Quantcast
Channel: ~星の欠片~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

蜃気楼の家 12

$
0
0
ミンとシンに送られ戻っていったシン家・・・父ナムギルは仕事のため不在だったが、母スンレはチェギョンの

予想以上に早い帰宅に喜びを隠しきれない

『チェギョン・・・』
『お母さん・・・こんにちは。』

まだ≪ただいま≫と言えるほどこの家に馴染んでいないチェギョンである

スンレは送ってくれたミンとシンをリビングに招き入れた

チェギョンは母スンレに、予定外に早く帰れた理由を話して聞かせた

『そう・・・ヒョリンがあなたに逢いに行ったの。』
『はい。一緒に住んでも構わないと了承を貰いました。』

ヒョリンの了承がいること自体が間違っているのだが、チェギョンはこの家にとって若輩者である

やはり18年間娘だったヒョリンの顔を立てる必要があった

『良かったわ・・・』

スンレは心から安堵した表情でそう呟くと、改めてミンと向かい合った

『ミンさん・・・今回の事、あなたにどんなにか感謝しているか・・・』
『あら~~いいのよ。私は当然の事をしたまでよ♪』
『あ・・・チェギョン、学校の名札が出来上がってきたわ。お部屋に荷物を置いて来たら?』
『あ・・・はい♪あ・・・あの、シン君にお部屋を見せてあげてもいいですか?』
『構わないわ。シン君も見てやって。』
『はい。ではおばさん失礼して、チェギョンの部屋を見てきます。』

シンはチェギョンの荷物を半分手伝い、チェギョンと共に二階の部屋に向かった

『シン君、ここだよ♪見て~~♪』
『すごい広い部屋じゃないか。うちの母さん負けたな・・・』
『えっ?何が負けたって?』
『くっ・・・いや、こっちの話だ。制服を掛けるんだろう?』
『うん♪』

チェギョンは真新しい洋服ダンスを開け、クリーニングから仕上がって来た制服をそこに掛けた

そしてその胸ポケットに≪シン・チェギョン≫の名札を付けた

『なんか・・・くすぐったいな。いつになったらシン・チェギョンに慣れるかな?』
『そんなのすぐだ。心配することない。』
『うん。』

大きな洋服ダンスの中にポツンと制服だけが掛かっている

チェギョンは恥ずかしそうに苦笑するとその洋服ダンスを締めた

『このタンスに掛けられるようなお洋服・・・他には持ってないや。へへへ・・・』
『すぐに一杯になる。ヒョリンの洋服の多さは友人の間でも評判だ。きっとおばさんがチェギョンに似合う物を
沢山買ってくれる筈だ。』
『そうかな・・・』

洋服などねだったことがない。与えられた物を着ていただけ・・・物心ついた時には、自分でアルバイトし

そのお金の中で買っていたのだから、高価な物など持っている筈がない

この大きな洋服ダンスが一杯になるほどの洋服・・・チェギョンには想像すらできなくてそんな自分に苦笑する


その時突然部屋がノックされた

<トントン>

『はい。』

すぐにドアを開けたチェギョン

そこにはヒョリンが大きな箱を抱え立っていて、扉が開くなりその大きな箱を部屋の中に≪ドスン≫と下ろした

『シン・・・ここで何をしているの?』
『チェギョンの部屋を見せて貰っていたんだ。』
『私の部屋には来た事も無いくせに・・・。まあいいわ。』

ヒョリンは視線をチェギョンに向け、その箱の中を指差した

『チェギョン・・・この洋服、あなたにあげるわ。』
『えっ?』
『一度しか着ていない物ばかりよ。ちゃんとクリーニングもしてあるわ。
私には地味で似合わなかったの。あなたならちょうどいいかと思って・・・』

私服の趣味からしてチェギョンとヒョリンでは大きな違いがあった

チェギョンはその申し出に困惑し、その箱の中の派手なプリント生地を無言で見つめていた

ヒョリンのそんな申し出に黙っていられなかったのは、どうやらシンの方だったようだ

シンは箱の中身を上から数着確かめ、それからヒョリンに冷たい視線を投げかけた

『ヒョリン・・・お前って奴は本当に失礼な女だな。』
『えっ?なにが?』
『自覚がないのか?致命的だな・・・。
チェギョンはこの家の本当の娘なんだ。なぜお前の一度着た中古を引き取らなければならない?』
『あら・・・だってもったいないでしょう?チェギョンなら喜んでくれると思ったんだけど?
元々みすぼらしい格好しているし・・・』
『お前がそんな心配をしなくても、おじさんとおばさんはちゃんと考えているさ。
これは自分で処分するんだな!!チェギョンはこんな洋服着ない。』
『そう・・・なの?折角の好意なのに・・・』

確かに悪気はないかもしれない。だがシンが数着めくった時に目にしただけでも、チェギョンの趣味とは

かけ離れていた

チェギョンは勇気を出してヒョリンに言う

『ごめんねヒョリン。私にはちょっと派手なプリントばかり。いただいても恐らく着ないと思う。』
『そう!!』

ヒョリンは憤慨した面持ちで、再びその箱を持ち上げると自分の部屋に戻って行った

『あぁぁ・・・ヒョリンを怒らせちゃったかな?』
『っつ・・・勝手に怒らせておけ!あれは失礼極まりない行為だろう?』
『うん、でも悪気があったわけじゃなくて・・・』
『悪気がなくても悪意はそこに存在する!!お前・・・大丈夫か?本当に・・・
いつでも電話しろ。迎えに来てやるから・・・。
母さんも言っていただろう?お前の逃げ込める場所になるって・・・』
『くすくす・・・うん。ありがとう。そう思うとすごく心強いよ。』

その時チェギョンは、部屋の片隅に一昨日は無かったドレッサーが置かれている事に気がついた

『あれっ?ドレッサーが・・・ある。わ・・・わぁ~~この化粧品って10代売れ筋ナンバー1の・・・』

ドレッサーの上に並んだ化粧品。それはチェギョンがすごく使ってみたいと思いながら、

一度も手が出せなかったコスメシリーズだった

『化粧品なんて興味あるのか?』
『ない子なんていないよぉ。私は使った事一度もないけど・・・なんだか嬉しいな♪』
『今夜から風呂上りが楽しそうだな。』
『うん~~すごく楽しみ♪』

ヒョリンから中古品を押しつけられそうになった残念な気分は、スンレの準備した化粧品で

すっかり浮上することが出来たようだ




シンとチェギョンが二人で話をしている頃、階下のミンはスンレに相談を持ちかけた

『スンレさん・・・あのね、ユル・・・いるでしょう?』
『ユル君?ええ・・・イ家の親戚よね?』
『そのユルが・・・どうやらチェギョンさんに気があるみたいなのよ。』
『えっ?それはどういう事?なぜチェギョンがユル君と知り合うの?チェギョンはまだ高校生よ。』
『チェギョンさんのバイト先に・・・どうも通い詰めていたらしいわ。』
『えっ?あの・・・▼■食堂にユル君が?嘘でしょう?ユル君っていったらソ・ファヨンさんの会社の重役よね?
そんな子があの食堂に通っていたなんて・・・。』
『そこが問題なのよ、ユルの性格じゃあ・・・とても行きそうにないお店なんでしょう?』
『ええ。決してユル君が居て似合う場所とは言えないわね。』
『なのに通い詰めるくらいだから、相当気に入っているんじゃないかと思うの。
それでね・・・そのユルがチェギョンさんがこの家の子だと知ってしまったの。』
『まぁ!!』
『あのファヨンお義姉さん・・・昔も≪我が家をのけものにしてシン家との縁を結ぼうとした≫って
文句タラタラだったでしょう?』
『そんなことを・・・妊娠中に聞いた気がするわ。』
『また何か言って来るかもしれないわ。』
『そうかしら・・・』
『そうに決まっているわ。でもぉ~~元々お義父さん達が結びつけたかったのは≪シン≫とでしょう?
お断りして欲しいのよ。』
『お断りも何も・・・漸く帰って来た娘なのよ。何を言われたって主人が手放す筈ないわ。』
『えっ・・・・?(ちょ・・・ちょっと待って!スンレさん。うちは?うちのシンは?)』

許嫁の話を再び持ち出そうとしたミンだったが、スンレのその様子に一瞬口を開けなくなってしまった

『えっとスンレさん・・・もし相手がうちだったら?』
『あ~~ミンさん、今はきっと無理だと思うわ。私達夫婦にはチェギョンとの18年を埋める時間が必要よ。』
『そう・・・よね・・・・。でっでもねっ!!もし本人同士がお付き合いしたいって言ったら、反対しないでしょう?』
『えっ?そんな話になっているの?』
『いいえ・・・そんな話にはまだなっていないけれど、私の見たところあの二人って
すごくいい雰囲気なのよね~~♪だからもし、二人が付き合いたいって言い出した時には、
反対しないで欲しいの。』
『まぁそれは・・・そうなったらの話でしょう?その時に考えるわ。』
『そうして頂戴。』

ひとまず二人の縁結びの種を蒔くことが出来なかったミンは、土地だけ耕したのである

ミンの思惑通りに両家の縁が結ばれるのか・・・

またこの家でチェギョンが上手く暮らしていけるのか・・・

確かに不安は尽きない



イメージ 1

いやいや~~チェギョンがシン家に
帰ったところで話が終わっちゃった。
ヒョリン・・・最初からとんでもない高飛車娘ですな。
でもチェギョンの味方は一杯いてくれるから~
心配ないよ❤


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>