皇帝陛下が皇位を退かれ、皇后様と主に済州島の皇室リゾートに移り住んだあと
私たちは本殿への引っ越しを始めた
東宮殿は・・・もちろん皇太子となるギョムの住処
その頃には大学四年生に成長したギョムは、どうやら王族のご息女と恋をしているみたい
近々私達に逢ってほしいという
ずいぶん大人になったものだわ・・・
でもよくよく考えてみたら、ギョムは妃を迎えても良い年頃・・・むしろ遅いくらい
だって私達の婚姻は高校三年生の時だったんだもの
長年住み慣れた東宮から引っ越しをする日・・・部屋の片づけをしようとしないウナを私は咎めた
『ウナ・・・一体、何をしているの?早く片付けてしまいなさい。』
『お母様・・・なぜ私は東宮にいてはいけないんですか?』
『東宮は皇太子とその妃の住まいよ。ギョムもそろそろ婚姻を考える歳だわ。あなたは私達と一緒に
本殿に移るのよ。』
『そんなの納得いきません!』
納得がいこうがいくまいが公主となるウナは、この先東宮には居られない
『ダメよウナ。あなたは私やお父様と一緒に本殿に住むの。』
『嫌です!』
確かに幼い頃から頑固なところのある子だったけど、こんなに駄々をこねるのは久し振り・・・
私とウナが言い争う様子を見兼ねたギョムは、私に告げた
『お母様・・・いいじゃないですか。ウナが東宮にいても・・・』
『そうはいかないのギョム。宮殿には法度があるのよ。あなたの婚姻も近いでしょうし・・・。』
『私の婚姻は大学卒業後と考えております。もう少しウナを東宮にいさせてください。』
ギョムにそう言われてしまうと、これ以上ウナを叱ることもできない
もうしばらく様子を見ることにして・・・私はシン君と共に本殿に移り住み・・・その後この国の皇帝と皇后に
即位したことを国民に宣言した
それから程なくして・・・ギョムは私たちの元に王族会の娘オム・ユンスを連れてきた
控えめな性格のオム・ユンスは一見地味な印象を受けるけど、実は聡明で思慮深い女性だとよく分かった
私とシン君はオム・ユンスが非常に気に入り、すぐにオム家の夫妻と内々に逢い
近い将来皇室に娘を嫁がせることを約束させた
安堵する私とシン君・・・でもその一方でウナの機嫌はすこぶる悪くなった
ギョムにお嫁さんが来ることがそんなに気に入らないのかしら?
足繫く東宮に説得に通う私・・・もちろん本殿に移り住むことを納得させるためだ
でもそんなある日、私の考えは間違っていたことに気づかされた
東宮に向かった時、ウナはどこか宮殿内に出かけており東宮には不在だったのだ
一体どこに行ったのだろうか・・・そう思いながら車庫の横を通りかかった時・・・
ウナの姿を発見したのだ
このような場所で何をしているのだろう?そう思った私は、皇后であるにも拘らずウナの行動が気になり
品位を欠くと思いながらも耳を澄ませた
『なぜですか?なぜ?私のイギサになって本殿に仕えてもいいじゃないですか!』
『公主様・・・私は皇太子殿下にお仕えするイギサです。それは皇太子殿下がお小さい頃から・・・
そして今後も変わりません。』
『私の気持ちを知っていて・・・そのようなことを仰るのですか?』
『公主様・・・お戯れはおやめください。私は一介のイギサでしかありません。
公主様は何れ王族に嫁がれるお方です。おかしな噂がたっては皇帝陛下や皇后さまに顔向けできません。
そのようなことは二度と口にしないようお願い申し上げます。』
『私は・・・王族になど嫁ぎません。そのようなことを強制されたら、尼寺に入って一生独りでいます。』
相手の声を聞いて一瞬驚愕したが、顔を確認するとやはりウナの話していた相手はホン・ジュソン君だった
つまりウナは・・・親と同じ歳の彼に恋をしたというの?
驚愕の思いを募らせながら、そういえばと私は昔を振り返った
そうだ!あの時も・・・そしてあの時も、そんな幼い頃からウナはホン・ジュソン君に恋をしていたのだ
はぁ・・・困ったなぁ・・・
溜息を吐きながら本殿に戻っていく
もちろん共にその光景を見てしまったお姉ちゃんとチョン女官さんには固く口留めをした
その夜・・・夫婦の寝室のドレッサーで髪をとかしながら、私はつい溜息を吐いていた
『はぁ~~~っ・・・・』
その時ちょうど寝室に入ってきたシン君は、そんな私の様子に驚き声を掛けた
『チェギョン・・・一体どうしたんだ?』
鏡越しに映る心配そうなシン君の顔・・・
私は思わず椅子から立ち上がり、シン君目がけて飛びついた
懐かしいコアラ抱っこだ
でも、年相応にお肉が付いたせいかしら・・・若い頃のように身軽にしがみつけない
シルクのパジャマは滑りやすく、今にも転げ落ちそう
そんな私をシン君は昔同様しっかり受け止めてくれた
もちろんシン君の手は私の背中ではなく、重たいお尻を支えている状態
『くっ・・・ずいぶん懐かしい愛情表現だな。』
そういって口角を上げるシン君・・・でもこれはただの愛情表現ではない
困り果ててシン君に縋りつきたいのが本音だった
私はシン君の首に腕を回し、シン君の肩に顔を擦りつけた
『おいおい・・・一体どうしたんだ?ん?』
肩に埋めた私の顔を必死に覗き込もうとしているシン君・・・私はもう自分の胸の中だけに留めておくことはできず
シン君の首に回した腕を離すと、伏し俯いて口を開いた
シン君がそれを聞いたら憤慨するかもしれない・・・そう思ったら口にするのも恐ろしくなった
『シン君・・・あのね、落ち着いて聞いてくれる?』
『あぁ?くっ・・・一体何なんだ?そんなに深刻そうに・・・』
『真剣な話なの。真面目に聞いて!ウナがね・・・どうも恋をしているみたい。』
『恋?そりゃあウナだって年頃だからな。恋をすることだってあるだろう。お前に相談があったのか?』
『ううん。そうじゃない。偶然見かけてしまって・・・』
『偶然見かけた?まさかこの宮殿の名中で男と逢っているのか?』
『あ・・・そうじゃないの。そうじゃないけど・・・見ちゃったの。』
なんとも歯切れの悪いチェギョンの口調に、俺はひとまず気を鎮めた方がよいと考えチェギョンと共に
ソファーに腰掛けた
『一体何を見たんだ?』
『ウナが・・・恋している相手と話している現場。』
なにっ?宮殿で何という不謹慎な!だが・・・チェギョンがウナの歳には俺に嫁いでいたのだ
王族の子息だったら・・・嫁に出すことも考えないといけない
まぁ・・・まずは兄であるギョムの婚姻が先だがな
『チェギョン・・・ウナもそういう年頃なんだ。理解してやれ。』
『理解したいけど・・・範疇を超えているの。』
理解の範疇を超えている?ウナの相手は一体誰だ!
父親としての嫉妬もあった。俺はチェギョンの顔を覗き込み問い掛けた
『それは・・・一体誰だ?』
チェギョンは俺の目を見返すと、再び目を伏せた
そんなに言い難い相手なのか?俺は益々不安になっていく
『・・・・ホン・ジュソン君よ。』
なっなにっ?緊張していた俺は思わず苦笑せずにはいられなかった
『っつ・・・何を馬鹿な事を言っている。』
『シン君…真剣に聞いて!間違いないわ。』
間違いないだと?
俺の脳裏に幼い頃からのウナが浮かび上がった
そういえば・・・俺が公務の時など見送りもしなかったウナだったが、ギョムが出かける時には泣いて駄々をこねた
あれはまさか・・・ギョム恋しさではなくホン・ジュソンが出かけてしまう事への寂しさだったのか・・・
あらゆることを思い返してみると、確かにホン・ジュソンを慕っているという証に思えて来る
『だが・・・ホン・ジュソンは俺達と同じ歳の40歳だ
いくらなんでも親ほども年の離れた男に恋をするなんて・・・』
『ありえない事じゃないわ。現に世間には親ほども年の離れた夫婦が大勢いるもの・・・』
『だがウナは公主だ。そんな身分違いが通用するはずはない。あぁそうだ。それに・・・ウナがその気でも
ホン・ジュソンの方はそうではない・・・違うか?』
忠誠心の強いホン・ジュソンだ
そんなことは絶対にあるまい・・・そう信じていた
『ホン・ジュソン君はウナを拒んでいたわ。』
『なにっ?』
身分違いと思いながらも、実際自分の娘が拒絶されたと知ると腹が立つからおかしいものだ
『恐らくホン・ジュソン君はウナを憎からず思っている筈・・・でも彼は自分の立場をよく知っている。
だからウナを拒んだ。でもね・・・そんなホン・ジュソン君にウナは≪尼寺に行く≫って言ったのよ。』
なんてことだ
一国の公主がイギサに振られて尼になるなんてありえないことだ
ウナだったらどんな王族に嫁いでも、立派な女主人になるに違いないのだ
『わかった。その件に関しては俺が解決しよう。』
翌日俺はホン・ジュソンを本殿に呼び出した
もちろん今まで通りウナを拒絶してくれるよう頼むために・・・
ながらくお休みいただきありがとうございました。
そういいながら、またお盆休みいただくんだけどね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
その前にこのお話を完結させる予定です❤
あと少しお付き合いくださいね~❤
このところ本当ににゃふーさん調子が悪くて・・・
エラーばっかり出るんです。
今日なんか書庫が全部でなくなって
超焦りました。
うちだけですか?