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Channel: ~星の欠片~
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偽装と現実(リアル) 29

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恵政宮様のところを訪問してからひと月も経たない頃・・・ユミは慈慶殿からの帰りに非常に嬉しそうな顔をして

東宮に立ち寄った

『チェギョン聞いて♪』
『なあにユミ・・・顔が綻んでるよ~~いい事でもあったのかな?』
『うん。ユル君がうちの両親に逢いたいって言うの。』
『えっ?もしかして交際宣言?』
『内容はまだ解らない。ユル君がその日まで内緒だって言うの。なんかドキドキする~~!!』
『態々ユル君が御両親に逢いに行くんだから、きっと悪い話じゃないよ。よかったねユミ♪』
『うん~~♪』

何の迷いもなく嬉しそうなユミの様子に、きっと二人は正式にお付き合いを始めるんだろうと思っていた

だけどユル君がチョン家を訪れたと聞いた次の日から、ユミの様子が少し違っていた

今までのユミであったらすべて包み隠さず私に報告し、自慢もした筈だ

なのに何の報告もなく、ユル君と二人で真剣に話しているのを見掛けるようになった

二人の事なのだから何もかも私に報告する必要はない

増して二人の関係が恋愛に発展したのに、いちいち私が関与する必要はない

だけど・・・何も話してくれなくなったユミがとても気になっていた

ユミもユル君も・・・何かを隠して行動している節があるのだ

余りにも二人の態度に不自然さを感じた私は、ある日シン君に相談を持ちかけた

『ねえ・・・シン君。ユル君とユミの様子、なんか変じゃない?』
『お前もそう思うか?』
『もしかしてユル君・・・ユミと結婚を決めたのかな?』
『だとしたらそんなおめでたい話を内緒にするか?』
『そうだよね・・・おかしいよね・・・』
『チェギョン・・・お前は身重の身なんだ。あまり二人の事に首を突っ込もうとするな。』
『そうは思うんだけど心配で・・・』

もちろん心配というのは二人を疑っての事じゃない。何か言えない事情を抱えて困っているのではないかとか

そう言う理由だ

なんとなくすっきりしない気分で俯いた私を、シン君はやんわりとベッドに誘い布団に横になる様仕向けた

『もういいから早く寝た方がいい。もう立っているのも辛いだろう?』
『いや~~シン君横になっていても辛いよ。あはははは~♪』
『だよな。重そうだもんな・・・』

妊娠も9カ月に近づくとお腹が重苦しい・・・

横向きに寝転んだ私のお腹にそっと手を当て、シン君は労わる様に撫でた

するとお腹の中の赤ちゃんは、どうやらシン君の手をキックしたみたい

『こっ・・・こいつ!!俺がお腹に触ると絶対にキックするんだな。きっと男だ。嫉妬深い・・・』

嫉妬深さは父譲りなのね。くすくす・・・

『性別は聞いていないんだから、まだ勝手に決めつけないで!!』
『いや絶対に男だ。俺の直感は正しい・・・』

妙に真剣な顔で力説するシン君。第一子が男の子だったら確かに私の気持ちも少し楽かもしれないね・・・

『とにかく・・・二人の事をお前はあまり心配するな。明日ユルが王族を招集した。
皇帝陛下も御出席なさる会議で、ユルが何を考えているのかはっきりわかるだろう。』
『えっ?明日王族会の会議なの?』
『あぁ・・・つい先程俺も聞かされたばかりだ。緊急の案件らしい・・・』
『なんだろう・・・』

心配そうな目を向ける私に、シン君は軽く口づけると部屋の明かりを落とした

シン君が隣に寝ているとお腹の赤ちゃんは運動会を始めるのだ

また私の寝苦しい夜が・・・やってくる


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翌日ユルからの緊急招集ということで会議室に出向いた俺と皇帝陛下

ユルはその会議の内容について一切語らず、俺もチェギョンに劣らず少々心配な心情ではあったが

なんにせよ会議で何かが明らかになることは明確

ユルが何を言い出そうが、俺は王族や世間のバッシングからユルを守ってやらなければという

使命感を抱いていた


ユルから要請のあった招集という事もあってなのか、王族たちはなかなか集まりが悪かったが

約束の時間にはすべての王族会メンバーが揃い、会議は幕を開けた

ユルは前に立ち王族に向かって話し始めた

『母、恵政宮の一件では皇帝陛下はじめ皇族の皆様、そして王族の皆様に
混乱とご迷惑をおかけいたしました。
母が直々に詫びる事の出来ない精神状態ですので、代わりに僕からお詫び申し上げます。
母の起こした事件により、王族の皆様から僕が皇位を狙っているのではないかと囁かれる声も
届いて参りました。
今回お集まりいただいたのは、その様な噂を払拭するためです。
皇太后陛下の元に僕宛ての見合い写真をたくさんいただきましたが、遅ればせながらこの場を借りて
ご報告させていただきます。
僕はチョン家のユミさんと結婚することを決めました。
ただしこれは皇族の結婚ではなく、僕は結婚と同時に皇族の籍を離れ王族に籍を移すことを決心いたしました。
もちろんチョン家の了承は受けております。
つまり婿養子に入るということです。
この事に伴い僕の皇位継承権は抹消され、皇位継承者第二位は今後皇太子殿下の元にお生まれになる
皇孫様が就くこととなります。
これで私の周りに不忠を目論む者も集まらなくなりますし、僕は皇族に忠義を誓う王族としてこれからも
皇族を盛りたてて行けます。
このように私は決断いたしました。ですのでもうこれ以上、つまらない噂に惑わされたりしないよう
お願い申し上げます。何かご質問はありますか?』

まさにユルの独壇場だった

皇族の籍を離れる・・・きっと事前に俺や陛下に話していたら、反対される事を予想していたのだろう

ユルはずっと秘密にして王族会での発表までに事を進めたのだ

しかし・・・いくら自分にまつわる噂を払拭したかったからといって、まさか婿養子に入る事を望むなど

思いもしなかった

本当にこれでよいのだろうか・・・

王族からは誰ひとり質問や異議を唱える者はなく、ユルのその決意はそこに居た全員に承認された

会議室から出て行きながら俺はユルに問いかけた

『ユル・・・随分思い切ったな。』
『うん。こうでもしないとユミまで変な目で見られるからね。』

そうか・・・皇族に嫁いだユミが今後誹謗中傷されることがない様にとの配慮か

ユルは自分を守ると同時にユミとその家族を守り・・・そして皇族に平穏な日々をもたらすことにしたのだ

だが本来生まれついての皇子だったユルにとって、その決断は容易ではなかった事だろう



俺の子供が生まれてくる前にと、ユルは卒業式を済ませた後チョン・ユミと結婚届けを提出し皇籍から外れた

そして慈慶殿を出てチョン家に住まいを移す

ユルが慈慶殿を出ていく時、皇太后様は人前である事も憚らずずっとユルの手を握り涙した

そんな皇太后様にユルは優しく話しかけた

『皇太后様、ここを出たとしても皇太后様の孫である事に変わりはありません。
いつか僕にも子供が生まれるでしょう。その時にはシンの子供と分け隔てなく可愛がってくださいね。』
『もちろんだ。ユルや・・・なんて不憫な子なのだ。いつでも私に逢いに来ておくれ・・・』

皇太后様の胸の中には万感の思いが過ったことだろう

どこかで歯車が違っていたら、いや・・・孝烈皇太子殿下が不慮の事故に遭わなかったら

間違いなくこの俺の皇太子の座はユルが座っていたのだろうから・・・

迎えに来たユミと共に車に乗り込んだユルを見送りながら、俺は自分のこの立場を最大限に生かし

立派に国を治める事の出来る大きな人間になろうと心に決めた

ユルが皇族の籍を捨ててまで様々な物を守ろうとしたその気持ちに報いるためにも・・・



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今日は蒸し暑いけど・・・ほとんどエアコンがいらなかった
秋も近いって感じですな❤

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