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Channel: ~星の欠片~
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恋形見 ≪後編≫

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その日も俺はピョルに逢いに行った

最近ピョルに逢いに行っている為時間が無くなり、昼食は食べないことも多い

だが・・・ソフトクリームを食べるだけの短い時間が、俺にとって何物にも代えがたい大事な時間になっていた

ふたつ購入したソフトクリーム・・・今日はブルーベリーとストロベリーにしてみた

溶けないうちにと急いで俺は店に向かう・・・ピョルは俺の姿を見るなり満面の笑みでソファーから立ち上がった

『ソフトクリームのおじちゃんだ~♪』
『ソフトクリームのおじちゃんって・・・それはないんじゃないか?こんにちは。』
『こんにちは~♪』
『今日はブルーベリーとストロベリーだ。どっちがいいかな?』
『ストロベリー♪』

きっとそういうだろうと思い右手に持っていたストロベリーのソフトクリームを、俺はピョルに手渡した

『どうぞ。』
『ありがとう~。いっただっきま~~す♪』

美味しそうにソフトクリームを食べながらピョルは小首を傾げ、悪戯っぽ宇目で俺に問う

『また来たんだ~~おじちゃん。』
『あぁ。ピョルに逢いたくて・・・』
『え~~っ?私に?』
『あぁそうだよ。』

その時だった・・・間近に人の気配を感じそちらに視線を向けたのは・・・

『えっ?・・・シン君!イ・シン君・・・そうでしょう?』

あぁ・・・チェギョン。10年経ったのに少しも変わっていない

思わずチェギョンに見惚れてしまい呆然とする俺・・・慌ててその場を取り繕う

『あ・・・あぁ、久し振りだな。』
『うん~♪でも…どうしてこんなところにいるの?』
『あぁ?・・・あぁ、たまたま通りかかったら君によく似た子がいたからつい・・・』

その時ピョルが余計な事を言う

『うそ~毎日来ているくせにぃ・・・』

こら!大人に恥をかかすんじゃない!

チラとピョルに視線を向けた時、チェギョンは教えてくれた

『ふふふ~似ている筈よ。私の子だもの。』
『そ・・・そうか。チェギョンの娘なんだ。』

ピョルはまた横やりを入れて来る

『ねえママ・・・ソフトクリームのおじちゃんとお友達?』
『ええそうよピョル。随分逢っていなかったけどお友達なの♪』
『そうだったんだ~~♪あ…おじちゃん、ソフトクリーム溶けてるよ。』

うわ・・・大変だ。俺は慌てて残りのソフトクリームを口に入れた

慌てて食べたためか、口の周りがベタベタだ

そんな俺の目の前にハンカチが差し出された

『どうぞ使って。』
『あぁすまない。』

チェギョンから差し出されたハンカチで口元を拭った

するとそのハンカチはとても懐かしいチェギョンの香りがした

『洗濯してから還す。』
『そんな~いいわよ。返して。』
『いや…それはダメだ。』

俺は奪われる前にハンカチをスーツのポケットにしまい込んだ

その時だった

入り口から血相を変えて一人の男が、店内に入ってきたのは・・・

『チェギョン・・・やっぱり心配になって来てみたよ。』
『ユル君!あ・・・心配なかったわ。この人・・・私の古い友達なの。だからお仕事に戻って。』
『だけど・・・』

ユルと呼ばれたその男は威嚇するような眼で俺を睨んだ

もしかして・・・この男がピョルの父親か?

心配になって俺は訪ねた

『チェギョン・・・もしかして俺は、この人に何か疑われるようなことでもしたのか?』
『ううん。違うのよシン君。ユル君はピョルを心配してきてくれただけ・・・。』

つまり・・・付き合っているという事なのか?だからピョルと俺が一緒にいるのが気に入らないとでも?

その男は俺の目の前に立つと右手を差し出した

『僕はイ・ユルです。このショップの相談役で取引会社の社長をしています。』

俺もその手に応えた

『私はイ・コーポレーションの専務取締役でイ・シンといいます。』
『そうですか。イ・コーポレーションという会社は随分暇なんですね。
専務が毎日のように昼休み、この店に来るなんて・・・』

いけないか?お前の許可が必要なのか❓喧嘩を売られている気分だったが、

もしもチェギョンの交際相手だったらチェギョンの立場を悪くする

俺は必死に感情を抑えた

10年前チェギョンがそうだったように、もしもチェギョンがこの男と未来の約束をしているのなら

今更俺が出る幕はない

潔く去るのみだ

だが・・・10年ぶりに自由の身になった俺には、どうやら羽ばたこうとする羽が生えているらしい

つい・・・口走ってしまった

『チェギョン・・・この方は君の恋人?』
『いいえ、ユル君は私のビジネスパートナーよ。』
『そうか、だったら今夜食事にでも行かないか?もちろんピョルも一緒に・・・』
『えっ・・・イ・シンさん何を勝手な事を言っているんです?チェギョンを食事に誘うなんて・・・』

チェギョンの返事よりもその男が憤慨する声が俺に浴びせられた

確実にこの男・・・チェギョンに好意を抱いている

先手必勝だ

ところがチェギョンは・・・俺にとんでもない言葉を放った

『でもシン君・・・奥様が・・・』

俺はその先の言葉を遮った

『俺はフリーだ!今夜閉店時間に迎えに来る。』

そう言い残し俺は店を出て行った

強引だったかな・・・だが、そうでもしなければ、あの男がいる限り話などできない



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ピョルの言う≪ソフトクリームのおじちゃん≫がまさかシン君だったなんて・・・

驚きと同時に懐かしさが胸にこみ上げる

でも一体なぜピョルに逢いに来ているの?シン君が父親だなんて知らない筈なのに・・・

店に入ってきたユル君と、今にも喧嘩しそうなシン君

ユル君もなぜそんなに喧嘩腰なの?

えっ?フリー?シン君から飛び出した言葉に驚愕する

・・・つまり離婚したってこと?

この10年の間、シン君に一体何が起こったんだろう

勝手に食事の約束をしシン君が立ち去った後、ユル君は面白くなさそうに私に問い掛けた

『あの男はチェギョンのなんなの?』
『ん?シン君?昔すごく好きだった人よ。』
『昔の話だろう?なのに・・・食事に行く気?』
『だって・・・返事も聞かないで帰っちゃったんですもの。行くしかないでしょう?』
『僕と・・・食事なんかしてくれたことある?』

いやそれを言うなら、食事に誘われたことなんかあったかしら?

ユル君が店を出ていった後、ピョルは私の顔をマジマジと見つめた

『知らなかったけどママって~意外とモテるんだ~♪』
『えっ?・・・なぜ?』
『ユルさんとソフトクリームのおじちゃん、ママを取り合ってたじゃん!』
『えぇっ?』

そんなわけない。シン君とは10年も前に終わっている

それにユル君だってあくまでもビジネスライクのお付き合いで・・・

『ママが鈍感なだけじゃないの~?とにかく今夜食事に行こうよ。きっとソフトクリームのおじちゃん、
すごく美味しい物ご馳走してくれるよ~♪』
『ピョル・・・ソフトクリームのおじちゃんじゃなくてイ・シンさんよ。』
『シンさんね。覚えた♪』

そのシンさんがあなたのパパよ

今にもそう言ってしまいそうな言葉を私は必死にのみ込んだ



その日はなんだか呆然として全く仕事にならなかった

だってそうでしょう?10年前燃えるような恋をしてそれ以来恋なんかしていなかったのに

その彼がフリーに戻って私の前に姿を現すなんて・・・考えもしなかった

10年経って彼は益々素敵な人になっていた

ピョルの審美眼も大したものだわ

ピョルの事は・・・気づかれないようににしなくちゃ

彼がいない人生をこんなに幸せに生きてこられたのは、ピョルがいたおかげだもの



その日・・・閉店の片づけをしている時、約束通り彼は表れた

ピョルなんかしっかりおめかしして、シン君を出迎えた

『シンさ~~ん♪』
『ピョル~ずいぶん可愛い格好をしているじゃないか。』
『だってお食事に誘われたんだもの、おめかししなくっちゃね♪』

なんだかピョルはとても嬉しそう・・・その反面私は、ピョルの出生の秘密を気づかれないか不安でいっぱいだった

連れて行かれたのは昔よく食事した店

四人掛けのテーブルに腰掛け、あの頃好きだった料理を次々と注文する彼

ピョルが食事に夢中になっている時・・・私はそっと問い掛けた

『奥様と・・・別れたの?』
『あぁ。向こうから別れを切り出した。』
『でもお子さんは?』
『いない。』
『そうだったの・・・』

どこか安堵する自分がいて、少し滑稽に想える

ピョルの腹違いの弟か妹がいたら・・・そんなことをふと思ってしまった

『あの時からやり直せないか?』
『えっ?』
『今更かもしれないが、10年前に止まったあの時からもう一度・・・』
『あ・・・でも・・・』

差し出されたその手を掴んでしまいたい気もした

嫌いで別れた人じゃないもの・・・

でも10年間ピョルと共に積み上げてきた時間が、それを躊躇させた

私が返事に戸惑っている時だった

『あら・・・シン?お友達とお食事?可愛いお嬢さんも一緒なにね?』

声を掛けてきたのは美しい女性とロマンスグレーの男性・・・その二人を見た時、シン君は相当驚いたらしい

『父さん母さん!!』
『シンのお友達ならもうお食事も終わったようだし、家でお茶でもどうかしら?』

えっ?シン君のご両親?それって拙いんじゃないの?かなりドキドキしていた私にシン君のお母様は畳みかけた

『さぁ・・・家はすぐそこなのよ。いらっしゃい。』

半ば強引に私たちの会計まで済ませてしまったシン君のお母様

まるで引きずられるような勢いで車に乗せられ、シン君のご実家に連れて行かれた

途中・・・ピョルに聞こえないように、シン君は私に詫びる

『すまないチェギョン。母はもしかしたら君が俺の愛人だと誤解しているのかもしれない。
誤解は必ず解くから従ってやってくれ。』
『うん。わかったわ。』

なんとなく威圧的なシン君のお母様・・・私は今にも心臓が飛び出しそうなほど緊張していた

だってシン君とは10年ぶりに逢ったのよ

愛人だなんてとんでもない!



シン君の実家に到着しリビングに通された時・・・彼のお母様は私に言った

『チェギョンさん、お茶を運ぶから手伝っていただける?』
『あ・・・はい。』

ひぃ~何を私は初めて来た家でさせられているの~~!

キッチンでお茶を煎れながら、シン君のお母様は私に問い掛けた

『シンとはいつからのお付き合いなの?』
『あ・・・あの誤解されているようですが、シン君と逢ったのは今日が10年ぶりなんです。
お母様の誤解されるような関係ではありません。』
『えっ?つまり・・・結婚前ってこと?』

その問いに私は何も答えなかった

『さっき食事をしているのを見ていて思ったんだけど、ピョルちゃんは左利きね。何歳?』

拙いかも・・・非常に拙いかもよ~~!

『9歳です。』
『9・・・歳なの?その年齢の割に手足も長くてずいぶん背も高いわ。将来はモデルにスカウトされそうね。』
『あ・・・はい。よくそう言われます。』
『シンの・・・子でしょう?』

ひっ・・・ひっ・・・ひぃ~~~!

『えっ?ちっ違います。』
「先ほどあなたの名前であなたの結婚歴を調べたわ。一度も結婚していらっしゃらない。そうでしょう?』
『はい・・・結婚しておりません。』
『白状なさい!シンの子なんでしょう?白状しなかったら今すぐ親子鑑定に持ち込むわよ!』

ひ・・・ひぃ・・・こっ怖いわ

私は否定も肯定もせずただじっと黙っていた

するとシン君のお母様は、今までの怖そうな表情を一転させ満面の笑みを浮かべた

子・・・この表情の変化は何なの~~?

『ふふふ・・・意外と強情ね。何も言えないところを見るとどうやら図星ね。
しかも・・・シンさえもその事実を知らない。そうでしょう?
そう・・・そうだったの。シンが10年も操を守ってきたのは、あなたという存在が胸の中にいたからなのね。
分かったわ。私に任せておきなさ~~い♪』

シン君のお母様は5人分のお茶をトレーに載せると意気揚々とリビングに向かっていく

私に任せておきなさいって・・・なにを?

それに10年も操を守った?え~~~っ・・・・

あぁ・・・一体どうなってしまうのだろうこの先の私の人生は・・・

でもシン君のお母様の後に続いてリビングに入って行った時、ピョルが大きな声を上げ笑う声を聞いた

あぁ・・・ピョルは間違いなくこの家の家族なんだ

そう思い知った私はあとはなるようになれと開き直り、シン君御お母様と共に席に着いた



10年間止まっていた時が・・・ピョルという大きな歯車を迎え再び動き出そうとしている


恋形見 完

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え~~~?これで完結?っていう?
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ひとまず三話じゃこのくらいしか書けなかったので
要望が多い場合
お休み明けに続きを書かせていただこうかなと・・・
(要望が多い場合ね)

では~私は明日からお盆休みに入らせていただきます。
(今年は祖母の新盆があるから大変なんですぅ・・・)
お話の更新は20日までお休みとなります。
日記や通信記事はアップさせていただきますね~❤

素敵なお盆休みを(って言うのも変だけど)
お過ごしくださいね❤





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