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Channel: ~星の欠片~
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東宮の名医 10

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いつも熱く議論を交わすギョムとミラン・・・なのに今日は妙に相手を意識してしまい、大事な言葉さえ出て来ない

二人が漸く言葉を発する事が出来たのは、東宮のギョムの自室に入ってからだった

もちろん今までだって何度もその部屋に訪れた事のあるミラン

ギョムに促がされるままにミランはソファーに腰掛け、そして二人は互いの視線を交えた

『あの・・・』『あのね・・・』

まるで申し合わせたかのように、同時に口を開いた二人

ギョムはその主導権を握り、自分の聞きたい事を先に口にした

『医師にならないって・・・一体なぜ?』
『あ・・・それはお爺ちゃんの臨終に立ち会ったんだけど、お爺ちゃんすごく苦しんで・・・
医師でも治せない病気があることを目の当たりにしたの。人の死を看取れるほど
私は強い人間じゃないって知ったの。
だから医師にはならないって決めた。皇后様にはすごく応援していただいてたから、お詫びして来たんだ。』
『だが・・・その辛さは時が過ぎれば癒えるだろう?それで諦めるなんて・・・』
『ギョム君・・・そんなに責めないで!私は人の死に慣れるなんて嫌なの。』
『責めているわけじゃない。そうか・・・それで医師にはならないと決めたのか。』
『うん。』
『先程皇后様の仰った≪東宮にスカウト≫とは?』
『あ・・・それは・・・折角医師免許を持っていても医師として勤務する気がないのであれば、
東宮の主治医になれって仰られたの。』
『東宮の主治医だと?それだけか?』
『う・・・ううん・・・』

口ごもるミラン

ギョムはその先の言葉を問い詰めるより・・・まず東宮の主治医になる意思があるかを確認する事にする

『それで・・・なんと答えたんだ?』
『はい・・・って答えたよ。』
『はい?はいと答えたのか?』
『う・・・うん。』
『くくっ・・・お前解っているのか?その東宮の主治医って言う言葉は、皇后様のさりげない打診だ。
皇太子妃になる意思を確認されたんだ。』
『う・・・うん。役職名は皇太子妃って・・・』
『っつ・・・本気か?そんなに簡単に決めていいのか?』
『あ・・・ギョム君が不服なら・・・撤回する。』
『不服だなんてそんなこと誰も言っていないだろう?話はちゃんと聞け!!
だが・・・きっとお前が大学を卒業するまで、婚姻を待つことはできないだろう。』
『えっ?それは・・・どういうこと?』
『王族会からはすぐにでも婚姻と言われている。婚姻してから大学に通えばいい。』
『えっ?・・・でもそんなことできるのかな。』
『皇后様も約束してくださったんじゃないのか?』
『うん、確かに約束してくださった。』
『だったら覚悟を決めろ。俺と・・・婚姻しろ。いいな!!』
『えっ?』
『え?じゃない!!王族から催促されてじゃなく、自分自身で婚姻相手を決めたい。いいな!ミラン。
俺と婚姻しろ!!』
『うん!!』

緊張した表情から漸く笑顔になれた二人

そして視線が交わった瞬間、今度は照れ臭くて共に視線を逸らした

『あ・・・皇帝陛下に報告に行かないと。』
『あ・・・うん。』
『一緒に行こう。』
『う・・・うん。』

ギョムの自室から出て行った二人は、皇帝陛下の元へ向かった

その途中触れあったミランの指先をギョムの指先は捉え・・・やがて躊躇いがちにミランの手を握り締めた

ミランも自分の意思を現すかのように、ギョムの手をしっかり握り返した





本殿に向かったギョムとミランは、皇帝陛下付きの尚宮に面会を申し込み陛下の部屋に通された

するとそこには皇后チェギョンもおり、二人で茶を楽しんでいるところだった

『ギョム・・・ミランもそこに掛けなさい。今お茶を持って来させよう。』

尚宮が二人の前に茶を出し、緊張した二人がそれを口に運んだ後シンはまるで何も知らないかのように

問い掛けた

『それで・・・一体何の話なのだ?』

先程までギョムの婚姻の話でも盛り上がっていたと言うのに、しらをきる夫のシンにチェギョンはクスッと

俯き加減で含み笑いをする

『私の婚姻の件です。』
『ほぉ・・・婚姻・・・』

夫の白々しさにチェギョンはさりげなく指先でシンの腕を突いた

あまりからかうなという意味合いだった

『はい。私はこのファン・ミランと婚姻します。』
『そうか!決めたか。それは良かった。』
『ですがひとつ条件があります。』
『条件とは?』
『きっと婚姻相手が決まれば、婚姻の日取りもあっという間に決まってしまうだろうと思います。
ですがファン・ミランは医大生になることを希望しています。
婚姻は大学生になってからにして欲しいのです。』
『そうだな。受験が終わらない事には落ち着かない。婚姻時期に関しては前向きに検討しよう。
ではファン・ミラン・・・お父上にその旨を相談してもよいか?』
『はい。陛下。』
『驚く事だろうな。ファン氏は欲の無い人柄だ。腰を抜かさないか心配だ。くくくっ・・・
ではファン・ミラン、近々ファン家の家族を招いて食事をしよう。』
『はい。皇帝陛下。』

シンの隣で満面の笑みで微笑むチェギョン

唯一気に入っていた娘が息子ギョムに嫁いで来る決意をし、嬉しくて仕方がないようである




その日のうちにシンはファン家に使いを出し、翌日宮殿にファン家の当主を呼びだした

ファン・ミランの父はずっと医学に傾倒してその道を進むと思っていた自分の娘が、まさか皇太子妃になることを

受け入れるとは夢にも思っておらず、相当驚いたようだ

シンの説得にも最初は難色を示していたファン氏ではあったが、当人同士の気持ちが寄り添っている事を知り

漸く皇太子ギョムと娘ミランの婚姻を認めてくれたのである



その後早速王族会のメンバーへの招集が掛けられ、王族たちは皆ギラギラした目で駆けつけた

自分の娘がもしも皇太子妃に選ばれたのであれば、事前に何かの連絡が来る筈・・・

だがそれを受けていない者たちは、その発表があった時に何がしかの難癖を付けてやろうと息巻いていた

ところがそこで皇帝陛下から発表のあった人物は、まるでノーマークだったファン・ミランだった

もちろん医学の道に進むミランを、王族たちは口々に非難した

しかし・・・現皇后チェギョンも元は優秀な医師なのである

その上二人は既に心を決めている


シンからその二つを告げられた王族たちは、それ以上何も言えなくなってしまった

なぜならファン・ミランは成績優秀容姿端麗の申し分ない娘だったからである


ギョムが18歳を迎えた日・・・皇室広報部は皇太子殿下イ・ギョムと王族令嬢ファン・ミランの婚約を発表した

婚姻は高校を卒業した後となり、二人は公然と婚約者として愛を育む事となったのである



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明日、次男坊ちゃんはスキー教室で
四時半起きなんですぅ・・・
≪にゃがの≫の皆様~~どうぞよろしくね❤




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