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Channel: ~星の欠片~
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晩夏の熱風 1

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それは・・・シン・チェギョンが高校一年生の夏休みを終える直前の事だった

夏休み最後の週・・・友人と一泊の海水浴に出かけたチェギョンは、あまりに露出の少ない水着だっためか

はたまたガードの固いその性格が災いしてか、旅先で素敵な出逢いにも恵まれず

気が付けば友人たちは全員がフェードアウトし帰りの電車にも乗り遅れ、ただ一人駅でがっくりと項垂れていた

『もぉっ!!みんな一体何なのよ。私だけのけ者にしていなくなっちゃってさ・・・
こんなところで一人で野宿だなんて・・・どうしたらいいの?』

カバンから財布を取り出しチェギョンは残金を確認してみる

どう考えても帰りの電車賃しか残っていない

『あぁぁ・・・こんなところにいたら、きっと狼の餌食だ・・・』

実際・・・狼の餌食にも選ばれなかったというのに、この期に及んで一人ぼっちな自分に憔悴する

『はぁぁ・・・どうしようか・・・』

駅の外に置かれたベンチの上で膝を抱えて丸くなったチェギョンに、どうやら男が声を掛けてきたようだ

『君・・・どうかしたのか?』
『あ・・・(狼だ。ヤバいっ!)』

チェギョンは更に身体を小さくし、まるでその辺りに転がっている石にでもなったかのように振る舞った

『君?聞こえないのか?』

声を掛けてきた男は、乗っていた車の運転席から降りるとチェギョンに近づいた

そして丸く縮こまっているチェギョンの肩をそっと叩いた

『君・・・こんなところにいたら危ないだろう?』

(あんたみたいな人が一番危ないって!)そう思いながら渋々チェギョンは顔を上げた

するとそこには今までの人生の中で見たこともないような、イケメンがそびえたっていることに気が付く

(ひっ・・・すごいイケメン。でも・・・こういうイケメンの方がヤバいよね。きっと・・・)

警戒心を漲らせチェギョンはじっとその男を観察する

『どうしたんだ?こんな時間にこんな場所で一人でいるなんて・・・』
『・・・電車に乗り遅れたんです・・・』
『どこまで帰るんだ?』
『ソウル・・・です。』
『だったら方向が一緒だ。送っていこう。』
『い・・・いえ、結構です。始発を待って帰りますから・・・』
『始発?それまでここにいるつもり?』
『はい。』
『俺に送られるのが嫌なら、すぐそこに交番があるから行こう。』
『えっ?そっ・・・それは・・・』
『未成年だろう?こんな場所に置いたままでは、俺も気が咎めて帰れないし・・・』
『だっ・・・大丈夫です。それに未成年じゃありませんっ!』

その男はじろじろとチェギョンを凝視し、くすっと笑った

『君がそういうならそれでもいいけど、とにかくここにいたら危ない。車に乗るかそれとも交番に行くか
どちらかを選択してくれ。』

さすがのチェギョンも交番などに連れて行かれては堪らない

すぐさま学校に連絡され、なんらかの処罰を下される事だろう

困り果てたチェギョンだったが、話した感じではどうやらこの男は≪狼≫ではなさそうだと判断し

苦渋の選択をしたようだ

『わっ・・・わかりました。車に乗ります。ソウルまで送ってください。』
『くくっ・・・あぁわかった。』

男は助手席のドアを開け、チェギョンを招き入れた

チェギョンは荷物一切を持って助手席に乗り込んだ

『荷物・・・後部座席に置いたらどうだ?』
『はい。』

男に促されるままチェギョンは助手席から身を乗り出し、荷物を後部座席に置いた

チェギョンがシートベルトを付けると、その車はソウル方面に向かって出発した

『あのっ・・・通りすがりなのに面倒かけてしまってすみません。私はシン・チェギョンと言います。
・・・19歳です。』
『いや・・・これも何かの縁だ。気にしなくていい。俺はイ・シンだ。』

乗っている車は決して派手ではないが、高級外車と思われた

『イ・シンさんは・・・どんなお仕事をされているんですか?』
『あ?あぁ・・・まぁ・・・接客業かな。』
『ひょっとして・・・ホストさん?』
『あ・・・・あぁっ?違うっ!昼間の仕事だ。』
『そうなんですかぁ・・・高そうな車に乗ってるから、ホストさんかと思った。くすくす・・・』
『君は?まだ学生だろう?』
『えっ?ええ・・・大学生です。』

19歳と言ってしまった手前高校生だと今更言えないチェギョンは、咄嗟に嘘の上塗りをした

もちろんシンもそれを信じているわけではない

見るから高校生と思しき少女が、海辺の駅で野宿するのを見ていられなかったから声を掛けたのだ

大学生だったらもっと世渡りが上手だろうから放っておいたはずだ


他愛のない会話をしながら車はソウルに向かって走っていく

しかし・・・心地よく流れる音楽に混じり妙な音がシンの耳に届いた

≪グゥ~ッギュルルル~~♪≫

シンは隣に座ったチェギョンに視線を向け問いかけた

『君・・・もしかして腹減ってる?』
『えっ?そっ…そんなことありませんって!!』

しかし間髪を入れず≪ギュルルルン~♪≫と鳴きだすチェギョンの腹の虫

シンは可笑しそうに笑い車を通りがかりのコンビニに停めると、チェギョンを車中に残し一人店内に入って行った

戻ってきたシンの手には買い物袋が握られていた

『ほら・・・腹減ってるんだろう?』

チェギョンの膝の上に置かれた買い物袋・・・その中には飲み物とサンドイッチが入っていた

『えっ?いいんですか?』
『あぁ・・・あ!コーヒーは俺にくれ。』
『はい。』

チェギョンは買い物袋の中からエスプレッソコーヒーを取り出すとシンに手渡した

『かたじけない・・・いただきます~♪』

遠慮などせず袋に入っていたサンドイッチを頬張るチェギョン・・・一緒に入っていたサイダーで喉を潤す

『はぁ~生き返った♪』
『くくっ・・・相当腹が減っていたんだな。』
『はい~!帰りの電車賃しかなくって・・・ご馳走様でしたぁ♪』

屈託なく笑うチェギョンに微笑みかけながら、シンは再びソウルに向かって車を走らせた

だが・・・しばらくすると助手席に座ったチェギョンは、コックリコックリと居眠りをし始めた

必死に目を開けようとするが、とうとう我慢できず隣で眠ってしまったようだ

(くっ・・・なんて忙しい子だ。見ていて本当に飽きない、くくくっ・・・)

助手席からはすやすやとチェギョンの寝息が聞こえて来る

シンはカーステレオの音量を落とし、眠ってしまったチェギョンの妨げにならない様安全運転でソウルに向かった



チェギョンが告げた場所に到着した時、すでに空は白み始めていた

シンは車を停めるとチェギョンの肩をそっと揺り起こした

『君!!シン・チェギョンさん・・・到着だよ。』
『えっ?わっ!!』

慌てて首を持ち上げたチェギョンは、声のする方向に顔を向けた

その動きがあまりに急激だったためか、チェギョンの顔を覗き込んでいたシンの顔と衝突してしまった

『うわっ!!』
『わわっ!!』

掠めるように触れた唇・・・

『あ・・・』
『いや・・・これは・・・』
『あ・・・』
『到着・・・したよ。』

チェギョンは慌てて外の景色に目を向けた

『あ・・・ありがとうございました。』

慌てて後部座席から荷物を取りチェギョンは助手席のドアを開けた

『あ・・・あぁ気を付けて。』
『は・・・はい。あの・・・今のは・・・』
『あ・・・そうだな。ここまでの運賃として貰っとく・・・』
『は・・・はい。で・・・ではっ!!』

車から降りたチェギョンは、その場で深々と頭を下げそれから自分の家に向かって小走りしていった

その後ろ姿を見送りながらシンは苦笑する

(っつ・・・下心なんかなかったのに、こんな別れ方になってしまって・・・
携帯番号さえ聞けなかったな。まぁ・・・縁があればまた逢えるだろう。家も近いしな・・・)

そう・・・シンの家とは車で10分ほどの距離しか離れていなかったのだ

なんとなく胸の中に残った甘酸っぱい感覚・・・そんな思いを抱きながらシンは自宅へと戻っていった





『母さんただいま。』
『シン~~もう遅いじゃないの!あ・・・違ったわ。早いお帰りね。』
『仕方ないだろう?深夜の到着だったんだから・・・。それより車を駐車場に届けて貰えて助かったよ。』
『だって~あなた、いつ帰って来るかわからないっていうんですもの。
どれ?留学からやっと帰ってきた、自慢の息子の顔をじっくりと拝ませて貰おうかしら~♪』

母ミンはシンの頬に手を当て満足そうに微笑んだ

『ん~~~三年ぶりだけどやっぱりいい男だわ~♪どう?留学は楽しかった?』
『あぁ、とても為になったよ。それより・・・帰りに子猫を拾ったんだ。』
『えっ?子猫?どこにいるの?車?』
『可愛い子猫が困っていたから、家に送り届けてきたんだ。』
『まぁ~そんなに可愛い子猫だったら、お母様も見たかったわ。』

大学を卒業してから三年・・・海外の大学院で学んできたシン

偶然拾った子猫にまた逢える日が来るのだろうか・・・



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新しいお話です❤
良かったらお付き合いくださいね~♪

さすがにこんなお天気で、≪涙の雫≫を更新する気にはならなかったよ。
各地台風の被害はいかがでしょうか?
どうぞお気を付けくださいね。
管理人地方は、雨も上がり寒いくらいです。

あ!長々と夏休みをありがとうございました~❤
お話再開です。


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