翌朝チェギョンはキッチンでメイドと共に朝食の支度をしているスンレの元に、イ家のミンからプレゼントされた
指輪を持って向かった
そして周りに気づかれないほど小さな声で、スンレに相談を持ちかけた
『お母さん・・・あの、ちょっといいですか?』
『なあに?チェギョン。』
本日休日のナムギルはまだ起きて来ない
チェギョンはスンレをリビングに引っ張っていき、ポケットから指輪の入った箱を取り出すとそれを開けてみせた
『お母さん、昨日ミンおば様が帰る間際にこれを私に下さったんです。
でも・・・どう見ても相当高価な物に思えて、どうしたらいいのかと思って・・・』
『あら・・・』
スンレは自分の掌に載ったその箱の中身を凝視する
(これは・・・≪青龍の涙≫じゃないの?ミンさんったら何れはイ家に
チェギョンを欲しいという、遠回しなお願いね。)
先代同士が約束を交わした時、イ家の先代はシン家に約束の印として≪青龍の微笑み≫と呼ばれる
宝石が輝く指輪を贈った
この度チェギョンがミンから頂戴した指輪は、それと一対になる物で≪青龍の涙≫と呼ばれる石が輝いている
本来・・・イ家とシン家の間では、子供達の婚約が整った時にこの≪青龍の涙≫が婚約の証として
渡される筈だったのである
つまり・・・婚約して初めてこの≪青龍の微笑み≫と≪青龍の涙≫は一対となり、国宝級の真価を発揮するのだ
『お母さん・・・さすがにこれは、いただくわけにはいきませんよね?』
チェギョンにもその価値は解るのだろう。非常に困惑した様子でスンレの顔を窺い見る
『チェギョン・・・』
『はい。』
スンレはそんなチェギョンに逆に質問を投げかけた
『あなたは・・・ミンさんっていう人をどう思う?』
『えっ?ミンおば様ですか?すごく親身になってくださって素敵な方だと思います。』
『そうね。でもそれはチェギョンの事が大好きだからよ。でも逆にミンさんに嫌われたら・・・どうかしら?』
『えっ?ミンおば様に嫌われたら?ひぃっ!!絶対に敵に回したくないですぅ。』
『そうでしょう?ミンさんを敵に回すことはできないわね?』
『はい。』
『あなたはシン君とお付き合いがしたいのでしょう?』
『はい。』
『だったらその指輪を突き返す様な真似をしてはいけないわ。そんなことをしてしまったら・・・ミンさん自身に
シン君とのお付き合いを断られてしまうわよ。』
『えっ?本当に?』
『ええ。ミンさんはご機嫌を損ねたら厄介なタイプよ。』
『は・・・はい!確かにそう思います。』
『だったらありがたくいただいておきなさい。ただし・・・この指輪は当分しまっておいて頂戴。』
『えっ?あのっ・・・どうして・・・』
『理由は聞かないで暫くは人目につかない様にしてね。』
『あ・・・はい。でもミンおば様が、この指輪をしていないと機嫌を損ねるんじゃ・・・?』
『それは大丈夫よ。ミンさんにもその理由は解っている筈だから・・・。
いいわねチェギョン。時が来るまでこの指輪は大事にしまっておきなさい。』
『解りました。』
母の言うところの≪時が来るまで・・・≫この言葉に何かあると感じたチェギョンではあったが、
それ以上は追及せずスンレの言う通り、初めて持った宝石箱の一番奥に大切にしまい込んだ
いつかこの指輪を大手振ってできる日が来る事を夢見て・・・
ミンはミンでもちろんその指輪をチェギョンがしないことを承知で渡したのだ
これだけ高価な物を貰えば、チェギョンは必ず母スンレに相談する
スンレがそれを見れば・・・≪当分しないでしまっておきなさい。≫そう言うだろうと予想していたのである
≪チェギョンは嫁にやらん!≫そう言いきったナムギルの手前、この指輪がナムギルの目に留まったら
シンとチェギョンの関係が揺らいでしまう
それを恐れこっそりチェギョンに渡したのである
もちろんその贈り物の真意は≪いつかうちのお嫁さんに頂戴ね~~♪≫と言う催促の様なものだったのである
クリスマスが過ぎ数日経った頃、ヒョリンは無事帰国した
やはり留学を前に何かと忙しそうにしているヒョリンだったが、ナムギルの鶴の一声でシン家の家族は
全員で年末年始は別荘で過ごす事となった
ヒョリンは最後まで『私はいいから三人で行って来て。』と口にしていたが、ナムギルがそれを許す筈はなかった
二台の車に分乗し向かった別荘・・・不機嫌な様子のヒョリンにチェギョンは必死に話しかけていた
『別に・・・三人で行ってきたらいいのに・・・』
『そんなこと言わないでよ。ヒョリン・・・』
『あなたが私の立場なら、一緒に行きたい?』
『ん~~~~・・・』
確かにヒョリンの立場なら肩身が狭いだろう。言葉に詰まってしまったチェギョンは話題を変えて見る
『留学先でのマンションはどんなところ?』
『そうね。夜景が綺麗な最上階でオートロック式の安全な場所よ。』
『そうなんだ~~♪きっと素敵なんだろうな。』
『チェギョン・・・信じているの?』
『えっ?嘘なの?』
『さぁ~どうだろう?ふふふ・・・』
ヒョリンの様子がなんだか以前と違う様に感じ、チェギョンの心に不安が過る
『あ・・・あのさ、イン君の住む部屋も近い?』
『ええ。インのお母様が私一人だと物騒だからって、隣の部屋を借りてくれたわ。』
『そっか~♪だったら安心。』
『まぁね・・・確かに安心だわ。』
憂いを含んだ表情で笑うヒョリン・・・そんな表情をするのは初めてである
一体何を考えているのだろうか・・・
ヒョリンの考えていることはチェギョンには想像もつかなかった
『ここよ。』
車が到着しヒョリンと共に車から降りたチェギョンは、以前シンが言っていた事は真実だったと納得する
『大きな・・・別荘。まるでホテルみたい・・・』
チャン家の別荘を見た時と同じ事を思ってしまったチェギョンである
まだシン家の娘となって数カ月・・・なかなかお嬢様が身につかない様である
『さぁ~二人共入りましょう。』
『ええそうしましょう。パパ・ママ。』
『は~~い♪』
別荘に入りながらチェギョンは以前友人達が言ったある言葉を思い出した
それは・・・シン家の別荘には温泉が湧き出ているという言葉だった
チェギョンはすかさずヒョリンに問いかける
『ねっねっヒョリン・・・もしかしてここって温泉のある別荘?』
『ええそうよ。パパの一番のお気に入りの別荘よ。』
『一番?一番って事は二番もあるの?』
『ええ。三番まであるわ。ふふふ・・・』
『ひぇ~~~・・・・』
建物の中に入っていくと、ヒョリンは躊躇いもなく階段を上がっていく
『パパママ・・・いつものお部屋、私が使っていいでしょう?』
『そうしなさい。』
『ええ。そうして頂戴。ヒョリン・・・チェギョンには隣の部屋を使って貰って。』
『解ったわ。じゃあチェギョン、案内するから行きましょう。』
『うん~~♪』
別荘内のインテリアなども実に気品に溢れていて、やはりチェギョンは高級ホテルにやって着た様な
わくわくとした気分で一杯になる
『チェギョン・・・あなたはこの部屋よ。私は隣だから、困ったことがあったら聞いて。
じゃあ私は少し休むわ。』
自分の部屋へと行ってしまったヒョリン
チェギョンは胸を高鳴らせながら、ヒョリンに案内された部屋のドアをそっと開けた
『うわぁ・・・・』
チャン家で女性陣が泊まった部屋と同等の広さの部屋の中に、大きなベッドが一つと小さな応接セット・・・
更にはテレビまで完備されている
『まさにホテルだぁ・・・わぁ~~~♪』
しかし広すぎる部屋に一人きりというのも、庶民だったチェギョンには落ち着かないものである
『広すぎる・・・』
引かれたカーテンを両開きに開け放ち、外の空気を吸おうと窓を開けた時・・・
チェギョンの視界に、まさかと思われる人物が映り込んだ
『あれっ・・・あれあれ?なんでシン君が?』
幻かと思いチェギョンはその人物を凝視してみる
するとその人物は自分に向かって大きく手を振り、そしてその直後に携帯が着信を知らせた
『やぁ!!チェギョン♪』
『し・・・シン君?幻じゃなくって?』
『くっ・・・あぁ。俺だ。』
『なぜ・・・ここに?』
『聞いていなかったのか?イ家の正月はいつもこの別荘だ。』
『シン君ちの別荘・・・お隣にあるのぉ~~?』
『あぁ。そうだが?』
『じゃあそこが・・・チャン家よりも大きな別荘?』
『いや・・・それはこの場所ではない。』
『イ家もすごいセレブな家なんだね・・・はぁ・・・』
『何を溜め息なんか吐いているんだ?』
『いや・・・ちょっとビックリしちゃって。』
『今回はまだ・・・正式に認められていないから無理だが、次回には一緒に散歩しような。』
『うん~~♪』
『まぁどうせ母さんが≪一緒にお食事でも~♪≫っていうだろうから、何度も顔を合わすだろうがな。』
『だよね~~楽しみにしてる♪』
『じゃあまたあとで。』
『うん。またあとで・・・』
シンは隣の別荘のチェギョンの部屋にほど近いところから顔を覗かせていた
この分では夜も顔を見ながら会話をする事になりそうである
チェギョンにとって初めてのシン家で迎える新年・・・
きっとこの先の未来のように明るく楽しい日々である事だろう
なんと~~別荘はお隣同士でしたか(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
しかも青龍の微笑みと涙って・・・(激爆)
二話ほど年末年始のお話になります❤
よく考えたら36話でキスもまだ(超激爆)
しかも青龍の微笑みと涙って・・・(激爆)
二話ほど年末年始のお話になります❤
よく考えたら36話でキスもまだ(超激爆)