気持ちが落ち着いたら・・・そう言いながら、次の週末シン君に公務の予定がない事を知った私は
早速≪ピクニックお弁当案≫をスケッチしてみる
頭の中のイメージをスケッチブックに描きあげ、材料を書き出してみる
もちろんファッションセンスでは誰にも負けないと自負している私・・・お弁当だって美しさでは負けないわ
って・・・誰と競い合うわけでもないんだけどね・・・
食材を前日から仕込んで東宮の小さな冷蔵庫にしまい、翌日早朝から張り切ってお弁当を作り上げた
ポットの中には冷たいお茶・・・よ~~し準備は万端だ~♪
両手いっぱいの荷物を持って玄関に出向くと、シン君とユル君はもう待ち構えていた
『チェギョン・・・お前一体どこまで行くつもりなんだ?』
『ん?お庭♪』
『す・・・すごい荷物だね。僕が持つよ。』
『俺も・・・』
シン君とユル君は半分ずつ荷物を持ってくれた
私は手ぶらだ~♪
チェ尚宮さんが慌てて玄関に駆けつけて来る
『妃宮様・・・外は暑いのでこれを・・・』
『あ・・・チェ尚宮さん、ありがとうございます♪』
私の頭の上にはつばの広い白い帽子が載せられた
確かにね・・・この照りつける太陽は妊婦に大敵かも・・・
『妃宮様・・・傍に控えておりますので、お加減が優れなくなった時にはすぐにお申し付けください。』
『はい♪』
シン君とユル君に傅かれお庭にある東屋に向かって歩く
暑いけど太陽が気持ちいいかも・・・
お散歩がてら向かった池のほとりの東屋・・・早速三人でそこに腰掛けて冷たいお茶を飲む
ふと見るとチェ尚宮さんや女官のお姉さん方は、炎天下の中・・・こちらを見守っている
チェ尚宮さん・・・それじゃあお姉さん達の方が具合悪くなっちゃう
私は思わず大きな声を上げた
『チェ尚宮さ~~ん♪』
すぐさま駆けつけて来るチェ尚宮さん
『妃宮様、お呼びでしょうか?』
『暑いですからお姉さん達もこちらで休んでください♪』
『えっ?いえ、私どもはそう言うわけには・・・』
あ~~職務遂行中のチェ尚宮さんは、私の言うことにも固いお返事を返してくる。ちぇっ・・・
思い余った私はシン君の腕をツンツンと突いてみる
『あぁ?あ~~コホン。チェ尚宮・・。炎天下に見える場所で立っていられると、気になって私達が楽しめない。
ここで休憩してくれ。』
『殿下・・・よろしいのですか?』
『あぁ。』
『では恐れ入りますがご一緒させていただきます。』
チェ尚宮さんの手招きで女官のお姉さん方も東屋の中に入ってきた。これで安心だわ
『さて~~お昼ご飯にしようかな~♪』
なんとなく遠慮している感じのあるユル君に、私はまず小さなお弁当を手渡した
そしてそれからシン君にも同じ大きさの者を手渡した
他の揚げ物やフルーツサラダは真ん中に置いて、取り皿に取るよう各自の前にお皿を置いた
『さぁ~どうぞ♪』
『『えっ・・・・?』』
二人は其々開けたお弁当箱の中身を見て、非常に驚いている
その様子にチェ尚宮さんや女官のお姉さん方も、そっと覗きこんだ
そしていきなり起こる感嘆の溜息≪おぉ~~~っ!!≫それを聞いて内心狂喜乱舞する私
『すごい!これ・・・どうやって作ったの?』
ユル君から問い掛けられ、私は満面の笑みで答えた
『おにぎりをね・・・顔の輪郭通りに作った後、色々貼りつけただけだよ~♪』
そう・・・私の作ったお弁当はシン君とユル君の顔を模ったキャラ弁
海苔を髪に見立て・・・小さな人参で唇を作った
しかもユル君に関しては髪の色にこだわって、海苔の下に食紅で色を付けたほどだ
『そっくりだ。すごいなチェギョン。シンのは・・・?』
シン君のお弁当を覗きこんだユル君は思わず笑い出した
『し・・・シン・・・それって・・・・あはははは・・・』
ユル君の笑い声なんて聞いたの久し振りだ。作戦成功だ~~♪
でも当のシン君はお弁当箱を持ったまま微妙な面持ち
『チェギョン・・・これは一体?』
『ビフォーアフターよ。くすくす・・・』
そう・・・シン君のお弁当にはイケメンに変身前のシン君と変身後のシン君・・・二人が仲良く並んでいるのだ
マッシュルームカットに海苔を切るの、すごく大変だったんだから~~あははは・・・・
それに前髪に隠れる様に覗く黒縁眼鏡だって、作るの大変だったんだから~~あははは・・・
ちょっとシン君は不貞腐れながらも、二人は喜んでその自分の顔のおにぎりを食べてくれていた
こんな風に少しずつでもユル君には元気を取り戻してほしい・・・そう願わずにいられない私だった
ユルが・・・笑った
こんなに屈託なく笑うユルを見るのは、正直初めてかもしれない
チェギョンには見せていた笑顔なんだろうな
ずっと塞ぎがちだったユルを笑顔にしてしまうなんて、俺の奥さんはさすが大したものだ
まぁ・・・若干俺の黒歴史をネタに使った事は怒りを覚えたが、それはユルを笑わせた事に免じて許してやろう
だがその気合いを入れた弁当を、当のチェギョンはお茶を飲んでフルーツサラダを食べているだけだ
『チェギョン・・・お前は食べないのか?』
『ん~~私はね、東宮の冷蔵庫に素麺が茹でてあるから、戻ったらそれを食べる~~♪』
そう言えばここ最近チェギョンの食欲が落ちている
最初は夏バテなのかと思っていたが、どうやらそれは妊婦にありがちな悪阻という症状らしい
俺とユルは大量に作られた揚げ物を二人で片づけることが出来ず、結局チェ尚宮や女官達の胃を借りて
すべてを平らげ尽くした
空っぽになった弁当箱を見てチェギョンは嬉しそうに微笑む
もちろん味も申し分なかった。宮中で出される料理とはまた趣が違って、俺達は目も楽しめた
だが・・・どうも女官達の間で、キャラ弁とか言う物が流行ってしまったらしく
俺は暫く、食事が運ばれて来る度に≪自分の顔を模ったおにぎり≫が出てくるんじゃないかとドキドキした
どうやらユルも同じ気持ちだったらしい
季節が移り変わると同時にチェギョンのお腹も膨らんで来る
そのお腹を見る度に皇太后様はユルにもいい伴侶を見つけてあげたいと思うみたいだ
だがユルはやはりソ・ファヨンの件を引き摺っているらしく、俺にこっそりボヤいていったよ
『シン・・・僕はまだ結婚なんて考えられないんだ。皇太后様の勧めで沢山写真が送られて来るけど
解るだろう?皇太后様の頼みだったら王族は断れないって・・・。』
『だがユル・・・本当にユルに嫁ぎたいと思っている令嬢がいるかもしれないだろう?』
『いる筈ないよシン。もちろん僕の母の事も知っているだろうし・・・』
『そんな事・・・』
いや決してないとは言い切れない。王族として繁栄しようと思ったら、ソ・ファヨンの一人息子であるユルを
避けようと思う者の方が多いだろう
ユルは一体いつまでソ・ファヨンの影を背負わなければならないのだろう
ユル自身を本当に愛してくれる人が・・・きっとどこかに居る筈だ
王族じゃなくても一般の女性でも・・・色眼鏡じゃなくユルの本質を見極めてくれる女性
ユルの苦しみも悲しみも受け止めてくれる女性・・・
そんな人がいたらいいのに・・・
だけどそれは意外と身近なところに存在していたんだ
一度でいいからキャラ弁作ってみたかったな・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
お話で作った気分を味わってみた(爆)
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
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