それから数日間・・・ユル君とユミは大学を休んだ
二人とも相当疲れが溜まっていたのだろう。その気もちもよく解る
恵政宮様との確執や皇族としての体面もあって、墓前に行く事は無いのだろうと思われた三陛下も
皇帝陛下は皇后様と、皇太后様はお付きの尚宮さんと・・・別々に恵政宮様の元へ行き
お別れの挨拶をしたと聞いた
其々の胸に過る想いはあるものの、やはり一度は家族だった身の上・・・一連の忌まわしい出来事と決別する
けじめの気持ちもあったのではないかと思う
夏休み前のテスト期間に入り、ユル君とユミは漸く大学に顔を出した
一目見ただけで随分痩せた印象の二人。私はユル君を励ます意味もあってテスト終了後東宮に二人を誘った
応接室で向かい合いお茶を飲む
ユル君は改めて私達に頭を下げた
『シン・・・チェギョン・・・色々本当にありがとう。』
噛み含めるようなユル君の口ぶりに、その心情を窺い知ることが出来た
そんなユル君にシン君はぶっきらぼうに返事をする。シン君なりの優しさだ
『もう何度も聞いた。それより食事はちゃんとしているのか?』
『うん。ちゃんと食べているよ。あまり喉を通らないけどね・・・』
『そうか。今日は宮で食事して行けよ。皇太后様もお前と一緒に食事がしたいと言っている。』
『うん。じゃあお言葉に甘えようかな。』
『休んでいる間・・・どうしていたんだ?』
『母の財産を整理したりしていたよ・・・』
『マンション売ったのか?』
『うん。持っていても仕方がないしね。売りに出したよ。
大学卒業後の為に使おうと思って・・・今から貯蓄するんだ。』
『そうか。堅実だな・・・』
恵政宮様所有の不動産などを処分するのは、ユル君がこれからの人生を前向きに生きるために
必要な事だと思う
だけど寂しさは否めないだろうな
はっ!!っと私はある事を思いついてそれを口にしてみた
『そうだユル君!!精進落とししようよ。』
『精進落とし?』
『うん。これからのユル君の前途に素敵な事がたくさん訪れるおまじない。』
『おまじない?一体どんな方法で?』
私は満面の笑みを浮かべると、鞄の中からハサミを取りだした
『これよこれ!!』
それを見たユミは瞬時に悟ったみたい
『ユル君・・・もっとイケメンにしてくれるって♪どうしよう~~今でも十分イケメンなんだけどなぁ~♪』
ヤダッ・・・シン君の顔が一瞬曇った。ユル君はシン君の視線が気になったのか、困ったような顔をしている
ヤキモチ皇子め・・・こんなところで本領発揮しないで欲しいわ!と私はシン君を横目で睨みつけた
『あ?あぁ・・・ユル、チェギョンがそう言っているんだ。やって貰えよ。』
『そう?本当にいいの?』
『あぁ。』
『じゃあ・・・精進落としして貰おうかな。』
応接間はそのままカットサロンに早変わりした。私はユル君の肩にケープを纏わせミストで髪を濡らしながら
髪に櫛を通した
そしてユル君の因縁を絶ち切る思いで、髪にハサミを入れる
シャキッ・・・シャキッ・・・・
規則正しい音を立てながら切られたユル君の髪が肩から落ちる
私はカットに集中していたため知らなかったけど、ユル君は髪を切られている間ずっと
声もあげずに泣いていたそうだ
葬儀の間中ずっと涙を堪えていたユル君だもの、張りつめた糸が切れたのかもしれない
髪を切り終えたユル君は、自分で言うのもなんだけどかなりイケメン度数を上げた様な気がした
『ありがとうチェギョン。なんだか気持も軽くなったよ。』
そう言って笑うユル君に、私はしてあげられる事があって本当に良かったと思った
皇帝陛下や皇后様からの要望もあり、食事は皆で揃ってということとなり・・・私達四人は本殿へ向かって行った
その場では決して恵政宮様の話題は出なかったが、帰り際にユル君は三陛下に
≪母に逢いに来ていただき感謝いたします。≫と頭を下げた
三陛下は何も言わず、ユル君の肩を叩いたり手を握り締めたりしていた
掛ける言葉が見つからない・・・その胸中は三陛下の表情でよく解る気がした
いや・・・何も話さなくても、ユル君には十分三陛下の気持ちが伝わったと思う
ギョムが一人でおすわりが出来るようになった頃・・・チェギョンはしきりと何かを考えているようだった
そして考えた末ハサミを持ち出しては、ギョムの髪を少しだけカットするのだ
一体・・・何をしているのだろう
イケメンメーカーのチェギョンなら、中途半端にカットをやめる様な真似はしないだろう
なのに気がつくと本当に数か所だけハサミを入れるだけだ
不思議に思った俺は、ある日チェギョンに問いかけた
『チェギョン・・・なぜちゃんとカットしてやらないんだ?』
『えっ?あ~~んっとね、まだ言っても聞かない年頃でしょう?すぐに動くから危ないの。』
そうか・・・そうだったのか。確かに予測不能な動きをしてくれるギョムをカットするのは楽じゃない
だが・・・チェギョンには別の思惑があったのだ
それに気がついたのはギョムが二歳になった頃のことだった
『できた~~♪シン君できたよ~~♪』
何やら大騒ぎしながら執務室に飛び込んでくるチェギョン。胸にはギョムを抱いていた
『見て見て~~♪』
なんのことかと思い目を凝らす
すると胸に抱かれていたギョムが俺に顔を向けたのだ
な・・・なんだ!!そのヘアスタイルは~~!!
唖然とし目を見開いた俺にチェギョンは言ってのけた
『マッシュルームギョムだよ~~ん♪ほら見て~~ギョムがすると可愛いの♪』
お・・・お前って奴は俺の黒歴史を世間に広めるつもりなのかっ!!
『ちぇ・・・チェギョンお前・・・』
『さて~~皇帝陛下と皇后様に見せに行こうね~~♪』
俺の話も聞かず自己完結すると執務室から出ていってしまったチェギョン
本殿ではギョムのヘアスタイルについての話題で持ちきりだったらしい
だがさすがにチェギョンも一度チャレンジしてみて満足したらしく、翌日にはギョムを今の俺と同じヘアスタイルに
変身させた
『だって~~一度やってみたかったんだも~~ん♪』
それがチェギョンの言い訳だったが、俺としてみたらギョムをそのままの状態にされなくて良かったよ
俺があのヘアスタイルで顔を隠し、殻に閉じこもっていた頃の事はもう思い出したくない
思い出そうにもその元凶はもうこの世に居ない
なんにしてもこんな天真爛漫な妻に育てられているのだから、ギョムは幸せだ
もちろんこの俺も・・・
二人とも相当疲れが溜まっていたのだろう。その気もちもよく解る
恵政宮様との確執や皇族としての体面もあって、墓前に行く事は無いのだろうと思われた三陛下も
皇帝陛下は皇后様と、皇太后様はお付きの尚宮さんと・・・別々に恵政宮様の元へ行き
お別れの挨拶をしたと聞いた
其々の胸に過る想いはあるものの、やはり一度は家族だった身の上・・・一連の忌まわしい出来事と決別する
けじめの気持ちもあったのではないかと思う
夏休み前のテスト期間に入り、ユル君とユミは漸く大学に顔を出した
一目見ただけで随分痩せた印象の二人。私はユル君を励ます意味もあってテスト終了後東宮に二人を誘った
応接室で向かい合いお茶を飲む
ユル君は改めて私達に頭を下げた
『シン・・・チェギョン・・・色々本当にありがとう。』
噛み含めるようなユル君の口ぶりに、その心情を窺い知ることが出来た
そんなユル君にシン君はぶっきらぼうに返事をする。シン君なりの優しさだ
『もう何度も聞いた。それより食事はちゃんとしているのか?』
『うん。ちゃんと食べているよ。あまり喉を通らないけどね・・・』
『そうか。今日は宮で食事して行けよ。皇太后様もお前と一緒に食事がしたいと言っている。』
『うん。じゃあお言葉に甘えようかな。』
『休んでいる間・・・どうしていたんだ?』
『母の財産を整理したりしていたよ・・・』
『マンション売ったのか?』
『うん。持っていても仕方がないしね。売りに出したよ。
大学卒業後の為に使おうと思って・・・今から貯蓄するんだ。』
『そうか。堅実だな・・・』
恵政宮様所有の不動産などを処分するのは、ユル君がこれからの人生を前向きに生きるために
必要な事だと思う
だけど寂しさは否めないだろうな
はっ!!っと私はある事を思いついてそれを口にしてみた
『そうだユル君!!精進落とししようよ。』
『精進落とし?』
『うん。これからのユル君の前途に素敵な事がたくさん訪れるおまじない。』
『おまじない?一体どんな方法で?』
私は満面の笑みを浮かべると、鞄の中からハサミを取りだした
『これよこれ!!』
それを見たユミは瞬時に悟ったみたい
『ユル君・・・もっとイケメンにしてくれるって♪どうしよう~~今でも十分イケメンなんだけどなぁ~♪』
ヤダッ・・・シン君の顔が一瞬曇った。ユル君はシン君の視線が気になったのか、困ったような顔をしている
ヤキモチ皇子め・・・こんなところで本領発揮しないで欲しいわ!と私はシン君を横目で睨みつけた
『あ?あぁ・・・ユル、チェギョンがそう言っているんだ。やって貰えよ。』
『そう?本当にいいの?』
『あぁ。』
『じゃあ・・・精進落としして貰おうかな。』
応接間はそのままカットサロンに早変わりした。私はユル君の肩にケープを纏わせミストで髪を濡らしながら
髪に櫛を通した
そしてユル君の因縁を絶ち切る思いで、髪にハサミを入れる
シャキッ・・・シャキッ・・・・
規則正しい音を立てながら切られたユル君の髪が肩から落ちる
私はカットに集中していたため知らなかったけど、ユル君は髪を切られている間ずっと
声もあげずに泣いていたそうだ
葬儀の間中ずっと涙を堪えていたユル君だもの、張りつめた糸が切れたのかもしれない
髪を切り終えたユル君は、自分で言うのもなんだけどかなりイケメン度数を上げた様な気がした
『ありがとうチェギョン。なんだか気持も軽くなったよ。』
そう言って笑うユル君に、私はしてあげられる事があって本当に良かったと思った
皇帝陛下や皇后様からの要望もあり、食事は皆で揃ってということとなり・・・私達四人は本殿へ向かって行った
その場では決して恵政宮様の話題は出なかったが、帰り際にユル君は三陛下に
≪母に逢いに来ていただき感謝いたします。≫と頭を下げた
三陛下は何も言わず、ユル君の肩を叩いたり手を握り締めたりしていた
掛ける言葉が見つからない・・・その胸中は三陛下の表情でよく解る気がした
いや・・・何も話さなくても、ユル君には十分三陛下の気持ちが伝わったと思う
ギョムが一人でおすわりが出来るようになった頃・・・チェギョンはしきりと何かを考えているようだった
そして考えた末ハサミを持ち出しては、ギョムの髪を少しだけカットするのだ
一体・・・何をしているのだろう
イケメンメーカーのチェギョンなら、中途半端にカットをやめる様な真似はしないだろう
なのに気がつくと本当に数か所だけハサミを入れるだけだ
不思議に思った俺は、ある日チェギョンに問いかけた
『チェギョン・・・なぜちゃんとカットしてやらないんだ?』
『えっ?あ~~んっとね、まだ言っても聞かない年頃でしょう?すぐに動くから危ないの。』
そうか・・・そうだったのか。確かに予測不能な動きをしてくれるギョムをカットするのは楽じゃない
だが・・・チェギョンには別の思惑があったのだ
それに気がついたのはギョムが二歳になった頃のことだった
『できた~~♪シン君できたよ~~♪』
何やら大騒ぎしながら執務室に飛び込んでくるチェギョン。胸にはギョムを抱いていた
『見て見て~~♪』
なんのことかと思い目を凝らす
すると胸に抱かれていたギョムが俺に顔を向けたのだ
な・・・なんだ!!そのヘアスタイルは~~!!
唖然とし目を見開いた俺にチェギョンは言ってのけた
『マッシュルームギョムだよ~~ん♪ほら見て~~ギョムがすると可愛いの♪』
お・・・お前って奴は俺の黒歴史を世間に広めるつもりなのかっ!!
『ちぇ・・・チェギョンお前・・・』
『さて~~皇帝陛下と皇后様に見せに行こうね~~♪』
俺の話も聞かず自己完結すると執務室から出ていってしまったチェギョン
本殿ではギョムのヘアスタイルについての話題で持ちきりだったらしい
だがさすがにチェギョンも一度チャレンジしてみて満足したらしく、翌日にはギョムを今の俺と同じヘアスタイルに
変身させた
『だって~~一度やってみたかったんだも~~ん♪』
それがチェギョンの言い訳だったが、俺としてみたらギョムをそのままの状態にされなくて良かったよ
俺があのヘアスタイルで顔を隠し、殻に閉じこもっていた頃の事はもう思い出したくない
思い出そうにもその元凶はもうこの世に居ない
なんにしてもこんな天真爛漫な妻に育てられているのだから、ギョムは幸せだ
もちろんこの俺も・・・
あらやだっ!!
今日22回目の結婚記念日だわ。
何の用意もしてないわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
段々そうなるのよね(激爆)
今日22回目の結婚記念日だわ。
何の用意もしてないわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
段々そうなるのよね(激爆)