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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 54

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その夜・・・シンとコン内官そしてチャン航空の機長は甲板に集まった

自分の居場所に戻ってからの口裏合わせをしておく必定があったからである

今回の一件は不可思議なことが多すぎる

『機長・・・今回の件は乱気流が起こってエンジントラブルが発生し、個人所有の島に不時着した・・・
そう言うことにしよう。』
『それは構いませんが殿下・・・私達が救出されたのは、隣国に向かって飛び立った場所と
逆の方向なのです。そこはなんと説明したら・・・』
『そうだな。私が飛行経路を変えろと指示したという理由でも構わないのだが、そんなことがなかった事実は
管制塔で把握されているだろう。しかし・・・半島と真逆の位置で発見されたと言うのは不可解だ。
そうだ!チャン航空の御曹司が私の大の友人だ。彼には正直なところを話し・・・それ以上の追及をしない様
私から言っておこう。だから機長は乗客乗員全員を、無事に機内から脱出させた。
エンジントラブルは乱気流のせいだ。何も責任を問われることはない。』
『有難いお話ですが、本当にそれでよろしいのでしょうか。』
『あぁそうしてくれ。機長が居なかったら・・・機長の迅速な判断がなかったら、
全員ジェット機もろとも海の藻屑と消えていただろうからな。』
『かしこまりました。ご命令に従います。』
『乗務員たちにも今回の一件は≪皇太子と交わした秘密事項≫だと徹底して欲しい。』
『それはもちろんでございます。』
『くっ・・・しかし全員の協力がなければ、きっと生き延びる事は出来なかっただろう。感謝する。』
『殿下・・・感謝するのは私どもの方でございます。全員を導いていただきありがとうございます。』

謎の多すぎる今回の事故

恐らく皇室専用小型ジェット機は・・・もう見つかる事はないだろう

もうあの島は存在しないのだから・・・

いつか誰かがあの島に辿りつくことがあって、あのジェット機を見つけた時・・・

あれが生きる希望となってくれたら・・・そう願わずにいられないシンだった

真っ暗な水面が青白く染まっていく空の光を受け、徐々にキラキラと輝いていく

『少し仮眠を取ろう。』

三人は甲板から船室に戻り、魚の匂いに包まれながらしばしの時間休息を取った





<ボォーーーッ!!>

何度も煙を噴き上げながら黒い中型の漁船が港に近づいて来る

チェギョンはイギサに護衛されながら、その漁船の船体に書かれた名前を確認しようとする

『大漁丸・・・大量丸って書かれていますよね?お姉さん・・・』
『はい。妃宮様確かに・・・』
『あの船に・・・乗っているのかしら・・・』
『その筈でございます。』
『あっ!!人影が・・・わっ!!甲板に人が一杯・・・』

徐々に港に近づいて来るその漁船・・・甲板に続々と人が集まり、港に向かって手を振っている

『か・・・帰って来た。』

まだシンの姿までは確認できないが、安堵と興奮でみるみる涙が込み上げてくるのを

チェギョンは両手の甲で拭い・・・更に目を凝らした

『あ・・・あぁ!!シン君・・・シン君だーーーーっ!!』

並んだ人影の中でもその中心に居るのは。人よりも背丈の高い夫の姿だった

『シン君!!シンくーーーーん!!』

我慢できずにチェギョンは声を張り上げ両手を大きく振った

『チェギョーーーーン!!!!』

返ってきたその声は間違いなくシンの声だった

『お姉さん・・・シン君が帰って来た。帰って来たーーーー!!』

興奮のあまり叫ぶチェギョンをチョン女官は窘めた

『妃宮様・・・まだマスコミ関係者に嗅ぎつけられておりませんが、ここは一般の者も出入りする漁港です。
あまり大きな声は・・・』
『解ってる。解ってるって・・・・シンくーーーん!!!』

そう・・・解っていても叫ぶのを止められないチェギョンだった

やがて漁船は漁港に入り・・・イギサがまず降りて来る

その後シンが驚くほどの格好で港に降り立った

チェギョンは我慢できず、人の目を憚ることなくシンに向かって駆け寄ると、その首元にしがみついた

『シン君シンく~~ん!!ひっ・・・ひっ・・・』
『チェギョン・・・ただいま。』
『どこに行っていたのよぉーーー!!皆心配していたんだからーーーー!!』
『すまない。泣くなチェギョン・・・皇太子妃が恥ずかしいぞ。』
『えっ?』

シンの言葉に我に返ったチェギョンは、そっと辺りを見渡してみる

そしてみんなに注目されている事を知り、シンの肩でこっそり涙を拭うとだ首に手を回したまま

シンの顔を見上げた

『シン君こんなに痩・・・ん??痩せて・・・ない・・・
なんか肩の辺りに筋肉ついてるよ?』

不思議そうにその辺りを触るチェギョン・・・

シンは口角を上げ微笑むとチェギョンの腰に回した手で確認するように背中を撫でた

『あぁ。まぁな。その辺りの話はあとでゆっくり。
それよりお前は痩せたんじゃないか?』
『私だけじゃない。皇太后様は寝込まれるし陛下や皇后様だって痩せてしまわれたんだから!!』
『心配掛けてすまなかったな。でも・・・無事に帰れたのだから許して欲しい。』
『うん。無事に帰って来てくれたから許してあげる。』
『さぁ・・・宮に帰ろう。職員達も風呂に入りたいはずだ。』
『お風呂・・・どうしていたの?』
『川で水浴び・・・』
『川で水浴び?うそっ!!』
『くくくっ・・・積もる話は後でな。お前が目をまん丸にする話を聞かせてやるよ。』
『うんっ♪』

東宮に仕える者達は其々公用車に乗り合わせ宮殿に戻っていく

またチャン航空の職員達は、迎えに来た車に乗り込み其々帰っていく

皇室小型ジェット機に乗った人達が帰ってくると聞きつけたチャン・ギョンは、

一目親友の無事な姿を確認しようとその場に駆けつけていた

シンはギョンを迎えに来た人の中に見つけると、そっと呼び付け耳打ちをする

『ギョン・・・後で連絡する。』
『あぁ解った。待ってる。』

ギョンにしてみれば親友が無事に戻ってきたのはいいが、今回の一件がチャン航空の不手際となる事も

充分考えられた

帰りの車の中で機長から何か聞き出そうとしたが・・・

『申し訳ございません。先に皇太子殿下からお話を伺ってください。』

その一点張りだった


宮殿に向かう車の中・・・チェギョンはシンの手を握り締めたまま離そうとはしなかった

いくらシンが『魚臭いだろう?』と言っても、首を横に振ってその手を離そうとはしなかった

シンは助手席に座っているコン内官に話しかけた

『コン・・・帰ったら入浴を済ませて身支度を整え、全員本殿に集まってくれるよう指示を出してくれ。』
『はい。かしこまりました。』
『疲れているところをすまない。だが・・・一応全員いる前で陛下達に報告義務があるので許して欲しい。』
『当然でございます。もちろんみんな分かっております。』

公用車は宮殿の敷地内に入っていく

まるで夢を見ていたような二週間の事を、これからシンは皆に話さなければならない

たとえその現実離れした話を信じて貰えなくても・・・真実を話すことが、待っていてくれた人達への

心からの礼になると信じるシンだった




イメージ 1

漸く再会❤
ひとまず今回の一件を
みんなに説明しなくっちゃね~~♪
今日はお天気があまり良くなく
おふぅ殿の誘惑に負けてしまったわ。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

ではお話の更新は月曜日までお休みです。
土日はふぅめる通信及び多肉通信を
お送りいたします❤


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