それから暫くの間・・・隣の席に座るユル君は何か深刻に考え込んでいる風で私に話し掛けることもなく、
平穏に過ぎていった
もしかしたらユル君は皇太子の座に就く無謀な考えを改め、改心してくれたのではないか・・・
そんな勝手な解釈を私がし始めた頃だった
『チェギョン・・・シンの明日の予定は?』
ユル君がシン君の翌日の予定を確認するようになったのは・・・
『明日は公務がないそうだから、一日学校じゃないかな・・・』
胸の中に底知れぬ不安が影を落とす
私はシン君が公務の時には、無理を言っても同行するよう心掛けた
私が同行したからってシン君の危険を回避できるとは思わないけど、ユル君が私を望んでいる以上
ほんの少しでも危険から遠ざかる様な気がしたのだ
たとえそれが気休めだとしても、世間的に笑顔を交わす事もない夫婦を演じている私には
一緒に居ることで安心できた
『チェギョン今日は・・・』
ドキン・・・ユル君の声に驚き思わず肩が上がってしまった私
『な・・・なあに?』
『確かシンにマスコミ取材が来る筈だったよね?』
『う・・・うん。』
『そうかあ・・・』
ユル君の口角が不自然に上がったのを目にした時、私の恐怖心は最高潮にまで達した
今日・・・きっと何かが起こる
私はシン君の傍を絶対に離れちゃいけない
放課後予定されていたマスコミ取材・・・私は公用車の中で待機しているよう言われた
だけどマスコミの前に立ったシン君の横に、何食わぬ顔で近づいて行った・・・
【殿下、妃殿下との不仲が噂されておりますが・・・婚姻から二カ月経った今のお気持ちを
お聞かせください。】
一体誰が不仲の噂を流したのだろう。これももしかして作戦の内?
私は辺りを見渡しながらシン君の隣にしっかりと寄り添った
不仲だと思われるのはごく限られた人だけでいい。ここはありのままの姿を発信するべきだ
シン君も同じ様に考えたらしく、私にちらと微笑みかけそれからマスコミ関係者に答えた
『それは根も葉もない噂話です。私達は大変仲が良いのですよ。』
シン君がそう答えた時・・・周辺を気にしていた私の目に、隣接するビルの一室の窓が
薄く開いているのが見えた
その薄く開いた隙間から何かが光っている
望遠鏡だったらなんの害もないけど、双眼鏡だったらあの隙間では覗けない
まさか!!銃口・・・
背筋を冷たいものが流れていく
何も考えられないまま、思わず私は行動を起こした
マスコミ関係者からシン君を護衛をしているイギサの間に入り、シン君の前に立つとその身体を後ろへと
思い切り押し退けた
その私の渾身の力にシン君はよろけ後ろに下がった
あ・・・良かった。シン君は無事・・・
そう思った瞬間、私の右腕は焼けつくような熱さに襲われた
『シン君・・・』
いきなり俺を押したチェギョン。一体何が起こったのか知る間もなく、チェギョンは俺の胸の中に倒れ込んだ
左手に感じる生温かい感触・・・血の匂い
『チェギョン!!』
チェギョンが・・・銃撃された?いや・・・俺を庇って撃たれたのか・・・
『すぐに救急車を!!』
イギサ達の半数は俺を狙った犯人の方向に向かい、残りの半数はマスコミ関係者を全員その場に取り押さえた
救急車はすぐに駆け付け、俺はチェギョンを抱いたまま救急車に乗り込んだ
『どうして・・・なぜお前は・・・』
蒼白な顔色をしたチェギョンを抱きかかえたまま問いかける
チェギョンはきっと俺が狙われている事に気がついたのだろう。だからこそ俺の盾になった
これが・・・大人しくしていなかった俺への報復か?だとしたら絶対に許せない!許さない
『チェギョン・・・しっかりしろ!!』
返事をしてくれないチェギョンに向かって何度も叫び続けた
ソ・ファヨン・・・そしてユル。なぜチェギョンを傷つけた!!
心の中が憎悪で満ち溢れていく・・・ずっと不安に押し潰されそうになりながら暮らしてきた結果がこれなのか?
漸く救急車は王立病院に到着し、チェギョンは緊急治療室に運ばれていった
左腕を濡らしたチェギョンの血痕が、乾いて固まっていくのを感じた
今はそれすらも恋しい・・・
治療室の前でただ立ち尽くす俺・・・傷はどんな状態なのか。まさか命に関わる事態になっていないだろうな・・・
心配で・・・胸が張り裂けそうだ
そんな時・・・緊急治療室の前で立ち尽くしている俺の元に、ユルが血相変えて走って来たんだ
『シン!!チェギョンは・・・』
お前が何を心配する?お前も知っていた事だろう?
俺は何も答えずただユルの胸倉に掴みかかると、ユルの顔を睨みつけた
『本望か?ユル・・・チェギョンがこんなことになって嬉しいか?』
『なっ・・・何を言っているんだシン。僕は何も・・・』
いや、絶対に関与していた筈だ。お前が関与していないと言うならソ・ファヨンだろう?
その時・・・緊急治療室の扉が開き、医師が血相を変えて姿を現わした
『皇太子殿下・・・』
『チェギョンは・・・妃宮は・・・どうなんだ!!』
『それが・・・治療が施せません。』
治療が施せない・・・どういう意味だ?
俺は震えが起こりそうな想いで問い掛けた
『それは・・・一体。』
『弾は腕を掠めているのでそれを取り除く必要はありません。今・・・輸血を施して
妃宮様は意識を取り戻しました。』
『なのになぜ・・・』
『妃宮様が御懐妊なさっていることが判明し、薬の投与が出来ないのです。』
懐妊・・・懐妊したって言うのか?
『妃宮の・・・命を優先してくれ。』
『それが・・・妃宮様が治療を拒まれております。』
『・・・そうか解った。私が説得しよう。』
再び緊急治療室に戻っていく医師と一緒に、俺も部屋に入ろうとした
しかしその腕をユルにきつく掴まれ足止めを食らった
『なんだ!!』
『チェギョンが懐妊って・・・シン、お前まさか・・・チェギョンを無理やり・・・』
もうユルの事なんか俺の頭には無かった
もう偽装夫婦を演じる必要はない
俺は口角を上げてユルに言い放ってやった
『残念だなユル。俺達は正真正銘愛し合っている夫婦だ。懐妊してもおかしくないだろう?くくっ・・・』
その場に座り込んでしまったユルを残し、俺は緊急治療室に入っていった
チェギョンを・・・説得しなければ・・・
何よりもチェギョンを優先する。これが俺の選択だった・・・
『殿下・・・治療が施せません。』
で・・・話を切ってやろうかと思ったんですが
そうするときっと皆さん金曜日まで
悶々とするからさ~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
優しいでしょ?管理人は(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
明日は第二王子の三者面談。
頑張ってきます~~❤