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Channel: ~星の欠片~
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偽装と現実(リアル) 35

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東宮で三陛下や職員に見送られながら、私達を載せた数台の黒塗りの車とマイクロバスは

いくつかの出入り口から其々宮殿内を出て、宮殿に近い国道でジョイントし空港を目指す

その様な多人数でのお出掛けが初めてのギョムは、非常に嬉しそうな顔で私の膝の上に乗ると窓の外を眺めた

『ハワイは・・・遠いんですか?お母さま・・・』
『すごく遠いわよ。』
『お父さま・・・飛行機は大きいですか?』
『今日ギョムが乗る飛行機はあまり大きくはないが、今度大きいのに乗ろうな。』
『はい~~♪』

目を輝かせ窓の外を飛ぶように流れていくビルをいちいち指差し、それをシン君に質問するのが

楽しくて仕方がない様子

同じ年頃の子供と遊んだ事も無く、常に大人に囲まれた環境で育ったギョムは

普通の同じ年頃の子供より若干大人びているんじゃないかと思う

公式のハワイ旅行ではなくお忍びであるから私もシン君も普段着であり、同行する職員達も皆制服ではなく

普段着ている服装のままだ

機内に居る時間が長いため疲れない様に、そして人目につかないようにとの配慮だった

私もシン君も普段とは違う髪型にセットし黒縁めがねに帽子まで被っちゃったりして、ギョムにもキャップを

被らせてきた

万が一空港で誰かに見られたとしても、≪田舎の団体観光旅行客≫くらいにしか思わないだろう


空港に到着して車から降りた私達を、ギョン君とガンヒョンまたチャン航空会長のギョン君のお父様は

空港職員達と共に私達を出迎えてくれた

あぁぁ・・・ダメだって!!仰々しくお辞儀なんかしちゃあ・・・

『殿下、お待ちしておりました。』
『チャン会長、この度は色々ご配慮いただきありがとうございます。』
『弊社における最高のもてなしをさせていただきます。どうぞ楽しいご旅行を。』

空港職員達に案内され其々に手続きを済ませ搭乗ゲートをくぐった私達

すぐ目の前に一機の小型ジェットが現れた

それを見たギョムはなんだか嬉しそうに指差した

『お父さま・・・なんだか可愛いジェット機です。あれはなんでしょう?』

すかさずギョン君が満面の笑みで答えた

『ギョム皇子・・・あれはですね、チャン航空のゆるキャラです。』
『ゆる・・・キャラ?ですか?』
『はい~~そうなんですよ。いわゆるチャン航空の顔とも言えるキャラクターが描かれているんです。
ギョム皇子はあのキャラクターをどうぞ覚えておいてくださいね。』

子供に自社を売り込むなんて・・・ギョン君は商魂逞しい

『はい~~♪もう覚えました♪ところでお父さま・・・こちらの方は・・・?』

私達が乗り込む小型ジェットに向かって共に歩いて行くギョン君とガンヒョンを不思議そうに見つめ、

ギョムがシン君に問い掛けた

宮では見慣れない人間だからだろう。私達は見慣れているけどね・・・くすくす

『ギョム、この人達はお父様とお母様の一番の親友でチャン・ギョンとイ・ガンヒョンだ。』
『ギョンおじちゃんと・・・ガンヒョンおばちゃんですか?』

ギョムのその言葉にギョン君は口を尖らせて抗議する

『いや~~ギョム皇子、おじちゃんは~~・・・』

それを聞いたガンヒョンはすかさずギョムをフォローする

『ギョン・・・ギョム皇子にとったら、アタシ達は立派なおじちゃんにおばちゃんよ!!』
『そうなのかぁ~~・・・』

がっかりした顔をするギョン君・・・そんな様子が私達夫婦は可笑しくてならなかった



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狭いながらも快適な機内に案内され其々席に着いた後、小型ジェット機は空に向けて飛び立った

その離陸の衝撃はギョムには少し怖かったらしい。両端に座る俺とチェギョンの手を握り、

ギュッと目を閉じている

やがてシートベルトを外してもよいとの指示が出た後、アナウンスが流れ始めた

『皇太子殿下御一行様、本日はチャン航空をご利用いただき誠にありがとうございます。
快適な空の旅をお過ごしいただくため、私共職員一丸となって手厚いおもてなしをさせていただきます。
ご必要なものがございましたら、なんなりとお申し付けくださいませ。』

早速ギョンとガンヒョンは席を移動してきた様だ

『皇太子殿下・・・お隣の席空いてますよね?我らが座っても構いませんか?』
『くっ・・・なんの冗談だ。わざとらしい敬語はやめろ。』
『じゃあ遠慮なく~~♪』

ギョムや職員の手前一応配慮していたのか、ギョンは漸くいつも通りの口調に戻った

ギョンに敬語など使われると背中が痒くなる。くくくっ・・・

ギョンは強張った顔のギョムを心配して来たのだろう。手に持ったディズニーの絵本をギョムに見せた

『ギョム皇子・・・ご覧になりますか?』
『えっ♪』

パッと顔を綻ばすギョムにギョンは手招きをする

『どうぞこちらにお越しください~~♪』

なんと・・・絵本でギョムを釣る計画か?くくっ・・・ギョムは心配そうに俺とチェギョンの顔を見上げ問いかける

『いって来てもいいですか?』
『あぁ。』『行って来なさい♪』
『わぁ~~い♪』

ギョムは恐る恐る席から立つとギョンとガンヒョンの間の席にちょこんと座った

『さぁ~ギョム皇子、絵本を読みましょうね~♪』

ガンヒョンがその絵本を読んで聞かせている間に、ギョンはどうやらキャビンアテンダントに指示を出したようだ

俺達や職員其々に飲み物が配られ、ギョムの席にはフルーツとクリームの載ったプリンと

オレンジジュースが置かれた

ギョムは俺達にそれを口にしてもいいかどうか確認してから、美味しそうにおやつを口に運ぶ

ギョムのそんな様子にギョンとガンヒョンは目を細めて笑顔を浮かべている

学生結婚してから一年半・・・二人が徐々に親となる準備を始めようとしているのがよく解った



至れり尽くせりの空の旅・・・チャン航空の機内食は恐らく特別製なのだろう、今まで俺が食べた中で

一番美味しいと感じるものだった

ギョムも満足したようでハワイに到着するまでの間、お腹が一杯になっては眠っていた

快適に過ごしたジェットはやがてハワイの地に降り立ち、俺達は空港に迎えに来た車に分乗し

二日間宿泊するホテルに移動した

そこに行きつく途中、明日ユルが挙式を挙げる教会とユルが滞在しているホテルのチェックも済ませた


貸切にされたホテルの展望レストランで全員が食事を摂り、俺達は其々に割り当てられた部屋に入っていった

もちろん俺達家族が宿泊する部屋の前は、イギサが交代で護衛する

俺の我儘でこんな遠くまで連れ回される職員にすまないと感じながらも、其々が楽しそうな顔を

してくれている事が嬉しくて堪らない

また場所が変わってもギョムを挟んで三人で就寝する体制は変わらず、興奮気味のギョムではあったが

やはり暗くなると疲れて眠ってしまうようだ

明日はユルの挙式・・・職員と共にフォーマルで決めて出発だ





イメージ 2

ユル君の挙式までにワンクッション取らせていただきました。
ユル君の挙式は来週ね~~❤

今日は暑かったね・・・
でも日が陰るとすっかり秋の風が吹いています。




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