(チェギョンside)
私たちが婚姻してそれほど経たない頃の事だった
親友であり元ルームメイトだったガンヒョンから電話が来たのは・・・
『チェギョン?久しぶり。今大丈夫かしら?』
『うん。ガンヒョン大丈夫よ~♪』
元々マメに連絡をくれるタイプじゃないガンヒョンが連絡をしてきたということは、きっと私に話したい何かが
あるのだろうと直感した
『幸せにしてる?』
『うん。パレードの時はありがとう。みんなの顔見たら涙出ちゃった・・・』
そんなことも取り繕わず素直な気持ちが口に出るのは、親友のいいところだ
『よかったわ。安心した。』
『ところでガンヒョン今日はどうしたの?何か話したいことがあるんでしょう?』
『えっ?あ・・・ええ。あのねチェギョン、アタシ今度の公演を最後に引退するわ。』
『えっ?うそっ・・・本当に?』
『ええ。アンタが引退してからなんだかつまらなくなっちゃったのよ。』
それは嘘だと思った。恐らくガンヒョンも私と同じように、未来に危機感を感じたのだろう
私達はそれだけ揺れるお年頃だった
『それだけ?ただそれだけで引退するの?』
『ううん。ギョンのプロポーズを受けたわ。』
『なんと!!チャン航空次期社長夫人?』
『まだ早いわよ。』
『でも意外と早かったな。もう少し焦らすかと思った。くすくす・・・』
『だから~アンタがいなくなって張り合いがなくなったっていうか・・・。アンタが東宮に引っ越しちゃってから
アイツ何かと理由付けてマンションに居座るものだから、このままじゃあよくないかなって思って
けじめをつけたのよ。』
『そっか~。でもいつかはそうなるかなって予感していたよ。おめでとう。幸せになってね。』
『ええ。』
ガンヒョンの引退公演を観に行きたい
でも皇太子妃になった私に、そんな自由は許されない
一人悶々としていたその時、シン君からとても素晴らしいプレゼントを頂いた
『チェギョン・・・イ・ガンヒョンさんが引退するって聞いたか?』
『うん。つい先日連絡が来たわ。』
『引退公演・・・行きたくないか?』
『行きたいけど・・・でも・・・もうそんな勝手なことできない・・・』
『いつも俺が取っていたVIP席、押さえたぞ。』
『えっ?・・・シン君、それ本当?』
『あぁ。ガンヒョンさんの引退を見届けに行かないと・・・だろう?』
『うん~~♪ありがとうシン君。』
私は喜びのあまりシン君の首元に腕を回し、力いっぱい彼を抱き締めた
彼は私の腰を抱き耳元に囁く
『お忍びデートしよう。チェギョン・・・』
『男装で?』
『っつ・・・女性の格好でだ。普通のカップルとしてデートしよう。』
『うん~~~♪』
なんて気のの回る私の夫♪
思いがけず私はシン君と一緒にガンヒョンの引退公演を見守れることとなった
もちろん表立って花束を渡すなんてできないだろうけど、ただその場所に行けるだけでいい
私はその日が来るのを指折り数え、皇太子妃としての公務に励んだ
(シンside)
イ・ガンヒョンさんの引退公演の日、俺とチェギョンは相当ラフなスタイルで観劇に出かけた
俺はジーンズに革ジャン、チェギョンもジーンズにGジャン
俺に比べてチェギョンは非常にそういったスタイルが馴染んでいるように見えた
確かにそうだろう
劇団にいるとき芝居の稽古などには、そういった格好で出かけることが多かったと言う
『さて行こうか。』
劇場に到着したとき、俺はチェギョンと手を繋ぎ通い慣れたVIP席へと向かった
イギサやチェ尚宮・・・それに女官たちは≪ラフなスタイルで≫と命じたのだが・・・
やはりスーツ着用なのは仕方がない
いよいよ舞台の幕が開き、ガンヒョンさんは舞台の中央でスポットライトを浴びる
『はぁ~さすがガンヒョンはカッコいい!私には絶対に出せないクールさを持っているからね~~♪』
興奮状態で舞台を食い入るように見つめるチェギョン
いや・・・君だって傍から見ていた頃は十分クールだった
君がスイートだって知ったのは婚礼してからだな。きっと・・・くくくっ・・・・
実は今までチェギョン以外の男役は観たことがなかったが、確かにイ・ガンヒョンさんは素敵な演技者だと思う
だが・・・やはり君にピン!ときた俺は、もうその時点で運命を感じていたのだろうな
チェギョンよりもスレンダーでクールな魅力を持ったガンヒョンさんは、一体どんな奥方になるのだろうか・・・
そんなことを思いながら俺は時折チェギョンが呟く独り言に相槌を打ち楽しく芝居を観劇していた
芝居が終わりカーテンコールを待つ間、俺とチェギョンはその時の大変だった話などしていた
『あの時は大変だったのよ。いきなりドレスに着替えさせられてメイクだって直されて・・・。男からいきなり女よ。』
『だろうな。でもあの時の君はすごく綺麗だった・・・』
『いやん❤』
チェギョンの引退公演の時に思いを馳せていた時、どうやら客席の間の通路は
ガンヒョンさんに花束を渡そうというファンで溢れかえっていた
VIP席から何の気なしに一階を覗いてみると、客席の一番後ろが何やら混雑しているようだ
ギョンもきっとその中に紛れているに違いない
俺はギョンが何をやってくれるのかと楽しみで仕方がなかった
俺と同じではチャン航空副社長の名が廃るからな・・・くくくっ・・・・
緞帳が上がりブルーのロングドレスを着たガンヒョンさんが、レッドカーペットを敷いた階段を下りて来る
そしてチェギョンと同じように女性の歌を歌うのかと思ったら・・・男役で歌った一番好きな歌を歌い始めた
『私・・・この歌が大好きだったの。』
チェギョンも感極まったらしく、頬に涙を零しながらガンヒョンさんの歌を聴き入っている
俺とチェギョンは歌い終わり最後の挨拶をしたガンヒョンさんに惜しみない拍手を贈った
そしてガンヒョンさんの元には、大勢のファンが押し寄せたくさんの花束を手渡される
さすがのガンヒョンさんも少し涙ぐんでいるように見えた
ファンの最後の一人が花束を渡し終えた時・・・会場内で何やらどよめきが起こった
ギョンか?
俺とチェギョンは身を乗り出して一階部分を凝視した
すると何やらたくさんの風船が通路を歩いていく
10や20なんてもんじゃない。恐らく100はあるかもしれない
ギョン・・・一体何をする気だ?いや・・・その時点ではギョンの姿は見えていないのだが・・・
そのたくさんの風船の塊がガンヒョンさんの元に辿り着いた時、それらは一斉に会場内に放たれた
風船が劇場内を飛んでいく
そして風船が飛び去った後その場にいたのは、やはり・・・ギョンだった
『ガンヒョン!!俺のガンヒョン~~♪』
ステージ上のマイクがギョンの声を拾う
『一緒に生きていこう~~♪』
両手を広げたギョンはガンヒョンさんがステージ上から降りるのを待っている
っていうか・・・手を貸さないのか?
そう思った時ガンヒョンさんは、いきなりステージ上からギョンめがけてダイブした
それを必死に受け止めたギョン
客たちは一斉に立ち上がり二人に向かって大きな拍手を贈った
『幸せになります!!』
それがガンヒョンさんのファンに向けた最後の言葉だった
二人が腕を組んで退場していったあと、俺とチェギョンは放心状態でしばらく身動きができなかった
『ギョン君・・・やるなぁ。』
『まさかそこまでやるとは俺も思っていなかった。』
『シン君…負けた気がする?』
『馬鹿なことを言うな!想いは決して負けてない。』
俺達は抱き締め合い気を鎮めてからようやくVIPルームを出ていった
お互いの親友同士の結婚が決まり、喜びと感激を胸に詰め込んだまま俺達は幸せな気持ちで
東宮に戻っていった
(本日の画像もマジカルキューティーです。)
なんだか今頃になって梅雨らしいですね。
ムシムシしております。
暑くてもやっぱりお天気が好きだなぁ・・・
明日はこっそり書いていたお話を出しちゃおうかな~♪
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
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