韓国芸術高校を卒業し同系大学の入学式を待つ間のある日、ギョンとガンヒョンはチェギョンの父が
異動になった遠方の皇室御用邸に向かっていた
早朝に出発したにも拘らず、その地方に入れたのはもう既に日が傾き始めた頃だった
早く行かないと・・・御用邸の門が閉まってしまう。。。
ギョンは時間を気にしながらも、安全運転を心掛けた
隣に座るのは愛しのマドンナである。。。シンとチェギョンの一件があってから手を組んだ二人は、
急速に親しくなっていった
今はまだ相棒の様な親友の様な間柄ではあるが、打てば響くような会話のテンポの良さは二人の相性が
とてもよい事を現していた
そう・・・何かきっかけが必要な二人なのである
『あぁ・・・やっと到着だ。』
『降りるわよギョン。』
『ああ行こう。』
御用邸の入り口に差しかかった二人は、すぐにイギサに呼び止められた
『ここは立ち入り禁止だ。帰りなさい。』
『あの・・・すみませんがここにお勤めのシン内官さんにお逢いしたいのですが。』
『シン内官?ああ・・・責任者のシン・ナムギルさんですか?』
『はいそうです。』
『少しお待ちください。』
威圧的な態度だったイギサは、二人が見物に訪れた観光客じゃない事を知り態度を和らげ
敷地の中に入って行った
程なくしてイギサの代わりに顔を出した男性は、ガンヒョンとギョンを見て不思議そうな顔をしながら頭を下げた
『私がシン・ナムギルですが何か御用ですか?』
ギョンとガンヒョンもナムギルに向かって頭を下げた
『あの・・・私、韓国芸術高校でチェギョンの隣の席に座っていたイ・ガンヒョンと申します。』
ナムギルはその名前に覚えがあった。。。確か王族会お妃候補推薦者の中に、その名前があったことを
思い出し一瞬身構えるナムギルである
『ご用件は・・・なんでしょうか?』
『私・・・チェギョンに貸していた物があったのですが、返して貰う前にチェギョンは留学しちゃったものですから。
チェギョンからそれを返して貰いたいので、連絡先を教えていただけませんか?』
『何を…お借りしたのですか?チェギョンは・・・』
もちろんガンヒョンがチェギョンに貸しっ放しになっている物などない
チェギョンの所在を教えてもらうための嘘である
だが・・それを追及され、一瞬ガンヒョンは口ごもった
『あ・・・父から・・・貰った万年筆なんです。とても大切な物なので・・・』
ナムギルにもそれは嘘なのだろうと察しがついた。。。何れにせよどんな理由があろうと娘の所在を
知らせるわけにはいかないのである
『イ・ガンヒョンさん、すまないが娘の所在はお教えできません。』
『でしたら・・・携帯番号だけでも。。。以前の物は解約されてしまっているんです。』
『今チェギョンが持っている携帯は、着信も送信も監視されているので・・・こんな遠くまで来てくれたのに
申し訳ない。』
必死になるガンヒョンの表情に、悪意があってここに来たのではないと解ったナムギルは心の底から詫びた
恐らくこのお嬢さんはチェギョンのことを本当に心配してくれる友人だ。。。そう思ったナムギルは
一つだけヒントの様に呟いた
『韓国芸術大学と提携している大学がロンドンにある。それだけしか・・・すまない。』
『そうですか。解りました。おじ様ありがとうございました。』
少し落胆するもののガンヒョンは笑顔を浮かべるとギョンと共に頭を下げた
そして車に乗り込むとソウルに向かって走り始めた
しばらく無言で黙り込む二人・・・だがガンヒョンは何かを思いついたように持参して来たノートパソコンを
膝の上で開いた
『なにするの?ガンヒョン・・・』
『韓国芸術大学にアクセスして姉妹校を調べるのよ!』
キーボー0度を操作し韓国芸術大学のホームページにアクセスする
『え~と姉妹校…姉妹校っと・・・あった!!これだわ。場所もロンドン・・・これだわ!』
リンク先に飛びその大学にアクセスするガンヒョン。。。
『あ~~ダメだわ!在籍者や入学者名簿にはアクセスできないっ!!』
運転席からギョンが呆れたように声を掛けた
『ガンヒョン・・そんな名簿が見られるわけないだろう?今は個人情報に厳しいんだぜ!』
『じゃあ…どうしたらいいのよ!どうしたらチェギョンと連絡がつけられるのよ!』
『行くっきゃないでしょ~~♪』
『行く?』
『ロンドンまで・・・』
『あ!!そうか!!ギョン~アンタ、頭いいわね。
そうだ・・・殿下がきっと心配してるわね。ギョン・・・アンタ連絡してくれる?』
『了解~♪』
ギョンはイヤホンマイクを付けるとイ・シンの電話を呼びだした
待っていたのかシンはすぐにその電話を取った
『ギョン!どうだった?チェギョンの居場所は解ったのか?』
『いや…教えて貰えなかった。』
『っつ・・・。』
電話の向こうから聞こえる溜息がシンの落胆の深さを感じさせた
『だけどチェギョンの入学するだろう大学は解ったから、ガンヒョンが行ってくるって。』
『ガンヒョンが?』
『うん。心配要らないよ。俺も一緒に行くしね~~♪』
『そうか。二人には本当にすまない。』
『必ずお前と連絡が取れるようにしてやるから待ってて~~♪』
『あぁ・・・本当にすまない。』
電話を切った後ガンヒョンはギョンを睨みつけた
『ちょっとどういうことよ!アンタも一緒に行くって・・・』
食いかかるガンヒョンにギョンはなんでもない風に答える
『だって~~女の一人旅なんて心配だろう?それに俺が一緒なら、
いつでもチャン航空機のファーストクラスだよ♪』
『アンタが一緒じゃなくてもファーストクラスに乗るわよ。でも・・・まぁ・・・アンタが居た方が
チェギョンを探すのも不安が無いかも。』
『だろう~~?ははははは・・・』
大学の入学式を終えた直後、二人は渡英することを決めた
そしてその日ギョンは夜通し車を走らせ、夜の開ける頃ガンヒョンを家まで送り届けた
もちろん事前に理由を両親に電話しておいたガンヒョン
ギョンはきちんとガンヒョンの両親に挨拶をし、ガンヒョンの両親の信頼をすっかり得た様である
韓国芸術大学に入学式間近、皇帝陛下はシンを本殿に呼び出すとここ数カ月のうっ憤を吐き出す様に
言い放った
『太子。。。お前は一体何を考えておるのだ!皇室の結婚は遊びではない。
いつまでも子供じみたことばかり言わず、パーティーに出席するのだ!!』
『いえ、私は心の伴わない結婚などしないと言った筈です。これからも出るつもりはありません。』
『それほどまでに我を通すと言うのなら、こちらの決めた令嬢と婚約を発表するからそのつもりでいるがよい。』
『!!お待ちください!私の意思はないのですか?そんなことを勝手にして許されると思っているのですか?』
『勝手も何も・・・お前に自由などない。私がそうだったようにな・・・。
良いな!次のパーティーには必ず出席しなさい!!』
シンの意思とは関係なく勝手に婚約を発表すると言う脅しに負け、シンは次に開催されるパーティーに
出ざるを得なくなってしまったようだ
項垂れ東宮の庭を歩いていたシンは、怒りのはけ口がどこにもなくちょうどその場所に在った
緑豊かな大きな木をその拳で殴った
『くっ・・・くくくっ・・・』
自嘲的に笑いながら木を殴り続けるシンの目は、人間としての感情さえも許されない哀しみに満ちていた
みるみるうちに拳には血が滲み、見ていたイギサ達が止めようとシンに近づいた時、
おおらかな笑い声が響いた
『おや・・・まぁ~~。そんなことをしては木が可哀想だろう?ほほほほほ・・・』
シンがその声に驚き振り向くと、そこには皇太后の姿があった
『皇太后様・・・』
『陛下とは今一つ気持ちが合わない様だのぉ…』
『はい。全く合いません。』
『なんでもそなたの好きなお嬢さんを、遠くに行かせたとか?』
『はい。』
『可哀想にのぉ。恋をすることが罪になるのかのぉ。』
『・・・皇太后様、私の大切な人がこの国に帰って来られない処分を受けました。
どうか・・・お力を貸してください!!彼女がこの国に帰って来られるようにどうか・・・』
『ふむ・・・帰って来られればそれでよいのか?帰って来たらそなたは他の王族会の決めた令嬢と
婚姻するのか?』
『それは…できません。』
『だったらどうしたいのだ?』
『彼女を連れ戻して・・・私の妻に迎えます。』
『そうか。そこまで考えておるのだな?では私も行動を起こすことにしようかの。
太子・・・気持ちをしっかり持っていなければいけないぞ。そのお嬢さんはお前よりもっと辛い気持だろうからな。』
『はい。皇太后様。』
皇太后パクはその日内官を呼びつけ、何か書状を書き記したようである。。。
暖かな春がやって来たというのに、心のどこかを小さく凍てつかせたチェギョンは大学の入学式を迎えた
高校ですっかり親友になったマンナはピアノ科に進み、チェギョンは美術科に進んだ
例え大学の棟が離れていても、二人は時間さえ合えば中庭で楽しそうに話をしていた
そんなチェギョンにある日・・・懐かしい母国語で話しかけてくる人物が居た
『君・・・韓国の人?』
『わ!!あなたも韓国人?』
褐色の髪をし優しく微笑むその男子学生
『僕…イ・ユルって言うんだ。よろしく。』
『私はシン・チェギョンです。どうぞよろしく♪』
共に母国を追放された二人が、因縁の出逢いをしてしまったようである
さて・・・ユルの存在はチェギョンにとってどんなポジションになっていくのだろうか・・・
ーーーっして次回は、ギョン君とガンヒョン、イギリスに向かうの巻です♪ーーー
では~~恐縮ですが
土日はお話の更新はお休みさせていただきます★
ふぅめる通信・マジカル通信をお送りしたいと思います❤
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