『ではイ・シン先生失礼しま~す!』
チェギョンがたくさんの集配物を持って職員室を去っていった後、シンは小さく溜息を吐き再び書類に
記入をしていた
そんなシンの元に誰か近づいて来る
『シン先輩♪』
明らかに親しみを込めた媚びるようなその口調に、ぎょっとしてシンが顔を上げると・・・そこには大学時代の後輩
ミン・ヒョリンが立っていた
『ミン・ヒョリン・・・なぜ君がここに?』
『ふふふ・・・ハン先輩のお見舞いに伺ったら、シン先輩が帰国されると聞いて・・・
慌てて前の学校を辞めたんです。』
『(余計なことを・・・)それでここの学校に再就職したのか?』
『ええ。ちょうど欠員があったので容易かったんです。先輩~~早速帰国祝いをしなくちゃ♪
私・・・メンバーを集めますから。』
『いや、ミン・ヒョリン・・・少し待っていてくれないか?俺も帰国したばかりで
まだハン先輩の見舞いにさえ行けていないんだ。』
『わかりました。早くいろんなことを済ませちゃってくださいね。』
『あぁ・・・』
なんだか面倒なことになったなとシンは思った
なぜならこのミン・ヒョリンは、学生時代散々追い掛け回された女性だからだ
何度断ってもいつか振り向いてくれると信じている、おめでたいタイプの女性だった
(はぁっ・・・)
シンは椅子から立ち上がると、大学で同期だったイ・ガンヒョンがいる保健室に向かった
『よっ!ガンヒョン。』
『イ・シン!!来たわね~♪』
『あぁ、ハン先輩の頼みだ。もちろん来るさ。だが・・・なぜミン・ヒョリンがこの学校にいるんだ?』
『アタシも唖然としたわよ。夏休み中にこの学校にやってきたの。いきなり≪イ・ガンヒョン先輩~♪≫なんて
抱きつかれて虫唾が走ったわ。』
『俺も先ほどいきなり机の横に立っていて、なんだか怖かった。』
『あの子・・・執念深いから気を付けないとね。』
『あぁ。ところでギョンは元気か?』
『ギョン?とっても元気よ。チャン航空でバリバリ働いているわ。』
『一日も早くガンヒョンを嫁に貰いたいんだろう。』
『ふふふ・・・まだ早いわよ。ところでハン先輩のお見舞いに行った?』
『今日行ってくるつもりだ。先輩の願い通りに担任になった報告もしないとなな。』
『これでハン先輩も安心して療養できるわ。』
『そうだな。じゃあガンヒョンまたな。授業が始まるから・・・』
『ええ。新米先生頑張って!!』
ガンヒョンにエールを送られ沈んだ気持ちを浮上させる事が出来たシンは、授業の為教室に向かった
そしてその日の放課後・・・クラス名簿を見ながらシンは溜息を吐いていた
(ったく・・・あの子猫、数学だけダメなんだな。ハン先輩の世話になっていたというのも、本当かもしれないな。
放っておけないタイプだし・・・。っつ・・・)
今更ながらにチェギョンを放っておけなかった自分を悔いて、その反面放っておかなかったことに安堵する
『さて・・・ハン先輩の顧問だった部活に顔を出すか・・・』
シンはハンが顧問をしていた美術部に向かっていった
そして部室の扉を開け、またまた唖然とする
(こっ・・・ここにもシン・チェギョンが・・・)
ちょうどスケッチブックから顔を上げたチェギョンと視線がぶつかり、シンはあまりの偶然の一致に呆気にとられた
そしてそれはチェギョンも同様だった
(あっ・・・イ・シン先生、美術部の顧問もするんだ~♪)
そう思い改めて顔をじっと見てしまうと、妙にあの日のニアミスキスを思い出し意識してしまう
(あぁ・・・色即是空色即是空・・・)
平常心を取り戻そうとチェギョンは再び視線をスケッチブックに向け、デッサンの続きに集中した
部活が終わり部員全員が帰った後で、チェギョンはシンに話しかけた
『イ・シン先生・・・・美術の心得なんて何もない・・・』
『仕方がないだろう?ハン先生の代わりなんだから。それに俺は写真専攻していたんだから・・・
絵画になど詳しくない。』
『写真の方なんですか?』
『あぁ。だから戸惑っている。』
『それは戸惑いますよね~~!!ところでイ・シン先生・・・今日の授業の事なんですけどぉ~・・・』
徐に教科書を開いたチェギョンに向かってシンは拒絶するように首を横に振った
『君はもしかして・・・こうやってハン先生の個人授業を受けていたのか?』
『えっ?いや~~ハン先生は妻帯者ですし、時にはお家にお邪魔して教えて貰ったり・・・』
『なんて奴だ・・・。言っておくが俺は、一生徒だけに目を掛ける気はない。』
『でもぉ~~私の数学の点数が先生の評価にも繋がるんです。お願いしますよぉ~~!!』
『いや・・・ダメなものはダメだ。』
『問一だけでいいから~~!!』
『だっ・・・』
断固として拒否するつもりだった
だが・・・あの時掠めてしまった唇を尖らせて哀願するシン・チェギョンの目に、シンはどうも弱いらしい
元々放っておけるタイプの娘ではないことも重々承知していた
『仕方ないな・・・一問だけだ。』
『わぁ~い♪』
そう・・・この場合一問で言わるはずがないのだ
結果的に本日の授業のわからないところを徹底的に教える羽目になったシン
陽もとっぷりと暮れた頃、二人は漸く部室の鍵を掛けた
『じゃあシン・チェギョン、気を付けて帰りなさい。』
『はい。イ・シン先生、どうもありがとうございました~♪』
元気よく自転車に乗って帰っていく後姿を見送り、それからシンは自分の車に乗り込むとハンの入院している
病院へと向かった
<トントン>
『どうぞ。』
個室の扉を開けると、ベッドに横たわったハンの姿があった
『先輩・・・お加減いかがですか?』
『あぁシンじゃないか。よく来てくれたな。』
『本日より先輩の代わりに担任を引き受けました。美術部にも顔を出しました。』
『そうか。色々とすまないな。お前には本当に世話になって・・・。』
『いいえ、昔先輩に受けた恩に報いるには容易い御用です。』
『困ったことはなかったか?』
『困ったことですか?いいえとくには・・・。あっ先輩、シン・チェギョンという生徒に数学の個人授業を
していたのですか?』
『ああ。素直ないい子だろう?』
『ええ、それは確かにそうですが・・・。』
『あの子はとてもしっかり者で面倒見もいいからルーム長や面倒ごとを引き受けてしまうタイプでな
放っておけないんだ。』
放っておけない・・・ここにもチェギョンに対して同じ思いを持つ人間がいたと驚くシンだった
『家内にも懐いていて、うちに来るとまるで姉妹のように家内を慕うから
家内もチェギョンの事をすごく可愛がっているんだ。』
『そうでしたか・・・。』
『シン・・・面倒かもしれないが、あの子の事をちゃんと面倒見てやってくれ。
何かあれば一人で抱え込んでしまう子だ。そうならない様にちゃんと見ていてくれ。』
『わかりました。』
最終電車に乗り遅れ一人駅のベンチで俯いていたチェギョンを思い出せば、それも十分頷けた
深くは聞かなかったがチェギョンのようなタイプの子が、一人であんな場所に遊びに行くとは思えない
恐らく一人取り残されてしまったのだろう
自分ではチェギョンに拒絶の言葉を言っておきながら、結局面倒を見ることになった上に
更にはハンにも頭を下げられてしまい、シンは拾った子猫にどんどん関わり深みに嵌っていく自分を感じていた
いやいや本当に暑いですね。
あ・・・これからお出かけなので
頂いたコメントのお返事は
夜…もしくは明日させていただきます。
明日はふぅめる通信とマジカル・多肉通信で
お送りいたしますね~~❤
あ・・・これからお出かけなので
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