大学三年になって・・・その年の夏休みも、シン君の帰国とサークルの合宿が重なった私は
彼に逢うことができなかった
夏休みが終わりそろそろ就職の事を考えていた私に、イ家のおば様から連絡が入った
街で偶然再会して以来、私はおば様のお話し相手になっている
お話し相手といっても、別段気を遣うこともなく・・・普通に大学で起こった話などを面白おかしく
話しているだけで・・・その都度私は豪勢な食事をご馳走になっていた
その日はおじ様も帰宅なさっていて、長年の友人のように私をもてなしてくれた
美味しい料理を頂きながら、おじ様は驚くべき打診を私にしてくる
『そう言えばチェギョンちゃんは、そろそろ就職を考える時期じゃないのかね?』
『そうなんですおじ様。もう今から胃が痛いですよぉ・・・』
『ははは・・・どういった職種に就きたいんだね?確か芸大の美術専攻だったね?』
『はい。デザイン事務所を受けようと思っています。でも大手はなかなか難しそうで・・・』
『そうか。ワールド遊園地などを手掛けるデザインに興味はあるかね?遊具のデザインや
イベントスペースのデザインなど、なかなか遣り甲斐のある仕事だと思うが。』
『え~~っ?おじ様、ワールド遊園地の遊具のデザインだなんて・・・それこそ大手中の大手です。
とても受かると思えません~~!』
『いや・・・受かるだろう。何の問題もなく・・・』
『無理ですよぉ。』
小さく溜息を吐いた私に、おじ様とおば様は可笑しそうに目を見合わせた
『あら~チェギョンちゃん・・・毎月のように役員面接しているのに落ちるはずないわ。』
『役員・・・面接?はっ!』
まさかと思うけどワールド遊園地はおじ様の会社?
『ははは・・・ワールド遊園地はイ・グループIなんだよ。』
ひえ~~知りませんでした。だからお庭に小さな遊園地があったの~~?
『すみません~~認識不足でした。』
『どうだね?チェギョンちゃん・・・やってみないかね?今は部下に代表を任せているが、シンが帰国したら
代表にはシンが就任する予定だ。エントリーシートを出して貰えるかね?』
『は・・・はい。もちろんです。出させていただきます。
でもぉ・・・茶飲み友達だからって、手を加えないでくださいね。』
『そりゃあもちろん。あまり出来が悪かったら…落とされるぞ。』
『ひぃ~~頑張ります!!』
おば様は満面の笑みで私に言う
『良かったわね~チェギョンちゃん。これで胃の痛くなることはないわ。
後は採用試験に向けて頑張って頂戴ね。』
『はい。もちろん頑張ります~~♪』
でも・・・よく考えてみたら、その採用試験に合格したら私は・・・シン君の部下になるわけね
まぁ少しでも接点があるのは嬉しいけど、代表と新入社員じゃあ立場が違い過ぎるわ~~!
こうして私はイ・グループのデザイン部の採用試験を受け、見事内定を手にした
早々に就職先が決まってしまった私は、四年生になっても焦ることがなく大学とバイトとサークルに
明け暮れる日々を過ごした
四年生の夏も半ば諦めの気持ちがあったけど、シン君との再会は果たせなかった
親友のガンヒョンもチャン航空のデザイン部に就職が決まり、私とガンヒョンは職にあぶれることなく
残り巣yくない大学生活を満喫していたと言える
いや・・・満喫していたのはガンヒョンだけかも
だってガンヒョンには、将来チャン航空を担う熱愛彼氏がいたから・・・
私は相変わらず写真の中のシン君に恋焦がれ、逢える日をひたすら待ち続けている寂しい女だった
卒業が迫ったある日・・・親友のガンヒョンから一通の招待状をもらった
『なに?これ・・・』
『チェギョン・・・アタシ、大学卒業したら早々に結婚することになったのよ。』
『えぇぇぇ~~~~っ・・・』
熱愛中なのは知っていた
でももう結婚するなんて思ってもみなかった
『もちろん祝ってくれるでしょう?』
一番の親友が結婚してしまう寂しさに少し胸を痛めながら、私は満面の笑みを浮かべて頷く
『当然♪私が祝福に行かなくてどうするの♪』
『当日待ってるわ。』
大学の卒業式から数日後・・・私はガンヒョンが挙式をする教会に向かった
寂しさを表面に出さないように、春の暖かさを思わせる黄色のドレスを着て行った
あぁぁ・・・ウエディングドレス姿のガンヒョンはとても綺麗で、いつも一緒におしゃべりしていた
気さくなガンヒョンじゃないみたいだ
まぁお相手がチャン航空の後継者なのだから、気品に溢れた姿になっても当然か
今日から奥様なのか~一緒に居酒屋さんで飲んで騒いだガンヒョン・・・もう誘えないのかもしれないな
友人たちは新郎のお友達を物色していたけど、私はガンヒョンしか見ていなかった
挙式が終わり教会の階段でで新郎新婦を待つ招待客達・・・
私達は其々に小花の入ったかごを持ち、新郎新婦にフラワーシャワーを浴びせた
ガンヒョン・・・すごく幸せそう
良かったねガンヒョン・・・末永くお幸せに・・・
思わず涙が零れてしまった時、その新婦のガンヒョンが私を名指しした
『チェギョン…行くわよ~♪』
ガンヒョンは花嫁のブーケを私に向かって投げた
ブーケトスだ~~♪
これをもらったら次に幸せな花嫁になれるのよね
あっ・・・でもガンヒョン、力入りすぎ~~!花嫁のブーケは私の頭上を通りすぎていく
あぁぁ…幸せってこんな風にして私を通り過ぎていくのね・・・
そう思ってブーケの行方を恨めしそうに見つめていた時、背後に立っていた男性がそれをキャッチした
花嫁のブーケは・・・女性が受け取るものなのに酷い!
私はその男性の顔を睨みつけてやろうと、手に持ったブーケから視線を顔に移動した
えっ・・・
あっ・・・
嘘っ・・・
あまりの衝撃的な出来事にただ立ち尽くしている私に、その人は近づくと花嫁のブーケをくれた
『シン・・・チェギョンだろ?』
『なぜ私の名前を?』
『母からよく写真が送られてきたから。くくっ・・・久し振り。』
いや・・・もうはじめましての気分だ
『う・・・うん。お久し振りイ・シン君。』
四年間写真だけで片想いしてきた人が、今まさに目の前にいる
私は信じられない気持ちだった
でも一体なぜ?ここにいるの?
その答えを彼はくれた
『毎年夏休みに帰国してきた時、チェギョンに逢えなかった理由がやっとわかったよ。
ギョンが彼女と逢えない日を選んで、俺に帰国して来いと言っていたんだな。』
つまりガンヒョンの旦那さんとお友達?
ってことは~私の恋路の邪魔をしていたのはチャン・ギョンか~~~!
『留学中・・・両親が色々世話になった。ありがとう。』
『ううん。とんでもない。こちらこそお世話になってる。』
『デザイン部に入社が決まったって?』
『あ・・・うん。』
『結婚披露パーティーが終わった後、ワールド遊園地に行ってみないか?久し振りに・・・』
『構わないけど・・・代表と新入社員がご一緒しても・・・いいのかな?』
『くっ・・・お互いまだ入社前だ。じゃあ決まりだな。終わったら会場のホテルの前で待っててくれ。』
『うん。』
うんと答えたけど依然私の頭の中は真っ白
心臓なんか今にも口から飛び出しそうだよ
彼と・・・ワールド遊園地に行くんだ
あのメリーゴーランドに乗るんだ
そこから・・・万が一恋が始まったらどうしよう~~~!!
考えただけで気を失いそうな私は、腕に抱いた花嫁のブーケに勇気をもらった
というわけで、ご両親との再会から四年後
漸くシン君に逢えたチェギョンです❤
シン君の気持ちはわかりませんが
遊園地に誘ったくらいだから
脈はありそう~~♪
短編にお付き合いいただきありがとうございました❤