ワールド遊園地のメリーゴーランドの前で、シンが去っていく後姿を見送りながら
チェギョンは小さく溜息を吐いた
(はぁ・・・なぜ逢う度にあんなにカッコいいの?しかも親切だし・・・こんなことじゃ心の整理なんかできやしない。
気を取り直してメリーゴーランドの担当者にチェギョンは挨拶をした
『こんにちは~♪メリーゴーランドの担当になりました、デザイン部のシン・チェギョンです。よろしくお願いします。』
『あなたのような若いお嬢さんが?』
『はい。まだなりたての新入社員です。』
『そうか~。このメリーゴーランドも老朽化しているからね。すごく素敵なのを作ってくれよ。』
『はい!頑張ります♪』
本音を言うと遊具のデザインなど勉強したことも無い
ただ自分が幼い頃これに乗って胸をときめかせたように・・・これに乗った子供たちに
素敵な思い出を残してあげたい
メリーゴーランドが運転していない時を見計らい、チェギョンはすっかり古びてしまった馬車や馬を
細部にわたって点検し、そして自分の中の想いを膨らませて行った
(馬や馬車もいいけど・・・そうだなぁ・・・このメリーゴーランドにふさわしいキャラクターを考えて
それを乗り物にしたらどうだろう?
馬の部分はもっと高く上昇するような・・・そうだ!空を飛ぶニャンボみたいなイメージで~~♪)
チェギョンは馬の下に潜り込み、大体どのくらいの高さまで上昇が可能か思案していた
そこに挨拶を終えたシンが顔を出し、スーツ姿で馬の下に潜り込んでいる様子に仰天する
『シン・チェギョンさん!一体何をしているんだ?』
『あ・・・代表。ご挨拶は終了したのですか?』
『あぁ。そっちはどうだ?』
『なんとなくイメージが浮かんできました~♪』
『そうか。じゃあ戻ろうか。』
『はい。』
チェギョンはシンと共にメリーゴーランドの担当者に挨拶をし、ワールド遊園地を後にする
そして車に向かいながらシンはチェギョンに苦言を呈した
『さっきのはあまりいただけないな・・・』
『えっ?いただけないとは?』
スーツ姿で遊具の下に潜り込むなんて・・・。男性客がガン見していたぞ。』
『えっ?それは珍しいものを見たからでしょう~♪』
『違うっ!スカート姿であんな格好になるなんて・・・あまりに無防備だ。』
『あ~すみません。デザイン部の先輩たちがラフな格好をしている理由がわかりました。』
『ったく・・・そうだ!君は直帰していいんだよな?』
『はい。』
『良かったら食事に付き合ってくれ。』
『えっ?食事に?(あぁぁ益々思い出が増えちゃうじゃん…)』
そう思っても恋焦がれた人の誘いを断ることなどできず、チェギョンは戸惑いながらも頷いた
『私でいいんですか?』
『あぁ。帰国してから外食などしていないから、いい店に案内してくれ。』
とはいっても・・・チェギョンの好んでいく店に、シンを案内できる筈もない
『あ・・・はい。』
戸惑っている間にシンはどこかに電話をかけ始めた
『母さん?シンです。今ワールド遊園地なのですが、チェギョンと一緒なんです。
折角なので食事して帰ります。
えっ?あ・・・そうですか。わかりました。家に戻ります。』
電話を切ったシンは少し不機嫌そうな溜息を吐いた
『今のおば様だったんですか?』
『チェギョン・・・もういいよ。誰も聞いていない。無礼講でいこう。』
『うん。おば様・・・お元気?』
『チェギョンと食事して帰ると言ったら、家に連れて来いって・・・』
『えっ?』
『俺だけ独り占めするのは許せないって。くくっ・・・すまないな。家で食事しよう。』
『う・・・うん。』
イ家に遊びに行けるのはとても嬉しい
だがチェギョンは、益々自分の気持ちに整理がつかなくなりそうで・・・
シンが帰国してきてからも、変わらず優しく接してくれるシンの両親を少し恨めしく思った
(手のひらを返したように、私に連絡がなくなればよかったのに・・・)
そうなったらそうなったで寂しいのはわかっている
だがチェギョンはなかなか断ち切ることのできない恋心に苦しんでいた
イ家に到着した二人・・・
ミンは満面の笑みでチェギョンを出迎えてくれた
『チェギョンちゃ~~ん♪久し振りじゃないのよぉ~~!』
『あ・・・おば様、すみません。入社準備とか忙しくって~~♪』
『そうでしょうとも~今日は入社式だったんでしょう?あら♪素敵なスーツをお召しじゃないの~。
えっ?ちょっと汚れているわ。一体どうしたの?』
チェギョンは玄関の外で慌ててスカートを手で払いう汚れを落とした
『あっ・・・すみません~~~!』
スーツが汚れている理由については、シンが代弁した
『チェギョンは遊園地のメリーゴーランドの担当になったんですよ。それで今日はメリーゴーランドの下に
潜り込んでいたものですから、汚れて当然です。くくっ・・・』
『まぁ~女の子がそんなことを?主人に文句言ってやろうかしら。』
『おば様・・・これはお仕事ですから~♪でも明日からはパンツスタイルで出勤することにします。』
『そ~よ~それがいいわ。さっ♪チェギョンちゃん上がって頂戴。』
『お邪魔します。』
リビングでお茶を飲んでいる間に、イ・グループ会長のヒョンが帰宅し四人は食事を摂り始めた
『チェギョンちゃん…入社一日目はどうだった?』
『とても楽しかったです。メリーフォーランドのデザインを、まさか新入社員の私に任せていただけるとは
思ってもみませんでした。』
『いいアイデアは浮かんだかね?』
『はい。ワールド遊園地のイメージキャラクターになり得るデザインを作り出したいと思っています。
メリーゴーランドは老若男女問わず楽しめる遊具です。
今ある馬の部分がもっと高く上がるデザインにしたいと考えているんです。』
『そうか。それは楽しみだな。』
目を輝かせ仕事への意欲を見せるチェギョンに、イ家の家族三人は笑顔を浮かべた
『そうよチェギョンちゃん♪高く飛ぶっていったら兎よ。兎がぴょんぴょん跳ね回って、亀が地べたを這いつくばる・なんてどうかしら~?』
母のそんな呆れ果てた発言に、シンは困惑顔で呟いた
『母さん・・・そんなシュールな遊具、子供だって乗りたくないですよ。』
『あら~~~ボツかしら?おほほほほ~~!』
ミンの豪快な笑い声に釣られ、他の三人もお腹を抱えて笑うしかなかった
今まではシンがいなかった
だがガシンが帰国してきてからも、この場所の居心地よさは変わらない
(はぁ・・・これに慣れちゃったら、離れるのがすごく辛そうだなぁ・・・)
笑顔の裏で苦悩するチェギョンだった
寒暖差が激しくて・・・抜かった。
私・・・風邪ひきました~~!
昨日の夕方から急に咳が出始め
今日は声が出ないですぅ・・・
皆様もどうぞ気を付けてくださいね。
明日は・・・唯一生き残ったマジカルちゃんを
お見せいたしますよ~~(号泣)