毛布を被り玄関先で座りこんでいた彼女。俺は鍵の掛かっていなかった玄関と彼女のその状態に驚き
その場に座り込むと彼女に問い掛けた
『チェギョンさん、一体何があったんだ?なぜこんな場所に居る?』
『えっ・・・?』
彼女はだるそうに顔を上げると、ぼんやりした口調で答えた
『インターフォンが・・・何度も鳴ったから・・・出ようと思ってここまで這ってきたの・・・
えっ?どうしてシンさんが、ここに居るの?』
『君の会社で風邪をひいたって聞いて来てみたんだが、鍵が掛かってなかった。』
『えっ・・・ホント?・・・・あぁ・・・昨日から体調悪くて、鍵かけ忘れたのかな・・・』
『物騒だろう?女性の一人暮らしで、一晩中鍵が開いていたなんて!!』
なぜこんな責めるような言い方をしてしまうのだろう。そんな自分に戸惑いながらも、彼女に大変なことが
起きていたわけじゃない事に安堵する
『うん・・・確かに物騒だね。でも態々私の部屋を狙うなんて・・・そんな物好き居ない。』
『熱は?薬は飲んだのか?』
『熱?良く解らない・・・とにかくだるくって・・・。薬?飲んでない。丈夫だから薬なんかない。』
彼女の額に手を伸ばし触れてみる。明らかに高熱と呼べる熱さだ
『病院に連れていく。立てるか?』
『えっ?病院?・・・あ・・・昨日お化粧落としてない。お化粧するから待ってて・・・
髪もぼさぼさ・・・』
『なにをわけのわからない事を言ってるんだ?化粧なんか残っていない。それに病院に行くのに化粧なんか
する必要はない!』
『えっ・・・でも・・・』
俺は彼女の部屋の中に上がりソファーの下に落ちていたジャケットを手に持つと、そこに置いてあった
彼女のバッグを持ち玄関先に戻った
そして彼女が被っていた毛布を取りジャケットを着せた
俺が推測する所によると、彼女は恐らく昨日帰宅して上着だけ脱いでそのまま眠ってしまったのだろう
『病院行くぞ。』
『でも・・・髪がぼさぼさ・・・』
この期に及んで何を言ってるんだ。俺は腹立たしく思いながらも、両手を彼女の髪に差し入れ梳いてやった
俺はなんていい奴なんだ・・・
『これで大丈夫だ。さぁ・・』
『うん・・・』
力の入らない彼女の体を支え、彼女から鍵を預かり部屋から出ると俺は彼女を支えながら歩いた
よほど抱き上げてしまった方が楽だと思ったが。さすがにそれはやり過ぎだろう
時間がかかりながらも彼女を俺の車まで連れていった
なんて・・・世話の焼ける奴・・・
というか、世話を焼いている自分が信じられない
とにかく強盗に遭ったとか・・・そんな事件が彼女の身に起きていたんじゃなくて良かった
俺は部下に連絡を入れ≪急用で直帰する≫旨を告げると、俺は思い当たる近所の病院に向かった
彼女の発熱の原因は医師も首を傾げるものだった。喉も赤くない。血液検査の結果も異常ない
ひとまず解熱剤を注射して貰い、再び車に彼女を乗せマンションに戻った
ぐったりと窓に頭を凭れ目を閉じている彼女・・・信号待ちの時そっと手を伸ばしその首に触れると
まだ熱は高いままだった
≪あの医者ヤブじゃないのか?≫なにに対してなのか解らないが、彼女と関わるとイライラしたり安堵したりの
繰り返しだ
途中テイクアウトできるお粥の店に寄り、俺は恐らく昨晩から何も食べていないだろう彼女にお粥を調達した
そして彼女のマンションに向かって車を走らせた
その途中で彼女がふっと・・・思い付いた様に俺に顔を向けた
『シンさん・・・明日で一カ月。約束は守るから明日・・・最後にお茶飲んで・・・』
一カ月?なんの事だ?俺は必死にその一カ月前を思い出し、彼女との約束が何だったのかを手繰り寄せた
あぁ・・・初めて逢った日に交わした約束の事か。あぁ?三か月って言ってなかったか?
『明日?明日逢うなんて無理だろう?』
『えっ・・・じゃあ今日で・・・終わり?』
『いや、俺は三か月かと思っていたが?』
『ホント?あと二カ月・・・付き合って(る振りして)もらえるの?』
『あぁ。どうせ乗り掛かった船だしな。』
『ありがとう・・・』
彼女は今日初めて聞く生き生きとした声で礼を言い。再び目を閉じた
なにが乗り掛かった船だ。早く降りることを望んでいたのに・・・いつからこうなった?
何よりも自分のこの奇怪な行動が理解できず、俺は非常に混乱していた
その日は彼女を送り届け、テーブルの上にお粥を置き彼女を寝かしつけた
買って来たデザートも冷蔵庫にしまい・・・なぜ俺はこんなにも彼女の世話を焼いているんだ?と我に返り
慌てて彼女のマンションを立ち去った
高熱を出して寝込んでいた彼女・・・驚いた事に翌朝、その彼女から電話が入る
『知恵熱だったみたい~♪』と明るい声が電話の向こうから聞こえた
確かに熱は相当高かった。一体何なんだよ・・・俺は彼女の不思議さに頭を抱えるばかりだった
それから彼女とは週に一度食事をするようになった
呼び方も彼女はシン君と呼ぶようになり、俺はチェギョンと呼び捨てするようになった
彼女と食事の約束した日・・・俺は彼女を車に乗せ食事に向かう途中、彼女に問い掛けた
『チェギョン・・・君の夢ってなんだ?』
『私の夢?・・・う~~ん・・・ものすごく大好きな人から、ものすご~~く愛されて
大恋愛の末、寿退社♪』
『はぁ?』
『笑っちゃうよね。ずっとそう思ってこの年になっちゃったの。きっと男性運が無いのよ私・・・』
いや、決してそうじゃないと思う。彼女は出逢いがあってもそれを確実にモノにできないタイプだ
大恋愛の末結婚?夢見る夢子さんなんだな・・・くくっ・・・
だがそう思いながらも、もう彼女の事を馬鹿にした感情で見る事はなくなっていた俺だ
随分毒されたものだ
『あ・・・ちょっと友人宅に届け物があるんだ。ちょっと立ち寄っても構わないか?』
『うん。大丈夫だよ。』
俺は友人の住むマンションの駐車場に車を乗り入れ、後部座席から荷物を降ろすと車から降りようとした
『シン君・・・ここにお友達が住んでいるの?』
『あぁ。ずっと大学まで一緒だった親友が。ここに住んでいるんだ。』
『何号室?』
『707だ。』
『えっ?チャン・ギョン君?』
『あぁ?なぜ・・・?』
『私・・・彼のお嫁さんと親友なの~♪』
『本当か?』
『うん。大学も一緒だったの。この間も・・・出産祝いを送ったばかり。』
『だったら・・・一緒に行こう。』
『えっ?でも・・・私達が揃って一緒に行ったら、二人が変に思うわ。』
『別に友達だって言ったらいい。』
『そうだね・・・実は赤ちゃんの顔、見たかったんだ♪』
俺達はそのマンションの707号室に向かって行った。まさか彼女とギョンの嫁さんが親友だったなんて驚きだ。
インターフォンを鳴らすとギョンとガンヒョンは生まれたばかりの赤ん坊を抱き、俺達を出迎えた
もちろん・・・面識のない筈の俺達が、なぜ知り合ったのか・・・交互に追及されたが俺達は互いに言葉を濁した
どうしても食事をして行って欲しいと言うガンヒョンの言葉を無碍にも出来ず、俺達はチャン家で夕食をご馳走に
なる事にした
『あ~~チェギョン!、今・・・食事の支度済ませちゃうから、悪いけど上のユニを寝かしつけてくれる?
ユニ・・・アンタに懐いているでしょ?』
『うん。解ったよ~~♪』
『アンタ最近・・・全然遊びに来てくれないじゃない。下の子が生まれても顔も見せないで・・・』
『ごめんね~ガンヒョン。仕事が忙しかったのよ。』
彼女はギョンとガンヒョンの第一子ユニを隣室に連れていくと、ユニのベッドサイドで絵本を読み始めた
それから小さく優しい声で子守唄を歌い、ユニを寝かしつける事に成功したようだ
チャン家での楽しい語らいと食事を済ませた俺達は。二人に礼を言いチャン家を後にした
帰り際ギョンの奥さんのガンヒョンが、チェギョンに≪また近々遊びに来てね。≫と言った時・・・
なぜか彼女は悲しそうに頷いていた
彼女をマンションまで送りながら俺は彼女に問い掛ける
『チェギョン・・・なぜ最近ギョンの家に遊びに行ってあげないんだ?出産祝いも送っただなんて・・・』
『う~~ん。あのね・・・あの家に行くと帰るのが嫌になるのよ。あの家ってすごく温かいでしょ?
すごく幸せそうでしょ?居心地がよくって・・・家に帰った時がものすごく寂しいの。その寂しさを感じるのが嫌で
遊びに行けなくなっちゃった・・・』
『そうか・・・』
確かにあの家に遊びに行った後は寂しくなるのもわかる気がする
29歳・・・確かに女性にとっては揺れ動く年齢かもしれない
俺はチェギョンの置かれている状況が、段々自分の事の様に思えて来てしまっていた
その場に座り込むと彼女に問い掛けた
『チェギョンさん、一体何があったんだ?なぜこんな場所に居る?』
『えっ・・・?』
彼女はだるそうに顔を上げると、ぼんやりした口調で答えた
『インターフォンが・・・何度も鳴ったから・・・出ようと思ってここまで這ってきたの・・・
えっ?どうしてシンさんが、ここに居るの?』
『君の会社で風邪をひいたって聞いて来てみたんだが、鍵が掛かってなかった。』
『えっ・・・ホント?・・・・あぁ・・・昨日から体調悪くて、鍵かけ忘れたのかな・・・』
『物騒だろう?女性の一人暮らしで、一晩中鍵が開いていたなんて!!』
なぜこんな責めるような言い方をしてしまうのだろう。そんな自分に戸惑いながらも、彼女に大変なことが
起きていたわけじゃない事に安堵する
『うん・・・確かに物騒だね。でも態々私の部屋を狙うなんて・・・そんな物好き居ない。』
『熱は?薬は飲んだのか?』
『熱?良く解らない・・・とにかくだるくって・・・。薬?飲んでない。丈夫だから薬なんかない。』
彼女の額に手を伸ばし触れてみる。明らかに高熱と呼べる熱さだ
『病院に連れていく。立てるか?』
『えっ?病院?・・・あ・・・昨日お化粧落としてない。お化粧するから待ってて・・・
髪もぼさぼさ・・・』
『なにをわけのわからない事を言ってるんだ?化粧なんか残っていない。それに病院に行くのに化粧なんか
する必要はない!』
『えっ・・・でも・・・』
俺は彼女の部屋の中に上がりソファーの下に落ちていたジャケットを手に持つと、そこに置いてあった
彼女のバッグを持ち玄関先に戻った
そして彼女が被っていた毛布を取りジャケットを着せた
俺が推測する所によると、彼女は恐らく昨日帰宅して上着だけ脱いでそのまま眠ってしまったのだろう
『病院行くぞ。』
『でも・・・髪がぼさぼさ・・・』
この期に及んで何を言ってるんだ。俺は腹立たしく思いながらも、両手を彼女の髪に差し入れ梳いてやった
俺はなんていい奴なんだ・・・
『これで大丈夫だ。さぁ・・』
『うん・・・』
力の入らない彼女の体を支え、彼女から鍵を預かり部屋から出ると俺は彼女を支えながら歩いた
よほど抱き上げてしまった方が楽だと思ったが。さすがにそれはやり過ぎだろう
時間がかかりながらも彼女を俺の車まで連れていった
なんて・・・世話の焼ける奴・・・
というか、世話を焼いている自分が信じられない
とにかく強盗に遭ったとか・・・そんな事件が彼女の身に起きていたんじゃなくて良かった
俺は部下に連絡を入れ≪急用で直帰する≫旨を告げると、俺は思い当たる近所の病院に向かった
彼女の発熱の原因は医師も首を傾げるものだった。喉も赤くない。血液検査の結果も異常ない
ひとまず解熱剤を注射して貰い、再び車に彼女を乗せマンションに戻った
ぐったりと窓に頭を凭れ目を閉じている彼女・・・信号待ちの時そっと手を伸ばしその首に触れると
まだ熱は高いままだった
≪あの医者ヤブじゃないのか?≫なにに対してなのか解らないが、彼女と関わるとイライラしたり安堵したりの
繰り返しだ
途中テイクアウトできるお粥の店に寄り、俺は恐らく昨晩から何も食べていないだろう彼女にお粥を調達した
そして彼女のマンションに向かって車を走らせた
その途中で彼女がふっと・・・思い付いた様に俺に顔を向けた
『シンさん・・・明日で一カ月。約束は守るから明日・・・最後にお茶飲んで・・・』
一カ月?なんの事だ?俺は必死にその一カ月前を思い出し、彼女との約束が何だったのかを手繰り寄せた
あぁ・・・初めて逢った日に交わした約束の事か。あぁ?三か月って言ってなかったか?
『明日?明日逢うなんて無理だろう?』
『えっ・・・じゃあ今日で・・・終わり?』
『いや、俺は三か月かと思っていたが?』
『ホント?あと二カ月・・・付き合って(る振りして)もらえるの?』
『あぁ。どうせ乗り掛かった船だしな。』
『ありがとう・・・』
彼女は今日初めて聞く生き生きとした声で礼を言い。再び目を閉じた
なにが乗り掛かった船だ。早く降りることを望んでいたのに・・・いつからこうなった?
何よりも自分のこの奇怪な行動が理解できず、俺は非常に混乱していた
その日は彼女を送り届け、テーブルの上にお粥を置き彼女を寝かしつけた
買って来たデザートも冷蔵庫にしまい・・・なぜ俺はこんなにも彼女の世話を焼いているんだ?と我に返り
慌てて彼女のマンションを立ち去った
高熱を出して寝込んでいた彼女・・・驚いた事に翌朝、その彼女から電話が入る
『知恵熱だったみたい~♪』と明るい声が電話の向こうから聞こえた
確かに熱は相当高かった。一体何なんだよ・・・俺は彼女の不思議さに頭を抱えるばかりだった
それから彼女とは週に一度食事をするようになった
呼び方も彼女はシン君と呼ぶようになり、俺はチェギョンと呼び捨てするようになった
彼女と食事の約束した日・・・俺は彼女を車に乗せ食事に向かう途中、彼女に問い掛けた
『チェギョン・・・君の夢ってなんだ?』
『私の夢?・・・う~~ん・・・ものすごく大好きな人から、ものすご~~く愛されて
大恋愛の末、寿退社♪』
『はぁ?』
『笑っちゃうよね。ずっとそう思ってこの年になっちゃったの。きっと男性運が無いのよ私・・・』
いや、決してそうじゃないと思う。彼女は出逢いがあってもそれを確実にモノにできないタイプだ
大恋愛の末結婚?夢見る夢子さんなんだな・・・くくっ・・・
だがそう思いながらも、もう彼女の事を馬鹿にした感情で見る事はなくなっていた俺だ
随分毒されたものだ
『あ・・・ちょっと友人宅に届け物があるんだ。ちょっと立ち寄っても構わないか?』
『うん。大丈夫だよ。』
俺は友人の住むマンションの駐車場に車を乗り入れ、後部座席から荷物を降ろすと車から降りようとした
『シン君・・・ここにお友達が住んでいるの?』
『あぁ。ずっと大学まで一緒だった親友が。ここに住んでいるんだ。』
『何号室?』
『707だ。』
『えっ?チャン・ギョン君?』
『あぁ?なぜ・・・?』
『私・・・彼のお嫁さんと親友なの~♪』
『本当か?』
『うん。大学も一緒だったの。この間も・・・出産祝いを送ったばかり。』
『だったら・・・一緒に行こう。』
『えっ?でも・・・私達が揃って一緒に行ったら、二人が変に思うわ。』
『別に友達だって言ったらいい。』
『そうだね・・・実は赤ちゃんの顔、見たかったんだ♪』
俺達はそのマンションの707号室に向かって行った。まさか彼女とギョンの嫁さんが親友だったなんて驚きだ。
インターフォンを鳴らすとギョンとガンヒョンは生まれたばかりの赤ん坊を抱き、俺達を出迎えた
もちろん・・・面識のない筈の俺達が、なぜ知り合ったのか・・・交互に追及されたが俺達は互いに言葉を濁した
どうしても食事をして行って欲しいと言うガンヒョンの言葉を無碍にも出来ず、俺達はチャン家で夕食をご馳走に
なる事にした
『あ~~チェギョン!、今・・・食事の支度済ませちゃうから、悪いけど上のユニを寝かしつけてくれる?
ユニ・・・アンタに懐いているでしょ?』
『うん。解ったよ~~♪』
『アンタ最近・・・全然遊びに来てくれないじゃない。下の子が生まれても顔も見せないで・・・』
『ごめんね~ガンヒョン。仕事が忙しかったのよ。』
彼女はギョンとガンヒョンの第一子ユニを隣室に連れていくと、ユニのベッドサイドで絵本を読み始めた
それから小さく優しい声で子守唄を歌い、ユニを寝かしつける事に成功したようだ
チャン家での楽しい語らいと食事を済ませた俺達は。二人に礼を言いチャン家を後にした
帰り際ギョンの奥さんのガンヒョンが、チェギョンに≪また近々遊びに来てね。≫と言った時・・・
なぜか彼女は悲しそうに頷いていた
彼女をマンションまで送りながら俺は彼女に問い掛ける
『チェギョン・・・なぜ最近ギョンの家に遊びに行ってあげないんだ?出産祝いも送っただなんて・・・』
『う~~ん。あのね・・・あの家に行くと帰るのが嫌になるのよ。あの家ってすごく温かいでしょ?
すごく幸せそうでしょ?居心地がよくって・・・家に帰った時がものすごく寂しいの。その寂しさを感じるのが嫌で
遊びに行けなくなっちゃった・・・』
『そうか・・・』
確かにあの家に遊びに行った後は寂しくなるのもわかる気がする
29歳・・・確かに女性にとっては揺れ動く年齢かもしれない
俺はチェギョンの置かれている状況が、段々自分の事の様に思えて来てしまっていた
本日の花『ムスカリ』
じゃあ明日はチェギョンsideで参ります~♪
明日のお花は・・・きっと『マジカルキューティー』ちゃん♪
じゃあ明日はチェギョンsideで参ります~♪
明日のお花は・・・きっと『マジカルキューティー』ちゃん♪