声を忍ばせ思う存分に泣いたチェギョンを乗せ、イ家の車は行きつけのレストランの駐車場に到着した
既に涙は乾いていたが、如何にも泣きましたと言わんばかりに腫れた目元は、チェギョンの愛らしい顔を
更に頼りなさそうに見せた
ヒョンとミンがまず先にレストランに入り、シンに促がされるように背中を支えられ入っていった店内・・・
四人はもちろんVIP席へと案内されその席に着いた時・・・遠巻きにその四人を見ている者がいた
見ていた者は二人・・・その席に向かって歩いて来る
『こんにちは。』
『おじさんおばさん・・・奇遇ですね。こんな場所でお逢いするとは・・・』
近づいてきた人物はソ・ファヨンとイ・ユル親子だった
二人はイ・ヒョンの亡くなった兄の妻と息子である
『まぁ・・・お義姉さん。ユルも・・・』
『元気だったかね?』
シンは形ばかりの会釈をした
ユルは・・・その家族の中に俯いたチェギョンを見つけ、チェギョンの顔を凝視する
『あ・・・あれっ?チェギョンちゃん?チェギョンちゃんでしょ?』
自分の名前を呼ばれ思わず泣き腫らした顔を上げたチェギョン・・・
『あ・・・ユルさん。えっ?・・・』
『どうしてイ家の人達と食事を?』
『えっ・・・えっと・・・あのっ・・・それは・・・』
チェギョンには説明のしようがない
イ家と一緒に食事に来た女の子をユルが見知っていることに驚いたファヨンは、息子に問い掛ける
『ユル・・・知っているお嬢さんなの?』
『うん。僕のランチタイムのマドンナだよ。』
『えっ?あの食堂のお嬢さん?』
『そうだよ。母さん。』
そう・・・イ・ユルは、この夏休みの期間中母の葬儀以降少し欠勤した以外は、ずっと▼■食堂で
アルバイトをしていたチェギョンに逢いたさに、▼■食堂に通い詰めていた男の一人だった
ソ・ファヨンの経営する会社の重要ポストに席を置くユルは、25歳の将来有望な後継者だった
ミンはまだ色々説明するのが難しい状況なので、今は伏せておこうと言葉を濁した
『うふふ~~ちょっとした知り合いなのよ。今日は一緒にお食事に来たのよ♪』
ユルは思いがけない場所でランチタイムのマドンナに逢えた嬉しさもあったが、やはりシンと並んで
座っていることがあまり面白くなかったようだ。つい咎めるような質問を投げかけた
『でもおじさん、おばさん・・・いいんですか?ヒョリンとの縁談話が進んでいる時に、シンの横に他の女の子を
座らせるなんて・・・』
『ああ・・・その話ならお断りしたわ。』
『えっ?なぜ・・・。あんなにおじさんもおばさんも乗り気だったじゃないですか。』
『う~~ん、少し事情があってね。まぁそのうち解るわ。』
『そうなんですか?あ・・・すっかりお邪魔しちゃいましたね。どうぞごゆっくり。
チェギョンちゃん・・・またお店でね。』
『あ・・・ユルさん、私・・・もう▼■食堂を辞めてしまったんです。』
本当は父に辞めさせられたのだが、チェギョンは敢えてそう答えた
シン家に住む話も立ち消えになりそうな気がして、正直先の見通しが立たずチェギョンは不安を募らせる
『えっ?辞めた・・・の?』
『はい。』
『じゃあ今度はどこでアルバイトを?』
『えっと・・・まだ決まっていなくて・・・』
『じゃあ・・・決まったらここに電話をくれない?』
ユルは胸ポケットの中から名刺を取り出し、チェギョンに手渡した
『はい。』
『では・・・失礼します。』
にこやかに頭を下げファヨンとユルが去っていく・・・
二人が去った後、四人はなんとなく溜息を吐いた。別に隠し事をしているわけではないが、
まだすべてが元通りに戻ったわけではない。それにチェギョンの目の前でその話を蒸し返すのは控えたい
イ家の三人は其々にそんな気持ちだった
チェギョンは今まで知らなかった事実が、ユルの言葉の中に隠されている様な気がして問いかけた
『あの・・・シン君とヒョリンは縁談の話があったんですか?もし壊れたのが私のせいだったらごめんなさい・・・』
ミンは項垂れてしまったチェギョンに向かって、胸の前で思い切り両手を振った
『ちっ・・・違うのよ。二人がってことじゃなくて・・・それはうちのお爺さんとシン家のお爺さんが
私とスンレさんのお腹に赤ちゃんが宿った時取り交わした約束なのよ。
≪お互いの子供が異性だったら、将来縁を結ぼう≫ってね・・・。つまり許嫁だったと言う訳。
でもヒョリンは違うでしょう?シンも元々この話に乗り気じゃなかったし・・・
それなら一旦お断りしようってことになったの。
ヒョリンとシンでは・・・亡くなったお爺さん方の願いとは違ってくるでしょう?
両家の縁が結ばれることにはならないもの・・・』
『あ・・・そうでしたか。』
(だから本来はチェギョンさんあなたが・・・許嫁なのよね。)
本当はどんなに言いたかったか解らない言葉を、ミンはのみこんだ。
今のチェギョンにそんなことを言っても、心の負担になるだけだ
『だから・・・気にしなくっていいのよ~~♪さぁお食事にしましょう。』
ミンは明るく笑顔を浮かべると、運ばれてきた料理に手を付けるよう皆を促した
一方・・・食事を終え母であるソ・ファヨンと共に会社に向かったユルは、先程の光景を思い出し
何か考えているようだ
『母さん・・・僕のお気に入りのマドンナなんですけど・・・一体あの家とどんな関係があるんでしょう。』
『そうね・・・なんともミスマッチな感じはしたけど・・・』
『母さんあの子ですよ。母親を事故で亡くして就職先を探しているって言った子は・・・』
『そう?ユルは随分あの子が気に入っているようだけど、あなたには然るべき家の子を
選んで貰わないと困るわ。食堂でアルバイトしている様な子じゃあ・・・
亡くなったお父様の顔が立たないでしょう?せめてシン家のヒョリンくらいの家柄の子を選んでね。』
『シン家の・・・ヒョリン・・・』
自分の想いを完全否定されてしまったユル
まさかその完全否定されたチェギョンが、シン家の本当の娘だなんてまだ二人は知らない
食事を済ませイ家に戻るとイ家の前には車が一台停まっていた
イ家の家族が帰宅するを待っていたのは、娘のチェギョンの心情を心配した両親だった
ナムギルとスンレはリビングに通されチェギョンと向かい合った
『チェギョン・・・こんな騒ぎになってしまってすまない。』
『恐らくヒョリンはあの日記帳を読む筈よ。あの子の性格なら真実を知ろうとする筈。
知った上でどんな態度に出るのかは分からないけど・・・チェギョン、暫く辛抱してね。』
『大丈夫です。イ家のおじ様もおば様もシン君も私にとてもよくしてくださいます。』
『新学期が始まるまでにはちゃんと話をして納得させるから・・・』
『はい。ヒョリンにも心の整理をする時間が必要です。この家で暫くお世話になりますから
私の事は心配しないでください。』
ナムギルとスンレはイ夫妻にくれぐれもチェギョンをよろしくと頭を下げ家に戻って行った
シン家の両親が家に戻った後、ミンはすぐにチェギョンを客間に案内した
『チェギョンさん・・・シン家に作られたあなたのお部屋には敵わないだろうけど、
うちだっていいお部屋はあるのよ♪』
『えっ?ここを私が使って良いんですか?』
落ち付いた家具が備え付けられている素敵な客室にチェギョンは目を丸くする
『ええもちろん♪気に入っていただけたかしら~?』
『はい。とても気に入りました。まるでホテルみたいですね。』
『ここを好きなように使って頂戴ね。なんならずっと居てくれても・・・いいのよ~~♪おほほほほ・・・』
居心地のいいイ家・・・ヒョリンのいるシン家と違ってここには攻撃して来る者もいない
チェギョンは安心して寛ぐことが出来た
その日の夜・・・シンはチェギョンの部屋で今後の事を話した
『チェギョン・・・学校の物とかシン家に運んだのか?』
『ううん。まだだよ。』
『じゃあ一度それを取りに行かないといけないな。』
『うん。』
『俺・・・一緒にいってやるよ。』
『えっ?でも・・・汚いところだよ。』
『お前が暮らした場所だろ?そんなこと言うな。どうする?明日車を出そうか?』
『車を・・・出すって?』
『俺・・・もう免許持っているから運転できる。』
『うそっ!!すご~~い!!』
『別にすごくないさ。じゃあ明日早速行こう。』
『なんかシン君ちにはなにからなにまでお世話になっちゃって・・・』
『くっ・・・うちの母さんと出くわした時点で、何かの縁があったんだ。』
『そうかもしれない。』
『じゃあ・・・ゆっくり休め。』
『うん。どうもありがとう。』
今日の騒動で疲れたチェギョンを労わる様にシンの大きな掌はチェギョンの頭をそっと撫で、
チェギョンの部屋を出る
チェギョンの部屋を出て自室に戻ったシンは、机の上に置いたままのスマホに電話が掛かってきている事に
気がついた
相手はシン・ヒョリン
シンは一瞬深呼吸をし、その電話を取った
『私よ。ヒョリン。』
『なんだ?』
『チェギョンって・・・今どこに居るのか知ってる?』
『うちに居るが・・・』
『えっ?シンの家に居るの?』
『あぁ。チェギョンはアパートに帰るって聞かなかったが、俺の母がそれを許さなかったからな。』
『そう。明日・・・チェギョンを連れ出して貰えない?』
『なんの用がある?その返答次第ではチェギョンに逢わせない。』
『聞きたいことが・・・あるのよ。あなたも一緒で構わないわ。だったら・・・逢わせて貰えるでしょう?』
『俺も一緒?それなら構わない。だがヒョリン・・・今日のような暴言を吐くのはやめろ。
今までだって散々チェギョンの事を見下してきただろう?そういう態度を改めるのならチェギョンと逢わせてやる。
お前に約束できるか?』
『約束・・・するわ。』
ヒョリンにとっては≪貧乏人の子≫と散々蔑んできたチェギョンと、自分の立ち位置が逆転するなど
考えもつかないことだったが・・・それでも自分の中に湧きあがる誘惑に打ち勝てなかったのである
黒い革表紙の日記帳を書いた主に逢ってみたい
自分を産んだ親が他に居ると知って、やはり逢ってみたいと思う感情を捨てることはできなかった
まだ頭の中は混乱している。幼い頃から信じていたシンとの縁も切れてしまった
その絶望の中にありながらも、あの日記帳を書いた女性にどうしても逢いたい
たとえそれが墓前であっても逢いに行きたい
そしてその墓前で問い掛けたい。こんな事をして幸せだったのかと・・・
ヒョリンにはチェギョンの生きて来た辛い環境は理解できない
だが一つだけ確信したのは、自分は生母から愛されていたという事・・・
その日記帳にはチェギョンの事などほとんど書かれていなかった
だからこそ逢いに行かなければ・・・ヒョリンはそう思い、シンに言い難いお願いをしてまでも
チェギョンを連れだして欲しいと頼んだのだった
サラリーマン、ユル君をご希望の方がいらっしゃったので
登場させてみた・・・みたいな?
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
次回・・・チェギョンとヒョリンが逢うそうな。
さてどのような展開になるかのぉ・・・
おほほほほ~~♪
既に涙は乾いていたが、如何にも泣きましたと言わんばかりに腫れた目元は、チェギョンの愛らしい顔を
更に頼りなさそうに見せた
ヒョンとミンがまず先にレストランに入り、シンに促がされるように背中を支えられ入っていった店内・・・
四人はもちろんVIP席へと案内されその席に着いた時・・・遠巻きにその四人を見ている者がいた
見ていた者は二人・・・その席に向かって歩いて来る
『こんにちは。』
『おじさんおばさん・・・奇遇ですね。こんな場所でお逢いするとは・・・』
近づいてきた人物はソ・ファヨンとイ・ユル親子だった
二人はイ・ヒョンの亡くなった兄の妻と息子である
『まぁ・・・お義姉さん。ユルも・・・』
『元気だったかね?』
シンは形ばかりの会釈をした
ユルは・・・その家族の中に俯いたチェギョンを見つけ、チェギョンの顔を凝視する
『あ・・・あれっ?チェギョンちゃん?チェギョンちゃんでしょ?』
自分の名前を呼ばれ思わず泣き腫らした顔を上げたチェギョン・・・
『あ・・・ユルさん。えっ?・・・』
『どうしてイ家の人達と食事を?』
『えっ・・・えっと・・・あのっ・・・それは・・・』
チェギョンには説明のしようがない
イ家と一緒に食事に来た女の子をユルが見知っていることに驚いたファヨンは、息子に問い掛ける
『ユル・・・知っているお嬢さんなの?』
『うん。僕のランチタイムのマドンナだよ。』
『えっ?あの食堂のお嬢さん?』
『そうだよ。母さん。』
そう・・・イ・ユルは、この夏休みの期間中母の葬儀以降少し欠勤した以外は、ずっと▼■食堂で
アルバイトをしていたチェギョンに逢いたさに、▼■食堂に通い詰めていた男の一人だった
ソ・ファヨンの経営する会社の重要ポストに席を置くユルは、25歳の将来有望な後継者だった
ミンはまだ色々説明するのが難しい状況なので、今は伏せておこうと言葉を濁した
『うふふ~~ちょっとした知り合いなのよ。今日は一緒にお食事に来たのよ♪』
ユルは思いがけない場所でランチタイムのマドンナに逢えた嬉しさもあったが、やはりシンと並んで
座っていることがあまり面白くなかったようだ。つい咎めるような質問を投げかけた
『でもおじさん、おばさん・・・いいんですか?ヒョリンとの縁談話が進んでいる時に、シンの横に他の女の子を
座らせるなんて・・・』
『ああ・・・その話ならお断りしたわ。』
『えっ?なぜ・・・。あんなにおじさんもおばさんも乗り気だったじゃないですか。』
『う~~ん、少し事情があってね。まぁそのうち解るわ。』
『そうなんですか?あ・・・すっかりお邪魔しちゃいましたね。どうぞごゆっくり。
チェギョンちゃん・・・またお店でね。』
『あ・・・ユルさん、私・・・もう▼■食堂を辞めてしまったんです。』
本当は父に辞めさせられたのだが、チェギョンは敢えてそう答えた
シン家に住む話も立ち消えになりそうな気がして、正直先の見通しが立たずチェギョンは不安を募らせる
『えっ?辞めた・・・の?』
『はい。』
『じゃあ今度はどこでアルバイトを?』
『えっと・・・まだ決まっていなくて・・・』
『じゃあ・・・決まったらここに電話をくれない?』
ユルは胸ポケットの中から名刺を取り出し、チェギョンに手渡した
『はい。』
『では・・・失礼します。』
にこやかに頭を下げファヨンとユルが去っていく・・・
二人が去った後、四人はなんとなく溜息を吐いた。別に隠し事をしているわけではないが、
まだすべてが元通りに戻ったわけではない。それにチェギョンの目の前でその話を蒸し返すのは控えたい
イ家の三人は其々にそんな気持ちだった
チェギョンは今まで知らなかった事実が、ユルの言葉の中に隠されている様な気がして問いかけた
『あの・・・シン君とヒョリンは縁談の話があったんですか?もし壊れたのが私のせいだったらごめんなさい・・・』
ミンは項垂れてしまったチェギョンに向かって、胸の前で思い切り両手を振った
『ちっ・・・違うのよ。二人がってことじゃなくて・・・それはうちのお爺さんとシン家のお爺さんが
私とスンレさんのお腹に赤ちゃんが宿った時取り交わした約束なのよ。
≪お互いの子供が異性だったら、将来縁を結ぼう≫ってね・・・。つまり許嫁だったと言う訳。
でもヒョリンは違うでしょう?シンも元々この話に乗り気じゃなかったし・・・
それなら一旦お断りしようってことになったの。
ヒョリンとシンでは・・・亡くなったお爺さん方の願いとは違ってくるでしょう?
両家の縁が結ばれることにはならないもの・・・』
『あ・・・そうでしたか。』
(だから本来はチェギョンさんあなたが・・・許嫁なのよね。)
本当はどんなに言いたかったか解らない言葉を、ミンはのみこんだ。
今のチェギョンにそんなことを言っても、心の負担になるだけだ
『だから・・・気にしなくっていいのよ~~♪さぁお食事にしましょう。』
ミンは明るく笑顔を浮かべると、運ばれてきた料理に手を付けるよう皆を促した
一方・・・食事を終え母であるソ・ファヨンと共に会社に向かったユルは、先程の光景を思い出し
何か考えているようだ
『母さん・・・僕のお気に入りのマドンナなんですけど・・・一体あの家とどんな関係があるんでしょう。』
『そうね・・・なんともミスマッチな感じはしたけど・・・』
『母さんあの子ですよ。母親を事故で亡くして就職先を探しているって言った子は・・・』
『そう?ユルは随分あの子が気に入っているようだけど、あなたには然るべき家の子を
選んで貰わないと困るわ。食堂でアルバイトしている様な子じゃあ・・・
亡くなったお父様の顔が立たないでしょう?せめてシン家のヒョリンくらいの家柄の子を選んでね。』
『シン家の・・・ヒョリン・・・』
自分の想いを完全否定されてしまったユル
まさかその完全否定されたチェギョンが、シン家の本当の娘だなんてまだ二人は知らない
食事を済ませイ家に戻るとイ家の前には車が一台停まっていた
イ家の家族が帰宅するを待っていたのは、娘のチェギョンの心情を心配した両親だった
ナムギルとスンレはリビングに通されチェギョンと向かい合った
『チェギョン・・・こんな騒ぎになってしまってすまない。』
『恐らくヒョリンはあの日記帳を読む筈よ。あの子の性格なら真実を知ろうとする筈。
知った上でどんな態度に出るのかは分からないけど・・・チェギョン、暫く辛抱してね。』
『大丈夫です。イ家のおじ様もおば様もシン君も私にとてもよくしてくださいます。』
『新学期が始まるまでにはちゃんと話をして納得させるから・・・』
『はい。ヒョリンにも心の整理をする時間が必要です。この家で暫くお世話になりますから
私の事は心配しないでください。』
ナムギルとスンレはイ夫妻にくれぐれもチェギョンをよろしくと頭を下げ家に戻って行った
シン家の両親が家に戻った後、ミンはすぐにチェギョンを客間に案内した
『チェギョンさん・・・シン家に作られたあなたのお部屋には敵わないだろうけど、
うちだっていいお部屋はあるのよ♪』
『えっ?ここを私が使って良いんですか?』
落ち付いた家具が備え付けられている素敵な客室にチェギョンは目を丸くする
『ええもちろん♪気に入っていただけたかしら~?』
『はい。とても気に入りました。まるでホテルみたいですね。』
『ここを好きなように使って頂戴ね。なんならずっと居てくれても・・・いいのよ~~♪おほほほほ・・・』
居心地のいいイ家・・・ヒョリンのいるシン家と違ってここには攻撃して来る者もいない
チェギョンは安心して寛ぐことが出来た
その日の夜・・・シンはチェギョンの部屋で今後の事を話した
『チェギョン・・・学校の物とかシン家に運んだのか?』
『ううん。まだだよ。』
『じゃあ一度それを取りに行かないといけないな。』
『うん。』
『俺・・・一緒にいってやるよ。』
『えっ?でも・・・汚いところだよ。』
『お前が暮らした場所だろ?そんなこと言うな。どうする?明日車を出そうか?』
『車を・・・出すって?』
『俺・・・もう免許持っているから運転できる。』
『うそっ!!すご~~い!!』
『別にすごくないさ。じゃあ明日早速行こう。』
『なんかシン君ちにはなにからなにまでお世話になっちゃって・・・』
『くっ・・・うちの母さんと出くわした時点で、何かの縁があったんだ。』
『そうかもしれない。』
『じゃあ・・・ゆっくり休め。』
『うん。どうもありがとう。』
今日の騒動で疲れたチェギョンを労わる様にシンの大きな掌はチェギョンの頭をそっと撫で、
チェギョンの部屋を出る
チェギョンの部屋を出て自室に戻ったシンは、机の上に置いたままのスマホに電話が掛かってきている事に
気がついた
相手はシン・ヒョリン
シンは一瞬深呼吸をし、その電話を取った
『私よ。ヒョリン。』
『なんだ?』
『チェギョンって・・・今どこに居るのか知ってる?』
『うちに居るが・・・』
『えっ?シンの家に居るの?』
『あぁ。チェギョンはアパートに帰るって聞かなかったが、俺の母がそれを許さなかったからな。』
『そう。明日・・・チェギョンを連れ出して貰えない?』
『なんの用がある?その返答次第ではチェギョンに逢わせない。』
『聞きたいことが・・・あるのよ。あなたも一緒で構わないわ。だったら・・・逢わせて貰えるでしょう?』
『俺も一緒?それなら構わない。だがヒョリン・・・今日のような暴言を吐くのはやめろ。
今までだって散々チェギョンの事を見下してきただろう?そういう態度を改めるのならチェギョンと逢わせてやる。
お前に約束できるか?』
『約束・・・するわ。』
ヒョリンにとっては≪貧乏人の子≫と散々蔑んできたチェギョンと、自分の立ち位置が逆転するなど
考えもつかないことだったが・・・それでも自分の中に湧きあがる誘惑に打ち勝てなかったのである
黒い革表紙の日記帳を書いた主に逢ってみたい
自分を産んだ親が他に居ると知って、やはり逢ってみたいと思う感情を捨てることはできなかった
まだ頭の中は混乱している。幼い頃から信じていたシンとの縁も切れてしまった
その絶望の中にありながらも、あの日記帳を書いた女性にどうしても逢いたい
たとえそれが墓前であっても逢いに行きたい
そしてその墓前で問い掛けたい。こんな事をして幸せだったのかと・・・
ヒョリンにはチェギョンの生きて来た辛い環境は理解できない
だが一つだけ確信したのは、自分は生母から愛されていたという事・・・
その日記帳にはチェギョンの事などほとんど書かれていなかった
だからこそ逢いに行かなければ・・・ヒョリンはそう思い、シンに言い難いお願いをしてまでも
チェギョンを連れだして欲しいと頼んだのだった
サラリーマン、ユル君をご希望の方がいらっしゃったので
登場させてみた・・・みたいな?
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
次回・・・チェギョンとヒョリンが逢うそうな。
さてどのような展開になるかのぉ・・・
おほほほほ~~♪