『妃殿下・・・気が付れましたか?』
朦朧とする頭でうっすら瞼を開けると、私の顔を覗きこむ見知らぬ男性が立っていた
白衣?お医者さんかな?
そう思った瞬間≪ズキン!!≫と右腕に痛みが走った
はっ!!シン君は?慌てて私はその男性に問い掛けた
『皇太子・・・殿下は・・・ご無事ですか?』
『はい。皇太子殿下は御無事でいらっしゃいます。今部屋の外で妃殿下をご心配されていますよ。』
『そうですか・・・よかった・・・』
頭の断片に先程の忌まわしい出来事が甦る。そうだ・・・私はあの窓から覗いていた銃に打たれたんだ・・・
『もう出血も止まっておりますし、弾は腕を掠めたので心配ありません。』
『そうですか・・・』
話をするのも億劫だ。早くシン君を呼んでくれたらいいのに・・・
だけどその男性・・・いや担当医はとても困惑した顔をし、さらに私に話しかけた
『傷口の縫合手術をしたいのですが、その前に妃殿下にお伝えしなければならない事がございます。』
『はい・・・』
『実は治療に入ろうとしたところ、妃殿下の御懐妊が発覚いたしました。』
『御懐妊・・・つまり・・・妊娠していると・・・いうことですか?』
『はい。ごく初期の状態ですが間違いございません。』
『そうでしたか・・・・』
なんだろう。そんな元気はない筈なのにすごく嬉しい・・・思わず叫び出したい気分に私はなった
『縫合手術には・・・強い薬や麻酔薬も使用いたします。妃殿下はまだお若い。
次のチャンスをお待ちいただけますか?』
えっ?何を言っているのこの人・・・つまり私のお腹に宿った命を諦めろって言うの?
『嫌です。縫合手術などしなくて構いません。消毒だけしてください。』
『そっ・・・それはできません。傷跡が化膿する場合もございますし、傷口から菌が入ってしまったら
破傷風を起こす恐れもあります。』
『でも嫌です!!皇太子殿下を・・・今すぐ呼んでください。』
シン君なら・・・きっと私の味方をしてくれるだろう・・・そう思っていた
ところが・・・
部屋に入って来たシン君は、すごく悲しそうな顔で私にこう言った
『チェギョン・・・治療を優先させよう。今回は・・・』
その後のセリフを私は即座に遮った
『絶対に嫌っ!!どうしてそんなこと言うの?シン君は嬉しくないの?
婚姻したんだからそう言うことだってあり得るって思わない?何を一番に優先させるかよく考えて!』
『お前を・・・優先する。チェギョン・・・お前を・・・』
『バッカじゃないの?信じられない。今知ったばっかりだけど・・・ちゃんとここに居るんだよ。
諦めるなんてできないよぉ・・・』
私がシン君に涙を見せるのは、あの涙の訴え以来だった
『だけどチェギョン・・・縫合手術もできないし、何よりも破傷風にでもなったら
お腹の子供どころかお前も危ない。』
『それでも!!知ってしまった以上見殺しなんかできないよ。頑張れって言ってくれない?』
『・・・』
『シン君が傍についていてくれたら、麻酔薬なしで縫合手術受けるから・・・』
『馬鹿を言うな!そんな事をしたら痛みのあまりお腹に力が入り・・・結局失うことになるだろう。
そうなった時お前は、それを自分のせいだと責め続けるだろう。お前の悲しむ顔は見たくない。』
どうして?諦めることしか考えられないの?私には理解が出来なかった
『ひとまず・・・胎児に影響の出る薬は使わないよう指示を出して!
もし・・・私に内緒で使ったら離婚だからねっ!!』
極端な言い方だが本音だった。さっきは何も考えずシン君を守ったけれど、今度守らなければならないのは
このお腹の中に宿った命だ
懐妊を聞いてしまった途端・・・もう私は母性に目覚めていた
痛みを耐えながらも必死にお腹の子を守ろうとするチェギョン・・・
そんな姿を前に無力な俺は何も言えなくなってしまった
だがこのまま手をこまねいているわけにはいかない
『チェギョン・・・少し待っていてくれ・・・』
そう言い残すと俺はひとまず皇后様に相談してみようと、緊急治療室を出ていった
もしかしたら何かいい知恵を授けてくれるかもしれない
そう思った俺は徐に電話をかけ始めた
『皇后様・・・』
『太子!!無事か?妃宮は・・・どうなのだ?』
もう連絡が行ったのだろう。皇后様は相当興奮した様子で問い掛けた
『私は無事です。ですが妃宮が私を庇って・・・腕に傷を負いました。』
『なんと・・・・可哀想に・・・妃宮の命に別条はないのだな。』
『はい。ですが・・・困ったことが起こってしまいました。妃宮が治療を拒否しているのです。』
『なぜだ!!治療を受けなければ傷の治りも遅くなるだろうに・・・』
『実は・・・懐妊が発覚いたしました。』
『懐・・・妊?・・・このタイミングでなんと言うことだ・・・』
『ですので胎児に影響のある治療は受けないと言い張っております。』
『そんな・・・』
『一体私はどうしたらよいのでしょう。チェギョンは私を庇ったばかりに・・・撃たれたというのに。』
『少し待っておれ。今ここに皇太后様もいらっしゃるので相談してみる。』
『はい・・・』
暫く二人は電話の向こうで何やら相談しているようだった
そして再び電話口から声が流れ出した。今度は皇太后様だ
『太子や・・・』
『皇太后様・・・』
『おめでとうと言いたいのにまだそれも言えぬようだな。だが救いはある。
妃宮の気持ちも女ならよく解るのでな。
私の知り合いに国一番の鍼灸医が・・・皇后の知り合いに有名な漢方医が居る。
その二人をすぐに王立病院に行かせよう。なんとか母子共に助ける手段を考えてくれるだろう。』
『本当ですか?』
『あぁ。だから王立病院の担当医師にそう伝えなさい。』
『解りました。』
もしかしたら・・・この非常に辛い状況から脱出できるかもしれない
俺は担当医にその旨を伝え、それからチェギョンの元へと戻っていった
『チェギョン・・・』
チェギョンは痛みに耐えながら俺の言葉をじっと待った
『今、皇太后様と皇后様に相談して来た。この病院に国一番の鍼灸医と漢方医が、駆けつけてくれるそうだ。』
『・・・ホント?』
『あぁ。絶対とは言い切れないが、母子共に助ける方法を見出してくれるかもしれない。
だから・・・治療を受けてくれ。』
『お腹の子に害になる薬は使わない?』
『あぁ。それは約束する。だから・・・』
『解った。縫合手術の時には、手を握っていてくれる?』
『あぁもちろん。それより・・・言うのが遅くなった。ダメだろう?あんな危険な行動を取ったら・・・
近くにイギサもいただろう?』
『そんなこと・・・考えられなかった。』
『本当にお前は馬鹿だな・・・』
チェギョンも気持ちに折り合いがついたようで、俺が漸くチェギョンの頬に手を当てた
だがもしチェギョンが俺を助けてくれなかったら・・・恐らく俺の命はとられていただろう
そうしたらチェギョンは悲劇のプリンセスとなってしまっていた
ありがとうと言うべきなのだろうが、今はありがとうと言う気持ちにはなれない俺だった
程なくして皇太后様と皇后様が依頼した医師が其々駆けつけ、王立病院の医師と面談の結果
治療方針が決まった様だ
鍼灸医の鍼で部分麻酔を施し縫合手術に入る事となった
痛みは少しは和らいでいるようだが、痛みに耐えながら腹部に力を入れないよう頑張っているチェギョンは
見ているのも辛い状況なのに・・・不思議と俺には今までにないほど美しい女に思えや
それはお腹に宿った命を守ろうとする母性が見せる美しさなのか・・・俺には到底理解できない強さを
チェギョンから学んだ気がした
三人の医師は代わる代わるチェギョンの様子を見に訪れる
状態も安定し眠りについたチェギョンを残し、俺は一旦病室から出ていった
するとそこには憔悴しきったユルが俺を待っていた
どうやらあれからずっと、この場所に居たようだ
『シン・・・チェギョンは?』
『無事だ。』
『良かった・・・』
『俺だったら良かったのにな・・・』
『シン・・・誤解しないでくれ!僕が企てた事じゃない!!僕はただ・・・二人の仲が険悪だと
マスコミにリークしただけなんだ。本当だ!!』
だろうな。同じ先帝の血を引き継いだ俺を、利害の為に殺害しようなんてユルが考える筈はない
だとしたらやはり・・・ソ・ファヨンの仕業か?
あの人ならやりかねない。たった5歳の子供を脅すほどだものな
ここはなんとかソ・ファヨンの尻尾を捕まえる方向に、話を持っていくしかないようだ
ドキドキさせておいて・・・こんな感じ♪
後はチェギョンの状態が回復するまで待つのみです❤
明日は・・・第二王子とオープンキャンパスに行って来ます。
この間受験終わったばかりなのに・・・
もう・・・なのか?(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ふぅめる通信&多肉通信は
遅い時間になるかもよ~♪よろしく❤
後はチェギョンの状態が回復するまで待つのみです❤
明日は・・・第二王子とオープンキャンパスに行って来ます。
この間受験終わったばかりなのに・・・
もう・・・なのか?(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ふぅめる通信&多肉通信は
遅い時間になるかもよ~♪よろしく❤