『なっ・・・ナムギル君、お客様だ・・・』
混乱し放心状態のチェギョンの父シン・ナムギルに先輩料理人が声を掛けた
『はい・・・あの、どなたがお見えになっているのですか?』
『皇帝陛下付きのキム内官様だ。』
『ひっ!!』
疑心暗鬼だった皇太子妃の噂は・・・やはり我が娘の事だったのかと思い知らされ、ナムギルは一瞬飛びあがる
『早く行かないと失礼に当たる。』
『はっ・・・はいっ!!』
小走りにキム内官が待っている場所に向かうナムギル。キム内官はナムギルを目にすると会釈をし口を開いた
『シン・ナムギル様でいらっしゃいますね?』
『(さ・・・様ぁ?)はっ・・・はいっ!!』
『皇帝陛下から食事にお招きするようにと申しつかって参りました。。』
『わっ・・・私を・・・で、ございますか?』
『はい、さようでございます。ご同行いただけますか?』
『あ・・・はい。ですが、私は今・・・仕事中でして・・・』
『上の者には私から言っておきます。どうぞご一緒に・・・』
『あ・・・はい。解りました。』
ナムギルは調理場の一番近場に居る先輩に声を掛けた
『せ・・・先輩。少し・・・皇帝陛下が・・・えっと・・・あ・・・』
動揺のあまり何を言っているか解らないナムギルである
だが、先程の皇太子妃決定のニュースと、この調理場で働くシン・ナムギルの娘の名が一致したことで
事を察していた先輩は、同じ様に動揺しながらも快く送り出した
『早く行きなさい。料理長には私から話しておく。』
『はい。す・・・すみません~~!!』
ナムギルは頭を下げるとキム内官の後に続いた。
調理場では今作っている皇室一家会食の為の料理が、ナムギルにも振舞われる事を予感し
一層腕によりをかけたそうだ
『陛下・・・シン・ナムギル様をお連れいたしました。』
『入って貰いなさい。』
通された部屋には既にテーブルセッティングが施されており、皇帝陛下以下五名が席に付いていた
『お父さん!!』
娘の声を聞き漸くそれが現実と知るナムギル
チェギョンの隣の席に案内され、椅子を引かれ居心地が悪そうに腰掛けた
『あ・・・あの皇帝陛下、シン・チェギョンの父のナムギルでございます。』
『急に呼び立ててすまなかったな。』
『いえ、とんでもございません。あ・・・あの・・・あの噂は、本当なのでしょうか・・・』
『あの噂とは?ははは・・・もう伝わっておるのか?そうだ。そなたの娘のシン・チェギョンが
皇太子妃に決定した。』
『あの・・・確かチェギョンは慈慶殿の女官見習いの筈・・・それがどうして皇太子妃に決定など・・・』
寝耳に水のナムギルである。当のチェギョン自身も≪皇太子妃≫と言われてしまうと正直戸惑う部分はあった
初めて好意を抱いた相手に、初めて本心を打ち明けた結果がこうなったのだから・・・本人も驚きなのである
『あ・・・それがね・・・』
チェギョンが口を開こうとするのを皇帝陛下は遮った
『元々二人は好き合っていたと言う事だ。皇太子が・・・そなたの娘でなければだめだと言うのだ。
仕方あるまい。』
『ですが陛下・・・我が家は皇太后様に多額な借金を・・・』
『あ!!そうでした。私は一生懸命働いて借金を返さなきゃいけない立場でした・・・』
項垂れてしまうチェギョン。シンのプロポーズを受けた後で、こんな重大な事を思い出すなんて・・・と
相当な落ち込み様である
だが向かいの席から皇太后は大きな声で笑い始めた
『おほほほほ・・・な~にを沈んで居るのだ?チェギョン・・・』
『ですが女官の仕事を続けないと、お金が返せません。』
『はぁ・・・そなたは、皇太子妃の仕事量が女官に劣ると思っておるのか?
何れ国の母となる立場だぞ。仕事は山積み公務に追われるだろう。皇太子妃が楽な仕事だと思ったか?
とんでもない。これからそなたがする仕事は、あの借金の額面などなんでもない金額に思えるほどだ。
そして・・・そなたくらい意欲のある娘でなければ、到底務まらないだろう。
ナムギルさんや・・・だから言ったであろう?借金の事はチェギョンに任せておけば大丈夫と・・・おほほほ・・・』
『それでは・・・皇太后様は、最初からそのおつもりでチェギョンを・・・』
『そうだ。見込みがあると思ったからな。それに何より・・・二人はとても仲が良い。
そうだろう?太子・・・』
皇太后から話を振られ、シンは少し緊張気味にナムギルに挨拶をする
『はい。あ・・・はじめまして。イ・シンです。急にこんな話になってしまい申し訳ありません。』
『あ・・・いや・・・とんでもない。ですが・・・』
もちろん当事者でなければこのような展開は納得がいかないだろう
いつまでも納得がいかず首を傾げているナムギルに、チェギョンが話しかけた
『お父さん・・・私が皇太子殿下に手を差し伸べたの。』
『チェギョン・・・お前が?なんて恐れ多い・・・』
『恐れ多いとかそんなこと関係なかったの。私じゃなきゃ・・・皇太子殿下を幸せにできないかなって・・・』
『お前っ・・・』
自分の娘が宮殿で・・・しかもお妃選びの場で、そんな大胆な行動に出た事に驚き
ナムギルは呼吸困難に陥りそうになる
皇帝陛下はナムギルを窘めようと、自分が許したことを口にした
『私が・・・チェギョンに行けと言ったのだ。』
『陛下が・・・ですか?』
『うむ。チェギョンに≪太子が心から望む人を選べるよう行って来い≫と命令したのだ。
だから・・・私の責任なのだろう。』
『皇帝陛下・・・・そんなことは・・・』
『とにかくこうなった以上、君もチェギョンが皇室に嫁ぐ事を受け入れてほしい。』
『あ・・・まだ混乱しておりまして。妻にも相談しないと・・・あぁ・・・』
『確かに二つ返事が出来る問題ではない。だがもう二人は気持ちを確認し、婚姻の約束をした。
その事を忘れないで欲しい。』
『かしこまりました・・・・』
納得はいかないにしてもなんとか納得しようと努力しているナムギル・・・
皇后ミンはテーブルの上に並んだ料理を前に、皆に手を付けるよう勧めた
『さぁさぁ皆さん、折角のお祝いの食事が冷めてしまいますわ。いただきましょう♪』
皇后ミンの号令で皇帝陛下はじめ其々食事に手を付け始める
だがやはり・・・平民のナムギルとチェギョンは、形式ばったその料理を失礼がない様に食べることに必死で
食べた気などしなかったようである
其々が・・・自分達の殿閣に戻っていく中、シンは皇太后に問い掛けた
『皇太后様・・・チェギョンの住まいはどうするのですか?』
『チェギョンか?そうだな・・・しばらくは慈慶殿の空いている部屋をチェギョンの部屋としようかの。』
『えっ?東宮に引っ越しでは?』
『太子・・・それはまだ早い。』
『ですがチェギョンを愛慶殿に置いておけば、今まで通り女官の仕事をしようとするに違いありません。
それに女官達も今まで下働きをしていたチェギョンが、今後皇太子妃となると知ったら
やり難いに違いありません。』
『ほぉ・・・では太子はどのようにしたらよいと思うのだ?』
『東宮に・・・部屋は沢山ございますから・・・』
『いやいや・・・それは拙いだろう。あの時の様な事があってはのぉ・・・』
『こっ・・・///皇太后様っ///』
『あの時の・・・様な事って?』
皇太后は・・・夜の宿題タイムの時、寝込みを襲おうとしていたシンの事を言っているのである
シンは慌ててチェギョンにいい訳をした
『なんでもないっ!!』
二人のそんな様子を見て、皇太后は楽しそうに微笑んだ
『そうだな。婚約発表が済んだらチェギョンを東宮にやろう。』
『本当ですか?』
『おぉ。約束しよう。』
まだ暫くチェギョンは慈慶殿に住まうことになる。だがこれからは堂々と東宮にも行ける
そしてチェギョンの肩揉みを待っている二人もいる事だろう
その上今度は訓育がチェギョンを待っている
睡眠時間は確保されるが、別の意味で忙しくなりそうなチェギョンだった
長男がね・・・バイトを決めて来たんです。
でも髪・・・染めるんだって(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
接客業だもん当然よね。
次男も学級委員長さんになり
(入学初日に忘れ物をして、クラス全員の前で90度お詫びし・・・目立ったからだそうだ。)
部活でも配役貰って来て
二人共とても充実しています❤
母ちゃんは今後がとっても楽しみです❤