(チェギョンside)
なんだか少し不快な気分になりながら、私はチェ尚宮さんの後に続き皇帝陛下の元へ急ぐ
その時不意にチェ尚宮さんは後ろを振り返り、私に話しかけた
『チェギョン様・・・』
『えっ?・・・あ!はいっ!!』
あまりにも唐突だったから表情を取り繕えなかったわ。私は咄嗟にぎこちない笑顔を浮かべた
『気分を害されましたか?』
『あ・・・いえ、そんな~~。私も殿下の伯母様だと知りながら、むきになってしまって・・・』
『恵政宮様は元よりあぁいったお方なのです。お気になさいませんように・・・』
『はい。ありがとうございます♪』
まるで私の気持ちを知っているかのような口ぶりに、東宮の尚宮というものはこうでなければいけないのねと
妙に感心した
いや・・・感心している場合ではない
私には≪皇太子妃を立派に演じる≫という使命が課せられているのだ
本殿に入り皇帝陛下の元に案内された私・・・部屋に入ると三陛下と皇太子殿下がお揃いだった
『チェギョン!あぁすまない。今、東宮まで迎えに行こうかと・・・』
『いえ、それには及びません。シン・チェギョン、入宮して参りました。
不束者ですがどうぞよろしくお願い申し上げます。』
軽く会釈をする私・・・皇室ではそんなに深いお辞儀はしないとの予備知識は頭に入れてきたわ
『よく来た。太子が急がせたばかりに忙しい思いをさせてしまった。』
『チェギョンさん・・・どうぞよろしく。』
『チェギョンさんや…待って居ったぞ。』
民間人である私をこの皇室の人達は良く受け入れてくれたものだと、いまだに不思議で仕方がない
『誠心誠意務めさせていただきます。』
本心だった。皇太子妃もそして彼の妻の役割も完璧にこなすわ
って…意気込みだけは十分あるけど、なんたって根っから民間人の私
よほど気合を入れないと、ちょっと厄介な方もいるようだし足元を掬われる。頑張るぞぉ~~~!!
と更に気合を入れた時、皇帝陛下はこう仰った
『今日のところは太子に宮殿の中を案内してもらいゆっくりと過ごすがよい。』
えっ?そうなの?少し拍子抜けした私だったけど、退団後休む間もなかったもの
お言葉に甘えてゆっくりさせていただきますか♪
こうして私の宮殿での生活が始まった
(シンside)
恵政宮様とユルが皇帝陛下への挨拶の場で、まるで俺の婚約者を値踏みするような言い方をし
皇太后様からお叱りを受けチェギョンに逢えずに帰っていったあと、チェギョンはチェ尚宮と一緒に
皇帝陛下の部屋を訪れた
しまった!!東宮まで迎えに行かないと・・・と思っていたのに、恵政宮様の悪態に呆気にとられ
ついその場に留まってしまった
皇太后様と恵政宮様のやり取りはこんな感じだった
『皇帝陛下・・・シンの婚約者は民間人だそうですね。王族に素晴らしい女性がたくさんいたというのに
なぜ舞台女優あがりの女などを皇太子妃として認めたのです?』
まぁ・・・恵政宮様の高慢さはいつもの事だ
俺は気にも留めなかったが、皇太后様と皇后様は二人同時に恵政宮様を睨みつけた
あぁ・・・またこの部屋でバトルが始まるのか・・・いつもの事だが・・・
『舞台女優あがりとな?なぜそのような見下した物言いをする?そなたも同じ女優あがりではないか。』
『あら・・・皇太后様、舞台女優と一緒にしていただいては困りますわ。
私は国民すべてが知っているほど知名度の高い女優でしたの。』
『ほぉ・・・そうか?私は知らなかったが?』
『わたくしも存じ上げませんでしたわ。』
あぁぁ・・・皇后様までこのバトルに参戦か?
『ソ・ファヨンを・・・ご存じなかったと仰るんですか?』
『おぉ知らなかったな。婚姻が決まってようやく女優だと知ったのだ。』
『そっ・・・それは皇太后様が世間にお詳しくないからですわ。』
『あら・・・私も存じ上げませんでした。私は王族出身ですがテレビは良く拝見しておりました。
なんといっても素敵なドラマは見逃せませんからね。ほほほ・・・』
ほらみろ・・・恵政宮様の目が吊り上がっているじゃないか!
『さようでございますか。ですがシンの婚約者だって大したことはないんじゃありません?
こうして舞台女優の道を容易く捨てて、皇太子妃になることを選んだんですから。』
『いいや~とんでもない。チェギョンさんは素晴らしい女優だ。』
『全くでございます皇太后様・・・あれほどまでに人を魅了する女優に、私は逢ったことがございませんわ。』
『そうだなぁ。』 『ですねえ~♪』
顔を見合わせ嬉しそうに頷く国母二人
『ユル、帰りましょう。別にシンの婚約者など逢わなくてもいいわ!!
ではみなさんごきげんよう。』
まるで頭から湯気を噴き出しそうな勢いで恵政宮様は去っていった
そのあと皇太后様と皇后様は互いに口元を押さえ笑いを嚙み殺している
どうやら恵政宮様は皇室の国母二人とそりが合わないようだ
少し哀れに思いながらも、俺の婚約者を≪舞台女優あがり≫と見下す発言は面白くなかった
二人にやり込められて胸のすく思いの俺だった
そんな時にチェギョンが入室してきたのだ
だが・・・なんだかチェギョンも少し不機嫌そうな様子を漂わせている
いや・・・これはきっと俺にしかわからない≪愛のなせる業≫なんだろうが・・・
チェギョンが三陛下と談笑している間に、俺はチェ尚宮にこっそり問いかけた
『チェ尚宮・・・チェギョンに何かあったか?』
『あ・・・こちらに向かう途中で恵政宮様にお逢いしまして、そこで少しばかり・・・』
『嫌味なことを言われたか?』
『申し上げにくいのですが、殿下を侮辱するような言葉を・・・』
『っつ・・・そんなことがあったのか。チェギョンはさぞ嫌な気分だったことだろう。』
『いえ、切り返しておいででした。』
『なにっ?』
『先ほどの皇太后様や皇后様に負けないほどの切り返しでございました。』
『くっ・・・そうか。さすが私の選んだ女性だな。』
『その通りでございます。』
そうか・・・チェギョンはいきなり恵政宮様とバトルしてしまったんだな
それでどことなく不機嫌なのか。くくくっ・・・
皇帝陛下の部屋を退出し東宮に戻る途中、俺はチェギョンと散策をすることにした
『チェギョン・・・庭を少し歩こう。』
『ええ。』
歩きながら俺はチェギョンに話しかける
『恵政宮様に逢ったそうだな。』
『えっ?うん。どうして知っているの?』
『さっきチェ尚宮から聞いた。恵政宮様は女優だったんだ。』
『えっ❓嘘っ・・・』
『嘘つくわけないだろう?本当だ。だから君にライバル意識があるんだろうな。』
『有名な人だったの?』
『う~~んどうだろうな。ニャキペディアでも書かれている項目は少ない。
却って君の方が多いくらいだ。』
『えっ?私・・・ニャキペディアに載っているの?』
『あぁ、生年月日から出演作品すべて載っている。』
『詳しいのね。』
『くっ・・・当たり前だろう?俺は君の婚約者だ。まだそのページは項目が増える。』
『皇太子妃?』
『あぁその先も・・・』
俺はそっと彼女の指先を手繰り寄せ手を握りしめた
こんな小さな手で今までよく男役をやってきたものだと感心する
彼女が入宮しようやく俺達の恋愛できる環境が整った
俺はそっと彼女の横顔を窺い見る
とても愛らしく毅然とした横顔だ
さぁ・・・まずは俺の部屋から案内しようか。くくっ・・・
(画像は近所の薔薇屋敷の薔薇)
ひぃ~~いきなり真夏の暑さですね。
明日も暑いみたい。
体調管理に気を付けてくださいね~~!!
あ・・・ちなみに我が家
本日ようやくこたつ片付けました。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!