何の前振りもなく贈られた初めてのキス
確かに私はシン君が大好きだ
その上周りからも感情表現が豊かだと、幼い頃から言われていた
でも・・・でも・・・全く想定していなかった時に、そんな行動取られたら頭の中は真っ白、顔は真っ赤
そんな私を見たシン君は口角を上げて忍び笑いをする始末だ
『な・・・ななななな・・・』
自分でも何を言っているのかさっぱりわからない
そのうちにはお姉ちゃんが夕食の準備ができたと私達を呼びに来たものだから、私の動揺は最上級クラスにまで
駆け上がってしまった
マズイ・・・お姉ちゃんに悟られる
必死に平常心を取り戻そうとするも、私にとっては大事件が起こったのだ
平常心など取り戻せる筈が無い
『チェギョン様・・・どうかなさいましたか?』
お姉ちゃ~ん!今は何も聞かないでぇ~!!
『あ・・・チェ尚宮お姉さん・・・べっ別に何も・・・』
わざとらしくそう答えるが非常にぎこちない返答だった
シン君は・・・そんな私を見てまた笑っているしっ!
案内された食堂で席に着いた時、私はシン君に視線を向けないまま小声で問いかけた
『シン君・・・あのさ・・・私のこと好きなの?』
『あ・・・あぁ?おいっ!そんなことここで聞くな!』
だって・・・好きだなんて今まで一度だって言われていないもん
『じゃあ・・・どこで聞いたらいいの?』
『あとで・・・な。』
あとでといっても食事が済んだら家に帰らなきゃならないし・・・ちっ・・・イ・シンめ逃げる気だな?
ちょっと不満気な顔をしながらも、私は久し振りに東宮での食事を堪能することに集中した
うん。お味は相変わらず上品で美味しい
でも・・・そこでふと気が付いたことがある
お姉ちゃんが三年間作ってくれていた料理は、間違いなく宮廷料理だった
若干庶民風にアレンジされていたけど、そこがまた私の口に合った
お姉ちゃんは何れ私がシン・チェギョンに戻る日の為に、食事にまで気を遣ってくれていたんだ
≪ありがとう・・・≫そんな言葉じゃとても足りない感謝の思いが、私の胸の中から零れ落ちた
やはりシン君はその後私の問いかけに返事をすることはなく、私はコお兄さんに送られて家に戻っていった
家に戻ると両親が玄関先で私を待ち構えていた
『チェギョン・・・東宮に行ったのかい?』
『うん。』
『食事は済んだの?』
『うん。あ・・・お父さんお母さん、そろそろ婚約を発表するらしいよ。』
『『えぇ~~~っ!』』
両親は私の言葉に腰を抜かさんばかりに驚いていた
『だけどチェギョン…まだ家に戻って二カ月しか・・・』
うん。確かにそうだね。お父さん・・・
『まだ当分先でもいいんじゃないの!』
その気持ちもわかるよ。お母さん
でも・・・
『皇室が決めたことだよ。私がこれ以上危険な目に遭わないようにって・・・』
落胆する両親はそれぞれに深い溜息を吐いた
両親にしても私と同様に、私が記憶を失っていた三年間を返してほしい気分だろうな・・・
部屋に戻りベッドに寝転んだ時・・・私のスマホが鳴り響いた
シン君からだ♪先ほどの返事かな?
『は~~い♪』
『チェギョン・・・内官や女官もいるところであんな質問はするな!』
『は~~い・・・』
『さっきの返事だが・・・婚約しようって言っている時点で解らないか?』
『え~~~っ?そんなのわかんない。普通…あ~ゆ~事する前には、甘く囁くもんじゃないの?』
『っつ・・・そんなの…知るかよ。大体お前の事を待っていた…それでわかrだろう?』
『そういうのは言葉にしなきゃ伝わらないのっ!』
『っつ・・・お前が・・・・ごにょごにょ・・・』
『なあに??聞こえな~~い!』
『お前が好きだって言ったんだ!』
『よろしい♪』
『っつ・・・好きでもない女に婚約しようと言ったりキスしたりするもんか!』
『でもぉ~ちゃんと言ってくれなきゃわかんないも~~ん♪』
電話で好きといわれたのはちょっと不本意だったけど、学校でも二人きりになる事はほとんどないし
仕方がない・・・許してやる!
こうして私は三年前の事件の犯人達が逮捕され刑に服し始めた頃、婚約することになった
三年前の事件の犯人が逮捕され、その後裁判で判決を受けた
ミン夫妻に於いては特別扱いの独房で、外部の人間と接触することを禁じられ終生過ごすこととなった
実行犯も終身刑が言い渡されたという
ミン・ヒョリンに於いては、やはり未成年ということもあり・・・特別な厚生施設で10年過ごすことになった
だが模範囚だった場合、10年より早くその厚生施設を出ることも考えられる
俺はミン・ヒョリンが報復できない様、ミン家の財産一切を国が没収するよう命じた
あとひとつ・・・俺にははっきりさせなければならないことがあった
その日俺はチャン・ギョン、リュ・ファン、そしてカン・インを皇太子ルームに呼び出した
『珍しいね。シンがここに呼び出すなんて・・・』
温厚な表情でファンが言う
『あぁ。みんな掛けてくれ。』
普段の親密度合いが席順を決めるというべきか・・・自然と俺の隣にはギョンが座り、その向かいに
ファンとインが座った
『今日は・・・一体どうしたんだ?』
そう問いかけながらギョンは薄々感づいているのだろう
いつになく真剣な顔をしていた
『みんなに聞きたいことがあるんだ。ずいぶん昔の話になるが・・・思い出したら教えてほしい。
ミン・ヒョリンがチェギョンの携帯番号を知っていた理由が、どうしてもわからないんだ。』
俺は敢えてインに視線を向けずそう告げた
その途端・・・やはりインは顔色を変えた
ギョンはもちろん気が付いている・・・インの顔色にファンも気が付いたようだ
インは体を折るように項垂れてポツリと言った
『俺だ。俺が・・・ヒョリンに教えた。』
『なぜだ?ヒョリンはお前に何と言ったんだ?』
『≪王族の集まりがあって、そこに皇太子殿下の許嫁をご招待したいから電話番号を入手して≫と・・・』
『だが・・・俺はお前に聞かれていない。』
『シンには内緒で知りたいと言われたんだ。だけど・・・あの時の逮捕の現場で、
俺が入手したチェギョンの電話番号が、どういう扱われ方をしたのか・・・初めて知った。』
『イン!おかしいと思わなかったのか?王族の集まりに皇太子の許嫁が招かれるのに
皇太子には内緒だなんて・・・』
『その時はおかしいなんて全く思わなかったんだ。すまない・・・』
『謝って済むことか!』
インを睨みつけ感情的になった俺を、インの隣にいたファンが諫めた
『シン・・・インはヒョリンに利用されただけだよ。シンの気持ちもわかるけど、そんなに感情的になるなよ。』
『っつ・・・あぁ。』
頭に血が上って親友さえ殴りつけたい気分になっていた自分を、俺は必死に鎮めようとしていた
そんな俺にインは言う
『シン・・・お前の携帯から勝手に電話番号を盗み見たのはこの俺だ。
罪に問われてもなにも文句は言えない。皇室警察を・・・呼んでくれ。』
な・・・何を言っているんだ?俺が親友を警察につき出すとでも思っているのか?
『馬鹿なことをいうなイン!お前を警察につき出す気などない!
ただ・・・どうしても腑に落ちなくて、真実を知りたかっただけだ。
お前の事は・・・不問にする。だが約束してくれ!万が一ヒョリンが厚生施設から出てきても
ヒョリンに一切力を貸さないと・・・。そうしなければ今度はお前も罪に問われる。』
『ああ、約束する。俺もヒョリンがまさか、地位や名声の為に人の命を奪おうとする女だとは
思ってもいなかったから・・・・』
『約束してくれるな?』
『ああ。約束する。』
心の中に棘のように刺さっていた疑問が漸く解決できた
親友を失わなかったのは幸いだが、それでもやはり・・・インとは今後一線を引いた方がいいと考えた俺だった
それからしばらくして皇室でよい日を選び俺達の婚約は発表された
もちろん、学校内の生徒たちは察していたようだが、それでも学校を上げての騒ぎとなった
これから婚約者として、俺はチェギョンを守っていける
チェギョンの傍に堂々といられる大義名分が、俺にはできたのだから・・・
あ~よく降る雨でしたね。
明日はお天気回復するかな?
おかげで雑草さんが
伸び放題よ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!