(チェギョンside)
シン君に手を引かれ東宮殿に向かった私
頬に当たる風は爽やかで、時折私の顔を見下ろしてくる彼の笑顔がとてもこそばゆく感じる
そんなに私が好き?その都度問いかけそうになって、なんだか照れくさい気持ちになる
いや・・・いけない!気を抜いてはいけないんだった
私は今、皇太子殿下イ・シンの婚約者を演じているんだった
気を引き締めよう・・・
気合を入れようとして、自然と彼と繋いだ手に力が入る
すると彼はそれをさらに握り返してくる・・・
あぁ・・・手の血流が止まっちゃいそう
ようやく東宮殿に到着し、彼が私を誘導していこうとしたその時・・・コン内官さんがシン君を呼び止めた
『殿下・・・すでに昼食のご用意ができているそうですので食堂へ・・・』
『そうか?わかった。』
彼は私をまず食堂に案内してくれるようだ
『チェギョン昼食にしよう。』
『ええ。』
食堂に入っていくと大きなテーブルのあっちとこっちに料理が並べられていた
えっ?こんなに離れて・・・食事するの?
彼が私の椅子を引いてくれ、私は促されるままそこに腰かけた
ん~~遠いよ。この距離すごく遠くない?
次々と料理が運ばれてくる。もちろん海外公演の時に社交界の人のお招きだって受けた私だもの
テーブルマナーは完璧よ
でも・・・生まれも育ちも民間人だから、本当は気取らない食卓が大好きなの
『さぁチェギョン食べよう。』
彼がそう促すのに頷いて食事を摂り始めた私・・・げっ!女官さんもみんなずらっと並んで見ている中で
食事だなんて・・・
いやいやいや・・・私は今、皇太子の婚約者だ
こんなことに動じてはいけない
でも不思議ね。彼はそんな私の気持ちを読めるみたいに、仕える人達に退出を命じた
『コン内官・女官もすべて退出してくれ。彼女とは食事さえあまり一緒にしていない。遠慮してくれないか?』
『はい。かしこまりました殿下。では何かございましたらお呼びください。』
皆さんが食堂から出て行ったあと、彼は私に微笑みかけた
『すまないな。俺は慣れているが食事時に人がいるのは嫌だろう?』
ひょっとして・・・私、顔に出ていた?
『別に平気よ。』
『じゃあ・・・みんなを呼び戻そうか❓』
『あ!!ちょっと待って・・・それは・・・』
『くくっそうだろう?』
『シン君・・・私ひょっとして、ちゃんと婚約者演じられていない?』
『っつ・・・そうじゃないさ。俺だけがわかる君の微妙な感情の変化・・・多分そんなところなんだろうな。』
シン君だけがわかる?ん~~今ひとつよくわからないけど、それだけ彼は私の事を見ているってことなのね
この先のスケジュールの打ち合わせなどをしながら、私達は楽しく食事ができた
でも私にはそのテーブルのあっちとこっちに離れている距離が、少し寂しかったりした
いつか彼と私の距離が縮まればいいな・・・そう思っている
食事が済んで食堂を出た後、彼は東宮殿の廊下を歩きながら建物の中を案内してくれる
執務室・・・彼がお仕事している場所
こんな場所でいつもお仕事していたのね
てか・・・いつもチケット予約していたのは机の上のノートパソコンかしら?くすくす・・・
部屋の隅一杯に置かれた書棚に目を向け、皇太子という立場は様々な知識をあたまに入れておかなきゃ
ならないのねと妙に感心した
だっていろんなジャンルの本がずらっと並んでいるんですもの・・・
そんな中に歌劇やオペラの本などは一冊も見当たらなかった
元々彼はそういった舞台が好きだったわけじゃないのね
もう引くに引けないところに来ているのに、私はやはり彼にとって≪物珍しさ≫だけだったんじゃないかと
何となく不安が胸を過った
(シンside)
執務室を出た後ようやく彼女を俺の部屋に案内できた
『あれ?私のお部屋は向かいだって・・・』
『あぁそうだ。だからいつ来てくれても構わない。』
つい本音が零れる
そんな俺の言葉の真意をわかっているのかいないのか、彼女は満面の笑顔を浮かべ俺の部屋に入って来る
『あれ?・・・なんだかずいぶん、私の部屋と違う。』
『君の部屋は皇太后様と皇后様のセンスで何もかもが選ばれたからな・・・』
『そうだったの。シン君の部屋はすごくシンプル。』
『あぁ余計なものは置かない主義だ。』
『そうなんだ~♪』
余計なものは置かない・・・そんな一言に自分の気持ちを込めたつもりだが、彼女に届いているだろうか・・・
チェギョンは部屋のあちこちを物珍しげに眺めている
俺はそのあとに続き、彼女に説明して回る
昨晩から・・・どういうタイミングで彼女の言うところの≪ムード作り≫ができるのか必死に考えた
考えても考えても・・・結論が出ず、ようやく二人きりの密室になったというのに俺と来たら
彼女について回っているだけのただの案内人だ
あぁ・・・こんなことではいけない
少しでも彼女に近づかなくては・・・
そう思ったとき、彼女が振り向いて後ろに立っていた俺の胸にぶつかった
『いてっ!どうしたの?』
俺を見上げ彼女は不思議そうな顔をする
『あ・・・いや。君の望むようなムード作りができなくて困っている。』
つまり・・・キスしたいという願望を彼女にぶつけてみたわけだ
彼女はじっと俺の目を見上げた後、徐に俺の手を取るとソファーに向かって歩いていく
そしていきなり俺をソファーに追いやると、俺の膝の上に座り俺の首に腕を回し引き寄せた
間近に迫ったチェギョンの顔・・・今にも触れそうな唇
もう少しで触れそうな距離まで迫った時、彼女は困り顔で呟いた
『こ・・・ここまでならリードできるんだけど・・・なぁ・・・』
みるみる赤く染まっていく彼女の頬・・・困惑した目
なんて愛らしいんだ
これほどまでに男前なリードをしておきながら、意外と純粋だ
あとは・・・俺の番だな
俺は首元に回されている彼女の腕をやんわりと解くと逆に彼女の首元に腕を回し引き寄せた
そっと触れた彼女の唇は、温かくて柔らかくて鼻をくすぐる甘い香りがつい俺を夢中にさせた
角度を変え何度も彼女の唇を堪能する
ずっと触れていたい
そんな思いは自然と彼女をソファーに押し倒す体制に導いた
そんな時・・・
<トントン>
『殿下・・・ユル殿下がお見えになられました。』
なにっ?ユル?いいところだったのに・・・
折角の俺とチェギョンの甘い時間は、従兄弟のユルによって中断されてしまった
(画像は薔薇の奥様ことkakoさんよりお借りいたしました。お持ち帰りはご遠慮ください。)
なんかまた・・・地震が多いですね。
我が家のご近所で建築工事が始まって
家が揺れるんです。
ふぅちゃんと・・・二人で怯えておりますぅ・・・
なんかまた・・・地震が多いですね。
我が家のご近所で建築工事が始まって
家が揺れるんです。
ふぅちゃんと・・・二人で怯えておりますぅ・・・