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Channel: ~星の欠片~
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蒼い月 16

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ミン・ヒョリンの父親が自供を始めたと聞いた

だけど依然ミン・ヒョリン本人は、黙して語らずを続けているそうだ

だけどあの時のタンクローリー車の運転手が、≪ヒョリンの指示でした事≫と自供した以上、

いくら未成年だからって罪を逃れることなどできない筈

ある日の下校時、ちょうど迎えに来てくれたコお兄さんに私は御願いをしてみた

『コお兄さん・・・皇室警察署に行ったら、ミン・ヒョリンさんに逢わせてもらえるでしょうか?』
『チェギョン様・・・何をなさるおつもりですか?』
『あ・・・それは・・・説得に・・・』
『どんな屈強な警察官に威圧的な態度を取られても、だんまりを決め込んでいるそうです。
チェギョン様の説得に応じるとはとても思えません。』
『でも・・・あの人に逢いたいんです。どうか連れて行ってください!』

逢ってどうしようというのだろうか・・・自分でもよくわからない

とにかく逢って・・・この胸の内をぶちまけたい気分だった

『かしこまりました。ですが一応殿下にはご報告させていただきます。』

えっ?なぜ?あ・・・そうか。私の行動はすべて今後シン君が責任を負わなきゃならないんだ

はぁ・・・そっか・・・もうすでに私の行動は制約されるんだ。ちぇっ・・・

まぁシン君に知られても構わない。それでも私は彼女に逢いに行く

コお兄さんはすぐにシン君に電話をかけ、その後車を発進させた

でもね・・・車が発進したと同時に、今度は私のスマホが鳴りだしたのだ

あ・・・やっぱり?相手はシン君だ

私はシン君が言う言葉がわかるような気がした

『電話に出ないのですか?』

コお兄さんが問い掛ける

『あ・・・出ます。』

私は渋々その電話を取った

『なあに?シン君・・・』
『チェギョン、ヒョリンに逢いに行くそうだな?』
『うん。まだ黙秘を続けているっていうから・・・逢って来る。』
『お前が行ったところで自供などしない!』
『それもわかっているけど・・・とにかく逢って来る。』
『すぐに俺もそちらに向かう。』
『えっ?いいよぉ。だって行くのは皇室警察署だよ。何も心配は・・・』
『それでも行く!』
『来てもいいけど・・・部屋には一緒に入って来ないで。』
『なぜだ?』
『女同士の話をするからよ。シン君は隣の部屋でこっそり見ていてね。』
『・・・わかった。』

シン君が来ていると知ったらミン・ヒョリンは恐らくまた、しおらしいお芝居をするだろう

本音など絶対に聞けないと思った

シン君の前では・・・ミン・ヒョリンはきっと女であるだろうから・・・

『チェギョン様、到着いたしました。では参りましょう。』
『はい。』

コお兄さんは警察官に面会を申し込んでくれた

あの時の警察官に案内され、私は取調室に通された

暫くしてミン・ヒョリンはその部屋に入ってきた

そして私の存在に気が付くと、キッと睨みつけた

『あなたごときが私に何の用なの?もう既に皇太子の婚約者気取りかしら?』

あなたのおかげでまだよ!そういいたい気持ちを堪え私は冷静に言った

『とにかく座って。』
『あなたに指図されなくても座るわ。』

慇懃な態度で椅子に腰かけたミン・ヒョリン・・・私は一応説得を試みる

恐らく隣の部屋にはコお兄さんとシン君・・・ひょっとしたらシン君を乗せてきたイギサのお兄さんも

いるんじゃないかな

全て見られている…聞かれている…そう思うとちょっと嫌だった

本音でぶつかるつもりだったから・・・

『あの時のタンクローリー車の運転手が、あなたの指示だと自供しているのにあなたはまだ認めないの?』
『ふふふ・・・あの男は犯罪歴があるそうじゃないの。そんな男の言うことを信じるなんてどうかしているわ。』
『私はあなたより、あの男の人を信じるわ。』
『だったらそう信じていたらいいじゃないの。私は絶対に認めたりしないわ。』
『あなたのお父様も自供を始めたというのに、あなたは知らん顔?』
『ええ。私には何の罪もないもの・・・』

顔色ひとつ変えずそう言い切るミン・ヒョリン・・・

さすがに中学生で私を抹殺しようとしただけの事はある

でも・・・あの時の事故は私だけじゃなく、下手をしたらコお兄さんやお姉ちゃんも命を落としていた

三人の命を弄んだことになるのだ

絶対に許してはいけない

『三年前の事を聞くけど・・・なぜあんなことをしたの?』
『・・・あぁ、あなたに間違い電話を掛けたこと?』

しらばっくれるのもいい加減にして!そう叫びたい気持ちでいっぱいだったけど、必死に冷静を装った

『あなたが間違い電話と言い張るのなら、それでもいいわ。
でもわからないのよね・・・そんなに皇太子殿下が好きなら、もっと正攻法で私と戦ったらいいのに・・・』
『皇太子殿下を好き?あなた何か勘違いしていない?
子供じみた恋愛ごっこをしていたつもりはないわ。私の思いはもっと深かった・・・』

それと同時に業も深かったわ

人の命を殺めてまでシン君を手に入れようとするなんて・・・

『あなたさえ戻ってこなかったら、彼は必ず私を選んだ。私には自信があったわ。』
『そう。私が戻ってきて残念ね。そして今までの悪事を暴かれて残念ね。
でも・・・万が一私が戻ってこなくても、彼はあなたを選ばなかったと思うわ。』

ミン・ヒョリンが顔色を変えた

『なぜ?』
『王族の御息女には・・・あなたじゃなくても清廉潔白な女性がたくさんいる。
何もみすみすダークなあなたを選ぶ筈はないでしょう?』
『なんですって!』

椅子から立ち上がり机を手で叩いたミン・ヒョリン

そろそろ・・・警察官が入って来ちゃうかもしれない

退散時かな

『私が願えばいくら未成年のあなたでも最上級の罪に問うことはできるだろうけど、私はあなたと違うから
命を奪おうとは思わない。せいぜい塀の中で自分の行いを反省して悔い改めるがいいわ。
じゃあ…もう逢うこともないと思うけどお元気で。』

退室しようとする私の腕をミン・ヒョリンは力いっぱい掴んだ

『ちょっと待ちなさいよ。言いたいことだけ言って帰るつもり?私の話を・・・』

自分には何の罪もないと思っている人と、これ以上話をしても無駄だ

私は取調室から出ると、小さく溜息を吐いた

疲れた・・・彼女の口から謝罪の言葉は何一つ聞けなかった

すぐに隣の部屋からシン君とコお兄さん・・・そしてハンイギサさんが廊下に出てきた

『行こう。』
『うん。』

無言のまま皇室警察署を出た私達四人

私を乗せた車は・・・どうやら東宮に向かっているようだった



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コイギサにチェギョンを乗せて東宮に連れて来るよう命じ、俺は自分の乗ってきた車に乗り込んだ

深く溜息を吐き車のシートに頭を預けると、運転しているハンイギサが心配そうに声を掛けた

『殿下…御気分がすぐれないようですが大丈夫ですか?』
『あぁ。大丈夫だ。ハンイギサ・・・。』

俺は今更ながらにチェギョンを抹殺しようとした者を傍に置いていた罪悪感を募らせていた

『ミン・ヒョリンは・・・自供をしそうにないな。』
『はい。今や父親も母親も重罪人ですから、せめて自分位は罪を逃れ何れは、何れ家門の再建をと
考えているのかもしれません。』
『っつ・・・ミン家の家門など跡形もなく潰してやる。』
『それがよろしいかと存じます。余力を残して置いたら・・・いつか反撃に出そうな気がします。』
『あぁ。』

かといってヒョリンは未成年だ

父親は自分の身内を手に掛けた殺人者だとしても、ヒョリンまで重罪人には国法がしないだろう

余力を残さずミン家を潰すにはどうしたらいいのか・・・

東宮に車が到着するまで俺はそんなことを必死に考えていた

やがて車は東宮に到着し・・・チェギョンもコイギサの運転する車から降りた

『シン君。』
『少し話をしよう。』
『うん。』

俺はチェギョンを三年ぶりに自室に連れて行くつもりだった

エントランスでチェ尚宮の顔を見た時、チェギョンはなんだか泣き出しそうな顔をしていたのが気になった

『どうぞ。』
『うん。久し振りのシン君の部屋だね。』

チェギョンを部屋に招き入れソファーに掛けさせて、その隣に俺も座った

いつもならすぐに俺に擦り寄ってくるはずなのに、今日はヒョリンと話して相当疲れたのだろう

俯いたままじっとしていた

チェギョンの顔色を見て心配したのか、すぐにチェ尚宮は茶を運んできた

<トントン>
『失礼いたします。お茶をお持ちいたしました。』

恭しく頭を下げ部屋に入ってきたチェ尚宮はまず俺の前に茶を出し、それからチェギョンの前に茶を置いた

『ありがとう・・・ございます。おね・・・チェ尚宮お姉さん。』
『チェギョン様、お元気でいらっしゃいましたか?』
『はい。』

優しい眼差しをチェギョンに向けるチェ尚宮・・・心配かけまいと笑顔を取り繕うチェギョン

その間には明らかに肉親の情が流れていた

本当は・・・チェ尚宮の胸に飛び込み泣きつきたいんじゃないのか?

『では。失礼いたします。』

なにか話したわけでもないのに、通じ合う何かがある…そんな二人の関係に若干の嫉妬を覚えた

チェ尚宮が去っていった後、俺はチェギョンの手を取ると握りしめた

『チェギョン・・・だから言ったじゃないか。ヒョリンから謝罪の言葉など聞けるはずないと・・・』
『解っていたけど・・・逢いに行かずにはいられなかった。だってあの人は・・・私の周りのたくさんの人の運命を
変えた人だよ!絶対に許せない。許しちゃあいけないと思うの。』
『それは俺の仕事だ。お前が背負う事じゃない。さぁ・・・お姉さんの煎れてくれた茶でも飲んで
気分を落ち着かせたらどうだ?』
『うん。』

チェギョンは両手で茶碗を包み込み、そしてその茶を味わって飲んだ

『美味しい。お姉ちゃんの煎れてくれたお茶は・・・やっぱり美味しいや。
あ・・・チェ尚宮お姉さんだね。』

咄嗟にお姉ちゃんという言葉を使ってしまい、困惑したチェギョン

『無理をしなくていい。お前にとっては三年間…本当の姉だったのだから。』
『うん。』

ヒョリンと逢ったことでとても消耗しているチェギョンを、俺は自分から抱き寄せると胸元でその頭を抱いた

『ミン家の当主が身内を死に至らしめたという証拠が挙がった。
これでミン家の当主は終生牢獄で過ごすことになるだろう。その妻も同等の罰を受けることになるだろう。』
『ヒョリンさんは?』
『何とか俺の力で生涯表に出てこられないようにしたいが・・・』
『未成年だからそれは無理でしょう。』
『だがミン家の財産は国が没収することとなる。だからミン・ヒョリンはもし厚生施設から出てきても
もう二度と金で人を雇うことはできない。』
『そうあってほしい・・・』

そう呟いたチェギョンに俺は本題を切り出した

『婚約発表しよう。』
『えっ?でも裁判が・・・』
『ミン夫妻の刑は明らかだ。もう・・・ヒョリンも捕らえられている。安心して婚約できる。
だから東宮に呼んだんだ。』
『そうだったんだ。』

消耗し元気のないチェギョンを俺は元気づけたいと思った

『少し予定より遅れてしまったが、婚約発表の日取りを決める。いいな。』
『うん。王族会は大丈夫?』
『あぁ。もう俺達の邪魔をする者はいない。』
『良かった・・・』

胸元から顔を上げ少し悲しそうに微笑むチェギョン

俺の許嫁にこんな愁いを帯びた表情をさせたやつらを、俺は絶対に許さない

そんな思いを誓うかのように俺はチェギョンの唇にそっと触れた

許嫁だとは思っていたが・・・チェギョンのいなかったこの三年間にチェギョンに対する想いは確実に深まっていた

唇を離した時・・・チェギョンは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見つめていた

『な・・・ななななな・・・・』

みるみるうちに顔は真っ赤に染まり、出てくる言葉も意味不明だ

愛情表現は過激なくせに、意外と純情な俺の許嫁はとうとう俺の婚約者となる


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昨日から庭木の剪定をはじめ・・・
アタクシ・・・腕が筋肉痛です。
あぁ・・・家族にガーデニング大好き男子が
一人くらいほしかったなぁ・・・


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