略結婚ですから・・・』

せめてもの俺の反抗だった




一人になって安堵した時、俺の胸の中に懐かしい想いが湧きあがった

チェギョンは今どうしているだろうか

だがあれから10年も経ったのだ

普通なら結婚して幸せに暮らしている筈・・・そう思いながらも俺は仕事帰りにチェギョンの店の前を

毎日通るようになっていた

店名は変わっていない・・・10年前と同じだ

もしオーナーが変わっているなら店名も違う筈だ

だがタイミングが悪いのか、何度店の前を通ってもチェギョンの姿を見ることはなかった

今更チェギョンに逢うことなど望んでいなかった

ただ元気な姿をこっそり見られればいい

休日のお昼頃・・・俺は近くに車を停め、チェギョンの店の前を通りかかった

するとそこにチェギョンに雰囲気のよく似た女の子が、店内のソファーに腰掛け本を読んでいたのだ

幸い他の従業員は見当たらない

意を決して俺は店に入って行った

するとすぐにその女の子は読んでいた本を置きソファーから立ち上がった

『いらっしゃいませ♪』
『あ・・・君はアルバイトかな?中学生くらいに見えるけど・・・』
『くすくす・・・小学生です。背が高いからそう見えるだけですよ。アルバイトじゃなくて・・・店ただの番です。』
『お店の人は?』
『今、お昼ごはん食べてます~♪』
『君はもう・・・食べたのか?』
『はい!私はもう食べました~♪』
『そ・・・そうか。』
『お店の人を呼びましょうか?』
『あ・・・いやいい。ちょっと待ってて!』

チェギョンに雰囲気の似ている子と話をして、なんだか無性に嬉しくなる自分が抑えきれず

俺は道の反対側にあるお店でソフトクリームをふたつ購入し、再び店内に戻っていった

『どうぞ。』
『えっ?でも知らない人に物を貰っちゃあいけないってママが・・・』
『私は客だから受け取っていいんだよ。さぁ!』

早く食べないとソフトクリームが溶けてしまう

俺はひとつをその女の子に手渡し、自分もそれを口に運んだ

ソフトクリームなんか買ったのは何十年ぶりだ?思い出せないほどだった

見ると女の子はソフトクリームを左手で持って食べている

こういう場合使うのは普通利き手だ

俺も左手でソフトクリームを持って溶ける前にと必死に食べている

万が一落として床を汚したりしたら大変だからな

『美味しい~♪』
『本当に美味しい。』

同じように左手で必死になってソフトクリームを食べている女の子が、俺にはチェギョンのように思えて

無性に愛おしくなった

『君は・・・このお店の・・・』
『オーナーの娘ですぅ~♪』

そうか・・・チェギョンの娘なんだな?やっぱり・・・

『君の名前は?』
『シン・ピョルです~♪』

あぁやはりな・・・あぁ?シン・・・ピョル?普通結婚していれば子供は父親の姓になる筈

なぜだ?なぜシンという姓なんだ?

まさかそんなことを聞くこともできず、俺はひとまずソフトクリームを食べ終わると≪また来るよ≫そう言い残し

その場を立ち去った

いつまでもそこにいたら店の人間が帰ってきてしまう

恐らくチェギョンの娘であろうシン・ピョルと話ができただけで、十分幸せな気分に俺は浸っていた

10年間仕事以外何もなかった

毎日に張り合いができた

まるでそれは恋をしているかのようだった

俺はその後・・・昼休み時間になるとチェギョンの店の前を通り、ピョルの姿を見つけるとソフトクリームを買って

ピョルに逢いに行くようになった


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取引会社の社長イ・ユル君は、私の店に非常に貢献してくれていた

海外に商品の買い付けに行く時なども、スタッフに同行し色んなアドバイスをしてくれていた

またピョルの父親参観日になど、率先して行ってくれるほどだった

あくまでもビジネスライクに考えていた私だったけど、どうやらピョルは違うみたい

『ねえママ・・・ユルさんってママと結婚したいんじゃないの?』
『え~~っ?そんなことないわよ。あくまでも仕事上のお付き合いなのよ。』

現に二人で食事したこともなければ、出かけたこともない

ただ非常に良くして貰っているのは自分でも感じていた

『ユルさんみたいな人がパパだったらいいのになぁ~♪』

ピョルは父親が欲しいのかしら・・・

少し悩んだけど、私はそんなピョルの呟きを聞こえない振りしてやり過ごした



そんなある日・・・ユル君が閉店直前に店を訪れた

こんな時間に来るのは非常に珍しいことだった

『チェギョン・・・あのさ、変なこと言うようだけどピョルを店に出さない方がいいんじゃない?』
『えっ?なぜ?』
『今日見かけたんだよ。お昼休みでスタッフが食事中の時かな・・・
この店内でピョルが男と二人でソフトクリーム食べているのを・・・』
『えっ?本当?』
『うん。身なりはきちんとした男だったけど、人なんて外見じゃわからないだろう?
もしピョルが誘拐でもされたら大変だから、一応チェギョンに知らせておくよ。』
『わかった。ありがとうユル君。ピョルに事情を聞いてみるね。』
『そうして!心配だからさ・・・』
『うん。』

その夜私はピョルに問い掛けた

『ねえピョル・・・あなたスタッフさんが食事している時、お店番してくれているでしょう?』
『うん。』
『ソフトクリーム・・・お店で食べているって本当?』
『えっ?あ・・・うん!ソフトクリームのおじちゃんがね奢ってくれるんだよ♪』
『知っている人なの?』
『お店のお客さんだって言ってたよ。』
『どんな人なの?』
『ん~~ユルさんもカッコいいけど、それよりもっとも~~っとカッコいいおじちゃん♪』

ユル君はピョルにとって最上級の男性だ

それよりもカッコいい人・・・

気になった私は翌日ピョルにいつも通り店番をさせて、こっそり店の奥で店内の様子を窺っていた



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やっぱり二話完結は無理だった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
お盆休み前・・・頑張らせていただきますね。
次回後編でこのお話は完結となります。
明日からみんなお休みかな~
良かったら読みにきてやってくださいね♪

ちなみに今回シン君とユル君は他人という設定で♪
ではまた明日~~★








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