皇帝陛下からユルの挙式に参列する事を承認された俺は、卒業前の慌ただしさの中公務をこなしながら
ハワイに家族三人で行く計画を練っていた
家族三人で・・・とは言ってもやはり三人だけというわけにはいかないのが辛いところだ
イギサやコン内官・チェ尚宮や女官達も同行させなければ、皇帝陛下も納得しないだろう
何よりも怖いのはマスコミに嗅ぎつけられる事だ
これは隠密行脚なのだから皇室専用機をフライトさせる事も出来ない
さて・・・どうしたものか・・・
深刻な顔で思案する俺の目の前に、お気楽に手を振って俺の顔をじっと見つめる奴が目に留まった
チャン・ギョン・・・そうだ!!こいつがいたじゃないか!!
『どうしたの~~シンくん♪』
『あ?あぁ・・・少し考え事だ。』
『考え事?一体何だよ~~話せよ♪』
『ギョン・・・内密の相談があるんだが・・・』
声を潜めて俺は目の前のギョンに小声で話しかけた
『なになに~~?』
『ここじゃあ拙い。場所を変えよう。』
俺達は大学側が用意してくれた≪皇太子ルーム≫に向かい、その部屋の中に入ると再び話を続けた
『なぁシン・・・ここまで来ないと話せない話って何?』
不安そうに問い掛けてくるギョンに俺は真剣に相談を持ちかけた
『ギョン・・・内密に小型ジェットを飛ばして欲しいんだが・・・』
『はぁ?内密って・・・まさか会社側にもか?そんなの無理だ。そんな権限は俺にはないよ。』
『そうじゃない。依頼主が俺だってことを公にせずに小型ジェットを手配できるか?って意味だ。』
『公にせずに?だけどなぁ・・・お前はこの国の皇太子なんだぞ。
万が一のことがあった時に責任取りきれない。』
『万が一の事などないだろう?チャン航空は今までだって事故など起きたことのない信頼できる航空会社だ。』
俺のその言葉にギョンは相当気を良くしたようだ
『まぁね~~確かにうちの会社は業界信頼度ナンバー1♪』
単純な奴だ。くくっ・・・
『お前から会長に頼んでくれないか?』
『うん。それは出来るけど・・・一体どこに?』
『ハワイだ。』
『ハワイ?お忍びの旅行か?』
『まぁそんなところだが・・・チェギョンとギョムも連れていく。』
『それだけの理由なら別にお忍びで行く事はないんじゃないの?』
『いや・・・向こうで挙式に参列したいんだ。それはオフレコの話だから・・・』
『挙式?一体誰の?』
『それは・・・』
口ごもってしまった俺にギョンは屈託のない笑顔を向けた
『もしかして・・・ユルか?』
『・・・内緒の話だが実は・・・』
『それで内緒で行きたいんだな?』
『あぁ。そうだ。』
『つまりシンは・・・ユルの家族として参列するってこと?』
『あぁ。』
『う~~ん。でもさ・・・それって片手落ちじゃね?』
『片手落ちとは?』
『察するにユミの家族とユルだけなんだろう?元々の参列者は・・・』
『あぁ。』
『そこでお前たち家族がユルの親族として参列する。』
『その通りだ。』
『じゃあさ・・友人代表は?』
『あぁっ?』
ギョンは満面の笑みで自分の事を指差す
『俺・・・ユルの友人代表。ガンヒョンはユミと親しいしユミの友人代表。
俺達ハネムーンもハワイだったし、観光スポットも案内できるけど?
小型ジェットに俺達二人くらい乗客が増えても大丈夫だし、動向させたらすごく便利だと思わない?』
なにっ?ギョンとガンヒョンが?
確かにそうかもしれない。俺達はハワイになど不慣れだし、仕える者達にだってハワイに精通している者が
いるとは思えない
ギョンとガンヒョンを仲間に引き込めば、間違いなくこの計画は上手くいくだろう
『確かにそうだな。』
『よ~~し!話は決まった♪じゃあさ・・・日程と参加人数を出してくれよ。
うちの会社と提携しているホテルを予約しておくからさ。
あ・・・心配するなよ。セキュリティーも万全なホテルだからさ~~♪』
『あぁ。色々と手数掛けるがよろしく頼む。』
ギョンに相談を持ちかけたおかげで、話はとんとん拍子に進んだ
コン内官やチェ尚宮に指示を出し、旅行の準備をするよう伝えた
後は卒業式を待つのみだ
大学卒業を目前に控えシン君は何やらものすごく忙しそうだ
執務室に私が入っていくと、いつもコン内官と話をしている
そしてふと気がついたのだけど、チェ尚宮さんや女官のお姉さん方も忙しそうにしている
一体何が・・・そんなに忙しいのだろう
その理由はギョムの話からなんとなく推測できた
『お母さま・・・タキシードってカッコいいね~♪』
『タキシード?どこで見たの?』
『僕のタキシード♪皇太后さまが作ってくれたんだよ~♪』
タキシード・・・それってひょっとしてシン君が何か画策している?
『そう。よかったわね。それで・・・それはどこにあるの?』
『皇太后さまのお部屋~♪旅行に行く時に僕にくれるんだって。』
やっぱり?シン君は私にも内緒でユル君の挙式に参列しようとしているのね
『あ・・・でも内緒なんだって!』
こう言う時に子供は嘘が付けない。そうか~内緒なのね・・・お忍びの旅行ね
でも今まで親子三人の海外公務などなかったし、すごくいい機会になるんじゃないかな
ギョムも目を輝かせて本当に嬉しそう
さて~シン君は一体いつ私に話してくれるんだろう。その日を心待ちにしていた私だったけど、
シン君からの楽しい報告はなかなか聞けないまま私達は卒業式を迎えた
沢山のマスコミ取材陣から取材を受けるシン君と私
ユル君はそんな様子を微笑んで見つめながら、小さく手を振るとユミと共にそっと大学を後にした
取材が終わった後、公用車に乗り込んで帰ろうとした時・・・ギョン君とガンヒョンが私達の元を訪れた
『シン~チェギョンに話した?』
『あっ!!お前っ・・・』
ギョン君?ギョン君も何か知っているの?
私はシン君の顔を見上げ催促する視線を向けた
『なあに?シン君・・・』
『明後日旅行に行く。』
『旅行?どこに?』
返事は聞くまでもない。でもシン君の口から聞きたいの
『ハワイだ。』
『ほぉ~~~ハワイ❤』
『ユルの挙式に参列する。』
『うん~~♪』
賛成だ。大賛成だよ~~シン君はやっぱり、ユル君の事を考えてくれていたのね
その時ギョン君が横から口を挟んだ
『俺達も一緒に行くよ~~♪』
『えっ?ギョン君とガンヒョンも?』
『うん。友人代表としてね♪』
マジ?マジで?なんだかすごく楽しくなってきた~♪ガンヒョンも一緒に旅行に行けるなんて・・・修学旅行以来よ
『チェギョン・・・アンタ、ヘアメイクアイテムの準備しっかりしてね。
新郎新婦を最高にイケてる二人にするんでしょ?』
『もっちろ~~ん♪』
ああなんだかとってもワクワクする。
ユル君とユミの喜ぶ顔が早く見たいな・・・
東宮に戻ってから私はすぐに旅行の準備を始めようとしていた
その時チェ尚宮さんが部屋をノックする
『妃宮様・・・失礼いたします。殿下からこれを旅行に持参するよう申しつけられました。』
『シン君から?なんだろう・・・』
チェ尚宮さんが抱えた箱をテーブルの上に置き、その箱を開けてみる
うわぁ・・・フォーマルドレスだ。薄桃色のとても愛らしいドレス
シン君ったらこんな物まで準備していたなんて抜かりない
これで参列する時の洋服に悩む事は無くなった。後は必要な物をバッグに詰めてと・・・
こうして皇太子一家秘密のハワイ旅行の日が訪れた
きっとユル君もユミも
忘れられない挙式になりそうだね~~❤
忘れられない挙式になりそうだね~~❤