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Channel: ~星の欠片~
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晩夏の熱風 43

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(誰だろう・・・あの男の人・・・)

自分の描いた絵に向かって拍手を贈りながら近づいていく一人の男性をチェギョンは不思議そうに見つめた

正直を言ってしまえば、今水を打ったように静まり返ったこの会場で、自分の味方はこの男性だけのように思えた

『素晴らしい!!こんな素晴らしい絵をお嫁さんから頂戴するなんて、イ会長は本当に果報者ですね。』

賞賛の言葉を受けた父イ・ヒョンは満面の笑みで答えた

『いや~私も最近知ったばかりなんですけどね、コン画伯がそこまで仰るのなら相当な価値があるのでしょう。』

(コン画伯?ひぇ~~我が国画壇の第一人者じゃん。お義父様すごい人とお知り合いなんだ~!!)

コン画伯はシンの隣に座るチェギョンに話しかけた

『シン・チェギョンさん・・・まだお若いあなたが、これほど情熱的な絵を描かれるとは・・・
言葉で言い尽くせない感動です。』

畳で言うと一畳分程もあるその絵は、一本の道の両端に家が立ち並びその道の真ん中を

一陣の風が吹き抜けていくというどちらかというと暗く暑苦しい印象の絵だった

『ありがとうございます。コン画伯・・・』

チェギョンはその場に立ち上がりペコリと頭を下げた

『それにしてもイ会長・・・御社の社員には目利きの方が少ないようですね。この絵を見て嘲笑するような
愚かな者がいるとは・・・特に壇上にいるあなた!!そんな高い位置から覗き込んだだけでは
この絵の価値はわからない。降りてきてきちんと拝見するといいですよ。』

先程までピアノを弾いていた女性社員は顔色を変えた

チェギョンの作品の反応がどうだろうかと幾分緊張していたシンはザワザワとざわめきだした会場に

ようやく口角を上げチェギョンに話しかけた

『チェギョン・・・なんだか俺にはよくわからないが、圧倒される絵だな。あれは一体何を描いたんだ?』
『あれは・・・まだ許嫁と知る以前の私が、オッパに抱いていた気持ちです。』
『俺に対する・・・気持ち?』
『はい。歓迎会の飲み会があったじゃないですか~~!あの時・・・こっそりオッパを待っていた間の
私の気持ちなんです。』
『そ…そうなのか。』

赤やオレンジ色の熱いチェギョンの想いが、道を駆け抜けていく・・・

そう思ってみるとあの日チェギョンが自転車に乗って帰っていく後姿もこんな感じだったと思い出すシン

『俺には絵の目利きのセンスはないが・・・お前はこんな絵を描く子だったのか?』
『はいぃ~♪でも・・・結婚してからはオッパが優先だったので、風景画とか静物画しか描かなかったでしょう?
そういうのは・・・あまり上手じゃないんです。くすくす・・・』
『そうか・・・』


壇の下に降りた女性社員は全く絵が理解できないとばかりにまだ首を傾げている

それを見たミンは思わず壇上のマイクの前に歩み寄り、思いっきり語り始めた

『素晴らしいでしょう?うちのお嫁さんの絵は・・・。あら?あなたにはわからなかったかしら。おほほほほ~♪
なんでも幼い頃から、うちのチェギョンちゃんは何度も大きなコンクールで賞を獲ったそうなんですの。
ですが・・・幼い子の描く抽象画って、なかなか理解されなかったらしくて・・・
今回コン画伯のお墨付きを頂いて、チェギョンちゃんの才能は本物だと再認識しましたわ~♪おほほほ~
それに・・・絵だけじゃございませんの。頭脳も大変優秀でしてね・・・IQは200近いんじゃなかったかしら?
韓国芸術大学はトップ合格したんですのよ~♪家事も一生懸命やってくれるし・・・こんな可愛いお嫁さんが
すごい才能を持っているなんて、我が家は本当に幸せですわ~♪』

思わず始まってしまった嫁自慢にチェギョンハ顔を真っ赤に染めひたすら狼狽えた

(お母様~~IQ200って某漫画の入江君じゃないんですから~~あり得ませんっ!!
そんな大風呂敷広げたら~~私が困りますぅ~~!!)

ざわめく会場からようやく拍手が起こり・・・すぐにそれは拍手の嵐に変わった

(勝った!!)

想わずチェギョンは心の中でそう呟いた

自分の描いた絵の前にいる女性社員は、困惑し視線を漂わせながら自分の席に戻っていったのだ

(えっへっへっへっへ~~~♪どぉだぁ~~~!!)

チェギョンはその想いを顔に出さずに、非常に照れ臭い顔で会場に向かって何度も頭を下げた




和やかに食事会が進む中・・・コン画伯はユルを伴いチェギョンとシンの元を訪れた

『イ・シン専務・・・素晴らしい奥様と結婚なさいましたね。』
『ええ。私も誇らしく思います。私は絵の方は全く知識がないのですが・・・この絵に関しては圧倒されるものを
感じました。』
『そうでしょうとも・・・奥様のイ・シン専務への想いだそうですから・・・』
『えっ?コン画伯・・・なぜそんなことをご存じなのですか?』
『息子から聞きました。息子があなたの大ファンなのです。』
『息子さん・・・ですか?ん??』

まだ理解ができないチェギョンにユルがコン画伯の正体を教えてくれた

『チェギョン・・・このコン画伯は、当大学の四年生コン・ジョンイのお父様だよ。』
『えっ?コン・ジョンイ先輩のですか?』
『息子が是非見てほしいと言っていたんです。ああ・・・あなたにその気があるなら、
是非私の弟子になってほしいとお願いしたいところですが・・・』
『いえ。ありがたいお話ですが、私は画家になるつもりはありません。』
『なんと・・・その才能がもったいない。イ・シン専務・・・どう思われますか?』

シンはコン・ジョンイの名前が出た時点で、すでにコン画伯に対し拒否反応が出ていたようだ

『私は妻の意思を尊重します。妻がプロになる気がないというなら、普通の主婦で十分だと思っています。』
『なんと・・・欲のない・・・。
まぁまだ時間は十分ありますから、大学在学中によく考えていただいたらいいことです。
あ・・・それとイ・シン専務・・・もうひとつお願いが・・・』
『なんでしょうか。』
『うちの息子がイ・シン専務の元で働きたいと言い出しまして・・・採用試験に願書を出したそうです。』
『そうですか。弊社は縁故採用をしておりません。それに・・・画家の家に生まれたのであれば、
画家の道を進むのが妥当だと思うのですが・・・』
『私もそういったのですが、言い出したら聞かない息子でして・・・』
『彼が採用試験に名前を連ねても、私が贔屓することはありません。もし本気でわが社に入りたいのであれば
実力で勝ち取ってくれるようお伝えください。』
『ええ。息子にはそう伝えます。ですが奥様がもし絵を本格的に始めたいと言い出した時には
どうか応援してやってください。』
『ええ・・・』

そう答えたもののシンの目は決して笑っていなかった

何かにつけて絡んでくるコン・ジョンイが、シンにとっては相当目障りな人間に感じられたようだ

まぁ無理もなかろう

二年前強引に妻を連れて行こうとした男なのだから・・・




パーティーが終わり社員たちが片づけをし始めた頃・・・ヒョンとミン・シンとチェギョンは

チェギョンの描いた絵の前で家族会議の真っ最中だった

『母さんこれをどこに飾ろうか。』
『そりゃああなた玄関に飾りましょう♪ちゃんとした立派な額に入れてね❤』
『えっ?お義父様お義母様・・・入り口はやめましょう。入り口に飾るにはちょっと不向きな絵だと思いませんか?』
『そんなことはない。』
『そうよ~チェギョンちゃん。折角の大作なんだもの・・・入り口にでで~~んとね♪』
『えぇぇぇぇーーーっ・・・』
『父さん、何なら俺の部屋でも構わないが?』
『何を言うんだシン・・・これは私にチェギョンちゃんが贈ってくれた絵だぞ。』

正確に言うと自分に対するチェギョンの気持ちが描かれているのだから、所有権を主張したいところだが

さすがにそうもいかずシンは入り口にその絵を飾ることを承諾した




後日イ財閥のビルの入り口にはチェギョンの絵が飾られ、イ財閥の来客などが足を止めてその絵を鑑賞して

行くようになった

まだ年若い専務夫人のチェギョンだが、今後は見下すような社員は現れないだろう





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あはは~~絵を言葉で表現するのって
メチャ難しい~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

しかし・・・今日は晴れたけど
風が強くて乾燥してますな。
シワシワ注意報発令中です。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!


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