(チェギョンside)
久しぶりの男装・・・それにダンス
劇団を離れてからもう一年以上・・・少し身体がなまったかしら?
ガンヒョンもさすがに疲れたみたいで、私と一緒に椅子に腰かけ飲み物を口に運んだ
私は授乳中であるからアイスティー。ガンヒョンはアルコールに強いからシャンパンで喉を潤す
その時不意に私の隣に男性が立った
『妃殿下・・・あの、少しお話させていただいてもよろしいですか?』
『ええどうぞ。あなたはどなたかしら?』
仮面をつけてしまっている上に王族の子息にはあまり馴染みのない私
おやっ?その背後にシン君の姿を発見!
あのヤキモチ妬き皇子・・・早速偵察に来たわね?
もぉ~人妻の私に興味を持つ男性なんているはずないでしょう!
もちろん私はシン君の近づいてくる気配に気が付かない振りをし、隣の椅子にその王族の子息を座らせた
『申し遅れました。僕は元王族会長老の孫のパク・ヨンと申します。
本来ならば僕などはご招待いただけないのが筋なのに、皇太子殿下の温情で
この場に来られたことを深く感謝いたします。
祖父の愚かな振る舞いで妃殿下にご迷惑をおかけしたことを、心からお詫び申し上げます。』
この人はあの時の長老のお孫さんだったのね
でも随分と腰の低い人だわ
長く女優を続け女性の中で切磋琢磨してきた私には、この人が悪い人ではないとすぐにわかった
『それをわざわざ仰りにいらしたのですか?』
『はい。それもありますが、実は申し上げにくいのですが・・・お願いしたいことがございます。
ハン家のご令嬢を紹介していただきたいのです。』
私は一瞬身構えた
ハン家と言えば、今皇帝陛下から一番の信頼を得ている一族だ
この純朴そうな顔をしながら、実は王族の中で再び権力を握ることが目的だったとしたら・・・
私の人を見る目も相当曇ってしまったことになる
私は少し強い口調でパク・ヨンさんに詰問した
『なぜです?現在ハン家が皇帝陛下の信頼を得ているという理由でしたらきっぱりお断りいたします。』
するとパク・ヨンさんはプルプルと顔を横に振り、滅相もないといった風に私に返答する
『あ・・・申し訳ありません。僕は口下手でして、上手な説明ができなくて・・・・
彼女は妃殿下に対する忠誠心が並外れた女性だと聞き及びました。
王族会との顔合わせの席では、危険な目に遭ったとも聞きました。
その原因の一端は私の祖父にあり、そのことをお詫びしたいのと同時に
そのような勇敢な女性と友人になりたいのです。』
『パク・ヨンさん・・・あなたはハン家のご令嬢がどの方か知った上で仰っているのですか?』
『はい。妃殿下と最初にダンスを踊られた方ですよね?』
『どのお嬢さんか知った上で仰っているのですね?でしたらご自身で声を掛けたらよろしいかと・・・』
『元長老の孫がどんな顔をして話しかけられましょうか。
どうかお願いいたします。妃殿下・・・是非お力添えを・・・』
『でも~ただお友達になりたいだけなら、何も私が出ていくまでもないと思いますが・・・』
ちょっと意地悪だったかしら
だって友達になりたいだけなら、そんなの自分で声を掛けろってものよ!
私の手を煩わせる必要はないんじゃないの?・・・とパク・ヨンさんの本心に気が付いて
つい意地悪をしてしまう
『友達以上になりたいのです。』
『だったら最初からそう仰ってください。ほら・・・早くしないと彼女の周りに王族達の子息が集まりそうですよ。』
『あ・・・お願いです妃殿下。私を彼女に紹介してください。』
切羽詰まった表情。シン君に負けず劣らずの背丈に恵まれていながら、なんて情けない
まぁ上手くいくとかいかないとかは私の知ったことではない
ひとまず二人を引き合わせちゃうか~♪
私はパク・ヨンさんを率いてハン家のご令嬢の元へと向かった
(シンside)
チェギョンに王族の子息が近づいたのを不審に思い、こっそり聞き耳を立てていた俺
なるほど・・・チェギョンに橋渡しを頼みたかったのか
しかも元王族会長老の孫だという
ここに来るのも相当勇気がいったことだろう
元長老の孫というだけで、すべての王族からのバッシングにあうからな
チェギョンにハン家の娘を紹介してもらったパク・ヨンは、どうやらハン家の娘と親しく話ができたようだ
二人がダンスを踊り始めた時、チェギョンは漸く俺の存在に気が付いたように壁際にいる俺の元にやってきた
『もぉっ!ヤキモチ皇子!聞き耳立てているなんて・・・』
『人聞きの悪い事をいうな!妻を心配するのは夫の役目だろう?』
『あの二人・・・どうなるかしら?』
『さあな。あの二人だけじゃない。なんとなくカップルがたくさん出来上がっているようだが?』
チェギョンはダンスを踊っている王族を数え驚いたようだ
『いつの間にっ!』
『いや・・・いいことだ。王族の会議に出て来るのはまだ親の世代だ。なかなか子供たちの世代に出逢いはない。
この中の一組でも二組でも、上手くまとまってくれるとよいのだが・・・』
『本当に・・・・。あ!そうだガンヒョン!!』
チェギョンは先ほどまでガンヒョンと共に休んでいた場所に目を向け、その場にガンヒョンさんが
いないことに気が付きキョロキョロとホール内に視線を漂わせた
『ガンヒョンさんならほら・・・あそこに。くくっ・・・』
俺はガンヒョンさんのいる場所に視線を向け含み笑いをする
『えっ!ギョン君と踊ってる・・・』
そう・・・ギョンは壁の花であることに我慢ができなくなり、無理やりガンヒョンさんをホールに誘ったのだ
男装の麗人とギョンが踊る姿はなかなか不思議な光景だったが、それを見ている俺もやはり
我慢ができなくなってしまった
『チェギョン・・・俺達も踊ろう。』
『えっ?でも今日は男装だし・・・』
『こんな機会は滅多にない。踊ろう。』
俺は強引にチェギョンの手を取るとホールの中央に誘い、その腰を抱いた
もう二度とこんな機会は訪れない・・・俺にはそんな予感があった
チェギョンもガンヒョンさんも立派にゲストの接待を務めあげ、お開きの時間が近づいてきた頃
三人の乳母たちが困惑しながら大泣きするギョムを連れ迎賓館を訪れた
もちろん・・・閉会の頃にギョムを連れてくるようにと命じていたのだが、ギョムのあまりのぐずりっぷりに
少し早い時間の登場となった
『殿下・・・妃宮様・・・』
『うぎゃぁぁぁぁ~~~~っ!!』
すかさずチェギョンは乳母の手からギョムを抱き上げ、胸元に抱いた
男装をしながらも十分すぎるほど母性に満ち溢れたチェギョンの表情に、ギョムは心底安堵した面持ちで
チェギョンの胸に顔を埋め、そして不思議そうな顔でチェギョンを見つめた
チェギョンも微妙な面持ちでギョムに微笑みかけた
恐らく胸が張って仕方がないのだろう
ゲストたちは一斉にギョムの顔を見ようと集ってくる
『これがギョム皇子♪』
王族の娘たちはうっとりとした面持ちでギョムの顔を覗き込み、ガンヒョンさんに至っては慈愛に満ちた目で
ギョムを見つめた
ギョムの幼くして生まれ持った高貴なオーラは、ゲストたちを魅了したようだ
仮面舞踏会はお開きとなり、それぞれに家路についた
後でコン内官から聞いた話では、パク・ヨンはハン家の娘を送り届けたそうだ
俺もギョンも久しぶりの妻の男装に興奮冷めやらず、その夜お互いに制していた決まり事を自ら破ってしまった
結果・・・チェギョンは第二子を授かりガンヒョンさんも子供を授かった
つまり仮面舞踏会は王族に数組のカップルを成立させただけでなく、俺達二組の夫婦にコウノトリを招く結果と
なったわけだ
まぁこれも輝ける国の未来のために貢献した・・・と言えるだろうか。くくくっ・・・
(画像は薔薇の奥様ことkakoさんからお借りしております。お持ち帰りはご遠慮ください。)
なんか・・・緊急地震速報って言葉を聞いただけで
心臓がバクバクしちゃうのは私だけ?
なんか・・・緊急地震速報って言葉を聞いただけで
心臓がバクバクしちゃうのは私だけ?