ギョン君とガンヒョンの家を訪れた帰りの車中・・・私の頭の中にはギョン君の言った言葉が
何度もこだまする
≪そうだよね~~。シンは結婚なんか当分したくないって言っていたし、
確かにお相手にも困らなかったし・・・≫
うん。解ってた。彼がものすごくモテる人だって事は・・・私だって解ってた。
だけど親友のギョン君があんなにはっきり言うほどだったの?
私の心の中にまた不安が渦巻いて行く
父と何か取引があったんじゃないかとか・・・そんなつまらないことが心の中を支配し
彼の気持ちまで偽りなんじゃないかとか思えてきてしまう
大体・・・結婚相手の過去を気にするなんて最低でしょう?
見えない相手に嫉妬するなんて醜いわ私・・・
あぁダメっ!こんなこと考えていちゃあ・・・
心の中に重しが載った気分・・・知らず知らず私は溜息を吐いたらしい
『はぁっ・・・』
自分でも驚くほどの大きな溜息に、私は心臓が跳ね上がらんばかりの想いで恐る恐る彼に視線を向けた
『どうしたんだ?そんな大きな溜息吐いて・・・』
『えっ?いや・・・別に・・・なにも・・・』
こう言う時にはっきりとした言葉が出て来ない私は、やっぱり恋愛不適合体質なのかも。
ただ一人でいじけて悶々としちゃう意気地無しの私。
自分でも無意識のうちに何度も溜息を吐いていたみたい。見兼ねた彼は苦笑しながら問い掛けてきた
『チェギョン・・・何か俺に言いたい事があるんじゃないのか?』
『えっ?あ・・・うん。少しだけね・・・』
『少しだけって数の溜息じゃないぞ。くくっ・・・はっきり言ったらどうだ?』
『う・・・うん。あのね、今までお付き合いして来た人とか、ちゃんと清算出来ているのかなって。
ほら・・・結婚してから≪彼を返して≫とか言われたら困るでしょ?』
『つまり俺に女がいたと?』
『あ・・・だって結婚相手には困らないって聞いていたし・・・』
一生懸命平常心で問い掛けたつもりだった。だけど彼はそんな私を笑ったの。
『くっ・・・ギョンの言った事を真にに受けているようだな。』
『えっ?いや・・・そんなことないけど・・・』
『はっきり言うべきだったな。結婚を前提に付き合った女性など今まで一人もいない。』
『えっ?・・・そうなの?』
『見合いの時は断りたくてああ言っただけだ。はっきり言っておくが、一緒に暮らしたいと
思った女性は・・・君が初めてだ。』
『私が・・・初めて?』
『あぁ。だから≪まだ結婚する気はない≫という自分の信念さえも曲げたんだ。
そこまで言えばわかるだろう?』
『うん♪』
単純な私・・・結婚したいと思った女性が私以外いなかったと聞かされただけで、心の霧はすっかり晴れていく
もちろん彼も私と同じ年齢。先に誕生日を迎えている彼はもう30歳になっている
その間に女性との交友関係が無いなんて考えられない。でもそんな事まで疑ったらキリが無い
今彼は正真正銘私を愛してくれている。それだけで十分だ。
それに・・・彼にも初めてのものがあったと聞き、私はとても嬉しくなった。
結婚が決まってからというもの、休日は特に忙しくなった私達
次の日曜日には彼と両家の母の四人で婚礼衣装を選びに行った。
まず私を迎えに来た彼は助手席に私を乗せイ家に向かい、その後シン家へと向かった
全員揃ったところでこの界隈でも有名なブライダルショップを訪れた
はぁ・・・デザイナーデビューが出来ていたら、一世一代の晴れ舞台の衣装くらい自分でデザインしたかったのに
もう時間もない既製品で間に合わせるしかないわ
あまりの眩しさにその場に居るだけで目が眩みそうなウェディングドレスの数々
そんなに純白を強調しなくてもいいのに・・・そんな事を心の中で毒づきながらも、ここのドレスを身につける人で
本当に真っ白な人はどれだけいるのだろうと、妙な事に考えが及んでしまう
私だけだったらどうしよう・・・
でも、逆の立場で考えたら、彼は私に男性の影が無いから安心ねと思う。
『チェギョン・・・これ、すごく素敵だわ。』
不意に母に話しかけられ、母の指示したドレスに目をやると・・・あの財界のパーティーで着せられた
ドレスと同じデザイナーの物だった
『お・・・お母さん、これ・・・派手じゃない?』
なんのことはないあのパーティーのドレスの純白バージョン?胸元にパールをあしらってはいるけど
肩は丸出しのドレスの裾だってフロントミニよ。お母さん・・・私の年齢考えて!
結婚式には皆が来るのよ!!
ところが彼のお母様が感嘆の声を上げ母に同調してしまったの
『あんらぁ~~♪これはあの時のドレスとほとんど同じデザインね。
ドレスの裾はさすが婚礼衣装らしく長いけど。チェギョンさん・・・これ試着して♪』
えっ?彼のお母様までそんな事を言うの?
『でもおば様・・・これ、肩丸出しで、婚礼衣装として見たら少し行きすぎじゃありませんか?』
『や~ね~!婚礼衣装は一生に一度の物よ。どれだけ派手だって構わないわ。
それに肩はベール被っちゃうから目立たなくってよ♪おほほほほ~~♪』
『そうよね~?ミンさん。この子ったらセンスが地味すぎるんです。いいからチェギョン着て来なさい!』
私は自分の意見を言う隙も与えられない
さりげなく彼にヘルプを求めてみるも・・・
『大丈夫。きっと似合う。』
そう言われ送りだされてしまったフィッティングルーム。
係の女性に着替えを手伝って貰い、私はそのウェディングドレスを身に纏った
サイズもぴったり。お直しの必要もない。でもどうしても気になる肩口と曝け出される脚
私が不安そうな顔をするのに気がついたのか、係の女性は髪をアップにしその髪に長いベールを取り付けた
すると不思議・・・肩のあたりが丸出しなのが気にならないし、パールホワイトのハイヒールを履かされたら、
フロントミニも気にならない・・・一気に花嫁さん気分になっちゃう♪
『いかがでしょうか?』
カーテンを開けられ三人の前に花嫁さん予行練習の私が現れると、両家の母は満面の笑みで私を見つめ
シン君はまるで眩しい物を見るかのように切れ長の目を細めた
『これで決まりじゃない?』
『もぉ~とっても似合ってて溜息が出ちゃうわ。ね?シンもそう思うでしょう?』
シン君は少し視線を俯き加減にし
『そうですね。これで決まりでしょう。』
とだけ・・・ポツリと呟いた。
シン君のその一言で私の気持ちも決まった。私はそのドレスに自分が一番気に入ったベールをチョイスし
挙式の衣装を決めた。
そのあともあ~でもないこ~でもないと四人で検討しながら、色ドレスを選び・・・
シン君のタキシードはまるでついでの様に、私の衣装と似合う物を用意された
着々と結婚準備が進んでいく・・・購入した家具などは既に新居に配置されている
私はシン君と一緒じゃない時でも、新居に赴き新しい食器などを紐解いている
ここで始まる新生活に胸を膨らませながら、私の毎日は過ぎて行った
本日の花≪マリーゴールド≫
金曜深夜に起こった恐怖の事件から
なかなか立ち直れないアタクシ・・・
電気消して眠れません。
ひ~~ん・・・