翌週私は自分がカットした皇太子の髪が、生徒からどんな評価を受けるのか楽しみで早めに登校した
来た来た皇太子・・・さて、世間の評判はどうかな?
おぉ・・・皆驚いて目を丸くしている。その様子を教室の窓から見ていた私の隣にガンヒョンも現れ
私を褒め讃えてくれた
『あれ・・・チェギョンが?』
『まぁね。どう?』
『いいわよ~~すごくいい♪あのダサい皇太子をここまで変えるなんてさすがチェギョン。』
いや本当はダサくない。元々の素材が良かったからここまでになった。さすがの私もそれは認める
でも・・・皇太子の場合、ガンヒョンとギョン君にしか褒めて貰えないのよ。なんたって≪ご内密≫なんだからぁ・・・
せめて二人には存分に褒めてもらおうと、私は皇太子の素材の良さの件は黙っておいた
ちょっとなに?あれ・・・ミン・ヒョリンじゃない?
媚びへつらう笑顔で皇太子に近づいていく
皇太子が素敵になった途端・・・そうな訳?なんだろう・・・胸の中がもやもやする
って言うかムカムカする。気分が悪い!!非常に不愉快~~~!!
すぐに掌返す様な女が好きな訳?いや・・・好きとは言ってなかったな・・・
でもまたプロポーズする気?
なんだか私のプライドを踏みにじられた様な、嫌な気持ちになっていく
あれは私の最高傑作なんだから~~!!皇太子の表情は背中しか見えないから、窺い知ることが出来ない
今一体どんな顔でおしゃべりしているの?
昼休みになるまで私はずっと不機嫌な状態のまま過ごした
待ちに待った昼休み・・・私は意気揚々と≪皇太子ルーム≫へ向かった
今日のミッションはあの伊達眼鏡を外すことだった。ガラス一枚でも隔てていないと
誰かと視線を合わすのが怖いの?
そんなの私が取り除いてやるっ!!
あと・・・ミン・ヒョリンとの事を聞き出すんだ
そんな事を思い・・・私はふと我に返り自分に問いかけた
(元々皇太子はヒョリンから振られたことがきっかけで、私に変身したいと言って来たんだっけ・・・
ヒョリンとどうなろうと私には関係ないじゃん。なぜこんなに気分が悪いんだろう・・・)
皇太子の部屋に入り、なんだか詰問口調の私・・・皇太子は話をはぐらかすだけ
ムカッ!!怒りに任せて皇太子の眼鏡折っちゃったよ
えっ?・・・ここまで素材が良かったとは自分でも愕然とする
もっと間近で見たい。もっともっと・・・誰も踏み込んだ事の無い領域に・・・そう思って近づいたらキスしてた・・・
は・・・はぁ?私一体何やってるの
慌てて掴んだままの皇太子のネクタイから手を離した
皇太子は切れ長の目を必死に見開いて口をパクパクさせた挙句・・・私に問い掛けた
『チェギョン・・・今のは一体・・・』
どう考えたってキスだろうよ。そんなこと聞くなっ!って思ったけれど・・・そのまま答える事も出来ない
意地っ張りの私はつい・・・どうでもいい見栄を張った
『えっ・・・あっ・・・。殿下のイメージチェンジは私の手柄にならないからね。
イメージチェンジ代に貰ったって感じ?』
こんな言い訳が通じるだろうか・・・つい衝動的にとか、とても言えない・・・
『つまり・・・無償と言いながら、誰とでもこんな事を?』
まさか!!そんなにふしだらじゃないよ。でもそう答えたら・・・自分の作品に惚れ込んだ事を見抜かれる
『そう。殿下が特別な訳じゃない・・・』
悪ぶってそう答えてしまったけど。あの瞬間≪この男は私のっ!≫って直感したのが本音だったのかもね
突然奪われた俺の唇・・・その理由を聞いてみたらシン・チェギョンの奴はまた無粋な事を言ってのけた
『殿下だけが特別じゃない。』
あいつはそんな女なのか?このキスに意味などなかったと言うことか?
だがその後何度逢ってもあの様なことは起こらず、逆に俺は一生懸命話をしているチェギョンの口元に
気が付くと視線を集中させている自分に気が付く
この世のものとは思えないほど柔らかくて・・・温かくて・・・仄かにミントの香りがした
あぁシン・チェギョンめ・・・おかしな行動をしてくれるから、俺の思考は変になる
結局眼鏡はもう二度と掛ける事を許されず、俺は昼休みの度にこいつに翻弄されている
『いい?殿下・・・脚を組む時にはさりげなく手を膝の上よ!!』
『こ・・・こうか?』
チェギョンが手本として脚を組んで見せるのだが、その度にチラリと覗く白い太腿が俺を悩ませる
『うん上手♪あ!!背中が丸くなってるよ!!』
『あ・・・あぁ。』
背中が丸くなってしまうのはチェギョンの脚に見惚れてしまっているからだ
つい視線が下がって猫背になってしまう
それを悟られないよう必死で背筋を伸ばす
もう今ではミン・ヒョリンの事など頭の片隅にも浮かばない
宮に戻ってもふとした時にチェギョンの声が聴こえてくるような気がして背筋を伸ばす
だが俺の中に残った疑問・・・俺はチェギョンにとって特別な人間じゃない
チェギョンはイケメンに育て上げた生徒と・・・その見返りにキスしているのか?
何日も悩み思い余った俺は、さりげなくギョンに問い掛けてみることにした
『なぁギョン・・・』
『なに?』
『シン・チェギョンってさ・・・うちの生徒をイケメンに仕立て上げる名人なんだろう?』
『うんそうだよ。チェギョンの手に掛かれば、どんな男だっていい男に仕上げちゃう。
ほら・・・うちのクラスのすごく暗かったハン・テハだって・・・』
『あぁっ?あの巨体だった男?』
『うん。チェギョンがダイエットを成功させたんだよ~~♪』
まさかチェギョンはあの男ともキスしたのか?
『なぁ・・・チェギョンは男を変身させる見返りに何か貰っているのか?』
『え~~っ?まさか。そんなことは一切ないね。チェギョンはただダサい男がイケメンになっていくのを
見るのが好きなだけ。見返りはチェギョンの評判となって返って来るからね。』
『じゃあ・・・たとえばその見返りに・・・キスを要求する様なことは?』
『はぁっ?ぶっ・・・ぶははははっ・・・・ないない!!チェギョンに限ってそんなことないって~~!!
あいつ彼氏いない歴18年だよ。ああ見えて純情なんだよ。シン・・・・変なこと言うなよ。』
『じょっ・・・冗談だ。』
ますます解らない女だシン・チェギョン
だったらあのキスの意味は一体何だったんだ・・・
その後何事もなく俺はイケメン道を走り始めた。歩いていたんじゃ間に合わない・・・すぐに許嫁の話が浮上する
最近では登下校の際には校内の女生徒から黄色い歓声が飛び交うようになった
俺の親衛隊なるものもできたらしい
満更でもない気分だ
だがそれと同時にチェギョンが≪皇太子ルーム≫に来る回数は少なくなった
それが俺には不満でならないが、やって来たた時には御小言ばかりのチェギョンだ
まだミッション完了とは言われていない
そんなある日の日曜日・・・俺は皇帝陛下とオペラを鑑賞した後、夕暮れの街を公用車の後部座席に凭れ
外の景色を眺めていた
楽しそうに並んで歩くカップル達。俺にはそんな幸せな時間は望めない
そう思い小さく溜息を吐いた時、俺の目に飛び込んできたのはシン・チェギョンの姿だった
男と・・・一緒に居る
デートなのか?
胸の中に宿る嫉妬心でその男を凝視した時、俺の胸の中が凍りついた
あれは・・・ユルだ!!俺の従兄弟のイ・ユル
チェギョンがユルと一緒に楽しそうに歩いている
これは一体どういうことだ・・・まさかチェギョンはユルのスパイなのか?
チェギョンに絶対的な信頼を寄せていた筈の俺なのに、ユルと一緒に居るところを目撃し心の中に巣食う疑念を
払うことができなくなってしまった
そしてそんな俺に追い打ちを掛けるように・・・とうとう慈慶殿に許嫁がやってきた・・・
さて~~急展開なるか♪
次回どうぞ楽しみにしていてくださいね~❤
コメントのお返事は遅くなっちゃうかもです。
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