安定期を過ぎた頃から目立つようになってきた彼女のお腹・・・売れっ子デザイナーの夫としては
彼女の体重管理をするのも大切な仕事だ
なにしろ世間一般で言うところの≪悪阻≫で食べられないという苦労を知らない彼女は、
食べないと気持ちが悪くなってしまうらしくとにかくよく食べる
そんな彼女がある日、外出先で若い妊婦と出逢った事から・・・マタニティーウエアを手掛ける様になった
もちろんそれは自分用にデザインした物だった・・・リビングのソファーでデザインブックに
さらさらと何枚も描き上げ、翌日からはその型紙を作りそれからそれを縫い始めた
今まで自分の家での格好など気にもしなかった彼女。その変貌ぶりに俺は驚き問い掛けた
『チェギョン・・・一体なぜそんなに必死になっているんだ?』
『ん??あのね・・・私があまりにもひどい恰好していたから、若い子に≪女捨てちゃダメでしょ!≫
って言われちゃったの。それに私があまりにも恥ずかしい身なりしていると、
シン君が人から笑われちゃうでしょ?』
そんなこと気にしたこともなかった。今彼女は妊娠中だ・・・何よりも子供をお腹の中で育てることに
力を注いでいる
それで十分だと思っていた。それに・・・彼女はありのままで十分可愛いんだ
人の言葉に踊らされる必要はない!
『今時の若い妊婦の言う事なんか気にする事はない。』
『・・・確かに私は若くないけど・・・』
彼女が少し不貞腐れた顔をする。唇を尖らせて上目遣いで俺を睨みつける
オイオイ・・・そう言う意味で言ったんじゃあない。
ミシンを使う手を止めて彼女は肩を落とす。
明らかに落ち込んでしまった時の彼女の仕草だ
俺は彼女の背後に回り彼女の背中をそっと抱き締めた
『チェギョン・・・そう言う意味じゃない。君は何を着ていたって俺には特別だ。』
『特別?』
『あぁ・・・俺にとってはどんな格好をしていても特別な存在だ。』
『本当?』
拗ねた表情を漸く緩める彼女。最近は体が重くなってきて思い通りにならないせいか、以前にも増して
浮き沈みが激しい
そんな彼女の唇を挟みこむ様に俺はキスを落とす
『んっ・・・・シン君ダメっ!これ縫っちゃうからちょっと待ってて♪』
彼女がご機嫌でいられるなら・・・食べる事よりも自分のマタニティウエアを縫う事で気を紛らわせてくれるなら
それほどありがたい事はない
なんと言っても妊娠期間中に春夏物のショーが開催され、彼女はマスコミの前にその姿を現さなければならない
マスコミ関係者は知らない筈だ。次回彼女が大きなお腹で現れるなど・・・
それはきっと驚きのニュースになるだろう
翌日から彼女はお出かけが楽しくなったらしく、またバスを乗り継いで会社まで顔を出したりするようになった
俺も母も気が気ではない
そんなある日のことだった
マネージャーの母が都合が悪く、また俺自身も会社を抜けられない状況の時・・・
彼女は一人でシン・アパレルファッションの打ち合わせに出掛け、その帰りにミンヒョン産業近くまで
一人でやってきてしまった
その連絡を受けた俺は、彼女が待っていると言うカフェに急いで向かった
確かこの場所は・・・以前ミン・ヒョリンと出くわした場所じゃなかったか?
そう思い扉を開けた俺は、彼女があの時と同じようにミン・ヒョリンと話をしている現場に出くわした
『あら・・・シン・チェギョンさん、結婚して気が緩んだのかしら?
そんなに太っちゃって・・・』
確かに今の彼女は少し太ったとしか見えないだろう。彼女の作ったマタニティーウエアは妊婦を感じさせない
物だった。その上椅子に腰掛けている彼女は、そのふっくらとした腹部がテーブルの影になって
妊婦には到底見えないだろう
俺は彼女がミン・ヒョリンにどう対処するのか黙って見ていた。妊娠したことが彼女にどう作用したのかを
知りたかった
『くすくす・・・そうね、幸せ太りかしら~♪』
くっ・・・なかなか言うな。チェギョン・・・
『あなたのデザインした洋服、かなりの人気みたいだけど・・・どう?私の衣装を作ってみない?
あなたにとって損な話じゃないと思うわ。
たかだかこの国で人気があったとしても、そんな人気いつまで続くか解らないわ。
私の衣装を手掛けたら・・・世界に名が轟くのよ。あなたにとっても悪い話じゃないでしょう?』
っつ・・・チェギョン挑発に乗るな。ヒョリンの罠かもしれない。それにミン貿易はシン・アパレルファッションとの
契約をキャンした企業だ。今回のキャンセルでかなりの損害も負った筈だ。絶対何か企んでいるに違いない
二人に向かって一歩足を踏み出した時、彼女の口から意外な言葉が放たれた
『そうね・・・人気なんていつまで続くか解らない。
でも・・・悪いけど一度契約をキャンセルされたミン貿易の娘さんと組む気はないわ。
舞台衣装は専門分野外だし、それに私・・・何かと忙しいの。』
『なっ・・・』
ミン・ヒョリンの顔色が変わった。俺は踏み出したまま止めていた足を再び進め、二人の間に割って入った
彼女がミン・ヒョリンに掴みかかられでもしたら大変だ
夫としての防衛本能なのか・・・それとも父親としての防御本能なのか解らないが、俺は彼女の前に立ち
ミン・ヒョリンと向き合った
『ヒョリン・・・俺の妻に何をしようと言うんだ?』
『シン・・・あなたの奥様って、本当に融通が利かないのね。あなた達がいつ別れるのか・・・私は楽しみだわ。』
別れる?くっ・・・何を馬鹿な事を言っている?今俺達は一番熟している時期だ。俺はヒョリンに冷笑を送り
口角を上げ現実を突きつけようとした瞬間・・・背後にいる彼女の声が響いた
『う~~ん、それは困るわ。シン君と別れたら・・・この子を父親の無い子にしちゃうもの~♪』
椅子から立ち上がったチェギョンは、誇らしげにお腹を突きだして見せた
そしてわざわざ両手でお腹を持ち上げる仕草をし笑っている
『あ・・・あなた達・・・』
『そう・・・もう俺達は親になるんだ。』
キッと悔しそうな視線をヒョリンは俺達二人に向け、それから背を向けるとそそくさとカフェから去って行った
彼女を見ると誇らしげに俺に微笑みかけている
『妊婦って解らなかったみたいね。ミン・ヒョリンさん・・・』
『あぁそうだな。』
『今日はメイクもばっちりだし、これからお買い物して帰るわ~♪』
オイ・・・そんな可愛い格好でどこに行くつもりなんだ?俺はまだ会議が残っているんだ・・・一緒に帰れない
『チェギョン・・・しばらく母さんとお茶でも飲んで待っていたらどうだ?』
『お義母様は今日お出かけだも~ん♪』
『じゃあ…副社長室で会議が終わるまで待っていてくれ。』
『シン君の会議って二時間とか待たされるもん。その間にお買い物できるも~~ん♪
シン君の顔を見に寄っただけだから、もう行くわ。』
待ってくれ・・・心配で敵わない。一人で買い物になど行かせたくない・・・俺のそんな思いを振り払うかのように
彼女は手を振るとバス停に向かって歩く
彼女の乗りこんだバスを見送ってから、俺は早足で会議室に向かった
遅刻だ。会議に遅刻してしまった
だが会議が終われば終業時間になるだろう。早く家に帰りたい・・・俺はもうすっかりチェギョン命の夫に
なってしまったようだ
独身時代の自由と気ままさを満喫していた俺は、一体どこに行ってしまったのだろう
本日の花≪多肉植物・桜吹雪≫
では~週末は【マジカル・多肉通信】および【ふぅめる通信】をお送りいたします❤
お話の更新は月曜日まで待っていてね♪
彼女の体重管理をするのも大切な仕事だ
なにしろ世間一般で言うところの≪悪阻≫で食べられないという苦労を知らない彼女は、
食べないと気持ちが悪くなってしまうらしくとにかくよく食べる
そんな彼女がある日、外出先で若い妊婦と出逢った事から・・・マタニティーウエアを手掛ける様になった
もちろんそれは自分用にデザインした物だった・・・リビングのソファーでデザインブックに
さらさらと何枚も描き上げ、翌日からはその型紙を作りそれからそれを縫い始めた
今まで自分の家での格好など気にもしなかった彼女。その変貌ぶりに俺は驚き問い掛けた
『チェギョン・・・一体なぜそんなに必死になっているんだ?』
『ん??あのね・・・私があまりにもひどい恰好していたから、若い子に≪女捨てちゃダメでしょ!≫
って言われちゃったの。それに私があまりにも恥ずかしい身なりしていると、
シン君が人から笑われちゃうでしょ?』
そんなこと気にしたこともなかった。今彼女は妊娠中だ・・・何よりも子供をお腹の中で育てることに
力を注いでいる
それで十分だと思っていた。それに・・・彼女はありのままで十分可愛いんだ
人の言葉に踊らされる必要はない!
『今時の若い妊婦の言う事なんか気にする事はない。』
『・・・確かに私は若くないけど・・・』
彼女が少し不貞腐れた顔をする。唇を尖らせて上目遣いで俺を睨みつける
オイオイ・・・そう言う意味で言ったんじゃあない。
ミシンを使う手を止めて彼女は肩を落とす。
明らかに落ち込んでしまった時の彼女の仕草だ
俺は彼女の背後に回り彼女の背中をそっと抱き締めた
『チェギョン・・・そう言う意味じゃない。君は何を着ていたって俺には特別だ。』
『特別?』
『あぁ・・・俺にとってはどんな格好をしていても特別な存在だ。』
『本当?』
拗ねた表情を漸く緩める彼女。最近は体が重くなってきて思い通りにならないせいか、以前にも増して
浮き沈みが激しい
そんな彼女の唇を挟みこむ様に俺はキスを落とす
『んっ・・・・シン君ダメっ!これ縫っちゃうからちょっと待ってて♪』
彼女がご機嫌でいられるなら・・・食べる事よりも自分のマタニティウエアを縫う事で気を紛らわせてくれるなら
それほどありがたい事はない
なんと言っても妊娠期間中に春夏物のショーが開催され、彼女はマスコミの前にその姿を現さなければならない
マスコミ関係者は知らない筈だ。次回彼女が大きなお腹で現れるなど・・・
それはきっと驚きのニュースになるだろう
翌日から彼女はお出かけが楽しくなったらしく、またバスを乗り継いで会社まで顔を出したりするようになった
俺も母も気が気ではない
そんなある日のことだった
マネージャーの母が都合が悪く、また俺自身も会社を抜けられない状況の時・・・
彼女は一人でシン・アパレルファッションの打ち合わせに出掛け、その帰りにミンヒョン産業近くまで
一人でやってきてしまった
その連絡を受けた俺は、彼女が待っていると言うカフェに急いで向かった
確かこの場所は・・・以前ミン・ヒョリンと出くわした場所じゃなかったか?
そう思い扉を開けた俺は、彼女があの時と同じようにミン・ヒョリンと話をしている現場に出くわした
『あら・・・シン・チェギョンさん、結婚して気が緩んだのかしら?
そんなに太っちゃって・・・』
確かに今の彼女は少し太ったとしか見えないだろう。彼女の作ったマタニティーウエアは妊婦を感じさせない
物だった。その上椅子に腰掛けている彼女は、そのふっくらとした腹部がテーブルの影になって
妊婦には到底見えないだろう
俺は彼女がミン・ヒョリンにどう対処するのか黙って見ていた。妊娠したことが彼女にどう作用したのかを
知りたかった
『くすくす・・・そうね、幸せ太りかしら~♪』
くっ・・・なかなか言うな。チェギョン・・・
『あなたのデザインした洋服、かなりの人気みたいだけど・・・どう?私の衣装を作ってみない?
あなたにとって損な話じゃないと思うわ。
たかだかこの国で人気があったとしても、そんな人気いつまで続くか解らないわ。
私の衣装を手掛けたら・・・世界に名が轟くのよ。あなたにとっても悪い話じゃないでしょう?』
っつ・・・チェギョン挑発に乗るな。ヒョリンの罠かもしれない。それにミン貿易はシン・アパレルファッションとの
契約をキャンした企業だ。今回のキャンセルでかなりの損害も負った筈だ。絶対何か企んでいるに違いない
二人に向かって一歩足を踏み出した時、彼女の口から意外な言葉が放たれた
『そうね・・・人気なんていつまで続くか解らない。
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舞台衣装は専門分野外だし、それに私・・・何かと忙しいの。』
『なっ・・・』
ミン・ヒョリンの顔色が変わった。俺は踏み出したまま止めていた足を再び進め、二人の間に割って入った
彼女がミン・ヒョリンに掴みかかられでもしたら大変だ
夫としての防衛本能なのか・・・それとも父親としての防御本能なのか解らないが、俺は彼女の前に立ち
ミン・ヒョリンと向き合った
『ヒョリン・・・俺の妻に何をしようと言うんだ?』
『シン・・・あなたの奥様って、本当に融通が利かないのね。あなた達がいつ別れるのか・・・私は楽しみだわ。』
別れる?くっ・・・何を馬鹿な事を言っている?今俺達は一番熟している時期だ。俺はヒョリンに冷笑を送り
口角を上げ現実を突きつけようとした瞬間・・・背後にいる彼女の声が響いた
『う~~ん、それは困るわ。シン君と別れたら・・・この子を父親の無い子にしちゃうもの~♪』
椅子から立ち上がったチェギョンは、誇らしげにお腹を突きだして見せた
そしてわざわざ両手でお腹を持ち上げる仕草をし笑っている
『あ・・・あなた達・・・』
『そう・・・もう俺達は親になるんだ。』
キッと悔しそうな視線をヒョリンは俺達二人に向け、それから背を向けるとそそくさとカフェから去って行った
彼女を見ると誇らしげに俺に微笑みかけている
『妊婦って解らなかったみたいね。ミン・ヒョリンさん・・・』
『あぁそうだな。』
『今日はメイクもばっちりだし、これからお買い物して帰るわ~♪』
オイ・・・そんな可愛い格好でどこに行くつもりなんだ?俺はまだ会議が残っているんだ・・・一緒に帰れない
『チェギョン・・・しばらく母さんとお茶でも飲んで待っていたらどうだ?』
『お義母様は今日お出かけだも~ん♪』
『じゃあ…副社長室で会議が終わるまで待っていてくれ。』
『シン君の会議って二時間とか待たされるもん。その間にお買い物できるも~~ん♪
シン君の顔を見に寄っただけだから、もう行くわ。』
待ってくれ・・・心配で敵わない。一人で買い物になど行かせたくない・・・俺のそんな思いを振り払うかのように
彼女は手を振るとバス停に向かって歩く
彼女の乗りこんだバスを見送ってから、俺は早足で会議室に向かった
遅刻だ。会議に遅刻してしまった
だが会議が終われば終業時間になるだろう。早く家に帰りたい・・・俺はもうすっかりチェギョン命の夫に
なってしまったようだ
独身時代の自由と気ままさを満喫していた俺は、一体どこに行ってしまったのだろう
本日の花≪多肉植物・桜吹雪≫
では~週末は【マジカル・多肉通信】および【ふぅめる通信】をお送りいたします❤
お話の更新は月曜日まで待っていてね♪