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Channel: ~星の欠片~
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晩夏の熱風 7

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新任教師の歓迎会の帰り道、コン校長とチェ教頭は交互に溜息を吐いた

『参りましたな教頭先生。まさか理事長から頼まれて採用したミン先生が、
あれほど節操のない女性だったとは・・・』
『そうですね。校長先生。面接ではあのような人格をお持ちとは、窺い知ることができませんでしたから・・・』
『イ家からもくれぐれもよろしくと言われているのですよ。困りましたな・・・。』
『校長先生、二人を秤に掛けるわけではありませんが、理事長の縁故採用よりも我が校創立者のお孫さんの方が
校長先生にとっては大切な人材ではありませんか?』
『その通りです。イ・シン先生はいずれは御父上の後を継いで会社経営に携わる立場ですし・・・
なんとかハン先生の代理として教壇に立つ間、私たちが見守らねば・・・』
『今後もミン先生の動向には注意いたしましょう。』
『教頭先生もどうか厳しい目でミン先生を指導してください。』
『わかりました。』

歓迎会で散々な醜態を晒した、ミン・ヒョリンは校長と教頭の頭痛の種となったようだ



一方チェギョンが無事帰っていくのを見届けたシンは、大きな溜息を吐きながら自宅の玄関に入って行った

『母さんただいま。』
『おかえりなさいシン。あら?なんだか眉間に皺が寄っているわ。楽しくなかったの?』
『いや・・・そうではないが・・・そうかもしれないな。』
『どっちなのよ。あなたの言っていることはよくわからないわ。』
『頭を悩ませる女と心をかき乱す女が・・・』
『なんですって?帰国早々もう恋愛沙汰?』
『い・・・いやそうではないが・・・』
『ダメよシン。教師はクリーンじゃなければね。』
『あぁ・・・肝に銘じておくよ。』

母からも窘められ、シンは先ほど自分が取った行動が果たして正解だったのかどうか自室に入ってから悩んだ

だがチェギョンがちゃんと家に帰りつくのを見届けたことは、決して後悔などしていなかった





翌日・・・いつも通り学校に向かい職員室の自分の席に着くと、少し顔色の悪いミン・ヒョリンが

反省した面持ちでシンの元にやって来る

『イ・シン先輩・・・昨日は少し飲み過ぎてしまったみたいですみません。』
『いや・・・』
『あ・・・あの、今週末にでも大学の時のメンバーで飲み会をしようかと・・・』
『俺はまだこの学校にも教師という職業にも慣れていない。少し遠慮してもらえないか?』
『でも・・・みんな先輩に逢いたがっていて・・・』
『その気持ちはありがたいが、ハン先生の代わりを務めるのに精一杯なんだ。少しは察してくれ。』
『わかりました。日を改めることにします・・・』

大学の頃のメンバーにはいつでも招集が掛けられるようになっていた

後はシンの返事次第だったのだ

何より一番その日を心待ちにしていたのは、当のミン・ヒョリンだった

シンからつれない返事をされ、非常に気分が沈むミン・ヒョリンだった




その日・・・シンは敢えてシン・チェギョンの方を極力見ないように努めた

一教師として度の外れた行動を取ってしまった自分を戒める意味もあったが、何よりチェギョンと目が合うことが

怖かった

目が合ってしまったら自分の胸の中にある仄かな想いを悟られてしまうような気がして、必死に目を逸らした

そして・・・そんな不器用なシンの振る舞いは、見事チェギョンの反感を買ってしまったらしい

放課後部活が終わった後、部員たちが誰もいなくなった部室でチェギョンは数学の教科書を開きながら

ポツリと不平を漏らした

『イ・シン先生・・・今日はなんだか不機嫌そうですね。』
『あぁ?いやそんなことはないが・・・』
『私の出来があまりにも悪いから呆れて、私を見ないんですか?』
『っつ・・・そうではない。お前はなぜ歓迎会の間二時間も、あんな場所にいたんだ?
高校生があんな時間まで繁華街にいるなんて、少しは常識的になりなさい。』
『えっ?それは・・・とても中の様子が気になったからです。』
『大人の酒の席がそんなに気になったのか?』
『はい!先生がミン先生をお持ち帰りしないか心配で!!』
『それは・・・心配ないところまで見ていたんだろう?』
『はい。だから安心して家に帰りました。そのことを怒っているんですか?』
『もう二度とそういうことはしないでくれ。俺は教師でお前にとってそれ以上にはなり得ない。』
『だったら・・・どうしてイ・シン先生は家に帰るまで見届けるようについてきてくれたんですか?』
『あぁ?お前・・・気が付いていたのか?』
『はい。私はイ・シン先生が好きです。だからあの場所で心配になって待っていました。
でも・・・先生もきっと私と同じ気持ちなんじゃないかって思ったのは、私の気のせいですか?』
『お前の・・・気のせいだ。』
『うそっ!!嘘つかないでください!!先生は誰でもあんなふうに送ってくれるんですか?
誰にでもそんなに優しいんですか?』
『あぁそうだ。ミン先生を送ったようにな。』

チェギョンは目に涙を潤ませ首を横に振った

『嘘ですっ!!そんなの信じないっ!』
『お前がどう思おうが、俺は生徒であるお前に対して恋愛感情など一切持っていない。
それはこれから先も変わらない。』
『そう・・・なんですか。誰にでも優しいんですね?
なんか・・・私、一人で勝手に誤解しちゃった・・・。
先生、もう数学の個人授業はしてくれなくていいです。もう迷惑かけません。自力で・・・頑張りますから・・・』

チェギョンは出したばかりの教科書とノートを閉じると、カバンの中にしまい部室から走り去った

表情が窺えないほど俯いて去ったチェギョンの後姿に、シンはズキンと胸の痛みを覚えながらも

必死に自分に言い聞かせた

(これでいい。これでもうシン・チェギョンは俺におかしな感情を抱くことはなくなるだろう。)

チェギョンに決定的な引導を渡してしまったシンは、纏わりついて来る可愛い子猫を手放した寂しさに

自分が耐えきれなくなるなど・・・この時まだ思ってもいなかった




学校から帰ったチェギョンは自室にこもり、ひたすら泣き続けた

自分の思い込みの激しさを呪い、自分が一生徒でしかないことに悲しみを覚えた

そして翌日には目が開けられないほど瞼が腫れあがったチェギョンが・・・出来上がってしまったのだ

そのような顔で登校していくのは非常に嫌なチェギョンだった

だが・・・シンに対する未練も捨てきれず、悲惨な状態であるにも拘らず登校していった

まずいつも最初に顔を出す保健室で、イ・ガンヒョンにチェギョンは問い詰められた

『チェギョン!!その顔はどうしたの?』
『あ・・・イ・ガンヒョン先生、そんなに酷いですか?』
『酷いなんてもんじゃないわ。これで冷やしなさい。』

ガンヒョンは冷やしたタオルをチェギョンに手渡した

『冷たくて・・・気持ちいい~!』
『チェギョン・・・アンタ一体どうしたの?先生に話してみなさい。』
『ガンヒョン先生・・・私、失恋しちゃったんですぅ。』

そういうなり涙声になったチェギョンに、イ・ガンヒョンは諭すように話した

『チェギョン…泣かないの。泣いたからってどうなるものでもないでしょう?この学校の子?』
『子?・・・あ・・・はい。』
『顔を合わせずらいのによく来たわね。』
『はい・・・』
『今の胸の痛みもきっといつかいい思い出になる日が来るわ。恋の痛手を癒すのには時間がかかるのよ。』
『ひぃ~~ん・・・』
『辛くなったらいつでもここに来なさい。担任のイ・シン先生にはアタシから言ってあげるから。』

シンの名前をガンヒョンから聞かされ、益々胸が痛むチェギョン

『ひっく・・・はい。』

チェギョンが保健室を出ていった後、偶然それを見かけてしまったシンは保健室のイ・ガンヒョンの元を訪ねた

『ガンヒョン・・・今、うちのクラスのシン・チェギョンが来ていなかったか?』
『来てたわよ~!目が腫れちゃったのを癒しにね。』
『目が・・・腫れた?』
『ずいぶん泣いたみたい。イ・シン・・・あの子のこと、少し気にかけてあげてね。』
『あ?あぁ・・・』

そう言いながら頷いたシンだったが、まさかチェギョンが目を腫らすほど泣いた理由が自分にあるとは

友人であるガンヒョンにさえ言えなかった



シンが教室に向かうとチェギョンはいつも通りルーム長の仕事をきちんとこなした

だが・・・やはりずっと俯いたままで、顔を上げようとはしない

チェギョンはその日、部活に姿を現さなかった

翌日も・・・翌々日も・・・部活には来ようとしないチェギョン

自分に原因があるとはいえ、心から望んで拒んだわけではないチェギョンの想い

シンは段々、そんな毎日に耐えられなくなってくる

業を煮やしたシンはそのあくる日、職員室にチェギョンを呼び出した

『シン・チェギョン・・・なぜ部活を休んでいるんだ?』
『イ・シン先生・・・すみません。ちょっと風邪気味で・・・』
『もう三日も部活に来ていない。今日は必ず来るように・・・』
『今日は病院に行くので、部活はお休みします。』
『シン・チェギョン!!今日は絶対に来なさい!!』

何も答えずに職員室を去っていくチェギョン・・・その様子を見ていたミン・ヒョリンが、シンに話しかけて来る

『イ・シン先輩、反抗期なんじゃないですか?あの子…元々反抗的な子ですし放っておけばいいんです。
それより今週末・・・』
『ミン先生、私の精との事に干渉しないでくれ。今週末?別件で約束が入っているんだ。』
『あ・・・そうでしたか・・・』

シンの不機嫌な様子にたじろぎ、すごすごと自分の席にミン・ヒョリンが戻っていったとき、

チェギョンは職員室の扉を閉めようとして一瞬だけシンを見つめた

その目を見てしまった時・・・シンはどうしても今日こそはチェギョンと話をしなければと覚悟を決めた

自分から拒否したチェギョンの想い

だがそれは本意ではない

そのことをシンは・・・チェギョンに告げてしまうのだろうか・・・



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一話で急展開になってしまいました(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

この後さらに急展開が
二人を待っているのです❤

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