鍼灸医の先生に部分麻酔を施していただき縫合手術を乗り切った私は、少しまどろんだようだ
目が覚めた時、私の左手を両手で握り締めているシン君の顔が目の前にあった
『シン・・・君・・・赤ちゃんは?』
不安そうに問いかけた時、シン君は口角を上げて答えてくれた
『大丈夫だ。よく頑張ったな。少し微熱が出ているようだから、そろそろ漢方医が薬を持って来るだろう。
産婦人科の医師も入院中の間、お前の様子を見に来るそうだ。』
つまり四人体制で私を治療してくれているって事だね。お世話掛けます・・・
申し訳ない思いとリスクを背負いながらも我儘を貫いてよかったという思いが交差する
私は自分が出来る限りの事をした。だから誰にも文句は言わせない
『シン君・・・狙撃した犯人は捕まったの?』
『それが・・・用意周到な計画だったらしく、逃走経路もしっかり確保してあって
イギサがすぐに駆け付けたが・・・もう逃げた後だったそうだ。遺留品も残っていなかったそうだ。』
『だったらまた・・・危ない目に遭うかもしれない・・・』
『そうならないよう・・・手を打つ。』
『手を打つって?』
『もう同じ手は使って来ないと思うが、念には念を入れてな・・・。見ていてくれ。』
『うん・・・』
シン君が一体どんな手段を取るのか分からない私は、また胸の中をもやもやとさせ顔を曇らせた
『そんな顔するな。心配要らない・・・』
『うん。ところで・・・いつ退院できるって?』
『強い薬が使えない以上、傷が回復するまでここにいた方がいいだろうと主治医が言っていた。
二週間ほど入院だそうだ。』
『二週間も?』
『仕方ないだろう。我慢してくれ。』
『うん。二週間の間、シン君は大丈夫かな・・・』
自分が傍に居ることが出来ないジレンマに、つい私は呟いてしまった
『イギサ達も今回の犯人を取り逃がしたことを相当悔やんでいるようだ。俺の護衛も倍の人数に増やされた。』
疑ってかかるのはいけない事だけど、私にはどうしても不安が募った
『その増えたイギサさん達・・・大丈夫?』
私のその言葉の意味をシン君はすぐに理解したようだった
『あぁ・・・心配するな。ちゃんと身元もしっかりしている。皇帝陛下もさすがに人選には
慎重を期したようだ。』
『だったらいいけど・・・』
それにしたってやはり、傍にいられない事は不安で仕方がない
私は予定されている二週間の入院期間より早く退院するんだと心に決め、今は傷の回復に専念することにした
あ・・・それとお腹に宿った赤ちゃんも、育てなくっちゃね♪
縫合手術後落ち付いた様子のチェギョンをチェ尚宮に任せ、俺は一旦宮に戻る事にした
もう朝日が昇る時間帯だ
『殿下・・・病院の外にマスコミ関係者が詰めかけています。裏口から出られた方がよろしいのではないかと・・・』
『いや、正面玄関から出よう。少し考えがある・・・』
マスコミ関係者達も徹夜で、俺が出てくるのを待っていたのだろう
マスコミ関係者の前で起こった狙撃事件・・・その犯人をあぶり出すよい機会だ
俺はコン内官とイギサに囲まれ、正面玄関から堂々と出ていった
【殿下っ!!】
俺の姿を確認するなり大勢のマスコミ関係者は俺の周りに集まりマイクを向けた
【殿下!!妃殿下の御容態は・・・】
『妃宮は・・・元気にしております。』
【【おぉーーーっ!!】】
マスコミの人間達も相当心配してくれていたのだろう。安堵の溜息が方々から漏れた
【それで・・・殿下、犯人は逮捕されたのですか?】
『残念ながら犯人は逃走中です。』
【・・・それはご心配ですね。ですが殿下、今回の一件で皇太子ご夫妻の不仲説は
払拭できたと思うのですが・・・】
『不仲説など私達にはどうでもいい噂話に過ぎません。
それよりも今回の一件で発覚した大きなニュースがあります。』
そう・・・俺はチェギョンの懐妊を公にしてしまうつもりだった
まだ妊娠5週目と言う、初期も初期の状態だが・・・実際命まで狙われた俺達だ
マスコミのペンの威力はきっとチェギョンを守ってくれるに違いない・・・そう思った
【大きなニュースとは・・・殿下一体何なのですか?】
『病院に運び込まれてまず、妃宮は失血状態を回復させる為に輸血を受けました。
狙撃された傷跡は幸い弾丸を掠めた程度でしたので、すぐに縫合手術に入る予定でした。
ところがそこで・・・妃宮が懐妊していることが発覚したのです。』
一斉にどよめくマスコミ関係者・・・俺だってどよめきたいくらいの衝撃だった
『私は迷わず妃宮に治療を優先させるよう告げましたが、妃宮は頑としてそれを受け入れませんでした。
お腹に宿った命に害になる治療は一切受けないと、拒絶したのです。』
マスコミ関係者は皆口を閉ざし、俺の次の言葉を待っているように思えた
『幸い皇太后様と皇后様が東洋医学の名医をこの病院に派遣してくださり、なんとか無事
縫合手術を済ませることが出来ましたが、痛みを堪えた状態でお腹に宿った命を守りながら
手術を受けた妃宮を私は誇らしく思います。』
一人のマスコミ関係者が恐る恐る口を開いた
【殿下・・・犯人に心当たりはございませんか?】
『さぁ・・・私には心当たりはありません。強いて言うなら、私が死んだら得をする者が
犯人と言うことになるでしょう。』
マスコミ関係者はざわざわとざわめきだした
恐らく・・・心の内に浮かんだ人物を推測しあっているのだろう
そしてその疑惑はユルに向けられる事も解っている
なぜなら俺が銃弾に倒れた時、皇太子の地位を継ぐものはユルしかいないからだ
また他のマスコミ関係者が小声で俺に問い掛けて来る
【殿下・・・それはひょっとしたらユル殿下のことでしょうか?】
その言葉が出るのを俺は待っていたのだ
『くくっ・・・まさか!!朝鮮王朝時代じゃあるまいし血で血を洗う様な争いが起こる筈はないでしょう。
それにユルは、私と血の繋がった従兄弟です。そのような卑劣な手段に出るとは思えませんね。』
だったら一体誰が黒幕か・・・このインタビューでマスコミ関係者は其々の推理を披露してくれるだろう
そして疑いの目はソ・ファヨンに向かう筈だ
『とにかく私は、妃宮とお腹の子にこんな辛い思いをさせた犯人を許せません。
絶対に犯人を捕え、その罪を償わせます。
マスコミ関係者の皆さん・・・どうぞ力を貸してください!!』
そう言いながらマスコミ関係者の顔を見ると、皆一様に首を縦に振っている
目の前で起こったこの凶悪な事件を、どうマスコミが料理してくれるのか正直俺は楽しみで仕方がない
インタビューを終えて公用車に乗り込んだ俺は、皇帝陛下に詳細を報告する為に宮殿に戻った
恐らく皇帝陛下も今回の一件で、ソ・ファヨンの恐ろしさがはっきりと解った事だろう
セピア色の恋心にほだされ恩情を掛けていた皇帝陛下・・・恐らくそれももう終わりだ
長年の苦しみをソ・ファヨンに返す時がやって来た
あ・・・あちぃでございますね~!!
あちくて・・・溶けてしまいますぅ・・・
脂肪よ溶けよと呪文のように繰り返しても
脂肪・・・なぜに減らないんだ~~!!
あちくて・・・溶けてしまいますぅ・・・
脂肪よ溶けよと呪文のように繰り返しても
脂肪・・・なぜに減らないんだ~~!!