シン総合病院裏口に到着した公用車から降りて来た両殿下
病院の副院長であり妃殿下の母でもあるイ・スンレは、すぐに車いすを持って来させそれにチェギョンを乗せた
『お母さん・・・自分で歩けるって!!』
『妃殿下は黙っていてください。分娩室にすぐ向かいます。』
『えっ?・・・もう?』
『もう・・・です。妃殿下・・・お帽子を目深に被ってください!』
『は・・・はい!!』
一応顔を隠すために被ってきた帽子を更に目深に被り、車いすに乗ったチェギョンは
そのまま分娩室に運ばれていく
『あ・・・あの・・・お母さん、分娩室はあっちじゃ?』
『こっちにもあるんです。妃殿下のためにお作りしたんです。』
『ホント?』
『お静かに!!』
『はい~~・・・』
妃殿下の妊娠は既に世間の知るところとなってはいるが。まさかもう出産を迎えるとは世間の人が知る筈もなく
もし普通の妊産婦と出産が重なった場合・・・非常に困ったことになると思ったスンレは夫と相談の末、
急いでもうひとつ分娩室を作ったのだった
その新しい分娩室の中に車いすを押していくスンレ・・・背後から付いて来たシンは取り残されないよう
スンレに声を掛けた
『あの・・・お義母さん・・・』
『はっ!!殿下、どうなさいましたか?』
『私もチェギョンに付いていても構いませんか?』
『構いませんが・・・見ている方がお辛いと思いますよ。』
『それでも私はチェギョンに付いていないといけないんです。』
『そう仰られるのでしたら、どうぞお入りください。』
言われるがままに手術着を着せられたシンは頭にキャップを被りチェギョンの元に駆けつけた
『え?シン君・・・』
『俺がついているから・・・』
『きっと見ているの辛いわよ。』
『お前もずっとついていてくれただろう?今度は俺の番だ。』
前侍医に盛られ続けた毒薬を抜くために・・・辛い治療を続けたシンを、チェギョンはずっと手を握って
以前励まし続けたのだ
(なにもできなくても・・・泣き言くらいは聞いてやれる。)
陣痛の間隔が短くなり呻き声をあげるチェギョンを、シンは額の汗を拭い一生懸命声を掛け続けた
『頑張れ・・・チェyゴン頑張れ!!』
今そうしてチェギョンの手を握り、生みの苦しみを少しでも分かち合うことが夫としての務めだと思ったのだ
『チェギョン・・・頭が見えてきたわ。さぁ思い切りいきんで!!』
母のその声に応えるようにチェギョンは渾身の力を込めて10カ月近くお腹の中ではぐくんだ胎児を
この世に生み出した
『はっはっはっはっ・・・・』
短い呼吸を繰り返すチェギョン・・・やがて元気な赤ん坊の産声が分娩室に響いた
『うんぎゃ~~~!!』
『生まれた!!生まれたわチェギョン。女の子よ~~!!
殿下おめでとうございます。内親王様ご誕生です。』
『あ・・・』
スンレにそう声を掛けられ、スンレの腕の中に目をやったシンはまだ生まれたてで
生々しい状態の赤ん坊を目にし、なんとも言えない表情を浮かべた
『今・・・赤ちゃんを綺麗にして参りますね。』
その赤ん坊を看護士が連れていった後、シンはもう一度チェギョンの額の汗を拭い頬に口づけた
『チェギョン・・・大丈夫か?』
『ええ。いきみ過ぎて貧血起こしそうだわ。赤ちゃん・・・元気だった?』
『あぁ。とても元気な女の子だ。』
『良かった~~元気な子が生まれて。』
やはり宮廷内を動き回っていたせいだろうか。病院に到着してすぐに始まったお産
チェギョンは後処置が済んだ後、その場でしばらく休息を取った
『ねえ・・・なんだか病院内が騒がしいわね。表にはマスコミが一杯詰め掛けているし・・・
まさか!!チェギョンに何か起こったのかしら?
ギョン!!産婦人科に行ってみよう。』
『ああそうしよう。』
今日は第二子ミスクの三歳児検診にやって来たチャン・ギョン一家である
ミスクはガンヒョンの胸に抱かれ、ソンジュはギョンと手を繋いでいる
四人は産婦人科病棟のある階へと向かって行った
そして・・・何か違和感を覚えた
『あれ?東宮のイギサ達が私服で護衛しているな。』
『やっぱり・・・チェギョンに何かあったんだわ!!』
実はガンヒョンさえも既にチェギョンが臨月に入っていた事を知らなかったのだ
ギョンは顔馴染みの一人のイギサに話しかけた
『あの・・・私は皇室警察のチャン・ギョンと申しますが・・・』
『あ!!チャン・ギョン刑事じゃないですか。』
『あの・・・チェギョン・・・いえ妃殿下に何か・・・あったのですか?』
『あ・・・それは・・・』
忠実な臣下であるイギサが、いくら顔見知りだからといえその様なことを洩らす筈はない
その時廊下の奥からチェ尚宮が歩いて来る
『あ・・・チェ尚宮さん!!』
『あ・・・チャン・ギョン刑事。』
『あの・・・妃殿下に何か・・・あったのですか?』
『あ・・・私の口からは申し上げられませんので、今殿下をお呼びして参ります。』
『シンも・・・殿下もここに?』
『はい。少しお待ちください。』
チェ尚宮はそのフロアーの一番奥の部屋に入っていき、シンを伴うとすぐに部屋から出てきた
『シン!!あの・・・一体何が・・・』
『着いて来てくれ。チェギョンもお前達に逢いたいといっている。』
『お・・・おぉ・・・行こうガンヒョン。』
『ええ行きましょう。』
ギョンとガンヒョンは緊張した面持ちでシンの後に続き、そして一番奥の特別室に入っていった
『チェ・・・チェギョン・・・あぁっ!!』
ガンヒョンは驚いて咄嗟に大きな声が上がりそうになるのを必死に堪えた
ベッドに横たわり満面の笑みを浮かべるチェギョンの横に、赤ん坊がすやすやと眠っているのだ
『う・・・生まれたの?』
『ええガンヒョン・・・生まれちゃったわ♪』
『だけどチェギョン・・・まだ懐妊発表から四カ月しか・・・』
『ええ、あの時既に妊娠6カ月だったからね。』
『うっそぉ・・・・それで・・・親王様?内親王様?』
『女の子よ。』
『女の子なの・・・?』
以前テレビで妃殿下の懐妊発表があった際、満面の笑みで呟いていた息子ソンジュの予想が見事的中したと、
ガンヒョンは目を丸くする
『私に・・・似てるでしょう?』
『本当だ。チェギョンに良く似ているわ。』
その時だった・・・ギョンと手を繋いでいたソンジュは、ギョンの手を解き何の躊躇いもなく赤ん坊に近づくと
その握り締めた小さな手にそっと触れた
するとその小さな手はソンジュの手をしっかり握り返したのだ
『か・・・可愛い~~~!!すごく可愛い~~♪』
世辞など言える筈のないまだ四歳のソンジュの褒め言葉に、チェギョンは嬉しそうに微笑む
ソンジュは赤ん坊と手を握り合ったままシンにお願いする様な視線を向けた
『王子様・・・チェギョンねーちゃんは王子様のお姫様になっちゃったでしょう?
この子・・・僕のお姫様にしてもいい?』
『えっ!!』
その言葉に驚いたのはもちろんシンだけではないが、シンは切れ長の目を目いっぱい大きく見開き
プルプルと首を横に振ってみせた
その様子を見ていたギョンは、呆れてシンに小声で囁いた
『おいシン!!子供の言う事にそんなにマジにならなくてもいいだろう?
ソンジュの夢を壊す様なこと言うなよ。ここは笑顔で≪うん≫って言ってやってくれよ。
どうせ子供の戯言だから覚えている筈ないんだからさぁ・・・』
『あ・・・そういうもんなのか?解った。』
四歳の子供相手に妙に真剣な態度を取ってしまった自分を大人げないと思いながら、
シンはその顔に笑顔を浮かべソンジュに向かって頷いた
『あぁ。解った。』
ここで注意していただきたいのは、チェギョンをお姫様にすると言った時には≪約束だ≫と念を押したのだが
この時その念押しがなかったのは、この解ったという言葉はあくまでも社交辞令だと言う気持ちの現れである
だがその解ったの言葉を快諾と受け取ったソンジュは、自分のお姫様を見つけてしまい得意満面の笑みで
家族と一緒に家に帰るのだった
チャン・ギョン一家が帰って行った後、シンはチェギョンと赤ん坊と親子水入らずで何やら相談ごとの様である
『チェギョン・・・マスコミが病院の外に集まって来ている。発表をしてこないと・・・』
『そうね。内親王の誕生を発表して来て。』
『あぁ。しかし少しばかりバツが悪いな・・・』
『シン君の蒔いた種ですから自分で刈り取ってね。』
『あぁ・・・解っている。皇太子殿下直々に発表して来るよ。』
『ええ。楽しみにしているわ。』
コン内官を伴ったイ・シンはやがてシン総合病院の表玄関に集まっているマスコミ関係者の前に立った
婚姻時には既に妊娠していたことを暴露し、元気な内親王が生まれた事を満面の笑みで発表した
妃殿下に何かが起こったと察していたマスコミ関係者からは安堵の溜息が洩れ、その後その場は
大きな歓声に包まれた
皇太子殿下イ・シン妃殿下シン・チェギョンの第一子ご誕生のニュースは、またたく間に国内に広まったのである
ひぃ~~寒い。寒いでございますね。
こんなに寒いのに・・・昨日
多肉初買いしちゃうなんて・・・なんてお馬鹿さんなのでしょう。
ファイティン書庫・・・後ほど記事上げておきます。
こんなに寒いのに・・・昨日
多肉初買いしちゃうなんて・・・なんてお馬鹿さんなのでしょう。
ファイティン書庫・・・後ほど記事上げておきます。