その年のクリスマスまであと一カ月と迫った頃・・・チェギョンは周りの友人達の様子で、
今年のクリスマスパーティーは開かれないかもしれないと予想していた
皆其々が恋人と二人きりのクリスマスを過ごそうとしているのだ
(私達は・・・一体どうするんだろう・・・)
去年初めて経験した友人とのクリスマスパーティーは、チェギョンにとってまるで夢のような幸せな時間だった
できる事ならまたあの賑やかなパーティーに参加したい・・・だが女性陣は恋人とクリスマスを過ごす
なんとなく落胆していくチェギョンに、ある日シンは漸く非常に言い難い提案を口にしたのである
『チェギョン・・・今年のクリスマスなんだが・・・』
『あ・・・皆都合悪いってね・・・』
『あぁ・・・だから、うちの一番大きな別荘に行かないか?』
『えっ?一番大きな別荘?行きた~い♪でも・・・二人きり?』
『あ・・・あぁ。二人だと嫌か?』
『ううん。そんなことないよ。でも・・・お父さんとお母さんになんて言おう・・・』
『問題はそこなんだ・・・』
昨年も自分から泊りのクリスマスパーティーの事を言い出せなかったチェギョン
一年経ったからと言ってその性格が変わる筈もない
だが・・・意外なところから救いの手が差し伸べられた様である
12月に入ったある日・・・チェギョンが家に帰ると母スンレに告げられた
『チェギョン・・・あなた、今年もクリスマスパーティーに行くんでしょう?』
『う・・・うん。そっ・・・そうなのお母さん。』
『だったら・・・私とお父さんはお出かけして来てもいいかしら?
あなたから結婚記念日に貰ったプレゼントを使って、クリスマスイブを済州島で過ごそうと思っているの。』
『ほっ・・・本当?』
『ええ。そうでもしないとなかなか行けないから。ミンさん夫妻も一緒なのよ。ミンさんから誘われたの。』
『そっ・・・そうなの?そっ・・・それは良かった。』
そう言いながらもどこか疾しさの残るチェギョンである
そんなチェギョンにスンレは優しく微笑むと語り掛けあ
『今年はイ家の別荘に行くんだってね。』
『えっ・・・あっ・・・あのっ・・・』
『あなただって恋人と二人でロマンチックなクリスマスイブを過ごしたいお年頃よね?ふふふ・・・
お父さんには黙っておくわ。』
『お母さん・・・行って来てもいいの?』
『ええ。だって周りの子は皆恋人と過ごすんでしょう?あなただけダメなんて・・・言えないわ。』
『ありがとうお母さん~~♪』
翌日から早速クリスマスにお出かけする準備に取り掛かったチェギョン
チェギョンから母の了承を得たという知らせを受けたシンは、自分の母の抜かりのなさに舌を巻いた
(母さん・・・凄いな。やはり母さんは凄すぎる・・・だがなぁ・・・)
二人きりと解っていながらクリスマスの外泊を許してくれたスンレの気持ちを考えると、
自分の感情のままに突き進むことはできない・・・そんなことを思うシンだった
クリスマスイブの日・・・両親は早朝から出掛けてしまい、チェギョンは家の事をメイドに任せシンの迎えの車に
乗りこんだ
初めての二人きりの外泊・・・なんだか前夜から胸の辺りが騒がしく、寝不足気味のチェギョンである
『チェギョン・・・お前寝不足?』
『えっ?どうして?』
『目の下にクマが出来ている。』
『うそっ・・・。』
今日はとびきりオシャレをして余りつけ慣れない口紅なんかも引いてきたチェギョンである
(ん~~大失態だ・・・)
目の下にクマが出来ていたことなど気がつかなかったチェギョンは、慌てて鞄の中から鏡を取り出すと
自分の顔を覗きこむ
『馬鹿・・・冗談だよ。』
『えっ?冗談なの~~?信じらんない!!』
『くくっ・・・』
含み笑いするシンを睨みつけながら、少し照れて頭を掻いたチェギョン
『別荘は・・・遠い?』
『いや、チャン家の別荘よりも近いよ。』
『そっか~~♪あ・・・食事とかどうする?何か買い物していって私が作ろうか?
▼■食堂の賄いとか・・・くすくす・・・』
『いや。なんの準備も要らないだろう。母さんがそう言っていた。』
『ミンおば様にはなにからなにまで面倒かけちゃうね。』
『好きでやっていることだ。チェギョンがな・・・』
『えっ?』
『それだけお前は母さんに好かれているってこと。』
『そっか♪』
シン家を出てから二時間ほど・・・山に囲まれた途轍もない急勾配を車は上っていく
『シン君・・・こんな山奥なの?』
『あぁ。ここは携帯も通じない場所だ。』
『おぉ・・・虎とか熊とか・・・出そうだね・・・』
『馬鹿っ!出るか!そんなもの・・・』
やがて山の頂上に大きな建物が見えてくる
『しっ・・・シン君・・・ここ?』
『あぁ。』
『本当にチャン家の別荘より大きいや。』
『だろう?嘘なんかついてないからな。』
車を降りた二人は手荷物を持って別荘の中に入っていく
『誰も・・・居ないの?』
『あぁ、恐らく管理人が食事を運んで来てくれる筈だ。』
『次からは買い物してこようよ。ここまで食事を運んで貰うなんて大変だよ・・・』
『もう次の話か?くくっ・・・気が早いな。』
『すごい。てっぺんだけ、もう飾り付けてある~~♪』
『くくっ・・・さすがだな。』
そこはこの場所に慣れ親しんだシンでさえもが驚く状態に改築されていた
タイル張りだった浴槽は溶岩の落ち着いた浴槽に造りかえられて、
浴槽から溢れんばかりに満ちた湯からあがる湯気が、浴室内にこもらないよう常に換気がされている
『こ・・・これか?』
浴槽の横にあるスイッチをシンは押してみる
<ゴゴーーーッツ>
『なっ・・・なに?』
急にその浴室に太陽の光が差し込む
『天井が開いたよ。すっご~~~~~い!!』
『すごいって言うか・・・すごすぎるだろう?母さんのやることはスケールがでかすぎるな。』
『うん。さすがミンおば様・・・なんか巨大ロボットになって、この天井から飛び立たなきゃ
いけない様な気がして来た。くすくす・・・』
『くっ・・・何を言っているんだよ。』
『あ~~早く入りたいな~~♪』
『クリスマスパーティーが終わってからな。』
『うん~~♪』
さて・・・巨大ロボが今にも飛び立ちそうな露天風呂もどきを作ったミンの思惑は・・・どうなることやら・・・
本当はその2に続けたかったんだけど
アタクシこれから三者面談。
ひとまず本日はこんなところで
許してたもれ~~♪
行ってきま~~す❤