妻チェギョンから衝撃の告白を受けた俺は、まず事の真偽を確かめるためにホン・ジュソンを呼び出した
ホン・ジュソンは俺の前に立つと、いつも通り忠誠心に満ちた視線を俺に向けた
『陛下・・・お呼びでしょうか。』
『あぁ。職務中にすまないな。少し確認しておきたいことがあるのだ。』
『はい。何なりとお尋ねください。』
『ウナの事なんだが・・・』
公主ではなく敢えてウナと呼んだ
するとホン・ジュソンはウナの名前を聞いた途端顔色を変えた
まさかお前も・・・娘程も年の違うウナに恋心を抱いているのか?
だが遥か昔を思い返せば、元々ホン・ジュソンはチェギョンの事を心から慕っていた
報われない思いと承知の上で、俺達の傍にいることを望んだのだ
そんなホン・ジュソンがチェギョンと生き写しのウナに心惹かれてるのは、継膳の事のように思えた
『陛下・・・公主様がどうかなさいましたか?』
ホン・ジュソンは先ほどまでの顔色の悪さを一転させ、冷静な口調で聞き返した
『皇后の話によると公主はお前を慕っているとか・・・』
『陛下、ご冗談はおやめください。私は陛下や皇后様と共に学んだ年齢です。
聡明な公主様が私のような者を気に掛けるなど・・・ありえません。』
『そうか?だが皇后ははっきりと公主の気持ちを聞いたと言っていたが・・・。
お前はどうなのだ?お前の気持ちは・・・』
『私の気持ちなど陛下がお気に掛けることはございません。
私は公主様を、陛下と皇后様の大切なお嬢様として、大事に見守ってまいりました。
それは幼い頃もそしてこれからも変わることはありません。』
そう言い切り俺に笑顔さえ見せたホン・ジュソンだったが、俺の胸の中にはどうにも腑に落ちない気分が残った
ホン・ジュソンはきっと・・・気持ちを偽っている
更に話は続いた
『・・・・陛下、陛下と皇后様が私の存在を疑心暗鬼に思われるようでしたら、
それは私にとって一番不名誉なことです。
そのような災いの種になりたくて、私はイギサになったのではありません。
皇太子殿下の婚礼の儀が済みましたら、どうぞ私を済州島に異動させてください。』
なっ・・・なにっ?この宮を離れるだと?語るに落ちたなホン・ジュソン
それはつまり・・・本心ではウナに好意を抱いているが、ウナの傍にいたのでは気持ちの整理がつかないから
ウナから逃げたいと言っているようなものだ
『異動だと?』
『はい。先の皇帝陛下や皇后様にお仕えしても、お二人への私の忠誠心は変わりません。
是非そのようにお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。』
殊勝にも潔く身を引くと言われた気がして、俺は少々意地になった
『そうか。お前がそう望むのならそう手配しよう。だが済州島に行っても先の陛下と皇后様をしっかり守ってくれ。』
『もちろんです。私が受けた御恩は今後先の皇帝陛下お皇后様にお仕えすつことでお返しいたします。』
ホン・ジュソンが異動を願い出て・・・それでウナの心情が変わればそれに越したことはないのだが
どうにも俺にはそう簡単にウナが諦めるとは思えなかった
その夜・・・チェギョンにホン・ジュソンと話したことをそのまま報告した
俺は男だからホン・ジュソンの気持ちは手に取るようにわかってしまう
だが敢えてチェギョンにそのことを告げず、ただホン・ジュソンが異動を願い出たことを伝えた
チェギョンは少し何かを考えるようにして『そう・・・』とだけ答えた
できる事なら自分と同じ歳のホン・ジュソンと娘のウナの縁を、断ち切りたいと思ったのも事実だ
ホン・ジュソンから≪義父≫と呼ばれるなんて・・・考えただけでも恐ろしい
麻疹のような思いは・・・その存在が消えればきっと薄れていくことだろう
俺は自分自身が過去に経験したチェギョン不在の日々を忘れ、安易にそう思っていた
それからギョムの婚約が整い、いよいよウナは東宮を出ることになった
だが住まいを移したところで、ウナの東宮通いは続いていた
俺とチェギョンはそのことを咎めることはせず、ウナを自由にさせてやった
なぜならギョムの婚姻が済むと同時に、ホン・ジュソンは先の陛下や皇后様と共に済州島に異動するのだから
報われない恋でも・・・少しぐらいの時間の猶予はやりたい
そう思っていた
やがてギョムが大学を卒業しウナも高校を卒業した後、婚礼の儀が執り行われた
ギョムの婚約と同時に東宮から本殿に引っ越したウナ
イム世話係がある日私を訪ねてきた
『皇后様・・・少しお時間よろしいでしょうか。』
『どうぞ。何かしら?』
『公主様の事です。本殿にお移りになられてから、なんだかとても沈んでらして・・・』
その理由は私もよくわかっているわ
『そう。イムさん、ウナの事をちゃんと見ていてね。』
『はい。かしこまりました。』
恐らくイム世話係はウナの気持ちに気が付いているのだろう
そうよね。ウナが生まれた日からずっとウナを見てきたんだもの当然だわ
もしかしたら母である私よりもイムさんの方がずっと・・・ウナの気持ちをわかっているのかもしれない
そして・・・国を挙げての祝い事、ギョムの婚姻の日がやって来る
ウナもギョムの婚姻を心から喜び祝福してくれた
だけど・・・先の皇后様からホン・ジュソン君の異動の事をウナは聞いてしまったみたい
二人が婚姻パレードに出発した後、ウナは血相を変えて私の元に駆け寄ってきたのだ
『お母様・・・』
『公主・・・皇后とお呼びなさい。』
なんだか昔のお姉ちゃんになった気分だ
『あ・・・申し訳ございません。皇后様・・・あのっ・・・お聞きしたいことが・・・』
『何かしら?』
『殿下のイギサをしているホン・ジュソンさんが・・・済州島に異動するというのは本当の話ですか?』
とうとう聞いてしまったのね?ウナ・・・
『本当よ。』
『なぜです?ずっと殿下のイギサをしていたのに、なぜ今・・・済州島に?』
その目は明らかに恋しい男を想う目だった
『本人のたっての希望よ。』
『本人の…希望・・・』
落胆するウナの表情・・・その顔を見て、私は記憶がないにもかかわらずシン君と並んだヒョリンに怒りを覚えた
新聞記事の事を思い出した
恋しい男を想う気持ちは・・・かつての私と何ら変わりない
ウナは憔悴しきった顔で踵を返すと、自分の部屋がある本殿に向かって走り去った
私の胸の中になんとも言えない苦さが広がった
母だというのに私は・・・娘の恋さえも応援できないのか
幼い頃からずっと想い続けてきた一途な娘の恋を、引き離すような形で踏みにじるのか
胸がとても痛む
痛くて痛くて・・・どうにかなりそうだった
婚礼の翌日・・・済州島に戻る先の皇帝陛下と皇后様と共にホン・ジュソン君は旅立っていった
宮殿で見送りをしたウナの目に悲しみの涙が光るのを、私は見逃さなかった
それからウナは東宮に行くこともなくなり、ただ義務的に大学に通い公主としての公務をこなす日々が続いた
自分の感情を元々口にするのが得意ではなかったウナ
そんなウナは宮殿にいる時には部屋に引き籠りがちになった
食事もあまり摂ろうとはせずみるみる痩せ細っていくウナ
見るに見かねたイム世話係は、私の元を訪れウナの状況を切々と訴えた
『皇后様・・・このままでは公主様が死んでしまいます。私がこんなことを申し上げるのもおこがましいのですが
どうか・・・公主様を好きな男性に逢わせてあげてください。』
『公主の好きな男性とは?』
『皇后様はお気づきの筈です。』
イム世話係は私の目をしっかり見返した
つまり・・・イム世話係は私とシン君が二人を引き離したと思っているのだ
『逢わせてあげたい。公主の気持ちは私にもよくわかる。だが・・・』
ウナを済州島に行かせることは、二人の気持ちを認めることになる
だけど・・・それには大きな問題が立ちはだかっている
まずはシン君・・・そして身分の差・・・
私は民間人出身だから≪そんなの関係ない≫といえるけど、公主であるウナが嫁ぐとすれば・・・
やはりそれなりの身分が必要となって来るのだ
ウナが痩せ細っていく姿に困り果て、シン君とどうしたらいいのかを話し合っていたある日・・・
衝撃的なニュースが宮殿中を駆け巡った
また~~なんだか勿体つけた終わり方だ
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
次回・・・どんな展開が待っているのか
乞うご期待くださいね❤
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