卒業記念パーティーの帰り道・・・シンはチェギョンを送る為シン家に車を走らせた
だが・・・あと少しでシン家の門扉が見えてくる場所で車を一旦停車させた
『シン君?』
不思議そうにシンを見つめるチェギョンにシンは視線を向け、ハザードランプを点滅させてから再びチェギョンに
穏やかな笑顔を向けた
『まだ送りたくない・・・』
『うん私も・・・。でもお父さんが心配しているかも・・・』
『っつ・・・あぁ確かにそうだな。まぁ大学生になったらおじさんもそんなには煩く言わなくなるだろうし、
もうしばらくの我慢だ。チェギョン・・・』
『ん?なに?』
『今日・・・少し元気がなかったな。ヒョリンが留学して寂しいのか?』
『うん。少し・・・』
ヒョリンが去っていく前後の出来事を、卒業記念パーティーに向かう途中で話していたチェギョン
両親が言った様にヒョリンが家を出て海外に渡ったのは自分のせいじゃない
だがやはり・・・寂しいと感じる気持ちは否めない
『手当てしてやろうか?』
『えっ?手当て?』
不思議そうに見つめるチェギョンにシンの顔が近づいた
徐々に近づいてくるシンの顔にチェギョンの目はどんどん大きくなる
そして・・・≪ペろり・・・≫
以前チェギョンがシンにしたようにシンはチェギョンの唇の左端を舐めた
『えっ?』
『お前の心の寂しさも・・・これで少しは癒されるだろう?』
驚いて目を見開いたままのチェギョンの唇に、シンの唇が重なった
何度も食むように繰り返されるシンのキスはチェギョンの寂しさを拭う様に優しく触れ、
チェギョンの胸の中を熱くさせる
漸く唇が離れた時、互いの額を付けたままチェギョンは少し俯いて呟いた
『手当てだなんて・・・』
『くくっ・・・お前の傷を癒したいんだから手当だろう?』
『キス・・・じゃないの?』
『まぁキスとも言うかな。くくくっ・・・』
その姿勢のままそっと抱き締め合う二人・・・漸く恋人らしい時間が始まろうとしていた
四月・・・みんな揃って大学に進学した仲間達
だが大学生になり堂々とシンと並んで歩くチェギョンを、快く思っていない者がいた
同期学生のコ・ユナという名の、シン家に引けを取らない名家の娘だった
(ちょっと・・・ヒョリンが居なくなったと思ったら今度はあの娘?まったく忌々しいったらないわ。
シン家の娘はどうしてこうもイ・シンに固執するのかしら。
折角イ・シンと同じ大学に入学できたというのに、これじゃあ近づく隙もないわ。)
経済界のパーティーでシンを見掛け以前から想いを寄せていたコ・ユナ・・・
その頃はヒョリンの許嫁と言う噂がシンにはついて回り、コ・ユナはシンに近づく事も出来なかったのである
(あの二人・・・なんとか別れさせることが出来ないかしら・・・)
そんなチャンスが巡ってくるのを虎視眈々と狙っているコ・ユナの前に、絶好のチャンスが近づいてきたようだ
入学からほどなくしてチェギョンは大学構内でじっと自分を見つめている視線に気がついた
最初は漠然とだったがその人物は徐々に大胆にチェギョンの前に姿を現すようになっていった
もちろんその視線は・・・好意とかそういったものではない事もチェギョンには解っていた
その人物は大学生というにはあまりにも老けた印象で、その上あまり品行の良さそうなタイプには
見えなかったのだ
その視線があまりにも気になったチェギョンは、ある日思い切ってその人物に声を掛けてみる
『あの・・・私に何かご用ですか?』
『ミン・チェギョンさんですね?あ・・・今はシン・チェギョンさんでしたね。』
『はい。そうですが・・・』
『私はあなたのお母様に、生前少しばかりお金を貸していた者でして・・・
それを返していただきたくてやって来たんですよ。』
『えっ?そんなの・・・嘘です。母の荷物の中に借金をしたなんて書類はありませんでした。』
『あなたが持っていなくても・・・こちらには実際にあるんですよ。ほら・・・お母さんの筆跡でしょう?』
見せられた借用書には確かに育ての母の筆跡で借金をしたことが明記されていた
そしてその額面は大した金額ではなかった
その男は更に畳みかけた
『まぁ・・・大した金額ではありませんから、私の経営する店で一カ月も働いて貰えば済む話です。
あ・・・ご両親に話して払って貰った方が良いでしょうかね?』
チェギョンは愕然とした。漸く両親との関係が上手くいくようになってきたその時に、こんなトラブルを
家に持ち込むのは絶対に嫌だった
『あ・・・この額面なら私がアルバイトして返します。二カ月待っていただけませんか?』
『シン・チェギョンさん・・・この書類の額面は借りた時の金額ですよ。返済金額は額面の倍に
なっているんですけどね。』
『えっ?』
『ご両親に言えないのならうちの店で働いてください。そうしたらあっという間に返済できますから・・・ふふふ』
如何にも胡散くさそうなその男の口車に、まんまと乗っかるチェギョンではなかった
『何カ月かかっても自分で働いてお返しします!!』
毅然とした態度でそう告げると男の連絡先を聞き出した
その日からまたチェギョンは、古巣≪▼■食堂≫でアルバイトを始めた
店のオーナーには事情を話し、閉店まで働かせてくれるようお願いした
シンには・・・やはりそんなことを相談できず、なんとか自分一人で乗り切るつもりでいた
大学に通う傍ら・・・夜は10時までアルバイトをすることとなったチェギョン
なかなか逢えないチェギョンにシンも何かおかしいと気付き始めていたが、聞き出そうとしても
チェギョンにはぐらかされ、折角恋人同士の時間を過ごす事も出来ず少々不満を募らせていた
チェギョンがアルバイトを始めて三日目の事・・・何かを嗅ぎつけた様に店にイ・ユルが訪れた
『チェギョンちゃん!!どうしたの?』
『あ・・・ユルさん。アルバイトです。』
『えっ?なぜ君がアルバイトなんか?』
『あ・・・それが実は・・・』
チェギョンはまたこの店でアルバイトする事になった経緯をユルに話した
誤解を受け両親に話されたら大変だと思ったのである
『チェギョンちゃん・・・ご両親に言えないのなら、僕がお金を用立てるから早く借金を清算しちゃいなよ。』
『いえ、それはできません。自分の力でなんとかするって決めたんです。』
『だけど・・・』
一度真剣に交際したいと思ったチェギョンが窮地に立たされていると知り、ユルはとても放ってなど
おけなかったのである
その日チェギョンがアルバイトを終え店から出てくるのを待っていたユルは、車の中からチェギョンに声を掛けた
『チェギョンちゃん、送っていくよ。』
『いえ大丈夫です。まだバスもありますし・・・』
『心配でこのまま帰るなんてできないよ。僕に君が帰るのをずっとついて行かせるつもり?』
『・・・・』
自分にはシンという恋人がいる
だからユルの厚意に甘えることはできない・・・そう思ったチェギョンである
だがユルはユルでそんな時間帯に、チェギョンが一人でバスに揺られて帰っていくのは心配で仕方がなかった
強引にチェギョンを助手席に乗せ、シン家に向かって車を走らせた
『チェギョンちゃん・・・人の厚意を無にしないで。別に見返りを求めているわけじゃない。
純粋に君が心配なだけだから、気にせず送らせてよ。』
『すみません。』
ユルに押し切られる形でその純粋な厚意に甘えたチェギョンだった
だが・・・チェギョンがユルの車に乗った姿を見ていた者がいた
コ・ユナ・・・ユナはこれを絶好の機会とばかりに、シンに告げ口をしたのである
この一件で二人が別れることになれば、自分の時代がやって来る・・・そんな浅はかな事を考えたのだ
コ・ユナはその日の昼休みにシンの元を訪れ、満面の笑みで告げ口をしていた
『イ・シンさん・・・あなたのお付き合いしているシン・チェギョンさんって、
随分男性とのお付き合いが広いんですね。
なんだか柄の悪そうな男性が大学にまで来ていた様だし、それに若い男性の車に
乗っているのもお見かけしましたわ。』
『はぁ?君は・・・?』
『あら・・・ご存知じゃありませんか?私はコ・ユナと言います。』
『まったく知らないな。』
『えっ?・・・とっとにかく・・・恋人の素行は確かめた方がよろしいかと思いますわ。』
『それはご親切にありがとう。』
確かにチェギョンの最近の行動にはシンも疑問を抱いていた
チェギョンを疑っているわけじゃないが、もしかしたら自分に言えない何かがあるのかもしれないと
その日シンは講義の終わったチェギョンの後をこっそり追いかけた
そして懐かしい≪▼■食堂≫にチェギョンが入っていくのを確認し、その場所で出てくるまで
何時間も待ち続けた
閉店後・・・店からチェギョンが出てくるところを捕まえようとした矢先、チェギョンの元に従兄弟のユルの車が
横付けされた
シンは矢も楯も堪らずチェギョンの元へ駆け寄った
『チェギョン!!一体お前は何をしているんだ!!』
『あ・・・シン君!!どうしてここに?』
『ユル兄貴・・・これはどういうことだ?説明して貰えるか?』
シンの剣幕に負けユルは車から降りると、シンにバツの悪そうな顔で口を開いた
『ただチェギョンちゃんが心配だっただけだ!お前にも話せず一人で抱え込んでいたから・・・』
『チェギョン・・・一体何があったんだ?説明してくれ。』
チェギョンは観念したようにその場で話し始めた
『大学に・・・亡くなったお母さんの借金の取り立てが来たの。
それを返済しようとアルバイトを始めたら、ユルさんに見つかっちゃって・・・昨晩送っていただいたの。』
『っつ・・・ユル兄貴。面倒掛けて悪かったな。でもチェギョンの送迎は俺がするからもう来なくていいよ。』
『そうか。シンがチェギョンちゃんを送ってくれるなら安心だ。
だけどシン・・・こんなことがまた起こったらチェギョンちゃんはずっと気持ちが休まらない。
一度亡くなったお母さんの荷物を確認してみた方がいい。
もしかして今回の一件も何か仕組まれているかもしれないからね。』
『仕組まれている?』
『あぁ。チェギョンちゃんがシン家の娘だって聞いてやって来たんだろうと思う。
シンがしっかり守ってやってくれ。』
『あぁ。世話掛けたなユル兄貴・・・』
気まずい思いでシンに送られシン家に帰っていったチェギョン。だがシンはそのまま帰ろうとはしなかった
チェギョンと二人トランクルームの中に保管されている、亡き育ての母の荷物を片っ端から確認してみる
やはり母の手元には借用書のコピーも無く・・・そして返済をしたという書類もない
『返さないとダメみたいだな。』
『だね・・・』
『お前の頭の中で何カ月働いたら返済できる予定になっている?』
『三か月・・・かな。』
『そうか。だったら二人で働いたらその半分で済むな。』
『えっ?』
『すぐに用立てられる金額だが、それじゃあお前の気が済まないんだろう?』
『うん。』
『だったら一緒に俺もバイトして返済を早めよう。』
『えっ?そんな・・・』
『お前と一緒に居られるんだ。終わったら送って行けるし、一石二鳥だろう?』
驚いたことに≪▼■食堂≫でチェギョンと共にアルバイトを経験することとなったシン
シンがそのサラリーマンの集う店でアルバイトするようになってから、近所の女性客が押し寄せたという・・・
なんとも~大学入学早々こんな事態に?
でも恐らく今週中には・・・19歳のクリスマスが
やってきそうな予感。
ぶっ飛ばすのも大変だわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
39話で漸くちゅ~❤
シン君よかったね♪
でも恐らく今週中には・・・19歳のクリスマスが
やってきそうな予感。
ぶっ飛ばすのも大変だわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
39話で漸くちゅ~❤
シン君よかったね♪