マアムを産んだ翌日から、チェギョンは昼間マアムと一緒に過ごせるようになった
マアムを抱いて満足そうに微笑むその顔は、まさに母の顔をしていた
女性と言うものはやはり、妊娠期間毎日毎日時間を掛けて母になる準備をしているのだろう
その顔は驚くほど毅然としていて、そして神々しい・・・
子供を産んだ女性は美しいと言うが、まさにそれだろう。今俺は今まで逢った中で一番美しい彼女を
目の当たりにしている
病院側の方針で夜間は看護師が面倒を見てくれるが、昼間はマアムと濃密な親子関係を築いているようだ
現に、俺がマアムを抱いた時よりも彼女の腕に抱かれた時の方が、マアムは安心した顔をするのが癪に障る
まぁ…瓜二つな母子が寄り添う姿を見るのは、俺にとって至福の時間と言えよう
母は俺が以前使っていた部屋をすっかり模様替えし・・・マアムグッズを大量に買い込んだようだ
悪い人ではないのだが若干行き過ぎのところのある母の元、産後一カ月を過ごすのはもしかして彼女にとって
気の休まらない日々になるのではないかと若干不安になり、俺はシン家の義母に電話を掛けてみた
『こんにちは。お義母さん、シンです。』
『まぁシン君どうしたの?チェギョンは元気?マアムは?』
『はい。母子共にとても元気です。あの、お義母さん・・・お忙しいと思うのですが
ひとつお願いしたい事があるのですが・・・』
『まぁなにかしら?』
『チェギョンが退院したら一カ月間イ家で過ごすことになったんです。
母もすごくチェギョンを可愛がってはいるのですが、チェギョンが休まらないのではないかと
少し心配になりまして・・・』
『まぁっ・・・ふふふ・・・チェギョンったらとても大事にされているのね。
お母様から聞いていない?私も週に三度はイ家に通う約束になっているのよ。』
『えっ?本当ですか?』
『ええ。ミンさんがね≪スンレさんも週に三日は通ってね~♪でないとマアムに顔忘れられちゃうわよ~♪≫って
仰るものだから・・・ふふふ。
ミンさんは解っているのよ。うちに里帰りしたらチェギョンは気兼ねするだろうし、
私もお嫁さんに気を使うだろうって。』
『えっ?母は・・・そんな事を考えていたのですか?』
『口には出さないけれどそう言う人よ。あなたのお母様は・・・
とにかく私も伺うからシン君は安心してお仕事して頂戴ね。』
『解りました。どうぞよろしくお願いします。』
電話を切った後、俺は含み笑いが止まらなかった。
あの猪突猛進型の母が・・・自分の願いは必ず叶える母が・・・・意外にもそんな配慮のできる人だったとは
長年付き合って来たが気が付かなかった
侮れないな・・・母さん。くくくっ・・・
もうすぐ退院できると言うある日・・・俺の元に一本の電話が掛かってきた
『シン?』
従兄弟のユルだ。なにが気にくわない訳でもないが、俺と言う奴はどうもこのユルに警戒心を抱く
『あぁ、なんだ?』
明らかにぶっきらぼうなその口調にユルは苦笑しながら話し始めた
『子供が生まれたんだって?』
『あぁ。』
『女の子だって?』
『あぁ。』
『お祝いに行きたいんだけど・・・』
『あぁ?』
そう言われてみれば、以前妊娠した事をユルに告げた時に≪お祝いくらいはさせてくれ・・・≫
そう言われたのを思い出した
『今日、定時に会社上がれる?』
『なぜそんな事を聞く?』
『僕が一人でチェギョンに逢いに行ったら嫌だろう?』
『当然だ!』
『だから一緒に行こうかと思って・・・』
『解った。じゃあ・・・退社時間が過ぎた頃、駐車場まで来てくれ。』
『うん。解った・・・』
妙に浮かれた声で電話を切ったユル。もうチェギョンはただの俺の妻だけじゃなく、俺の子供を産んだ女性だ
その辺り忘れるな!
そんな事を心の中で毒づきながら、今日も退社時刻で上がれそうな俺は、残務を必死に片付け
時計の針が退社時刻を示すのを心待ちにしていた
俺にとってみたら恋人二人とのデートの様な気分だ。どんなに胸が躍るか解るだろう?
退社時間になり・・・俺は地下駐車場に降りて行く
すると既にユルは到着していた
『シン・・・遅かったね。』
『そんな事はない。』
退社時刻になってすぐに降りて来たんだ。そんなにチェギョンに逢いたいっていうアピールか?
あぁ…また俺のつまらない嫉妬心が心の中で渦巻く・・・ダメだ。俺は親になったんだからな。
マアムの父親になったんだから、つまらない嫉妬心は捨てろ!
俺は車に乗り込み、ユルに話しかけた
『じゃあ・・・あとからついて来てくれ。』
『うん。解ったよ。』
一緒に行くとは言っても一緒の車には乗らない。昔から俺とユルはその辺り一線を引いている
ユルの車が続いている事を意識し、俺はさほどスピードを上げずにチェギョンの入院する病院の駐車場に
車を乗り入れた
『ここだったのか。ここ・・・僕の生まれた病院なんだ。』
『ユル・・・お前も?』
『ってことはシンも?』
『あぁ。・・・それなんだ?』
俺はユルの手に抱えられている大きな箱を一瞥し、怪訝そうな声で問い掛けた
『なにって・・・お祝いに決まっているだろう?』
『それは解っている。中身の話だ。』
『ふふふ・・・子供服。僕の特製のベビーウエアだよ。』
そうだ。忘れていた・・・ユルは子供服のデザイナーとして国内の第一人者に上り詰めた奴だった事を・・・
つまり・・・・マアムの為にオリジナル子供服を作ってきたと言うのか?それは・・・まぁ悪い気はしないが
ちょっと気分は複雑だ
ユルを伴いチェギョンの入院している病室の前に立つ。
『ユル・・・ちょっと待っていてくれ。』
念の為・・・病室内がユルに見せられない状態になっていないかを確認する
当然だろう?チェギョンは乳幼児と一緒なんだ。授乳中だったりしたら絶対に室内には入れない
<トントン>
『どうぞ。』
中からチェギョンの声がする。取り込み中の時は大概≪ちょっと待って~~!!≫と慌てた声が聞こえるものだ
俺は扉を開けユルに目配せをすると一緒に病室に入って行った
『チェギョン・・・お客さんだ。』
『ん?ユル君♪・・・・』
嬉しそうな表情の後、一瞬俺に視線を向けたのは俺の顔色を窺う為だろう
ユルはそんなチェギョンに歩み寄った
『チェギョン・・・出産おめでとう。』
『ありがとう。』
『これが生まれた子?チェギョンにそっくりだね。』
思わず頬ずりしそうな勢いのユル・・・俺は慌ててマアムのベビーベッドに駆け寄った
『ユル・・・折角眠っているんだから起こすな。』
『あ・・・そうだったね。ごめんごめん・・・・チェギョン、これ・・・出産のお祝いだよ。』
ユルはチェギョンの膝の上に持参した大きな箱を置いた
『わぁ~なんだろう~♪開けてみてもいい?』
『うん。開けてみて・・・』
チェギョンは箱に掛かっていた大きなリボンをひも解き、箱を開けてみる
『わ・・・・すごいっ・・・・これ・・・』
『僕がデザインしたベビー服だよ。マアムの為に作っておいたんだ。ちなみに男の子用もあるけどね。ふふふ】
『えっ?ユル君・・・子供服のデザイナー?』
『シンはそんな事も教えてくれなかったの?』
『うん。今初めて知った。それに今まで私も・・・子供服に縁が無かったから、まったく知らなかったわ。』
『同業者だよ。これからよろしくね。』
『うん。ユル君・・・マアムに素敵なお洋服をどうもありがとう。』
目を輝かせるチェギョン・・・箱の中に入った女の子らしいベビー服を一枚一枚手に取り、広げて見せる
彼女にユルの事など教える筈もない。大体俺ですら忘れていたんだから・・・くくっ・・・
おっ?どうやらマアムの覚醒の時間の様だ。俺はユルを伴い一旦病室を出て、ユルに初めて心からの
ありがとうの言葉を告げた
本日の花≪ガザニア・セダム添え(激爆)≫
なんとも鬱陶しい雨模様の七夕
今夜は晴れると良いなぁ・・・
マアムを抱いて満足そうに微笑むその顔は、まさに母の顔をしていた
女性と言うものはやはり、妊娠期間毎日毎日時間を掛けて母になる準備をしているのだろう
その顔は驚くほど毅然としていて、そして神々しい・・・
子供を産んだ女性は美しいと言うが、まさにそれだろう。今俺は今まで逢った中で一番美しい彼女を
目の当たりにしている
病院側の方針で夜間は看護師が面倒を見てくれるが、昼間はマアムと濃密な親子関係を築いているようだ
現に、俺がマアムを抱いた時よりも彼女の腕に抱かれた時の方が、マアムは安心した顔をするのが癪に障る
まぁ…瓜二つな母子が寄り添う姿を見るのは、俺にとって至福の時間と言えよう
母は俺が以前使っていた部屋をすっかり模様替えし・・・マアムグッズを大量に買い込んだようだ
悪い人ではないのだが若干行き過ぎのところのある母の元、産後一カ月を過ごすのはもしかして彼女にとって
気の休まらない日々になるのではないかと若干不安になり、俺はシン家の義母に電話を掛けてみた
『こんにちは。お義母さん、シンです。』
『まぁシン君どうしたの?チェギョンは元気?マアムは?』
『はい。母子共にとても元気です。あの、お義母さん・・・お忙しいと思うのですが
ひとつお願いしたい事があるのですが・・・』
『まぁなにかしら?』
『チェギョンが退院したら一カ月間イ家で過ごすことになったんです。
母もすごくチェギョンを可愛がってはいるのですが、チェギョンが休まらないのではないかと
少し心配になりまして・・・』
『まぁっ・・・ふふふ・・・チェギョンったらとても大事にされているのね。
お母様から聞いていない?私も週に三度はイ家に通う約束になっているのよ。』
『えっ?本当ですか?』
『ええ。ミンさんがね≪スンレさんも週に三日は通ってね~♪でないとマアムに顔忘れられちゃうわよ~♪≫って
仰るものだから・・・ふふふ。
ミンさんは解っているのよ。うちに里帰りしたらチェギョンは気兼ねするだろうし、
私もお嫁さんに気を使うだろうって。』
『えっ?母は・・・そんな事を考えていたのですか?』
『口には出さないけれどそう言う人よ。あなたのお母様は・・・
とにかく私も伺うからシン君は安心してお仕事して頂戴ね。』
『解りました。どうぞよろしくお願いします。』
電話を切った後、俺は含み笑いが止まらなかった。
あの猪突猛進型の母が・・・自分の願いは必ず叶える母が・・・・意外にもそんな配慮のできる人だったとは
長年付き合って来たが気が付かなかった
侮れないな・・・母さん。くくくっ・・・
もうすぐ退院できると言うある日・・・俺の元に一本の電話が掛かってきた
『シン?』
従兄弟のユルだ。なにが気にくわない訳でもないが、俺と言う奴はどうもこのユルに警戒心を抱く
『あぁ、なんだ?』
明らかにぶっきらぼうなその口調にユルは苦笑しながら話し始めた
『子供が生まれたんだって?』
『あぁ。』
『女の子だって?』
『あぁ。』
『お祝いに行きたいんだけど・・・』
『あぁ?』
そう言われてみれば、以前妊娠した事をユルに告げた時に≪お祝いくらいはさせてくれ・・・≫
そう言われたのを思い出した
『今日、定時に会社上がれる?』
『なぜそんな事を聞く?』
『僕が一人でチェギョンに逢いに行ったら嫌だろう?』
『当然だ!』
『だから一緒に行こうかと思って・・・』
『解った。じゃあ・・・退社時間が過ぎた頃、駐車場まで来てくれ。』
『うん。解った・・・』
妙に浮かれた声で電話を切ったユル。もうチェギョンはただの俺の妻だけじゃなく、俺の子供を産んだ女性だ
その辺り忘れるな!
そんな事を心の中で毒づきながら、今日も退社時刻で上がれそうな俺は、残務を必死に片付け
時計の針が退社時刻を示すのを心待ちにしていた
俺にとってみたら恋人二人とのデートの様な気分だ。どんなに胸が躍るか解るだろう?
退社時間になり・・・俺は地下駐車場に降りて行く
すると既にユルは到着していた
『シン・・・遅かったね。』
『そんな事はない。』
退社時刻になってすぐに降りて来たんだ。そんなにチェギョンに逢いたいっていうアピールか?
あぁ…また俺のつまらない嫉妬心が心の中で渦巻く・・・ダメだ。俺は親になったんだからな。
マアムの父親になったんだから、つまらない嫉妬心は捨てろ!
俺は車に乗り込み、ユルに話しかけた
『じゃあ・・・あとからついて来てくれ。』
『うん。解ったよ。』
一緒に行くとは言っても一緒の車には乗らない。昔から俺とユルはその辺り一線を引いている
ユルの車が続いている事を意識し、俺はさほどスピードを上げずにチェギョンの入院する病院の駐車場に
車を乗り入れた
『ここだったのか。ここ・・・僕の生まれた病院なんだ。』
『ユル・・・お前も?』
『ってことはシンも?』
『あぁ。・・・それなんだ?』
俺はユルの手に抱えられている大きな箱を一瞥し、怪訝そうな声で問い掛けた
『なにって・・・お祝いに決まっているだろう?』
『それは解っている。中身の話だ。』
『ふふふ・・・子供服。僕の特製のベビーウエアだよ。』
そうだ。忘れていた・・・ユルは子供服のデザイナーとして国内の第一人者に上り詰めた奴だった事を・・・
つまり・・・・マアムの為にオリジナル子供服を作ってきたと言うのか?それは・・・まぁ悪い気はしないが
ちょっと気分は複雑だ
ユルを伴いチェギョンの入院している病室の前に立つ。
『ユル・・・ちょっと待っていてくれ。』
念の為・・・病室内がユルに見せられない状態になっていないかを確認する
当然だろう?チェギョンは乳幼児と一緒なんだ。授乳中だったりしたら絶対に室内には入れない
<トントン>
『どうぞ。』
中からチェギョンの声がする。取り込み中の時は大概≪ちょっと待って~~!!≫と慌てた声が聞こえるものだ
俺は扉を開けユルに目配せをすると一緒に病室に入って行った
『チェギョン・・・お客さんだ。』
『ん?ユル君♪・・・・』
嬉しそうな表情の後、一瞬俺に視線を向けたのは俺の顔色を窺う為だろう
ユルはそんなチェギョンに歩み寄った
『チェギョン・・・出産おめでとう。』
『ありがとう。』
『これが生まれた子?チェギョンにそっくりだね。』
思わず頬ずりしそうな勢いのユル・・・俺は慌ててマアムのベビーベッドに駆け寄った
『ユル・・・折角眠っているんだから起こすな。』
『あ・・・そうだったね。ごめんごめん・・・・チェギョン、これ・・・出産のお祝いだよ。』
ユルはチェギョンの膝の上に持参した大きな箱を置いた
『わぁ~なんだろう~♪開けてみてもいい?』
『うん。開けてみて・・・』
チェギョンは箱に掛かっていた大きなリボンをひも解き、箱を開けてみる
『わ・・・・すごいっ・・・・これ・・・』
『僕がデザインしたベビー服だよ。マアムの為に作っておいたんだ。ちなみに男の子用もあるけどね。ふふふ】
『えっ?ユル君・・・子供服のデザイナー?』
『シンはそんな事も教えてくれなかったの?』
『うん。今初めて知った。それに今まで私も・・・子供服に縁が無かったから、まったく知らなかったわ。』
『同業者だよ。これからよろしくね。』
『うん。ユル君・・・マアムに素敵なお洋服をどうもありがとう。』
目を輝かせるチェギョン・・・箱の中に入った女の子らしいベビー服を一枚一枚手に取り、広げて見せる
彼女にユルの事など教える筈もない。大体俺ですら忘れていたんだから・・・くくっ・・・
おっ?どうやらマアムの覚醒の時間の様だ。俺はユルを伴い一旦病室を出て、ユルに初めて心からの
ありがとうの言葉を告げた
本日の花≪ガザニア・セダム添え(激爆)≫
なんとも鬱陶しい雨模様の七夕
今夜は晴れると良いなぁ・・・