週末になると毎週のようにユル君からお誘いが来る
ほんの二時間くらいのウィンドーショッピングとお茶を飲むだけの、とてもデートとは呼べない代物だけど
ユル君はそれをデートだと言う
デートって言うのはもっと手を繋いでじゃれあったり・・・そんなホットな関係の事を云うんじゃないの?
最初は穏やかで明るいユル君とは、とても気が合っている様な気がしていた
でも・・・皇太子が何かを抱えている事に気が付き、ユル君も皇太子をよく思っていない事を知って
段々私の中に皇太子に肩入れする部分が増えてきたみたい
それは確かに・・・皇太子が≪自分が手がけた作品≫だと言う事もあるけど、目を奪われるほど変化を遂げた
皇太子から目が話せないのも事実
ユル君と一緒に居ながら気が付くと皇太子の事を考えている私・・・次はどこをダメ出ししてやろう・・・
そんな事を考えて一人にやけている時だった
『チェギョン?チェギョン聞いてる?』
『えっ?あ・・・ごめん。なんの話だった?』
『シンの・・・皇太子殿下の事なんだけど、彼・・・急にいい男になったと思わない?
ひょっとしてチェギョンが手を貸しているとか?』
ぎょっ!!一瞬にして額に汗が滲む・・・
このミッションはギョン君とガンヒョン以外には内緒だ。私は必死に笑顔を取り繕った
嘘の下手な私だけど・・・そりゃあもう必死だった
『まっ・・・まさかぁ~そんなことある筈ないよ。私が皇太子と接点がある訳ないじゃん♪』
『そう?だったらいいけど・・・。シンの変身にチェギョンが手を貸していたとしたら、僕としては面白くないよ。
何れちゃんとお付き合いして欲しい人だからね。』
えっ?お付き合い?ユル君と?・・・ひとまずここは話をはぐらかすか
『ぎゃははは~何言ってるのぉ。面白い冗談♪』
『冗談じゃないよ。僕が皇太子に即位したら付き合ってくれる?』
皇太子に即位?何言ってんの!!皇太子はちゃんといるでしょう?
『ユル君・・・言っている意味がわかんないよ。』
『僕は必ず皇太子に即位する。シンを蹴落としてでもね。君だって僕の方が皇太子にふさわしいって
思っているでしょう?』
そんなこと微塵も思っていませ~~ん!!今皇太子は必死に頑張っているんだし、そんなこと言わないで!!
そう思ってそっと覗きこんだユル君の横顔は、ぞっとするほど怖い表情だった
翌日いつものように≪皇太子ルーム≫に向かった私
さて~今日は皇太子のどこを矯正しようか♪そんな事を思い皇太子の向かいに座った私
ところが皇太子は今まで見せた事もない様な怖い表情で、私を見据えた
えっ?一体どうしたの?こんな風に皇太子に睨まれたのは初めてで一瞬怯んだが、
私はいつも通り話しかけてみる
『じゃ・・・じゃあ今日は歩き方。ウォーキングってやつね・・・』
『シン・チェギョン・・・もういい。』
『えっ?もういいって?』
『お前の役目は終わった。もうここには来るな!』
『えっ・・・何言ってんのよ殿下。私にしてみれば殿下はまだまだ・・・』
『もういいと言っている!!帰れっ!!』
なっ・・・なんなの一体。先週まで私の言う事を従順に守ってきた皇太子なのに、一体何を怒っているの?
皇太子のあまりの剣幕にその場に居られなくなった私は、溜息を吐きながら≪皇太子ルーム≫を後にした
まったく納得がいかない。正直、もう皇太子の改造計画はほとんど完了しているのだけど、
こんな形で離れることになるとは自分でも思わなかった。納得ずくで離れる事の出来なかった私は
皇太子に対する未練だけが心にしこりを残した
(ふぅ・・・)
皇太子から拒絶されて三日目・・・次なるイケメン改造計画依頼が私には殺到していた
だけどそんな気持ちに一切なれず、溜息を吐きながら足取りも重く家に帰っていった私をお客様が待っていた
驚いたことにそのお客様は、東宮殿のコン内官さんともう一人・・・つまり宮殿の職員だった
皇太子のことで何か苦情でも言われるのかと思い、神妙な顔でコン内官さんの前に座った私に
コン内官さんは予想だにしない言葉を紡ぎ出す
『シン・チェギョンさん・・・あなたは先帝が決められた皇太子殿下の許嫁です。皇太后様がお待ちですので
慈慶殿にどうぞお越しください。』
えっ・・・・寝耳に水の話に気も遠くなりそうだ。つまり私は皇太子が忌み嫌っていた許嫁本人ってこと?
皇太子は確か・・・逢った事もない許嫁よりミン・ヒョリンがいい・・・そう言っていた
今だったらどうなの?皇太子の気持ちを知りたい・・・その一念で私はコン内官さんと共に
皇太后様に逢いに行った
初めてお逢いする皇太后様はとても穏やかな雰囲気で、初めて逢った頃のユル君に似ていると私は思った
『そなたがシン・チェギョンか?』
『はい。そうです皇太后様。』
『コンから話は聞いて居ると思うが、そなたは先帝とそなたのおじい様が決めた皇太子殿下の許嫁だ。
聞いた話によると・・・そなたは東宮殿を訪問した事もあるそうだのぉ。』
『はい。』
『太子との婚姻・・・考えてみてはくれぬか?もちろん今すぐに返事をしろと言うのも無理な話だろう?
少しだけ時間をあげよう。前向きに検討してみては貰えぬか?』
皇太子はきっとミン・ヒョリンと結婚したかったに違いない
でも私は・・・このチャンスを逃すことなど出来なかった
もしかしたら≪この男は私のっ!≫と直感したことが真実になるのかもしれないと思ったら、
私に躊躇いの気持ちなど微塵も湧いて来なかった
もしかして皇太子にミン・ヒョリンへの気持ちが残っていれば、私のこの返事はただの嫌がらせでしかなくなるが
嫌がらせだと思われても・・・皇太子を自分の≪最初で最後の男≫にできるのならそれでいい!!
皇太后様の部屋に許嫁がやってきていると聞き、俺はどんな顔をした女か見定めてやろうと意気揚々と
慈慶殿へ向かった
もちろんそんな紙切れ一枚の約束事など、俺が縛られる必要もない
顔だけ見て丁重にお断りしてやろう・・・そう思って行った筈なのに
皇太后様の部屋から聞こえて来るその声は、紛れもなくシン・チェギョンのものだった
おおよそ信じられない思いで、俺は礼儀知らずだと思いながらも扉の前で立ち尽くしてしまっていたが
皇太后様が話の流れでユルのことなど出したものだから、俺は穏やかな気持ちになれず
静かに部屋に入っていった
すると・・・『このお話、お受けいたします。』そうはっきりとチェギョンの声が聞こえた
俺との婚姻話を・・・受けると言うのか?お前にはユルがいるだろう?
皇太后様は満面の笑みで俺を迎え、俺にもその返事を促す
『太子や・・・彼女がシン・チェギョンさんだ。そなたの許嫁だ。
知らぬ仲でもないそうだし、どうだろう?この話・・・快諾して貰えぬか?』
俺はシン・チェギョンをじっと見据えた。シン・チェギョンもまっすぐ俺を見返して来る
その視線の意味がなんなのか・・・俺は知りたくなった
たとえユルのスパイだったとしても、婚姻してしまえば俺の妻だ
夫を貶める様なことはできまい
何よりもユルに渡したくなかった。俺の独占欲がそうさせた
『いいですよ。私は構いません。』
『おぉ~~そうか。』
喜びが隠しきれない皇太后様と裏腹に、俺とシン・チェギョンの間には婚姻を決めた男女の間に流れる筈もない
微妙な空気が漂っていた
ただ一言・・・問い質せばいいだけなのに
それが出来ないばっかりにすれ違って行くのよね~~♪
でもすれ違うの・・・数話だけだしね~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
じゃ・・・雨が降る前にペンキ塗ってきます~~★