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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 23

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暫く風に当たり酔いを覚ましたチェギョンを伴い、シンは会場内に戻った

その後ナムギルが経済界の人間に紹介する為チェギョンを連れ出す度に、なぜかシンはその背後から

二人についていった

何度かそんなことが繰り返された後、ナムギルは不思議に思いシンに問い掛けた

『シン君・・・なぜチェギョンに付いて回るんだい?』
『あぁ・・・それはですね、シン家の娘であるチェギョンは今回のパーティーで注目の的ですし
その上今日のチェギョンのドレスは、かなり挑発的ですから。』

シンはナムギルにそっと耳打ちするようその後は小声で話した

『それにおじさん。さっきのソン家の息子・・・いやらしい目でチェギョンを見ていましたよ。
そんな目で見られるのは≪おじさんだって≫嫌でしょう?俺は・・・悪い虫がチェギョンに目を付けない様にと
見張っているんです。』
『ははは・・・なるほど!そうだったのか。チェギョンを心配してついて来ているんだね。』
『その通りです。悪い虫からチェギョンを守るのは俺の使命ですから。』

受験を目前に控えた今・・・交際宣言などまだ出来る筈もないシンであるが・・・せめてここではシン夫妻にも

しっかりアピールだけでもしておきたいところである

≪イ家にはシンと言う元々許嫁の男がいる≫という事を、世間にも認知させたいようである

だが・・・そんな様子を不愉快に思ったイ・ユルは、シンに苦言を呈しにやって来た

『シン・・・少しいいかな?』
『あぁ。』

シンはユルの後について会場の隅に向かった

ユルからなにを言われるのかは・・・想像がついていた

『シン・・・チェギョンちゃんにくっついて歩くのは、迷惑になるからやめたらどうだ?』
『迷惑?いや、チェギョンが傍に居て欲しいと言うんだ。』
『嘘だろう?お前が勝手について回っているだけだろう?お前はチェギョンちゃんの許嫁じゃないんだ。
ここは公式の場なんだ。少しはわきまえた行動をしたらどうだ?』

シンはユルのそんな小言に耳も貸さず、背後を振り返りチェギョンに目を向けると

ユルに聞こえるように舌打ちをする

『ちっ・・・ユル兄貴、何が言いたいのかさっぱり意味が分からないが、俺はもう行ってもいいか?
チェギョンのボディーガードに任命された身としては、ほら・・・見てみなよ!あんなチャライ男が
チェギョンの周りをうろつくのは我慢ならないんでね!!』
『待てシン!!お前・・・まさかヒョリンとの話を断っておきながら、今度はチェギョンちゃんと・・・
とか虫のいい事を考えているんじゃないだろうね?』

嫉妬に駆られたイ・ユル・・・そのイ・ユルとチェギョンがダンスを踊るのを見て嫉妬したシン

だが・・・もう今はチェギョンの気持ちが自分に向いていると知ったシンは強気だった

怖いものなどない

『虫がいい?心外だな。ユル兄貴・・・。
ヒョリンは本来の許嫁ではなかった。本当はチェギョンが許嫁の筈だった。
まぁその話を蒸し返そうとは思わないが、そういうことを抜きにして俺はチェギョンが好きだ。』
『えっ・・・。』

唖然としたユルは、暫く言葉が出て来ない

漸くその続きの言葉を口にする

『シン・・・僕はチェギョンちゃんをずっと見て来た。』
『あの食堂でだろう?』
『そう。だから僕もチェギョンちゃんがシン家の娘と解った今、真剣に交際を申し込むつもりだ。』
『残念だけど・・・恐らくそれは無駄足に終わると思う。なぜならもうチェギョンは俺と約束したからな。』
『約束?なんの?』
『大学に合格したら付き合う約束だ。』
『なんだって?』
『ユル兄貴・・・兄貴の気持ちもわからないでもない。だけど生憎俺も、ずっと以前からチェギョンの事を
気に掛けていた。ユル兄貴にこの勝負・・・勝ち目はないよ。
諦めて年齢相応の人を探してくれ。』

チェギョンがシン家の娘だと知って、叶わないと思っていた恋心に希望の光が差していたユル

それを全否定するかのような従兄弟シンの発言に、相当憤慨したようである

母であるソ・ファヨンがこの場に居たのなら、すぐにでも交際の打診をしたいところだが本日に限って母は所用で

この場に居ない

(一日も早くシン家に行かないと・・・)

最初は苦労人の高校生を憐れに思った

だが次第にその明るさに癒され、チェギョンに惹かれて行ったユル

シンから挑発を受けたとしても、その程度で諦めることなどできないユルだった



『さてチェギョン・・・一通り挨拶は済んだな。イ家のヒョンさんから聞いたんだが、なんでもチェギョンはイ家に
ダンスを習いに行っていたそうじゃないか。』
『あ・・・聞いてしまいましたかぁ。』
『ああ。聞いたよ。ははは・・・父さんにもそのレッスンの成果を、見せて貰えないかい?』
『えっ?』
『シン君を相手に練習したんだろう?』
『そうです♪最後にシン君と踊って来てもいいですか?』
『ああ。二人のダンスを見せて貰おう。』
『はい♪』

チェギョンが傍らに居るシンを見上げると、シンは口角を上げて微笑む

『ではおじさんのお言葉に甘えて踊って参ります。』
『ああ。練習の成果を見せて貰うよ。』

シンの差し出した手にチェギョンが応え、二人は並んでホールの中央に出て行く

ラストダンスの曲が流れ始め、二人は手を握り合うと息の合ったステップを踏み始めた

『シン君・・・顔を見てもいいの?』
『あぁ。俺だけはな。っていうか・・・お前もう他の男と踊るな!』
『ちぇっ・・・また嫉妬だ。くすくす・・・』
『じゃあ聞くがお前は俺が他の女と踊っているのを見ていて楽しいか?』
『ううん!!』
『だったら俺の気持ちも察してくれ!』
『うん♪』
『あ・・・チェギョン・・・そんなに脚を開かなくていい。』
『はぁ?』
『ドレスの後ろの開いた場所から脚が覗くだろう?』
『あのさシン君・・・お父さんがどれだけダンスが上達したか見ているんだよ。手なんか抜けないでしょ?』
『そうか。そうだった・・・仕方がない。今回だけは許す。
だが・・・もうそのドレスは着るな!!』
『もぉ~~~!!禁止事項ばっかりじゃん!!』
『仕方がないだろう?嫉妬の分だけ気持ちが強いってことだ。くくっ・・・』

見つめ合いじゃれ合う様な会話をしながら踊る二人・・・その二人をイ家・シン家の両親は微笑みながら見守り

またイ・ユルは苦々しい思いで見つめていた

会場内に居た子息たちは、結局イ・シンの鋭い視線の前でチェギョンにダンスを申し込むことなど出来ず

経済界に燦然と現れた新しいプリンセスを、ただ指を咥えて見ているしかなかった



『さぁ家に帰ろうか。』

経済界のパーティーは閉幕となり、シン夫妻は二人の娘を率いて車に戻っていく

いつになく無口で顔色の悪いヒョリンを気に掛けながらも、車はシン家に向かって走っていった

そして家の中に入るなり・・・ヒョリンは振り向いて両親に真剣な表情を向けた

『パパ・ママ・・・話したい事があるの・・・』
『ヒョリン、着替えてからにしない?』
『すぐに話したいの。』
『そう。じゃあリビングに行きましょう。』

ヒョリンが両親に向けて話したい事があるというのであれば、自分は居ない方がいいだろうと

チェギョンは二階の自室に上がって行こうとする

『じゃあ私は着替えを済ませます。』

ところがヒョリンはそんなチェギョンを引きとめた

『チェギョン・・・あなたも一緒に聞いて欲しいの。』
『あ・・・うん。』

ソファーに腰掛けた四人・・・ヒョリンは少し俯きながら口を開いた

『この間留学先から帰ったばかりで、こんなことを言い出すのは気が引けるんだけど・・・
私、海外の大学に進むことにしたわ。』
『えっ?ヒョリン・・・急にどうしたの?』
『そうだよヒョリン。一体・・・』
『今のまま上の大学に進学しても、そこには自分が思うほど活躍できる場所がないと知ったからよ。
以前留学していた先では、素晴らしい先生もいる。その上の大学はもっと恵まれているわ。
私高校を卒業したら、また海外に行くわ。ダメかしら?』
『ヒョリンがそう願うのであればそれは構わないが・・・』
『そうね。私も反対はしないけど・・・』

両親にしてみればヒョリンが帰ってきて以来トラブル続きだったシン家である

だが・・・ここで安易にそれを許してしまうのも、少し気が咎めたようだ

『もう一度よく考えてみたらどうだい?』
『パパ・・・私の気持ちは変わらないわ。ただ・・・留学中よりも金銭面で負担をかけちゃうけど・・・』

ヒョリンからはじめて出た言葉だった

今までヒョリンが金銭的な心配などしたことはなかったのである

(この家に居難いのかもしれない・・・)

ナムギルもスンレも・・・そしてチェギョンさえも、そう思わずに居られなかった

『いいだろう。ヒョリンが好きな道を思う存分勉強できるなら、私は援助を惜しまないよ。』
『ありがとうパパ。』

どこかすっきりした顔つきで部屋に戻っていくヒョリンに、チェギョンは二階に続く階段を上りきったところで

呼び止めた

『ヒョリン・・・あの・・・』

もう少しで≪私が居ない方がこの家は平和なのよ!≫そう投げつけたい言葉をヒョリンは必死で飲み込む

そして・・・

『いいでしょう?チェギョン・・・私は好きなことを存分に学べるの。
あなたは・・・どこにも行けないわね。ふふふ・・・』

そう答えた

ヒョリン以外の三人は、胸の中がざらつく感じを覚えながら着替えを済ませるのだった


そうしてチェギョン・シン・・・そしてヒョリンも受験に向かってラストスパートを掛けるのだった・・・




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朝の寒さに耐えきれず・・・我が家、ストーブ出ちゃったよ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

おかげさまで・・・無事またひとつ歳を重ねることが出来ました。
感謝感謝❤
正直あまり・・・嬉しくない(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!


あ!!なお本日・・・『るろう・・・』を見たいので
お返事途中から明日になってしまうかもしれません。
遅くなっても許してね❤(だって面白いんだもん♪)

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