憩いの昼休みの時間が終わり教室に戻っていくと、ガンヒョン・ヒスン・スニョンの三人に私は取り囲まれた
『チェギョン・・・新婚生活はどうなのよ。婚礼パレードであまりにも暗い顔していたから心配していたのよ。』
『あんな素敵になった皇太子と結婚したんだもの、楽しくって仕方がないわよね?』
『しかしファッションリーダーも形なしね。髪乱れてるよ。』
はっ!!シマッタ・・・シン君の髪はスタイリングしたけど、シン君に乱された自分の髪はそのままだった
こんなところで悟られることはないと思うけど、私は必死に平静を装い髪を整えた
『あ・・・さっきチェ尚宮さんとぶつかっちゃって転んだんだ。恥ずかしっ・・・』
『殿下とは上手くいってるの?』
また直球勝負のガンヒョンの質問に、心臓が跳ね上がる
『上手くいくも何も・・・会話が無いもん。あ・・・先生が来た。席に着こう。』
なんとか誤魔化せたかな・・・私は鋭いガンヒョンの視線を避けるように、授業中ずっと教科書と
にらめっこしていた
はぁ~~ようやく登校一日目が終了したよ
私はシン君と一緒に、会話もないまま公用車で宮に戻った
もちろんそっぽ向いたまま、私達は手を繋いでいた
東宮に戻り自室に入っていくと、まず私は宮で用意された洋服に着替えてみる
どうも・・・私のセンスとは違うクローゼットの洋服達
しっくり来ないなぁ・・・一旦私はそれを脱ぎ、ハンガーに掛けてじっと眺めた
そうだ!!いい事考えた~♪
私は自慢のファッションセンスを生かし、お嬢様風のワンピースをちょっと手縫いで直してみた
うん♪私が着るならこうでなくっちゃね~~♪
裾を何箇所か上げてそこに小花のコサージュをあしらった。可愛い~~♪とつい自画自賛。うはははは~~♪
それに着替えを済ませ、いざ皇太后様の元へ出陣だ~~~!!
と・・・意気揚々と歩いていたら、執務室の前でシン君と鉢合わせしちゃった♪
後ろで控えているのはコン内官さんだけだけど、今は壁に耳あり障子に目あり・・・気は抜けない
私はシン君に会釈だけして通り過ぎようとした
そうしたら・・・
『妃宮・・・どこに行くのだ?』
解っているくせにぃ~~♪つい話し掛けられて嬉しくなった私。笑顔を必死に堪え口角を下げ
ぶっきらぼうに言ってみる
『慈慶殿です。』
『そうか・・・』
私の背後で執務室のドアが開き・・・閉まる音がした
くぅ~~こんな生活いつまで続くんだろう・・・
だけどその辺りの壁に覗き穴があったら大変だもん・・・頑張んなきゃ!!
慈慶殿に向かい皇太后様付きの尚宮さんに面会を申し込んだ私
尚宮さんはすぐに皇太后様に取りついでくれ、私は皇太后様のお部屋に通された
あの・・・婚姻を決めた場所だ。今思うとあの時からやり直したい・・・あの時もっと思う言葉を
シン君に言っていればよかったな・・・などと感慨深く部屋を見渡した
『妃宮・・・よく来てくれたな。』
『皇太后様、こんにちは~♪』
『さぁどうぞお掛けなさい。』
『失礼いたします。』
『それで・・・私に何か話があってやって来たのか?』
『はい皇太后様・・・実は皇太后様は確か、先帝と私の祖父が交わした約束の文書を
お持ちだったと思うのですが、それを拝見できますか?』
『おぉ構わぬぞ。』
皇太后様は鍵のかかった引き出しの中から小さな小箱を取り出しながら私に問い掛けた
『しかしなぜ・・・そのような物を見たいのだ?』
『あ・・・はい。先帝の意図した私のお相手は・・・一体誰だったのかを知りたくて・・・』
はっ!こんな事まで言ってはいけなかったかも・・・
すると皇太后様はテーブルの上に文書を開いて置き、それからじっと私を見つめた
『妃宮や・・・そなたはひょっとして、この婚姻を後悔して居るのか?
相手がユルだったら良かったと思っておるのか?』
『えっ?違います!!そんなこと思ってもいません。私はただ・・・はっ!!』
しまった・・・つい本音が口に出てしまった。なんて事をしでかしてしまったんだろう・・・
皇太后様は追い詰める様な眼差しで私に問い掛けて来る
『ただ・・・なんなのだ?』
『あ・・・あのぉ・・・その文書が取り交わされた日付が知りたくて・・・。』
『日付?なんの為に・・・』
『あ・・・あのぉ・・・・』
困ってしまった。本当に困ってしまった。どうしたらいいんだろう・・・なんと答えたらいいのだろう・・・
≪シン君!緊急事態なの。すぐに来て!!≫
執務室でチェギョンから短いメッセージを受け取った俺は、急いで慈慶殿に向かった
尚宮が取りつぐのも待たず皇太后様の部屋に入って行った俺・・・ソファーでは項垂れるチェギョンの姿があった
『おや・・・太子、どうしたのだ?』
『あ・・・いやあの・・・』
『妃宮のピンチを知り駆けつけてきおったか?おほほほほ・・・・
妃宮は頑として答えないのでな・・・太子に代わりに答えて貰おうかの。
なぜ文書の日付が知りたいのだ?』
皇太后様はおおよそ見当が付いているのかもしれない。俺達を婚姻させたのは皇太后様だ
ここは味方に引き入れるしかない
しかし・・・果たして俺の話を信じてくれるかどうか・・・
『先帝が考えたシン・チェギョンの結婚相手が私なのか・・・それともユルなのか
それを確認したかったのです。その日付は・・・故孝烈皇太子殿下が亡くなられる前ですか?
それとも後ですか?』
『ふっ・・・そんな事を知りたかったのか。この文書を取り交わしたのは、スが亡くなったあとだ。』
『つまり・・・私をとお考えだったのでしょうか?』
『そうだ。太子のお相手にとこの文書を取り交わしたのだ。』
『そうでしたか・・・』
『太子・・・一体何を考えておる?そなた達夫婦は本当は上手くいっているのであろう?
でなければ妃宮が困っている時に、タイミングよく現れる筈もなかろう。
どうだ?シン・・・話してみなさい。』
『ユルはチェギョンを自分の結婚相手だと信じて疑いません。
何れ自分が皇太子に即位しチェギョンを取り戻すつもりでいます。』
『ユルが・・・なぜ皇太子になれるのだ?そなたが居るのに・・・』
『私が亡き者になれば・・・皇位を継承するものはユルしかおりません。』
『何を馬鹿な事を言っておる。そんな縁起でもない・・・』
『皇太后様・・・これからするお話は宮中でもコン内官・チェ尚宮・・・そして妃宮しか知らない話です・・・』
俺は幼い頃からの苦しみを皇太后様に吐露した
皇太后様は顔面を蒼白にされ唇を震わせた
『太子・・・そなたはその頃5歳だったのだろう?ひょっとしたら何かの勘違いと言うことはないのか?』
皇太后様が俺の勘違いだと思いたい気持ちもわかる
だが・・・5歳の頃から繰り返し頭の中で響いていたソ・ファヨンの言葉は、一字一句間違う筈もない
『私の命が狙われてからでしたら信じていただけますか?』
『そっそんなことがあってはならぬ!!信じよう・・・しかし太子、そなたは良くその頃の事を覚えておったな。』
『はい。心の中にしっかり傷となって残っております。』
『だからあの様に風体を作っておったのか?』
『はい。誰とも目を合わさず静かにしていれば自分の身は守れると思っていましたから・・・。
ですがその封印をこのチェギョンが解いてくれました。』
『妃宮が?』
『はい。髪を切ってくれたのも妃宮です。』
『そうであったか。だから妃宮は東宮に出入りして居ったのだな。
と・・・いうことは夫婦仲が悪いのは偽装なのか?』
『はい。そうしないと妃宮まで危険な目に遭ってしまいます。恵政宮様が帰国されるとか・・・
そろそろ何らかの動きがある筈ですから・・・』
『何らかの動きがある前にそれを防がなければならぬ。私が協力できることはなんでもいたそう。』
『はい。お願いいたします皇太后様・・・』
皇太后様は俺からチェギョンに視線を向け、優しく微笑まれた
『妃宮や・・・』
『はい。』
『不仲の振りをするのは辛いだろう。』
『はい。』
『一日も早くそんな状態から脱することが出来るよう、私も力を貸すからな。
太子の事をよろしく頼んだぞ。』
『はい!もちろんです皇太后様・・・』
一緒に東宮に戻るのは拙い・・・まずチェギョンが先に戻っていった
チェギョンが部屋を出て行った後、皇太后様は悲しい表情でポツリと呟いた
『恵政宮がそのような悪事を企てようとしているなら・・・なんとしても止めねばならぬ。
まず帰国したら私の元に挨拶に来る筈だ。その時にしっかりと釘を刺しておかなくては・・・』
野望を胸に秘め帰国するソ・ファヨンに、皇太后様の心の声が響くと良いのだが・・・
俺にはどうしても心の中の不安が拭い切れなかった
あぁぁ・・・そろそろお日様が見たいなぁ・・・
カビが生えそうなムーミンです
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
カビが生えそうなムーミンです
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