皇室警察署の車の後部座席に座らされたチェギョンは、両脇を警察官に囲まれ身を縮こまらせて俯いていた
罪があるとしたら・・・それはシンの気持ちも知らずに、シンに弱音を吐いた事だけ
なのに今はまるで犯罪者の様な扱いである
(やっぱり私・・・誘拐犯にされちゃう?)
迷惑はかけないとシンが言ったとしても、それはシンの思うところだけの事
シンと一緒に逃げたチェギョンが罪に問われない筈はない
やがて車は皇室警察署の敷地内に入っていった
チェギョンは両脇を警察署員に拘束されたまま、取り調べ室へと連れて行かれた
警察署の中に入るなど初めての事で、チェギョンはますます項垂れた
『そこに掛けなさい。』
『はい・・・』
一人の警察官に促がされ椅子に腰掛けるチェギョン。早速取り調べが始まった
『名前は?』
『シン・チェギョンです。』
『どういった経緯があって皇太子殿下を学校内から連れ出したのか、説明しなさい。』
『えっ?・・・』
その質問にはさすがのチェギョンも困ってしまった
確かに≪何もかも嫌になった≫と泣き事を言ったのは事実だ。だが自分が連れ出したのではない
そんな大それたことが出来る筈はない
しかし・・・シンの皇太子としての体面もある事だろう。なんと答えていいか解らず困り果てていた時
その警察官は威嚇する様に大きな音を立て机を叩いた
<バンッ!!!>
その音に驚きチェギョンが顔を上げると、警察官の鋭い眼光がチェギョンを貫いた
『正直に答えなさい!!』
息をのみ覚悟したように真実が口をついて出る。シンの体面を考え黙っていたかったが、もはやそれも
チェギョンにはできそうにない
『連れ出してなどいません。』
『連れ出していない?では皇太子殿下が君を連れ出したとでも言うのか?』
『はい・・・』
『嘘を吐くんじゃない!!皇太子殿下の様な身分の方が、率先して電車になど乗る筈はない!』
確かに警察官の言っている事は的を得ている。電車の乗り方は春休みのあの日・・・チェギョンが教えたのだ
だが、今回はシン自ら切符を購入しチェギョンを誘ったのだ
『本当です。』
『まあいい。すぐに皇室から連絡が入るだろう。君はその時に備えて、しっかり覚悟を決めておきなさい!!』
覚悟・・・つまりこの国の皇太子殿下を誘拐した大罪人となる覚悟だろうか
マナーモードになっている携帯に、先程から何度も掛ってきているハン・チョルスからの電話
その電話を取る事も出来ず、かと言ってシンから電話が来るかもしれないと思うと電源を切る事も出来ず
一人残された取調室で、チェギョンは何度も溜息を吐いた
その頃シンは本殿にて三陛下の前で自分が今日しでかしたことの説明をしていた
『ですから陛下・・・彼女は何も悪くないのです。私が彼女を連れ出して逃げたのです。』
『逃げた?太子・・・一国の皇太子がその責任から逃げようとするなどあり得ない事だ。
なんて思慮のない行動を起こしたのだ!』
『そう仰られましても私はまだ15歳です。限られた娘の中から毎日のように
将来の伴侶を決めろと急かされたら、逃げ出したくなるのも当然ではありませんか!!』
『つまり・・・お前は自分の環境に嫌気がさし、なんの罪もない生徒を道連れにして逃げたと言うのだな。
お前のその思慮のなさが、その生徒を苦しめることになったのがわからぬか!!』
『っつ・・・ですから皇室警察の取り調べは私が受けますので、彼女は今すぐ釈放してくれるよう
連絡してください!!彼女は悪くないんです。本当です!!』
『たとえそれが真実であっても、一国の皇太子と一緒に逃亡したとなれば・・・その娘は罪に問われる。
お前を誘拐したとみなされても仕方ないのだぞ!』
『ですから・・・先程から何度も申し上げているではありませんか。私が連れ出したと・・・』
『太子・・・一体いつになったらお前は落ち着くのだ。お前はこの国の皇太子だ。
一秒たりとその事を忘れてはならぬ。』
『陛下にお願いがあります。それさえ叶えて下されば、今後陛下の仰る通りにいたしましょう。』
『ほぉ・・・その願いとは何なのだ?』
『まず・・・今、皇室警察署に囚われているシン・チェギョンの釈放です。
それと王族のハン家にそのシン・チェギョンの家が借金をしています。
その借金が原因で彼女は勉強もままならない日々を送っています。私の私的財産を彼女に融通する事を
どうぞお許しください。そしてハン家に皇室がシン家の借金を肩代わりすると知らせてください。』
『なにっ・・・お前がその家の借金を肩代わりすると言うのか?』
『はい。それをお許しいただけたら・・・陛下の言う通りにいたしましょう。』
『本当に私の言う通りこの先は事を運ぶのだな?』
『はい。お約束いたします。』
即座に皇帝陛下は皇室警察に連絡を入れ、シン・チェギョンを釈放するよう命令を下した
皇室警察としても陛下からの命令に背く事は出来ず、チェギョンを釈放すべく取調室に入っていった
『シン・チェギョンさん・・・君を釈放して良いとの命令が下された。
だが君は未成年者だ。家族に引き取りに来てもらいなさい。』
『か・・・家族ですか?』
釈放されるのは嬉しかったが、皇室警察に居ることが家族に知られるのは非常に困るチェギョンである
困り果てている時にポケットの中で、マナーモードの携帯はずっと鳴り響いた
『電話を取りなさい。』
『はい・・・』
案の定、電話の主はハン・チョルスだった
『チェギョンです。』
『チェギョンさん僕です。約束の場所でずっと待っていたのですが、なかなかいらっしゃらないので
しつこく電話をしてしまいすみません。』
『いえ・・・』
『今どちらですか?』
『今・・・あの・・・』
チェギョンが言い淀んでいると、それを隣で聞いていた警察官が小声で提案する
『成人している方であれば家族じゃなくても迎えに来て貰って構いませんよ。
もちろん見元引受人として署名はしていただきますが・・・』
背に腹は代えられない。チェギョンは意を決してハン・チョルスに気の重い頼みごとをしてみる
『あの・・・チョルスさん、私今・・・皇室警察に居るんです。』
『えっ?なぜそんな場所に?』
『少し事情がありまして。あの・・・それで厚かましいんですけど、身元引受人になっていただけませんか?』
『え?あ・・・あぁ構いません。すぐに迎えに行きます。待っていてください。』
その言葉通りハン・チョルスはすぐにチェギョンを迎えに現れた
そして担当警察官から事情を聞いた上で、身元引受人としてサインをしチェギョンを伴って
皇室警察署から出て行った
『さぁチェギョンさん、早く乗ってください。』
『はい。』
ハン・チョルスはエンジンを掛けるとすぐに車を発進させた
そしてチェギョンに逢えたことで安堵しながら、事情を追及したいようだ
『ハン・チョルスさん・・・本当にすみませんでした。身元引受人になっていただいて、
本当にありがとうございます。』
『いえそんな事は何でもありません。ですがチェギョンさん・・・どうして皇太子殿下と・・・』
『あ・・・それは・・あのっ・・・少し私が疲れてしまっていたからだと思います。
迷惑掛けました。ごめんなさい。』
『いえいいんですよ。今日はチェギョンさんもお疲れでしょうから、このまま家にお送りします。
ですから今日はしっかり休んでくださいね。』
『はい・・・すみません。』
チェギョンには穏やかな口調で話しかけながらも、ハン・チョルスは皇太子殿下に対して非常に憤っていた
チェギョンが皇太子殿下を連れ出すなど考えられないと、ハン・チョルスも察したのだ
一般の女性であるチェギョンを一国の皇太子がお忍びで連れ出すなど、このような結果を招く事は
目に見えていた
チェギョンを家に送り届けた後、ハン・チョルスは皇室東宮殿に電話を掛けコン内官を通し
シンの執務室に電話を繋いで貰った
『皇太子殿下でいらっしゃいますか?』
『あぁそうだが・・・』
『私は王族ハン家のチョルスです。』
『ハン・チョルスさんが私に何か?』
『先程皇室警察に行って、私がチェギョンさんの身元引受人になって参りました。』
『あぁ?・・・・』
『殿下・・・一体どういうおつもりですか?なんの罪も無い一般人を苦しめる様な真似はやめてください!』
『っつ・・・なら私も言わせて貰おう。休みも無くバイトに明け暮れるチェギョンを、毎週金曜日に連れだすのは
少し配慮が足りないと思わないか?』
『殿下・・・つまりそれは、私に対する宣戦布告と言う事ですね?』
『いやそうではない。私はあなたと違って、好きな女性を誘う事も出来ない立場だ。
宣戦布告など出来る筈ないだろう?』
『そうですか。でしたら安心いたしました。私はどのような事があっても、チェギョンさんを諦める気はありません。
それだけ言いたかったのです。では・・・失礼いたします。』
シンは電話を切ってから受話器を見つめ忌々しそうに溜息を吐いた
(っつ・・・ハン・チョルス。チェギョンに言い寄るのも今のうちだ。
俺は俺なりの方法でチェギョンを守る。それしか・・・俺にはできないからな。
自由にならない人生なら、せめてお前だけでも自由にしてやりたい。)
自嘲的に笑うシン。その胸中は悲しみで溢れていた
罪があるとしたら・・・それはシンの気持ちも知らずに、シンに弱音を吐いた事だけ
なのに今はまるで犯罪者の様な扱いである
(やっぱり私・・・誘拐犯にされちゃう?)
迷惑はかけないとシンが言ったとしても、それはシンの思うところだけの事
シンと一緒に逃げたチェギョンが罪に問われない筈はない
やがて車は皇室警察署の敷地内に入っていった
チェギョンは両脇を警察署員に拘束されたまま、取り調べ室へと連れて行かれた
警察署の中に入るなど初めての事で、チェギョンはますます項垂れた
『そこに掛けなさい。』
『はい・・・』
一人の警察官に促がされ椅子に腰掛けるチェギョン。早速取り調べが始まった
『名前は?』
『シン・チェギョンです。』
『どういった経緯があって皇太子殿下を学校内から連れ出したのか、説明しなさい。』
『えっ?・・・』
その質問にはさすがのチェギョンも困ってしまった
確かに≪何もかも嫌になった≫と泣き事を言ったのは事実だ。だが自分が連れ出したのではない
そんな大それたことが出来る筈はない
しかし・・・シンの皇太子としての体面もある事だろう。なんと答えていいか解らず困り果てていた時
その警察官は威嚇する様に大きな音を立て机を叩いた
<バンッ!!!>
その音に驚きチェギョンが顔を上げると、警察官の鋭い眼光がチェギョンを貫いた
『正直に答えなさい!!』
息をのみ覚悟したように真実が口をついて出る。シンの体面を考え黙っていたかったが、もはやそれも
チェギョンにはできそうにない
『連れ出してなどいません。』
『連れ出していない?では皇太子殿下が君を連れ出したとでも言うのか?』
『はい・・・』
『嘘を吐くんじゃない!!皇太子殿下の様な身分の方が、率先して電車になど乗る筈はない!』
確かに警察官の言っている事は的を得ている。電車の乗り方は春休みのあの日・・・チェギョンが教えたのだ
だが、今回はシン自ら切符を購入しチェギョンを誘ったのだ
『本当です。』
『まあいい。すぐに皇室から連絡が入るだろう。君はその時に備えて、しっかり覚悟を決めておきなさい!!』
覚悟・・・つまりこの国の皇太子殿下を誘拐した大罪人となる覚悟だろうか
マナーモードになっている携帯に、先程から何度も掛ってきているハン・チョルスからの電話
その電話を取る事も出来ず、かと言ってシンから電話が来るかもしれないと思うと電源を切る事も出来ず
一人残された取調室で、チェギョンは何度も溜息を吐いた
その頃シンは本殿にて三陛下の前で自分が今日しでかしたことの説明をしていた
『ですから陛下・・・彼女は何も悪くないのです。私が彼女を連れ出して逃げたのです。』
『逃げた?太子・・・一国の皇太子がその責任から逃げようとするなどあり得ない事だ。
なんて思慮のない行動を起こしたのだ!』
『そう仰られましても私はまだ15歳です。限られた娘の中から毎日のように
将来の伴侶を決めろと急かされたら、逃げ出したくなるのも当然ではありませんか!!』
『つまり・・・お前は自分の環境に嫌気がさし、なんの罪もない生徒を道連れにして逃げたと言うのだな。
お前のその思慮のなさが、その生徒を苦しめることになったのがわからぬか!!』
『っつ・・・ですから皇室警察の取り調べは私が受けますので、彼女は今すぐ釈放してくれるよう
連絡してください!!彼女は悪くないんです。本当です!!』
『たとえそれが真実であっても、一国の皇太子と一緒に逃亡したとなれば・・・その娘は罪に問われる。
お前を誘拐したとみなされても仕方ないのだぞ!』
『ですから・・・先程から何度も申し上げているではありませんか。私が連れ出したと・・・』
『太子・・・一体いつになったらお前は落ち着くのだ。お前はこの国の皇太子だ。
一秒たりとその事を忘れてはならぬ。』
『陛下にお願いがあります。それさえ叶えて下されば、今後陛下の仰る通りにいたしましょう。』
『ほぉ・・・その願いとは何なのだ?』
『まず・・・今、皇室警察署に囚われているシン・チェギョンの釈放です。
それと王族のハン家にそのシン・チェギョンの家が借金をしています。
その借金が原因で彼女は勉強もままならない日々を送っています。私の私的財産を彼女に融通する事を
どうぞお許しください。そしてハン家に皇室がシン家の借金を肩代わりすると知らせてください。』
『なにっ・・・お前がその家の借金を肩代わりすると言うのか?』
『はい。それをお許しいただけたら・・・陛下の言う通りにいたしましょう。』
『本当に私の言う通りこの先は事を運ぶのだな?』
『はい。お約束いたします。』
即座に皇帝陛下は皇室警察に連絡を入れ、シン・チェギョンを釈放するよう命令を下した
皇室警察としても陛下からの命令に背く事は出来ず、チェギョンを釈放すべく取調室に入っていった
『シン・チェギョンさん・・・君を釈放して良いとの命令が下された。
だが君は未成年者だ。家族に引き取りに来てもらいなさい。』
『か・・・家族ですか?』
釈放されるのは嬉しかったが、皇室警察に居ることが家族に知られるのは非常に困るチェギョンである
困り果てている時にポケットの中で、マナーモードの携帯はずっと鳴り響いた
『電話を取りなさい。』
『はい・・・』
案の定、電話の主はハン・チョルスだった
『チェギョンです。』
『チェギョンさん僕です。約束の場所でずっと待っていたのですが、なかなかいらっしゃらないので
しつこく電話をしてしまいすみません。』
『いえ・・・』
『今どちらですか?』
『今・・・あの・・・』
チェギョンが言い淀んでいると、それを隣で聞いていた警察官が小声で提案する
『成人している方であれば家族じゃなくても迎えに来て貰って構いませんよ。
もちろん見元引受人として署名はしていただきますが・・・』
背に腹は代えられない。チェギョンは意を決してハン・チョルスに気の重い頼みごとをしてみる
『あの・・・チョルスさん、私今・・・皇室警察に居るんです。』
『えっ?なぜそんな場所に?』
『少し事情がありまして。あの・・・それで厚かましいんですけど、身元引受人になっていただけませんか?』
『え?あ・・・あぁ構いません。すぐに迎えに行きます。待っていてください。』
その言葉通りハン・チョルスはすぐにチェギョンを迎えに現れた
そして担当警察官から事情を聞いた上で、身元引受人としてサインをしチェギョンを伴って
皇室警察署から出て行った
『さぁチェギョンさん、早く乗ってください。』
『はい。』
ハン・チョルスはエンジンを掛けるとすぐに車を発進させた
そしてチェギョンに逢えたことで安堵しながら、事情を追及したいようだ
『ハン・チョルスさん・・・本当にすみませんでした。身元引受人になっていただいて、
本当にありがとうございます。』
『いえそんな事は何でもありません。ですがチェギョンさん・・・どうして皇太子殿下と・・・』
『あ・・・それは・・あのっ・・・少し私が疲れてしまっていたからだと思います。
迷惑掛けました。ごめんなさい。』
『いえいいんですよ。今日はチェギョンさんもお疲れでしょうから、このまま家にお送りします。
ですから今日はしっかり休んでくださいね。』
『はい・・・すみません。』
チェギョンには穏やかな口調で話しかけながらも、ハン・チョルスは皇太子殿下に対して非常に憤っていた
チェギョンが皇太子殿下を連れ出すなど考えられないと、ハン・チョルスも察したのだ
一般の女性であるチェギョンを一国の皇太子がお忍びで連れ出すなど、このような結果を招く事は
目に見えていた
チェギョンを家に送り届けた後、ハン・チョルスは皇室東宮殿に電話を掛けコン内官を通し
シンの執務室に電話を繋いで貰った
『皇太子殿下でいらっしゃいますか?』
『あぁそうだが・・・』
『私は王族ハン家のチョルスです。』
『ハン・チョルスさんが私に何か?』
『先程皇室警察に行って、私がチェギョンさんの身元引受人になって参りました。』
『あぁ?・・・・』
『殿下・・・一体どういうおつもりですか?なんの罪も無い一般人を苦しめる様な真似はやめてください!』
『っつ・・・なら私も言わせて貰おう。休みも無くバイトに明け暮れるチェギョンを、毎週金曜日に連れだすのは
少し配慮が足りないと思わないか?』
『殿下・・・つまりそれは、私に対する宣戦布告と言う事ですね?』
『いやそうではない。私はあなたと違って、好きな女性を誘う事も出来ない立場だ。
宣戦布告など出来る筈ないだろう?』
『そうですか。でしたら安心いたしました。私はどのような事があっても、チェギョンさんを諦める気はありません。
それだけ言いたかったのです。では・・・失礼いたします。』
シンは電話を切ってから受話器を見つめ忌々しそうに溜息を吐いた
(っつ・・・ハン・チョルス。チェギョンに言い寄るのも今のうちだ。
俺は俺なりの方法でチェギョンを守る。それしか・・・俺にはできないからな。
自由にならない人生なら、せめてお前だけでも自由にしてやりたい。)
自嘲的に笑うシン。その胸中は悲しみで溢れていた
そうなんです。
実はね・・・チェギョンが耐えてゾーンかと思いきや
シン君の耐えてゾーンなんだな・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
実はね・・・チェギョンが耐えてゾーンかと思いきや
シン君の耐えてゾーンなんだな・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!