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遠い日の感傷 ≪後編≫

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それから十数年後・・・


『あ~っ!シン君今年もまた女の子に囲まれてる。あぁぁ・・・チョコレート一杯じゃん。
文句言いに行こうかな・・・』
『やめときなチェギョン。あと少しの間は、皇太子との関係はオフレコなんでしょう?』
『あ~そうだった。でもさ…毎年毎年飽きもせず、同じ光景を見せられるこっちの身にもなってよ。
鼻の下伸ばしちゃって・・・ちぇっ・・・』
『アンタ・・・皇太子は鼻の下なんか伸ばしてないわよ。よく見てみなさいよ。迷惑そうでしょ?』

そのチョコレートの向かう先が焼却炉だと知っているチェギョンは、凝りもせず毎年シンに

チョコレートを贈り続ける女子生徒が少し不憫に想えた

シンに初めてチョコレートを贈った年は、シンに受け取って貰えず相当悔しい思いをした

考えたチェギョンは翌年から、わざわざ宮殿に足を運んで皇后にシンが歯科治療受けていないことを

確認した上で、その後東宮に立ち寄り手渡し・・・という特別枠で受け取って貰えるようになった

もちろん・・・チェギョンはシンがそのチョコレートを口に運ぶまで東宮から帰ろうとはしない

従ってシンは翌年から歯科の治療も済んだことで安堵し、チェギョンのチョコレートだけは

≪あまり甘い物は好きじゃないが≫と言いつつ目の前で食べてくれるようになっていた



『さて~今日は宮殿に行かなくっちゃ~♪』

そうこっそり呟いたチェギョンに、傍に控えていたコン内官が話しかけた

『チェギョン様・・・宮殿に行かれるのでしたら、公用車に乗っていかれますか?』

チェギョンはコン内官に向けて首を横に振ると笑顔で答えた

『いいえ。時期が時期ですから目立った行動は控えたいと思います。自力で行きますので・・・』
『さようでございますか。すっかり成長なさいましたね。』

コン内官はそういって目を細めた

無鉄砲で怖いもの知らずだったチェギョンの、人間としての成長を心から喜ばしく思った




放課後・・・チェギョンは自力で宮殿に向かっていた

まずは恒例行事として、東宮に行く前に皇后の元へ挨拶に行く習わしだ

もちろん門番のイギサはチェギョンがぺこりと頭を下げ挨拶をしただけで、その門を開けてくれた

そしてその場に自転車を置き、本殿に急ぐチェギョン・・・

本殿で皇后付きの尚宮にお目通りを願い、チェギョンはすぐ皇后の部屋に案内された

『皇后様~こんにちは♪ご機嫌いかがですか?』
『チェギョンや・・・そなたが今日ここに来るのはわかっておった。』
『それがですね~聞いてくださいよ皇后様。シン君ったら今年も女の子に囲まれて、
チョコレート一杯貰ったんですよ~~!』
『その憐れなチョコレートの行く末は、そなたもわかっておるだろう?』
『解ってはいるんですけど~無性に腹が立って~~!』
『くっ・・・そなたは幼い頃から少しも変わっておらぬな。』

やることも言うことも幼稚舎の頃と何ら変わりがないことに、皇后は少々呆れた顔をする

『そうなんですけどぉ・・・それでも面白くないんです。』
『ほほほ・・・それは嫉妬というものだな。女性の嫉妬はなかなか厄介だ。』
『そんな厄介な気持ちにさせるシン君が悪いんですぅ・・・。あ~皇后様にお話ししてすっきりしました♪
あ・・・これ♪恒例のチョコレートです。今年は手作りなんですよ~~♪』
『手作りとな?では早速ひとつ頂いてみようか。』

皇后はチェギョンから手渡された箱を開け、食べやすい大きさに象られているチョコレートをひとつ口に運んだ

そして徐に顔を顰めた

『うっ・・・なんだこれは!苦いではないか。そなた・・・作り方を間違えたのではなかろうな?』

今にもチョコレートを口から吐き出しそうな皇后に、チェギョンは弁明した

『ちっ・・・違います皇后様。これはカカオポリフェノールがたくさん入ったチョコレートなんです。
皇后様の美容と健康に効果があるんですっ!』
『まことか?』
『嘘など言いません。現にシン君にはもっとカカオの入ったチョコレートを作ってきたんです。』
『なにっ?これより更に苦いというのか?』
『はい。皇后様のチョコレートはカカオ70%ですが・・・シン君のはカカオ90%ですから~♪』
『そうか・・・私の美容と健康のためにチェギョンが作ってくれたのなら、薬だと思って(我慢して)食べるとしよう。』
『ありがとうございます♪シン君はあまり甘い物が好きじゃないので考えたんですよ~♪
じゃあ皇后様・・・私は東宮に参ります。』
『ちょっと待ちなさいチェギョン・・・太子へのチョコレートには・・・愛が入っているのか?』

チェギョンは満面の笑みで答えた

『もちろん愛100%です♪』

この冬が終わった正式な婚約発表がされるだろう

皇后は自分の息子と未来の妃殿下の心の繋がりを思い、心から安堵するのだった





『こんにちは~♪チェ尚宮さん・・・皇太子殿下にお目にかかりたいのですが・・・』
『お部屋でお待ちになっておられます。チェギョン様・・・ここまでどうやってお越しになったのですか?』
『自転車です。本殿近くの出入り口に置いてきました。』
『さようでございますか。お帰りの際には車でお送りいたします。』
『えっ?いいんですか?』
『はい。もう暗くなっておりますので送らせていただきます。』
『ありがとうございます。では失礼します~♪』

もうすっかり慣れ親しんだ東宮殿・・・チェギョンはシンの自室に向かって歩いていく

そして部屋の前に立ちドアをノックする

<トントン>
『シン君♪チェギョンで~~す♪』

ガチャリと扉が開き、シンはチェギョンを部屋に招き入れた

『来る頃かと思ってた。』
『あ~もうスーツに着替えてる。執務室に行く時間?』
『あぁ。だが今日は大丈夫だ。』
『ホント?あっこれこれ~~♪シン君、今年は手作りなんだよ。食べて❤』
『あぁ。』

ソファ0-に並んで腰かけ、シンはラッピングされた箱を開けた

そこには皇后と同じように、食べやすい大きさに象られたチョコレートが入っていた

『なんだか・・・色気がないな。』
『っつ・・・チョコレートに色気なんか求めないでっ!ねっ・・・早く食べてみてよ~♪』
『あぁ。』

シンはチョコレートをひとつ摘まみ、口に運んだ

そしてその瞬間・・・顔を歪めた

『な・・・なんだこえは!チョコレートじゃないじゃないか。少しも甘くない・・・却って苦い。』
『うん、当然だよ。カカオ90%のチョコレートだもん♪甘いの嫌いでしょ?』
『確かに甘い物は得意ではないが・・・極端すぎるっ!お前は味見したのか?』
『いいや~してない♪苦いの嫌いだも~~ん♪』
『っつ・・・なんて女だ。味見しろ!』

シンは嫌がるチェギョンの口の中にチョコレートをひとつ放り込んだ

『に・・・・苦~~い!』
『苦いだろ?』
『でも美容と健康に効果があるんだから~~!あぁ‥・苦い・・・』
『じゃあ口直しに・・・』

シンはチェギョンの顔を捕らえ自分に向かせると、その顔を両手で挟み唇を重ねた

苦かった口の中は二人の体温で甘く変わっていった


早春の頃…二人は婚約発表の日を迎え、シンが18歳を迎えたら婚姻の議が執り行われるだろう

今年のバレンタインチョコレートには苦さ90%の愛が充満していた

どうか二人が・・・この先も幸せでありますように❤



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バレンタインのお話に
お付き合いいただきありがとうございました❤

恋より甘く愛より熱く・・・の最終話で書いたように
管理人はしばし充電期間に入ります。
本当に自分が書きたいものが浮かんだ時
戻ってまいりますので
どうぞよろしくお願いいたします~~♪

ありがとうございました❤

~星の欠片~ ★ emi ★



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